2021.02.12
賃貸経営

新婚向け家賃補助の対象が拡大!家賃収入の安定化のカギに

新婚世帯向けの家賃補助制度をいま、一部の自治体が行っています。2021年度にはその枠が拡大し、より多くの人が活用しやすくなる模様です。この制度を活用すれば、コロナで落ち込んだ家賃収入を回復できるかもしれません。

コロナ禍で収入減……。「家賃の安定化」が賃貸業の課題に

新型コロナウイルス感染症の影響で多くのオーナーが収入減となりました。入居者からの減額交渉や家賃の滞納、解約に悩まされていることでしょう。緊急事態宣言の解除から4ヵ月が経過しましたが、実体経済においてはコロナ前ほどの活況は見られません。家賃向けのコロナ対策として家賃支援給付金が設けられましたが、対象は事業主だけです。沈静化を待っているだけだと収益は回復しそうにありません。

オーナーの目下の課題は家賃の安定化です。新たな入居者と契約して落ち込んだ家賃収入を回復させなくてはなりません。そして入居者は安定収入があることと長く住んでくれそうな人であることが要件になります。

2021年度から変わる「新婚向けの家賃補助」に注目

ここで注目したいのが新婚向けの家賃補助制度です。「結婚新生活支援事業」という内閣府の少子化対策施策の一環として始められています。若い新婚夫婦が申請すると、新居での家賃などに関し、支出の半分まで補助が受けられます。申請先は住んでいる市区町村です。対象となる支出は次のようになります。

  • 新居の住居費:新居の購入費または賃貸の家賃や敷金・礼金、共益費、仲介手数料
  • 新居への引越費用:引越業者や運送業者に支払った運送費用

支出の上限額は30万円です。つまり、補助は最大15万円受けることができます。対象者の条件は以下となります。

  • 2018年1月1日以降から住んでいる市区町村の事業終了日までに入籍したこと
  • 夫婦の所得の合計が340万円未満であること(奨学金の返済があるなら「夫婦の所得合計-奨学金の年間返済額」が340万円未満であること)
  • 夫婦ともに入籍日時点での年齢が34歳以下であること

なにかとお金のかかる新婚世帯、該当する方にはありがたいこの制度ですが、2021年度から使える枠が広がりました。変更点は次の3つです。

補助額上限が60万円に引き上げ

従来、補助上限額は30万円でした。補助率は1/2です。どんなに支出しても補助対象額は30万円までで、国からもらえる金額は15万円が上限でした。しかし来年度以降、この補助上限額が30万円から60万円に引き上げられます。国からもらえるお金も2倍の30万円になる見込みです。

年齢制限が39歳以下に引き上げ

これまでの制度では入籍日時点で夫婦双方が34歳以下でないと補助が受けられませんでした。しかし来年度以降はこの年齢制限が「39歳以下」に引き上げられます。

世帯年収制限を540万円未満に引き上げ

この補助制度の条件である「夫婦の合計所得340万円」を世帯の給与年収に換算すると約480万円になります。この条件が来年度以降、世帯年収540万円未満に引き上げられます。

家賃補助制度の注意点

賃貸アパートやマンションの借り手の中心は20代から30代の若い人たちです。彼らへの支援制度を上手に活用すれば家賃収入の安定化につながります。ただ、やみくもに勧められない点もあります。次の2点に注意しましょう。

実施していない自治体もある

1つめに注意したいのが「すべての市区町村で行っているわけではない」という点です。内閣府の集計によれば、全国の自治体でこの制度を行っているのは281市町村で、全市区町村の15%にとどまります。残念ながら、東京都で実施している市区町村は1つもありません。実施されている前提で入居希望者に話すのではなく、まずは賃貸物件のある自治体で制度を実施しているかどうかを確認する必要があります。

自治体ごとに要件が異なることも

2つめの注意点が「市区町村ごとに要件が異なる可能性がある」です。例えば長野県麻績村では、上記要件の他、次のような条件を加えています。

  • 申請時に夫婦の双方または一方が当該住所の住居となっていること
  • 過去にこの補助金の交付を受けていないこと
  • 夫婦ともに村税の滞納がないこと
  • 夫婦ともに暴力団員でないこと

また、千葉県野田市は支給する補助金に関し「会社からの住宅手当や生活保護による扶助部分は除く」といった制限を設けています。神奈川県清川村だと補助対象となる購入住宅は中古住宅のみです。

3つの自治体を比べただけでもこれだけ違いがあります。実際に申請するときは、申請に必要な書類だけでなく、補助を受けられる条件や内容を確認しなくてはなりません。

公的制度を活用して収益安定化を図ろう

新婚向けの家賃支援制度には、今回紹介した以外に「結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置」というものがあります。20歳以上50歳未満の子や孫が親や祖父母から結婚や子育てのためのお金を一括でもらっても1,000万円までは贈与税がかからない制度です。結婚用資金はその内300万円が非課税になります。新たに契約した賃貸物件の3年分の家賃や共益費、敷金・礼金などが対象です。

「20代・30代は収入が少ないから入居させても不安」と思うかもしれません。しかしこの世代はこれから収入が伸びていきます。新婚世帯は妊娠・出産・育児があるので長い入居が期待できます。この新婚世帯に支援制度を紹介すれば新たな契約で収益が安定化するかもしれません。メリットのある公的制度を活用して新規契約につなげましょう。
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