2019.2.28
未来の賃貸経営

義務化された「インスペクション」を知っていますか?

(写真=123rf)
(写真=123rf)
2018年4月1日に宅建業法が改正され、「インスペクション」について、専門家(インスペクター)の紹介や、実施の有無について報告が義務化されたことをご存知でしょうか。今回は、インスペクションについて、その義務化された内容や、詳細についてお伝えしていきたいと思います。

宅建業法が改正

日本においては、未だ中古住宅より新築住宅の人気が高いですが、今後、確実に増えていくことがほぼ確実な空き家問題などを背景に、より中古住宅の売買を活発にしていこうという動きがあります。(国土交通省の住宅経済関連データによると、平成5年に4,476千戸だった空き家は平成25年に8,196千戸に増加)

参考:国土交通省 平成29年度 住宅経済関連データ
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html

こうした動きの中で、中古住宅の購入を検討する人が、その品質や状態に対して感じる負担を解消しようと、2016年に建物状況調査(インスペクション)を盛り込んだ法改正が成立し、2018年4月1日より施行されています。

この法改正により、宅建業法に以下の3つが盛り込まれることになりました。

・媒介契約において建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の交付
・買主等に対して建物状況調査(インスペクション)の結果の概要等を重要事項として説明
・売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付

参考サイト:国土交通省「改正宅地建物取引業法の施行に向けて参考資料」
http://www.mlit.go.jp/common/001158049.pdf

つまり、売買取引における以下の3つの時点で建物状況調査(インスペクション)に関する取り組みが義務化されました。

①媒介契約時
②重要事項説明時
③売買契約時

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①媒介契約時
売主、または買主は、不動産会社に対して売却や購入の仲介を依頼するのが一般的で、仲介を依頼する時は売主、買主と宅建業者とで媒介契約を締結します。その媒介契約締結時に、宅建業者からインスペクションを行う業者の紹介の有無を示し、売主、買主の意向に応じて紹介する必要があります。

②重要事項説明時
不動産の売買においては、売買契約の締結までの間に宅建業者から売主、買主それぞれに対して重要事項説明をしますが、その重要事項説明時にインスペクションの結果を買主に対して説明する必要があります。

③売買契約時
売買契約締結時には、建物の現況について売主と買主が相互に確認し、実際に確認したことを記載した書面を作成し、それぞれに交付する必要があります。なお、大家さんについては物件の取得時や保有物件の売却時に上記の書面の交付や説明を受けることになります。

インスペクションの義務化ではない

今回の宅建業法の改正内容を見てわかるように、義務化されたのはあっせんについてや、インスペクションの結果についての説明のみで、インスペクションが義務化されたわけではありません。実際にインスペクションを実施するには当然コストもかかります。しかしながら、買主としては安心して中古住宅を購入できるというメリットがあります。

今後、インスペクションが広く普及していくためには、インスペクションに対する正しい理解と周知、多くの中古住宅でインスペクションが実施され、「インスペクションを受けていない中古住宅だと買い手がつきにくい」といった状況が実現される必要があるでしょう。

インスペクションって何?

(写真=123rf)


ところで、そもそもインスペクションとはどんなものなのでしょうか?

インスペクションについて簡潔に説明すると、「建物の基礎や外壁のひび割れや破損、天井の雨漏りなどを専門家が調査しその劣化状況を報告すること」です。中古住宅の売買がひんぱんな欧米では購入前にインスペクションが行われるのは当たり前になっており、インスペクションを実施する専門家である「インスペクター」は不動産売買時には必ずといってよいほど必要とされています。

インスペクションでは具体的に何を調査するの?

それでは、実際にインスペクションではどのような調査が行われるのでしょうか?インスペクションの調査内容については、国土交通省が2013年にとりまとめた「既存住宅インスペクション・ガイドライン」がベースとなっています。

参考:国土交通省 既存住宅インスペクション・ガイドライン
http://www.mlit.go.jp/common/001001034.pdf

既存住宅インスペクション・ガイドライン内では、「現況検査の内容」として、以下のように記載があります。

(以下、引用)

■現況検査の内容は、売買の対象となる住宅について、基礎、外壁等の住宅の部位毎に生じているひび割れ、欠損といった劣化事象及び不具合事象(以下「劣化事象等」という。)の状況を、目視を中心とした非破壊調査により把握し、その調査・検査結果を依頼主に対し報告することである。

■現況検査には次の内容を含むことを要しない。

①劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか否か、欠陥とした場合の要因が
何かといった瑕疵の有無を判定すること

②耐震性や省エネ性等の住宅にかかる個別の性能項目について当該住宅が保有
する性能の程度を判定すること

③ 現行建築基準関係規定への違反の有無を判定すること

④ 設計図書との照合を行うこと

(引用終了)

上記のように、インスペクションにおける現況調査では、基礎や外壁のひび割れや欠損について主に「目視」で調査を行うもので、瑕疵の有無や耐震性、省エネなど性能の判定については調査内容に含まれないとされています。

インスペクションの専門家「インスペクター」について

先述したように、インスペクションを行う専門家のことをインスペクターと呼びます。ただし、日本においてはインスぺクターは通称で、現場で調査を行うのは建築士または2017年2月に制定された「既存住宅状況調査技術者講習登録規定」に基づいた「既存住宅調査技術者」の資格者です。

インスペクションにはどのくらいの費用がかかるの?

インスペクションにかかる費用に明確な決まりはありません。調査内容についても床下や屋根裏に進入して調査するかどうか、などで費用に違いがあります。2018年現在、一般的なインスペクションの相場は4~7万円程度、床下や屋根裏に進入するような調査では10万円以上費用がかかることもあります。また、今後インスペクションの実施がより活発になっていけば価格競争が起こり、より安くなっていく可能性もあるでしょう。

インスペクションの課題

(写真=123rf)

2018年4月に改正された宅建業法であっせんや書面の発行が義務化されたインスペクションですが、今後に向けた課題として、以下のようなものがあります。

①売主主導のインスペクションになる可能性がある
②今後普及していくか

それぞれ詳細を見てみましょう。

①売主主導のインスペクションになる可能性がある
今回の宅建業法の改正では、媒介契約時に不動産会社からインスペクターのあっせんの有無について提示し、意向に応じてあっせんする必要があるとされていますが、不動産会社から紹介を受けたインスペクターによるインスペクションは安全とは言い切れません。つまり、不動産会社とインスペクターが裏でつながっており、不動産会社や売主に有利な調査報告をする可能性があるからです。購入時にインスペクションを利用するのであれば、自分で信頼のおけるインスペクターを探すようにしましょう。

②今後普及していくか
すでにお伝えしたように、今回の宅建業法の改正ではインスペクションが義務化されたわけではありません。不動産会社や売主からすれば手間やコストが増えてしまうというデメリットもあるため、相応のメリットがなければ実施されない可能性が高いでしょう。不動産会社や売主が得られる「相応のメリット」として考えられるのが、「インスペクションをしなければ売りづらくなる」ことや「インスペクションをすることで不動産が高く売れる」ということ。

この状況が実現するには、中古住宅の売買において広くインスペクションが実施される必要があります。卵が先か、ニワトリが先かといった話でもありますが、インスペクションがどう普及していくかは、時を待たないとわからない状況だと言えるでしょう。

まとめ

(写真=123rf)

2018年4月に改正、施行された宅建業法の内容のうち、インスペクションに関する内容をお伝えしました。インスペクション自体はこれまで存在していたものの、空き家問題などもありこれから中古住宅の流通を促進していく上で、買主の不安を取り除くためにより普及していかなければならない制度です。大家さんとしては、物件の取得時にインスペクションを受けることでより安心して購入できますし、売却時には売却前にインスペクションを実施しておくことで売却後のトラブルを減らす効果が期待できるでしょう。

監修者
小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。

国内最大の不動産投資ポータルサイト『楽待(らくまち)』の「8人の成功者による不動産投資ノウハウ完全版 8つのステップ 2014」の講師に約2万人の投資家の中から選出。http://www.rakumachi.jp/news/thanks/8step2014#m05 著書 「自主管理」で年4000万円稼ぐマンション経営術(洋泉社) http://www.yosensha.co.jp/book/b252584.html スマホ1台でらくらく儲かる不動産投資法 (ダイヤモンド社) https://www.diamond.co.jp/book/9784478104927.html 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント総合研究所 特任研究員。 経済産業大臣登録 中小企業診断士、MBA(経営管理修士)、一級販売士、GCS認定コーチ。 ARC CONSULTING(アーク・コンサルティング) 代表経営コンサルタント。(社)東京都中小企業診断士協会 城東支部所属。 東京商工会議所 企業変革アシストプログラム事業アドバイザー。 東京信用保証協会 経営力強化専門家。 国内最大不動産投資サイト「楽待」認定コラムニスト。 http://www.rakumachi.jp/news/archives/author/kobachan 好きなことは、読書、サッカー、愛犬との散歩などです。 https://twitter.com/hkobachan https://www.instagram.com/hiroshikobayashi21/

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