新型コロナウイルスにより自粛を余儀なくされた事業主向けの救済策に、新たに「家賃支援給付金」が加わりました。今回は、始まったばかりのこの制度の概要についてお伝えします。
目次
6月に第二次補正予算案が国会で承認されたことにより家賃支援給付金制度が成立しました。7月14日から申請が開始しています。
この制度はコロナ禍により売上が激減した、事業用の物件を賃借している事業主向けの救済制度です。そのため、自己所有物件を貸し出している賃貸オーナーは直接給付を受けることはできません。しかし、この制度を活用すれば家賃を従来通り回収できるものと思われます。
では、制度の概要を見ていきましょう。
給付金の対象となるのは、次の要件すべてに該当する法人・個人の事業主のみです。
(1)2019年12月31日以前から事業を行い、今後も事業継続する意思のある事業主であること
(2)2020年5月から12月までにおいて「任意の1か月間の売上が前年同月比50%以下」または「連続する任意の3か月間の売上が前年同時期比30%以下」であること
(3)2の売上減少が新型コロナウイルスの影響であること
(4)後述する不動産の賃借要件を満たしていること
法人・個人のそれぞれについても、以下のような細かい条件があります。
▽法人の事業主の場合
次のいずれかであれば申請できます。
(1)資本金の額または出資の総額が10億円以下の法人
(2)資本金の額または出資の総額がなく、かつ常時使用する従業員数が2000人以下の法人
▽個人の事業主の場合
事業所得で確定申告をしている個人事業主のみが対象です。個人事業主の中には契約の事情で給与所得や雑所得という形で報酬を受け取っている人もいますが、現時点ではこのような人たちは申請できません。
土地や建物を事業用として借りている事業主だけが対象です。そのため次のすべての要件に合致していなくてはなりません。
(1)2020年3月31日時点から申請時に至るまで賃貸借契約が有効であること
(2)自己取引(自分と自分が経営する会社間の取引)や夫婦間・親子間や親族会社同士、親会社子会社間での賃借ではないこと
(3)又貸ししていないこと(ただし一部又貸しは申請可能)
(4)原則連続3か月間、家賃を支払っていること
給付額算定の基準となる費用は原則、賃料・共益費・管理費だけとなります。受け取れる金額の算定方法は以下の通りです。なお、法人は600万円、個人は300万円が給付上限額です。
▽法人の場合の算定方法
・月額家賃等が75万円以下の場合:月額家賃等×2/3×6か月
・月額家賃等が75万円超の場合:〔50万円+(月額家賃等-75万円)×1/3〕×6か月
▽個人の場合の算定方法
・月額家賃等が37.5万円以下の場合:月額家賃等×2/3×6か月
・月額家賃等が37.5万円超の場合:〔25万円+(月額家賃等-37.5万円)×1/3〕×6か月
家賃支援給付金で提出すべき書類は以下の通りです。
▽法人・個人と共通
・受信通知(申告書をe-Taxで送信している人のみ)
・売上が減少したことを証明できる書類(売上台帳など)
・賃貸契約書の写し
・申請日の直前3か月の賃料の支払実績を証明できる書類(預貯金の通帳、領収書など)
・振込先が分かるもの(預貯金の通帳など)
・自署の誓約書
▽法人で必要な書類
・2019年分法人税確定申告書別表一の控え(収受印の押されているもの)
・法人事業概況説明書の控え
▽個人で必要な書類
・2019年所得税の確定申告書第一表の控え(収受印の押されているもの)
・2019年青色申告決算書の控え(収受印の押されているもの)
・本人確認書類の写し(運転免許証、個人番号カード等)
2020年7月14日から2021年1月15日の間です。
原則、各自が下記URLからオンラインで申請することになります。既述の申請書類はPDF化します。
【参考】家賃支援給付金申請サイト
ただしスタッフのサポートを受けながら会場で電子申請することもできます。
【参考】サポート会場について
家賃支援給付金には次の3つの注意点があります。
賃貸オーナーは法人・個人ともに家賃支援給付金の対象外になります。不動産賃貸業のほとんどは自己所有の物件を賃貸するからです。また賃借物件の又貸しも支給対象から外れます。
家賃支援給付金は法人税や所得税の課税対象です。
風俗営業や宗教団体など業種によっては対象外になることがあります。また、賃貸契約書がなかったり、支払実績が1か月分しかなくても申請できたりすることがあります。ただし、審査に時間がかかります。
詳しくは下記家賃支援給付金の特設サイトをご確認ください。
【参考】
家賃支援給付金に関するお知らせ(経済産業省)
家賃支援給付金特設サイト(中小企業庁)
賃貸オーナーが直接受給できる給付金ではありませんがこの制度を利用することで、賃借人からの家賃減額や支払猶予の要望に対し、無理をして対応しなくて済む可能性があります。家賃減額や支払い猶予の交渉をされたら、この制度をまずはテナントに案内してみるとよいかもしれません。
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