J-REITとは証券取引所に上場されている不動産投資信託のことですが、これまでは大都市圏の好調な不動産市況を反映して、順調な値動きを継続していました。しかし、新型コロナウイルスによる株価の暴落や経済の停滞といった悪材料によって、J-REITにも暴落の波が押し寄せました。
安定した分配金利回りと順調な価格推移を理由に、数ある金融商品の中でもJ-REITを「優等生」と見ていた投資家も多かっただけに、コロナショックと呼ばれる暴落が起きたことは多くの投資家にショックとダメージを与えました。しかし、その後J-REITは反発し、2020年4月には比較的穏やかな値動きを取り戻しています。
そもそも優良な不動産物件に投資している銘柄が多いため、J-REITの投資価値が失われたわけではないと考える投資家も多く、暴落後にやや値を戻したタイミングを投資チャンスと捉える向きも多いようです。そこで当記事では、2020年以降のJ-REIT投資戦略を考察してみたいと思います。
J-REITには60を超える銘柄があり(2020年4月現在)、それぞれの銘柄は株式と同様に売買することができます。この仕組みによって、投資家は間接的に不動産に投資することができます。
東証J-REIT指数という、J-REIT全体の価格を指数化した指標があります。東証J-REIT指数の推移を見れば、J-REIT全体の騰落を知ることができるわけです。コロナショックによって東証REIT指数も2020年3月9日から急落を始め、2,200ポイントから一気に1,200ポイントを割り込む大暴落となりました。J-REIT全体の価値は、約半分になってしまったことになります。
しかし、その後は割安感や日銀によるJ-REIT買い入れの報道などが好感され、東証J-REIT指数は反発し、1,600ポイント付近まで値を戻しました。
この相場展開を受けて囁かれているのが、「J-REITに投資チャンスが到来している」という説です。その理由は、以下の3つです。
(1)長らく維持してきた底堅い水準に対する半値戻しなので、値頃感がある
(2)NAV倍率が1.0を下回っている銘柄が多く、割安感がある
(3)そもそもJ-REITは優良物件を所有しているため、無価値になることは考えにくい(つまり本来の価値に戻る)
「NAV倍率」という見慣れない言葉が出てきました。NAV倍率とは「Net Asset Value」の略で、「純資産価値」と訳されます。投資法人が所有している不動産の時価評価に対する純資産価値のことで、両者がイコールの場合は1.0になります。株式のPBR(株価純資産倍率)に似た指標であり、J-REITの割安感を知るのに役立ちます。
NAV倍率が1.0を下回っている銘柄は、J-REITの市場価格が不動産の時価評価を下回っており、割安であると判断することができます。2020年4月21日現在、50銘柄のNAV倍率が1.0を下回っており、以前として多くの銘柄に割安感があることが、J-REIT全体の上昇余地の根拠となっています。
J-REITの各銘柄は、どのような分野に投資しているかによって住居型、物流型、オフィス型、商業施設型、ホテル型、ヘルスケア型といったカテゴリーに分類されています。その名称から、どのような不動産に投資をしているかを推測できます。
コロナショックの経済全体への影響を考慮すると、2020年以降も比較的安定的に収益が見込めるのは住居型や物流型です。これらはもともと利回りが低いため、あまり人気がなかったのですが、コロナショックによって外出自粛の要請や通販の活況が起きたため、投資妙味が高まったのです。
一方で評価がネガティブになっているのが、ホテル型や商業施設型です。インバウンド需要の激減や外出の自粛によって、これらのカテゴリーが中長期的にダメージを受けることは間違いないでしょう。
オフィス型については、テレワークの普及によってオフィス需要が伸び悩むとする見方もありますが、ホテルや商業施設ほどの影響はないと見られています。
インカムゲインである分配金収入を目的とする投資家も多いJ-REITですが、コロナショックによる不動産需要の変動は分配金にも影響するため、上記の傾向は知っておく必要があるでしょう。
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