2019.2.28
未来の賃貸経営

「テック元年」AIやVR、IoTを使った空室対策

(写真=123rf)
(写真=123rf)
日本では2016年に「フィンテック元年」を迎え、AIなど最新テクノロジーを活用したさまざまな金融サービスが注目を集めました。2018年は美容とテクノロジーを組み合わせた「ビューティーテック元年」やペットとテクノロジーを組み合わせた「ペットテック元年」など、他の業界にも最新テクノロジーの影響が広がっています。果たして、大家業において最新テクノロジーはどのような影響を及ぼすのでしょうか?

本記事では、大家業におけるAIの活用事例と実際の利用状況、将来の影響についてお伝えしていきます。

AIで空室対策!?

(写真=123rf)

最近、さまざまなところでAI(人工知能)やVR(仮想現実)、IoT(モノのインターネット)などの言葉が取り上げられています。皆様もよく耳にするのではないでしょうか。オックスフォード大学でAIの研究を行うマイケル・オズボーン准教授によると、今後10~20年で現在の仕事の47%、ほぼ半分がコンピューターに取って代わられるとのことです。

週刊現代:「実名357社を大公開! AI革命で10年後消える会社、生き残る会社」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52569

このように、AIと聞くと「仕事がなくなる」などの負の側面を考えてしまうことも少なくありません。しかし、一方で有効に活用することで、自分の仕事を効率的に進められるものでもあります。例えば、マンションを経営するのであればずっとつきまとう問題である空室問題を、AIで解決できるとしたらどうでしょうか。

空室対策のシステムが販売開始

2018年10月17日の日経新聞の記事によると、金沢市にあるクラスコテクノロジーは、グループ会社で不動産事業を手がけるクラスコが手がけてきた空室改善の実績をもとに開発された「くうしつたいさくん」を販売開始したそうです。
「くうしつたいさくん」はAIを活用し、入居時に必要な設備の提案や競合類似物件と比較して入居が見込める賃料を試算するなど、登録した立地や家賃、築年数などの条件をもとに適切な対策を提案します。

日経新聞:空室対策システムを外販 クラスコ系、AIで賃料試算
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36554810W8A011C1LB0000/

これより以前にも札幌市のITベンチャー、ライトブレイン株式会社ではAIによる空室対策を行っています。ライトブレインでは、札幌市内約10万室と東京23区の役100万室について契約状況や家賃、築年数など131項目について調査し、集めたデータをAIで分析して、マンションオーナーに空室対策を助言する事業を開始しています。

空室対策にとどまらないAI活用

マンション経営において、AIは空室対策以外にもさまざまな面で活用されています。

・AIチャットで顧客対応
例えば、イタンジ株式会社の開発したノマドクラウドというシステムでは、問い合わせのあった物件の情報をもとに定期的に物件情報をそのお客さんに送るメール追客機能が搭載されています。この機能の中には、AIによるチャット返信サービスもあります。顧客は定期的に問い合わせた物件と類似した物件の紹介を受けられるばかりか、チャットで質問すると、即座にその回答をAIがしてくれるのです。

・不動産の将来価値をAIで予測
マンション経営では、毎年の家賃収入だけでなく、マンションを売却することで得られる利益を試算することも重要なことです。株式会社コスモイニシアの販売するVALUE AI(バリューアイ)では、約5,800万件に及ぶ膨大な不動産データを学習したAIが空室リスクや賃料変動を分析することで、現在の不動産価値だけでなく、将来価値を予測することができます。このように、AIはすでに不動産に関するさまざまな局面で活用されています。

利用してる大家さんはいる?

(写真=123rf)

一般的に、不動産業界はIT化が遅れていると言われています。それは、取引金額の高額性や流動性の低さ等、様々な要因が考えられています。それでは、大家業ではどうなのでしょうか?

実際にはまだまだAIの活用はなされていない

先ほどお伝えしたように、不動産会社から入居者へ向けて自動で物件を案内するシステムや、AIによる空室対策が開発されているものの、実際にはそこまで活用が広まっていないのが現実です。これは、大家業では、というより日本全体でも同じようなことが言えます。まだ現場レベルで十分に使えるAIのシステムが開発されていないことや、現場側にそれを十分に使いこなせる人が不足していることが理由として挙げられるでしょう。

平成28年の情報通信白書では、日本の職場において、AIがすでに導入されており、利用したことがあると答えた企業はわずか1.9%なのに対し、現在導入されていない、かつ、今後導入される計画はないと答えたのは63.2%にものぼっています。

総務省:平成28年版 情報通信白書 特集
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc143310.html

AIと大家業の相性は良い?

日本全体でのAI活用が進んでおらず、そもそも不動産業界はIT化に遅れた業界ということもあり、大家業についてもそこまでAIが浸透していないのが現状ですが、そもそもAIと大家業は相性が良いと言えるでしょう。

例えば、不動産の価値を算出する代表的な方法として取引事例比較法(賃料の場合、賃貸事例比較法)がありますが、これは物件の周辺にある類似物件の不動産価格をもとに対象の不動産の価格を求める手法で、データを活用し、計算するその手法はAIのもっとも得意とするものの一つです。同じ計算をするのであれば、人間よりコンピューターが計算した方がより速く、正確な計算をできるはずです。

今後AIが不動産業界に与える影響

(写真=123rf)

現段階でAIを導入している企業が少ないとはいえ、今後もっとAIを活用した手軽で便利なシステムが開発されていけば、その影響は大きくなっていくでしょう。

AIの活用で不動産仲介会社の業務が省力化される

現在もすでに始まっている変化として、物件案内をAIが担当するというものがあります。

通常、賃貸マンションへの入居が決まるまでには、利用者が不動産会社を訪れて物件の紹介を受け、気になった物件を内見し、入居する部屋を絞っていくという流れがあります。

これに対し、AIを活用した案内では、入居先を探している利用者に対し、AIが物件を紹介し、内見を決めるところまでを担当。営業マンは内見が決まった後から対応することで、業務の省力化を実現しています。

しかし、上記のようにAIが物件の紹介を行うようになると、紹介されにくい物件が発生してしまうことが予想されます。

例えば、利用者は部屋を探すとき、「駅近」や「築浅」などの代表的な要望を挙げるのが普通です。この要望に対してAIが対応すると、「駅近」で「築浅」の物件ばかり空室が埋まっていくことが起こり、その条件に満たない物件の空室はなかなか埋まらないということが予想されます。

現状、条件の悪い物件については、担当の営業マンに対してやや多めの報酬を渡すことで空室を埋めてもらうといった手法を取っている大家さんが少なくありません。今後悪条件の物件の空室を埋めるためには、物件そのものの価値向上等、手法の見直しが求められるでしょう。

まとめ

2018年現在、ごく一部ではありますがAIによる空室対策に関するアドバイスや、将来の資産価値の算出、AIによる自動返信機能、物件紹介機能などさまざまな局面でAIは活用され始めています。とはいえ、現状ではAIが十分に活用されているとは言いにくい状況ですが、今後システムの改良が進められ、現場に導入されていけばどんどんその利用は広まっていくでしょう。

AIが浸透すれば、「AIはどんな物件を優先的に紹介するか?」など、これまでの常識や考え方も変えていかなければなりません。時代に乗り遅れないよう、今から少しずつAIに対する意識改革を進めていくと良いでしょう。

監修者
小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。

国内最大の不動産投資ポータルサイト『楽待(らくまち)』の「8人の成功者による不動産投資ノウハウ完全版 8つのステップ 2014」の講師に約2万人の投資家の中から選出。http://www.rakumachi.jp/news/thanks/8step2014#m05 著書 「自主管理」で年4000万円稼ぐマンション経営術(洋泉社) http://www.yosensha.co.jp/book/b252584.html スマホ1台でらくらく儲かる不動産投資法 (ダイヤモンド社) https://www.diamond.co.jp/book/9784478104927.html 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント総合研究所 特任研究員。 経済産業大臣登録 中小企業診断士、MBA(経営管理修士)、一級販売士、GCS認定コーチ。 ARC CONSULTING(アーク・コンサルティング) 代表経営コンサルタント。(社)東京都中小企業診断士協会 城東支部所属。 東京商工会議所 企業変革アシストプログラム事業アドバイザー。 東京信用保証協会 経営力強化専門家。 国内最大不動産投資サイト「楽待」認定コラムニスト。 http://www.rakumachi.jp/news/archives/author/kobachan 好きなことは、読書、サッカー、愛犬との散歩などです。 https://twitter.com/hkobachan https://www.instagram.com/hiroshikobayashi21/

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