2021.02.12
トラブル対応

【地震・台風による建物への影響】災害時に大家さんはどう対処する?

東日本大震災や熊本地震、平成30年の台風21号など、昨今、台風や地震などの災害が相次いで起こっています。
そうした自然災害で所有する物件が被害に遭ってしまったらどうなるのでしょうか。

その場合想定される状況に「外壁などの建物に損傷が発生し、修繕に多額の費用がかかる」「入居者の家財道具などが損傷している」「入居者が亡くなってしまう」などです。

このような状況になったとき、大家としてどう対処し、どこまで補償する義務があるのかを考えます。

1.修繕義務はあるか

①建物の「滅失」にまで至らなかった場合は、原則として修繕義務が発生します。自然災害などで建物がなくなってしまった(滅失した)とき、賃貸借の本来の目的は達成されないため、過去の裁判の判例では賃貸借契約は当然に終了するとされています。

建物の賃貸借契約書には、自然災害等で建物が滅失した場合に契約が消滅するという趣旨の文言がかかれているケースがほとんどです。
建物が自然災害で滅失し、契約が終了したときは、当事者のどちらの責任でもないために、まだ契約期間が残っていたとしても、家主に損害賠償義務はなく、修繕義務もありません。
この「滅失」とは、物理的に建物が全壊するケースに加え、社会的・経済的にも賃貸借の目的が達成されないと認められる場合も含みます。

これに対し、建物が滅失までに至らず、修復可能な程度であったときは、賃貸借契約は当然に終了することはありません。
つまり、自然災害により建物が損壊しても、大家さんには建物の修繕を行う義務が発生します。

大家さんには修繕義務があるのにも関わらず、修繕をしない場合は、借主は借りている物件を使用できない割合に応じて賃料の全部または一部の支払いを拒否することができると民法は定めています。

②修繕中の補償はどうしたらいいか

比較的大規模な修繕が発生した場合、借主には、修理の間、物件から退去してもらわないといけません。
大家さんが建物の修繕をするときは、借主はこれを拒むことはできません。
これは民法に定められていますので、借主に一時立退きを求めることができます。
しかし、立ち退きをしている間の賃料は、借主に請求することはできません。

一方、一時立退きをした借主が一時的に利用したホテル代などを請求するケースがありますが、結論からいうと、一時立退きの原因が自然災害によるものであれば大家さんに責任はないので、支払の義務はないとされています。
借主に対して賃料の支払いを免除するだけで十分責任を果たしていると考えられています。

室内にある入居者の家財道具などが損傷した際も、大家さんは損害に対する補償を行う必要はありません。
建物を賃貸借の目的のために利用させることが、賃貸借契約の本質であり、家財道具の損傷はその範囲を超えると解釈されます。

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2.大家さんのリスク


 

①賃貸借契約が終了してしまう

大家さんにとっての最大のリスクは賃料が入らなくなるということでしょう。
先に述べたように、自然災害は、大家さんに過失はありませんが、入居者が居住できなくなるために、賃料が入ってきません。

また、建物が滅失してしまうということは、賃貸借契約の終了を意味しますし、修理期間があまりにも長いと、ほかの物件に引っ越ししてしまい、賃貸借契約が終了してしまう可能性も考えられます。

空室により賃料が入ってこないことは大家さんの一番のリスクです。
工事業者をうまく手配して最短期間で修繕を終わらせたり、一時立退き時の仮住まいへの引っ越し費用やホテル代を負担するなどは、借主に再入居してもらうための1つの方法です。

②建物がなくなってもローンが残る

たとえ自然災害により建物が滅失した場合にも、大家さんのローン債務は残ります。
東日本大震災などの大規模な災害の場合は、住宅金融支援機構や民間の金融機関の多くが被災者に対して返済条件の変更等の特別措置をとってくれる場合がありますので、金融機関に問い合わせておくことをおすすめします。

また、災害救助法が適用される自然災害に対して共通して利用できる「自然災害債務整理ガイドライン」があります。
これは、「災害救助法」の適用があった自然災害の影響で、住宅ローン、リフォームローン、事業ローンなどの借金を弁済できなくなった「個人」が利用できるものです。
通常ですと、借金が財産を超過して「破産手続」などをしなければならない状態でも、法的な手続を行わずに金融機関と債務者との合意で、債務整理を行うことができます。

③大切なのは「備える」こと

自然災害はいつ、どこで起こるか分かりません。
想定されるリスクを把握したら、次にすべきことはリスクヘッジを行うことです。

第一に行ってもらいたいのは、地震保険の加入です。
どんな高額な火災保険に加入していたとしても、地震により発生した火災や津波による被害は、火災保険では補償されません。

一方、火災保険には、地震火災費用特約というものがあります。
これは、地震を原因とする火災により、住宅が半焼または全焼した場合に、火災保険金の5%が支払われるという特約です。
しかし、これは、火災保険金の5%と補償金額が低く、大家さんにとって十分な補償金額ではありません。

これに対して地震保険は、「地震保険に関する法律」の制定を受けて、国と民間の損害保険会社が共同で運営する制度です。
保険金額は、火災保険の保険金額の30%から50%の範囲です。
料率や支払い基準なども法律に定められているため、どこの保険会社で契約しても内容や金額は同じです。
保険会社が代理店となり、必ず火災保険とセットで加入します。

3.まとめ


自然災害によって、建物が全て壊れてしまった場合、賃貸借契約は終了してしまいますが、建物がある程度残り、修復可能であれば、修繕義務が生じ、賃貸借契約が終了することはありません。
また、大家さんには家財や引っ越し費用の支払い義務はありませんが、修復の状態がよくないなどの理由で、入居者が解約を申し出るケースもあり、大家さんにとって、苦しい収支状況になることが予想されます。

国などが債務の軽減などの特別措置を取ってくれる場合もありますが、必ず適用される訳ではないために、自己防衛をすることが大切です。
リスク回避の方法として一番有効な手段は保険です。

火災保険だけでなく、地震保険にも加入しておけば、災害に対して幅広い補償が期待できます。
また、普段から物件の管理を行い、注意義務を怠ることのないように心掛けましょう。自分の物件は自分で守ることが大切です。

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