2021.02.12
賃貸経営

「家賃支援給付金」の申請書を安定経営につなげる4つのポイント

借主であるテナントが事業者である場合に利用できるのが「家賃支援給付金」制度です。しかしメリットがあるのはテナントだけで、賃貸オーナーにはいいことがない……、そう思ってはいませんか?実は申請書のしくみを上手に活用すれば、賃貸事業の安定化につなげることができるのです。今回は、経営の安定化という視点から家賃支援給付金のポイントについて解説します。

 

家賃支援給付金は賃貸オーナーには無意味なのか

2020年7月14日から家賃支援給付金の申請がスタートしました。「家賃」と銘打ってあるので賃貸オーナーとしては何らかのメリットを享受できるのではないか、と期待するところです。しかし実際はあくまで、借主であるテナント向けの制度にすぎません。「売上の減少に直面する事業者の事業継続を下支えするため」の給付金である、とされています。なお、事業者ではない世帯への家賃補助制度としては「住居確保給付金」が用意されています。

【参考】「家賃が払えない」「家賃を減らして欲しい」と入居者から言われた際の対応方法

賃貸オーナーは申請できない

この家賃支援給付金は借主の事業者しか申請できません。「貸主が自分個人で、借主が自分の経営する会社なら大丈夫ではないか」と考える人もいるかもしれませんが、そういった自己取引の物件は対象外とされています。また、事業を営む親や配偶者に貸し出すといった親族契約もこの給付金を申請できないとされています。さらに、又貸しも原則給付対象にはなりません。

「家賃」といっても賃貸オーナーに直接振り込まれない

家賃といっても賃貸オーナーの口座に直接振り込まれるわけではありません。申請者本人の口座に振り込まれます。

テナントが家賃に充てるとは限らない

「家賃支援」という名目ですが、補助金のように使途まで細かく確認されるわけではありません。実際に給付金を家賃に充てるかどうかは借主次第です。家賃支援給付金を借主が受給したとしても、それとは別に貸主は家賃回収の努力を続けなくてはなりません。

安定経営につなげるべき家賃支援給付金の申請書4つのポイント

一見賃貸オーナーに何らメリットがないように見える家賃支援給付金ですが、活用次第では家賃の催促や回収につなげることができます。なぜなら、この制度の申請には次のような決まりがあるからです。

1. 賃貸契約書がないなら賃貸オーナーの協力が必要になる

家賃支援給付金のオンライン申請で必ず資料として出さなくてはならない書類は次のようになっています。

  • 賃貸借契約の存在を証明する書類
  • 申請時の直近3ヵ月分の賃料支払実績を証明する書類
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 売上減少を証明する書類(確定申告書や売上台帳など)

ここで注目したいのが「賃貸借契約の存在を証明する書類」です。通常、賃貸借契約書のPDFを送付することになりますが、借主によっては次のような事情で、定められた賃貸借契約書を用意できないことがあります。

  • 契約書等の賃貸人と現在の賃貸人等の名義が異なる
  • 契約書等の賃借人等と申請者の名義が異なる
  • 契約書等の契約期間に2020年3月31日又は申請日が含まれておらず、契約の有効性がわからない
  • 賃貸借契約書が存在しない、あるいは紛失した

このようなとき、借主は賃貸借契約の存在の証明を貸主に頼まなくてはなりません。つまり、国が定めた所定の用紙に賃貸オーナーの署名が必要になります。この協力を依頼されたら「給付金が入ったら家賃に充ててくれますよね?」と念押しすることができるわけです。

なお、上記「賃貸借契約の存在を証明する書類」は家賃支援給付金のウェブサイトの様式集からダウンロードすることができます。

2. 直近支払家賃に基づいて支給額が決まることを理由に家賃の維持が可能

この家賃支援給付金は賃貸オーナーの配慮により家賃支払いの免除や猶予を受けていても申請ができます。ただし、最低1ヵ月分は家賃を払っていなくてはなりません。このとき、借主側にとっては、減額した家賃ではなく本来の家賃を支払ったほうが得策です。基本的に、給付額は「申請日の直前1ヵ月以内に支払った賃料」に基づいて算定されるからです。

減額後の家賃が3万円ならたったの12万円しか受け取れませんが、元々が10万円なら40万円をもらうことができます(家賃が37.5万円以上の場合、申請者が法人か個人事業主かによって給付額が異なります)。

つまり、この制度をうまく使えば、減額や免除・猶予した家賃を通常通りの支払いに戻し、不動産収入を安定させることができるのです。

なお、家賃支払いの免除・猶予を受けている場合、別途「支払免除等証明書」を提出しなくてはなりません。こちらにも貸主の署名が必要です。この署名も家賃支払いを促す好機になり得ます。

3. 支給されたら賃貸オーナー達にも連絡される

申請者は、賃貸オーナーや管理会社の名称を申請書に記入しなくてはなりません。そして家賃支援給付金は支給が決定されると、申請者本人の他、登録された賃貸オーナーまたは管理業者にも振込のお知らせが届きます。このお知らせをもって借主本人に家賃の支払いを催促することができるのです。

4. 家賃支援給付金は「事業継続」が前提

賃貸オーナーの中には、経営に困窮したテナントが給付金をもらってすぐに賃貸借契約を解除し、自分が損してしまうことを気にしている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、もしそのような行動があったら不正受給に該当する可能性があります。

家賃支援給付金は持続化給付金と同様、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が激減した事業主の事業継続を支援するための制度です。事業継続をしやすくするために固定費用として人件費と同じくらい重い家賃負担を軽減することを目的としています。つまり、給付金をもらってすぐに契約を解除し、事業をたたんでしまうのは、制度趣旨に反するため不正受給に該当するかもしれないのです。

不正受給になると、受給額以上のお金を国に支払わなければなりません。また、詐欺罪として告訴される可能性があります。借主への振り込みを確認したら、不正受給の話にも少し触れ、あらためて事業継続と契約維持の意思確認をするとよいでしょう。

制度を知れば安定経営につながる

家賃支援給付金は賃貸オーナーに直接的なメリットはないものの、賃貸経営を安定化する効果があります。「賃貸経営の安定化にどうつなげられるか」という視点で家賃給付金の制度概要を確認してみるとよいかもしれません。

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