2021.02.10
資産運用

超高齢化社会の資産防衛の方法 その②

前回は、高齢化社会の現状と認知症について深堀りしました。今回は認知症になる前、認知症になった後のお金の管理方法についてご説明します。

認知症になる前の管理の方法

認知症になり、判断能力が十分でなくなった時に備える制度があります。「任意後見人制度」と、最近脚光を浴びている「民事信託(家族信託)」です。

任意後見人制度

判断能力が不十分になった時に支援する人を任意後見人といいます。任意後見人の役割は大きく財産管理と生活や療養に関する支援をする身上監護の2つです。
任意後見人制度は、任意後見人を自ら選び、公正証書を作成し公証人役場に預けておくものです。

任意後見人になるために、資格は不要です。子どもなどの親族のほか、弁護士、司法書士、法人などを任意後見人とすることもできます。

任意後見人が就任するまでに、以下の5つのステップを踏みます。

①任意後見受任者を決定
②依頼したい内容を決定
③公正証書で内容を締結
④認知症の症状が出たら、「任意後見監督人の選定申立」を管轄の家庭裁判所に提出
⑤任意後見受任者が任意後見人に就任

民事信託(家族信託)

民事信託(家族信託)とは財産の管理を信頼できる家族に託す契約です。財産の所有権には管理する権利と利益を受益する権利が含まれます。その財産の所有権のうち、管理する権利だけを信頼できる家族に移す制度となります。
民事信託(家族信託)は、2007年に信託法の大改正が行われて誕生しました。当初は活用事例がなく手探り状態でしたが、5年程前から徐々に活用事例が増えてきて、使い勝手が良くなってきました。
家族信託のイメージは以下の通りです。

1 家族で財産管理
2 新しく家族の財布を作る
3 家族信託の内容を決める

この3つについて詳しく説明します。

1 家族で財産管理

認知症を発症してお金の管理を自らできなくなった場合、それを家族に託すことができます。委託者が資産を託し、受託者が委託者のお金を管理します。受託者は、委託者の子どもなどが一般的ですが、兄弟姉妹など複数人が受託者になることもできます。そうすることで、お互いにお金の管理をチェックすることができます。受益者の管理状況を監督する機能として、信託監督人を置く場合もあります。

2 新しく家族の財布を作る

次に、新しい財布を作リます。銀行に「信託口口座」を作るケースもありますが、受託者本人のものとは別の口座を作成し、別々で管理する(分別管理)のが一般的です。信託契約書にその口座番号を明記することで、より適切な管理ができます。

3 家族信託の内容を決める

内容を決めるにあたっては、家族信託に詳しい弁護士や司法書士などの専門家にアドバイスを求めるのがベターです。

預貯金や不動産、有価証券などをどこまで信託するのか、いつから開始するのか、具体的な財産管理の方法などを決めます。

これらが決まった後、家族信託契約書として公正証書にします。

なお、家族信託は相続税の節税に寄与するものではないので、スキームを組む際には課税関係も整理しておく必要があります。

このように家族信託は、様々な思いを反映させることができるフレキシブルな仕組みと言えます。

認知症になってしまった後の管理方法

ご両親が認知症と診断された後、基本的には通帳と印鑑があってもお金を引き出すことはできません。さらに、認知症になったご本人を連れていっても引き出すことはできないのです。これは、ご本人の「お金を引き出す」という意思を確認できないからです。

お金を引き出すには、「法定後見人」を任命し、その人にお金の引き出しを依頼するという手順を踏む必要があります。

法定後見人には、「後見」「保佐」「補助」があり、誰が何になるかは家庭裁判所が決めます。

最高裁判所事務総局家庭局がまとめた「成年後見人が必要となる状況」は以下の通りです。

1位 預貯金の管理監督
2位 介護保険契約
3位 身上監護
4位 不動産の処分
5位 相続手続き

法律では「後見人になれない人」が定められていますが、それ以外の人は誰でも後見人に就任できます。
後見人になれない人は未成年者、破産者、以前に法定代理人を解任されたことがある人などが該当します。通常は、申立人すなわち親族などが後見人になるケースが多いようです。しかし、決定権は裁判所にあります。たとえば申立人が親族で、他の親族と揉め事がある場合など15項目に当てはまる場合は、後見人に就任できませんので注意が必要です。

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