2019.2.28
未来の賃貸経営

【大家さん必読】火災保険はどこまでカバーしてくれる?

(写真=123rf)
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オーナーが物件を購入する時に、併せて、火災保険を検討されることが多いと思います。特に、融資を受ける時には火災保険に質権設定も行います。ところが、オーナーは物件を選ぶ時ほど、火災保険は慎重では無いようにも感じるのですが、筆者の思い込みでしょうか?

大家さんはどのような火災保険に入るべき?

よく、お聞きするのが「火災保険は最低限(の補償)で良い」と「入居者が火災保険に入るから、それで十分だ」というお声ですが、本当に、それで良いのでしょうか?(ちなみに、とてもマレですが、「オーナーの私が火災保険を掛けるのだから、入居者の火災保険は不要だ」という声を聞くことがあります)。
まず、「最低限(の補償)」という声から検証してみましょう。
最低限というのは「補償の対象」となる「事故の範囲」を意味する場合が多いようです。では、「補償の対象となる事故」とは何でしょうか?
以下に列挙してみます。
1.火災や落雷、それに爆発による災害
2.風や雪、それに雹による災害
3.水濡れや外から物体落下による災害
4.盗難による災害
5.床上浸水による災害
6.その他の破損や汚損など
※.地震保険(オプション)

そして、「補償の対象」となる「事故の範囲」はプランによって異なります。
プランの例を挙げてみましょう。(あくまでも例で、保険会社によります)。
Aプラン:1と2が補償の対象。
Bプラン:1~5が補償の対象。
Cプラン:1~6が補償の対象。
Dプラン:1~4と6が補償の対象。
Eプラン:1~4が補償の対象。
(各プランとも、※.地震保険を付帯することができます)。
「最低限の補償で良い」というオーナーはAプランを希望されます。

ところで、ゼロにはなりませんが、火災は減少傾向にあります。
以下、建物火災の件数です。
平成26年:23641件
平成27年:22197件
平成28年:20991件
(消防庁の「報道資料」
「平成27年(1月~12月)における火災の状況」
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h28/08/280819_houdou_2.pdf
「平成28年(1月~12月)における火災の状況
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h29/07/290728_houdou_1.pdf」
から引用)

一方で、集中豪雨は増える傾向にあるようです。
例えば、「1時間当たり50mm以上の雨が降った回数」は、最近10年間(2007~2016年)の平均年間発生回数(232.1回)は、1976~1985 年の10年間の平均年間発生回数(173.8回)と比べて約1.3倍に増加しています。
1時間当たり80mm以上の雨が降った回数」は、最近10年間(2007~2016年)の平均年間発生回数(17.9回)は、1976~1985 年の10年間の平均年間発生回数(10.7回)と比べて約1.7倍に増加しています。
(気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/info/heavyraintrend.html
から引用)

果たして、Aプランで十分でしょうか?
まずは、物件のある地域のハザードマップを確認することから始めましょう。

さて、ここで、Aプランでは補償していない、3~6について、掘り下げるので、必要な補償か否かを確認しましょう。
3の水濡れ事故とは「排水管からの漏水によって、床が水浸しになってしまった」場合の床の修理代などを補償します。(破損した排水管そのものは、ここでは補償の対象外です。また、入居者のクローゼットや洋服も対象外となります)。
同じく3の「外からの物体落下」とは、建物近くの道路を走る車が石を巻き上げ、巻き上げた石が建物の壁やガラスを傷つけた場合の事故を補償します。
4の「盗難」においては「入居者の物が盗まれてもオーナーには関係無いから、補償から外して欲しい」、「ドアや窓を盗まれるなんてことはあり得ないでしょう」という声をよく耳にします。しかし、ここでの盗難は「第三者による不法侵入」によって「破られた窓の修理代や抉じ開けられたドアの修理代」を補償します。
なお、盗難で火災保険の保険金請求をする場合、警察に盗難届を出していることが前提になります。
6「その他の破損や汚損」の事故については、以下のような例が実際に挙げられます
・    入居者が外出から戻ると、窓ガラスが割れていた
この場合は、ガラスの修理代を保険金として受け取ることができます。

・    凍結した水道管が破裂した
破裂した水道管の修理代が補償されます。また、水道管の破裂によって水浸しになった部屋等は3が該当します。

2の雪や風、雹による事故は留意しなくてはならないことがあります。例えば、入居者が窓を開けたまま出かけたら、雨が吹き込んだ場合は補償の対象外になります。(入居者の借家人賠償責任保険で補償の可能性はあります)。また、換気扇のダクトや換気口に雹が吹き込んでしまい、破損が生じても補償の対象外です。

さて「大家さんはどんな火災保険に入るべき」という問いに対する答えは、「補償の対象」となる「事故の範囲」をどこまでにするのか?という視点でAプラン~Dプランの中から選べば良いと思います。
例えば、物件が高台にあり、近くに大きな川も無く、集中豪雨などで床上浸水等の恐れがない、ということをハザードマップで確認できたらDプランが候補に上がるでしょう。しかし、床上浸水の恐れがないのに加え、5は「損害の小さな事故なので不要な補償(修理代は経費で落とせば良い)」と思えば、Eプランを検討することになります。

オーナーが契約する火災保険と入居者が契約する火災保険とでは役割が違います!
では、どんな風に違うのでしょうか?
・ オーナーの火災保険⇒建物を補償。
・ 入居者の火災保険⇒入居者の家財を補償。
・ 入居者の借家人賠償責任特約⇒事故による原状回復費用の補償。
・ 入居者の個人賠償責任特約⇒被害者への弁償費用の補償。

例えば、2階の入居者の洗濯機の排水口付近から水が溢れ、溢れた水が1階の入居者の室内にまで及んだという事故が発生したとします。この事故による損害の内容と火災保険の役割は以下の通りです。

・建物の2階…洗濯機、衣類
⇒2階入居者の火災保険で、修理(クリニーング)代or新価の、どちらか安い額を補償。

・建物の2階…防水パンの排水口、床、壁
⇒2階入居者の借家人賠償特約で、修理代or時価の、どちらか安い額を補償。なお、時価と新価の差額はオーナーの火災保険で補償。

・建物の1階…天井、壁
⇒2階入居者の個人賠償特約で、修理代or時価の、どちらか安い額を補償。なお、時価と新価の差額はオーナーの火災保険」で補償。

・建物の1階…クローゼット、衣類
⇒2階入居者の個人賠償特約で、修理(クリーニング)代or時価の、どちらか安い額を補償。なお、時価と新価の差額は1階入居者の火災保険で補償。
ここで、建物の2階の防水パンの排水口・床・壁、同じく1階の天井・壁、これらの全てをオーナーの火災保険だけで補償する、ということは可能なのでしょうか?その方が保険金請求の手続きが楽そうですが…結論から言うと、可能です、しかし…
そもそも2階の入居者の掃除が十分でなかったことが原因で起きた事故ですので、2階の入居者には不動産賃貸契約書に基づいて、オーナーに対して原状回復の義務があります。要するに、通常の利用に伴う汚れとは異なるということです。加えて、2階の入居者の専有部分を超えた1階の天井・壁にまで損害が及んでいますので、オーナーは被害者ということになり、オーナーには2階入居者に対し、損害賠償請求権、すなわち債権を有することになります。
なので、オーナーの火災保険で補償しても、保険金を払った保険会社がオーナーの債権を代位取得することになります。つまり、オーナーに代わって、保険会社が2階入居者に損害賠償を請求することになるのです。

火災保険と火災共済の違いは?

(写真=123rf)

一口に火災保険や火災共済とは言っても、様々な商品や共済が出ていますので、単純な比較はできません。火災保険は保険会社という営利を目的としたものですが、火災共済は生協等の非営利団体の組合員等に対する福利厚生制度の一環です。非営利団体の方が、利益を得ることを目的にしていない分、リーズナブルに思えます。その一方、営利目的ですから、保険会社はサービス競争を繰り広げています。一概に、どちらが良いとは言えません。

地震保険と自然災害(地震)共済の違いは?

火災保険に付帯して契約する(居住用の)地震保険は地震保険法に基づく業界共通商品で、以下のような特徴があります。
保険金:主契約の火災保険の保険金の30~50%で設定。
保険料や対象となる事故、保険金支払いの基準:各社とも同じ。
その他の特徴:政府再保険制度あり。保険会社の利益にはならない

一方、地震共済は、
保障金額:共済金額の一定金額まで。
     各共済制度によって異なるが、最高で火災共済の半額まで。
掛け金:自然災害共済に含まれていたり、火災共済の中に含まれているので、
    地震共済だけの掛け金を示すことができない。
補償内容:地震、噴火、津波を対象とする点は、各共済とも同じ。
共済金支払いの基準:各共済制度で異なる。
その他の特徴:政府再保険制度は無い。

火災保険で修繕費用を払うことも可能?

火災保険は先述の「保険事故」を前提にしていますので、事故のタイミングに合わせた修繕の費用ならばともかく、「経年」や「劣化」、「古くなった」、「虫喰いや鼠喰い」等による修繕費用は補償の対象外です。
ところで、2014年6月27日に国民生活センターが『「保険金が使える」という住宅修理サービスのトラブルにご注意ください!』というタイトルで注意喚起しています。「火災保険の保険金が出るので無料で修理ができる」という謳い文句で修理業者から契約を持ちかけられるが、トラブルに発展するケースがあるようです。
そもそも、火災保険の保険金を受け取れるのか否かは、保険会社が判断し、修理業者が決めるわけではありません。

上手に補償を選んでコストを減らそう

保険を選ぶ際のポイントは、
・補償の対象となる事故の範囲
・免責金額
・保険期間の長さ
・保険料の払い方
といったようなことが挙げられます。

「補償の対象となる事故の範囲」については最初に述べている通りです。
続いて、免責です。免責とは自己負担のことです。免責金額を5万円に設定したとしましょう。例えば、火災の事故に遭ったものの、損害額は幸いにして15万円の修理代で済みました。こういう場合、受け取れる保険金は修理代15万円から免責金額5万円を差し引いた10万円、ということになります。
免責の金額の設け方は商品によっても異なりますが、1万円、3万円、5万円、10万円、20万円の中から選んで設定します。また商品によっては「免責を必ず設ける」としている場合もあります。
免責を設けると保険料が安くなる代わりに、自己負担が生じ、損害額が免責金額を下回る場合は、保険金を受け取れません。「小さなリスクは家計で、大きなリスクは保険で」というスタンスの方には良いかも知れません。

保険期間を長くすると、保険料の1年当たりの金額が安くなります。
保険料の払い方が一時払いなら、保険期間の最長10年です。
保険料が月払いや年払いなら、最長5年です。
保険料の支払いは、保険料を「まとめて払う」と、保険料の1年当たりの金額が安くなります。例えば、保険期間を5年としましょう。保険料の1年当たりの金額は、次の通りになります。毎月払い>毎年払い>一括払い
キャッシュフローに余裕のある方なら、保険料をまとめて払うことも検討してみましょう。

また地震保険には割引制度があります。割引率は以下の通りです。
・建築年割引:10%
・耐震等級割引:最大50%
・免震建築物割引:50%
・耐震診断割引:10%
地震保険を契約する方で、該当する物件をお持ちの方は、割引の適用を忘れずにしましょう。
また、地震保険の保険料は最大5年分まで、まとめて払うことができ、まとめて払うと長期係数が利きくので、1年当たりの保険料が安くなります。
(ただし、地震保険の保険料をまとめて払うためには、火災保険の保険料が一括払いであることが前提です)。
他にも、新規取得のオーナーに限り契約できる商品や、建物が新築の場合に、保険料が割り引かれる商品もあります。

まとめ

まず補償の対象となる事故の範囲を考え、オーナーと入居者の、それぞれの火災保険の役割の違いを理解することが大切です。
また、免責を設けたり、保険料をまとめて払うことにより、保険料を上手に節約しましょう。



執筆者
大泉 稔(ファイナンシャルプランナー)
明星大学日本文化学部言語文化学科卒業。2006年~2007年までねんきん電話相談員として活動。
その後、独立系FP会社の設立に参画し、取締役に就任。保険代理店の取締役を経て、
大泉稔1級FP技能士事務所を設立、現在に至る。

■保有資格
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、トータル・ライフ・コンサルタント(TLC)
、CFP(R)、1種証券外務員、第一種衛生管理者

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