2021.02.12
賃貸管理

原状回復費用は誰が負担すべき?貸主と借主の責任負担と費用の相場観

賃貸不動産から入居者が退去する際に、しばしば問題になるのが原状回復の費用負担です。賃貸住宅に入居した人が退去をする際には「入居時の状態に戻すこと」が前提となっていますが、これが満たされていない場合に貸主と借主のどちらが責任を負うべきか(つまり原状回復の費用を負担するか)の交渉をする必要があるときがあります。

「貸主と借主のどちらが原状回復の費用を負担するべきか?」という責任の所在については、これまでの判例や慣習なども含めて一定のルールがあり、国土交通省が定めたガイドラインもあります。

この記事では住宅内のさまざまな箇所や状況別に、原状回復の費用は誰が負担するべきなのかといった線引きや費用の相場、さらにはトラブルになった場合の対処法、その前の段階でのトラブル回避のノウハウについて解説していきたいと思います。

 

【目次】

  1. 原状回復費用の基本|費用が発生するケース・しないケース
    1-1.賃貸不動産の原状回復とは
    1-2.原状回復費用が発生するケース
    1-3.原状回復費用が発生しないケース
    1-4.残存価値と負担割合
    1-5.原状回復の特約とは
  2. 貸主と借主の責任負担チェックリスト
  3. 原状回復費用の価格相場と計算方法
    3-1.原状回復費用の基本的な計算方法
    3-2.重要なのは「単価」
    3-3.部位別原状回復費用の相場一覧
  4. 原状回復費用のトラブルを回避するために留意するべきこと
    4-1.入居時の状態確認を怠らない
    4-2.重要事項説明(重説)で負担範囲の確認を怠らない
    4-3.契約違反をしていないか確認する
    4-4.入居中の破損、損耗は迅速な連絡を
    4-5.リフォームや室内の改善を無断で行わない
    4-6.貸主や管理会社との信頼関係を築いておく
  5. まとめ

1.原状回復費用の基本|費用が発生するケース・しないケース

最初に、賃貸不動産からの退去時に原状回復費用が発生する主なケースを通じて、「原状回復とは何か」について説明します。

1-1.賃貸不動産の原状回復とは

賃貸不動産に入居している人が退去する際に、その物件を入居した時の状態に戻すことを「原状回復」といいます。
多くの賃貸借契約では「原状回復した上で退去すること」と記載されているため、入居者が室内の設備や状態を変更した場合は、退去時にそれを元に戻さなければなりません。

ただし、時間の経過による自然な劣化が起き、汚損や破損する箇所もあると考えられます。このような場合、どこまで借主が原状回復の責任を負うべきか、借主と貸主間でトラブルになることがあります。

1-2.原状回復費用が発生するケース

借主が原状回復の責任を負うべきとされているのは、故意や過失による汚損や破損、機能の滅失などについてです。意図的に室内の設備や造作を変更した場合や、うっかり室内の備品などを壊してしまった場合は、原則として借主に原状回復の責任があり、借主が原状回復の費用負担をすることになります。

1-3.原状回復費用が発生しないケース

故意や過失ではなく、自然損耗や経年劣化、自然災害など不可抗力が原因の場合は、原則として借主に原状回復の責任はありません。

ただし、自然損耗や経年劣化が原因であっても本来必要である手入れを怠ったことによって汚損、破損してしまった場合は、借主に原状回復の義務が生じると考えられています。このように定義や線引きが曖昧な部分に、原状回復の費用負担をめぐるトラブルが起きやすいといえます。

1-4.残存価値と負担割合

完全に借主の故意や過失と認められる場合は借主が原状回復費用の全額を負担するべきという結論になりますが、すでに自然損耗や経年劣化によって一定の価値が減少しているものについて借主が全責任を負うことは合理的ではないと考えられています。

この場合は、借主が故意や過失によって破損してしまった設備などの経過年数から残存価値がどれだけあるのかによって評価され、借主の負担はその残存価値の分が上限となります。

出典:独立行政法人国民生活センター「原状回復費用とガイドラインの考え方」

上記のように、各設備は耐用年数に応じて、時間の経過とともに価値が減少していきます。借主に原状回復費用の負担義務が発生した場合、残存価値が何%あるのかによって費用負担の割合が決まります。

1-5.原状回復の特約とは

原状回復に伴う費用負担は経年劣化による摩耗は借主負担、故意、過失による損傷は借主負担が原則です。しかし特約を取り交わし、両者が合意することで費用負担を変更するケースもあります。例えば、「退去時にはクリーニング費用5万円を貸主が支払う」ことなどがよくある特約例となります。ただしどんな特約も設定できるわけではなく、特約が必要であり、暴利的でない範囲で客観的、合理的な理由があることが条件となります。

2.貸主と借主の責任負担チェックリスト

住宅内の主な設備において、個別に原状回復費用の負担義務が誰にあるのかをチェックリストとしてまとめました。各箇所の状況別に参考にしてください。

状況 貸主負担 借主負担
ドアの鍵 退去時の通常交換
借主が鍵穴を破損したり、紛失した
水廻り 退去時クリーニングによる消毒
清掃や手入れの不足による汚損、カビなど
室内設備 耐用年数経過による劣化、損耗
貸主の意思による交換、グレードアップ
不適切な使用、用法違反
壁、柱 ペットによる傷、臭い、汚損
日焼けや冷蔵庫背面の電気焼け
生活や手入れ不足による傷、汚損
窓ガラス 経年劣化による亀裂、汚損
自然災害による亀裂、破損
故意または過失による亀裂、汚損
床、カーペット 家具の設置によるへこみなど
子供やペットによる傷、汚損
キャスターによる傷、へこみ

借主の故意や過失については借主負担になる一方で、それ以外の自然損耗や経年劣化、自然災害などについては貸主負担であるという全体の傾向がお分かりいただけると思います。

3.原状回復費用の価格相場と計算方法

原状回復費用の負担義務が生じた場合、どれくらいの費用になるのでしょうか。負担義務が発生した場合に備えて、費用の計算方法と相場について解説します。

3-1.原状回復費用の基本的な計算方法

原状回復費用は、以下の公式を用いて算出されます。
・補修費用単価 × 補修箇所数 = 原状回復費用

もしくは、床や壁などの場合は「補修箇所数」のところが数ではなく面積で算出することになります。
・補修費用単価(1㎡あたり) × 補修面積 = 原状回復費用

3-2.重要なのは「単価」

補修が必要な箇所や面積は退去時の立ち会いで確認が可能です。現場で貸主と借主が立ち会って確認するため双方の認識に大きな隔たりは生まれにくいのですが、補修費用の「単価」については双方の認識やイメージしている相場に食い違いが生じる余地があり、それが原状回復費用のトラブルに発展する場合があります。

補修費用の単価についてある程度の相場観を持っておけば、原状回復費用がどの程度になるのかイメージをつかみやすくなります。仮にトラブルになったとしても早期解決に役立つでしょう。

3-3.部位別原状回復費用の相場一覧

原状回復費用の相場の一例は、以下のようになっています。
※原状回復工事を行っているリフォーム会社などが提示している価格を参考にしていますが、各社さまざまな価格設定をしているため、あくまでも目安としてお役立てください。
※これらの相場はケースバイケースであり汚損や破損の程度によって変動することがあります。

住宅内の箇所 価格
壁のクロス張り替え 700円~1,500円/㎡
床、クッションフロア張り替え 2,000円~3,000円/㎡程度
畳の表替え 3,500~4,500円/帖程度
ドア鍵の交換 10,000~20,000円前後
網戸張り替え 2,000円前後
ハウスクリーニング一式 20,000円~40,000円前後(1Rマンション)

4.原状回復費用のトラブルを回避するために留意するべきこと

原状回復費用のトラブルを未然に防ぎ、回避するために留意するべきことを6つの項目にまとめました。

4-1.入居時の状態確認を怠らない

そもそも原状回復とは、「入居時の状態に戻すこと」です。この「入居時の状態」を正確に把握し記録していないと責任の所在も不明確になるため、トラブルの原因になります。

すでに不具合があるなど伝えておくべき点がある場合、貸主はそれを正確に伝える必要があります。その一方で借主も入居時に何か気づいた点や不明瞭な点があれば、すぐに連絡し、貸主、借主双方で確認をしておく必要があります。

4-2.重要事項説明(重説)で負担範囲の確認を怠らない

不動産の賃貸借契約を結ぶ際には、重要事項説明(重説)の義務があります。重説では原状回復の義務や範囲についても説明され、借主はその内容をしっかりと理解しておく必要があります。重説を終了した時に借主は契約書にサインをしているため、「聞いていない」というのは通用しません。これらの確認によって原状回復費用にかかわるトラブルは大半が回避できると考えられるため、丁寧な確認を心がけましょう。

4-3.契約違反をしていないか確認する

契約書や重説では、借主に対する禁止事項も記載されています。

よくある契約違反は、ペット禁止と規定されている物件でペットを飼育していた場合です。禁止事項に抵触しているので、ペットが原因の汚損や臭いなどについての原状回復費用は当然借主の負担になります。また禁煙規定のある物件で喫煙をすること、タバコによって床に焦げを作ってしまった場合なども、原状回復費用は借主負担です。

これらの事例に限らず、契約書や重説などで禁止されている行為が原因で汚損や破損個所を作ってしまった場合は、いずれも借主が原状回復費用を負担することになります。

4-4.入居中の破損、損耗は迅速な連絡を

借主が入居中に故意や過失がなくても室内の設備や造作などを破損したり、損耗したりすることもあります。それが借主の責任によるものなのかどうかに関係なく、物件に起きた変化や異常、不具合については借主は貸主に迅速に連絡した方がよく、貸主もこうした連絡に対して誠意をもって対応し、問題の早期解決を図ることで、退去時のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。

4-5.リフォームや室内の改善を無断で行わない

借主が住環境の改善を意図してリフォームなどを「無断で」行った場合、借主が退去する際には原則として原状回復する必要があります。借主が費用を負担してグレードアップ(状態を改善)しているため貸主の利益になっているとも考えられますが、それは事前に貸主の同意がある場合に限られます。

国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、貸主に無断で行ったリフォームについては、貸主から請求された場合は借主に原状回復費用の負担義務があると規定されています。

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

上図では経年変化と通常損耗については賃料に含まれるとして借主に原状回復の責任がないとしていますが、それを超える故意や過失があった場合と、それに加えてグレードアップも賃貸人負担部分(借主負担)であるとしています。

4-6.貸主や管理会社との信頼関係を築いておく

賃貸借契約には契約書や重説という書面がありますが、それ以前に貸主と借主の信頼関係も重要です。借主は他人の所有物を借りているのですから、それをできるだけ大切に使う姿勢が必要です。貸主は借主が快適な生活ができるよう誠意をもって対応する必要があります。

退去時においても同様で、退去確認時にゴミを大量に放置したり著しい汚損がそのままになっていると、単なるマナーの問題ではなく、それがきっかけでトラブルに発展してしまう可能性もあります。最後まで誠意をもって双方が気持ちよく契約を完了できるように努めることが肝要です。

【参考①:面倒な原状回復費用を考慮しなくても良い保証サービス】

国土交通省によるガイドラインやさまざまな解決策があるといえ、やはり原状回復費用の問題は面倒だと感じる方も多いことでしょう。賃貸不動産の管理サービスには、こうした原状回復費用の保証がついているものがあります。

こうしたサービスを利用することで貸主、借主それぞれが原状回復費用のことを最初から考慮する必要がないので、トラブルを根本的に予防することが可能です。

保証サービスBasicプラン(Casa)

5.まとめ

原状回復費用の相場観、どのような場合に貸主と借主のどちらが負担するのかについて説明しました。貸主・借主の双方が責任範囲を明確に把握し、ある程度の相場観を持っておくことが大切です。貸主は管理費用負担軽減のために、借主は円満な退去のために、当記事の情報をお役立ていただければ幸いです。

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