不動産投資の理想は、満室経営です。人の移動が多くなる繁忙期は大家さんにとって満室にするチャンスです。このチャンスにうまく乗って入居率をアップするための物件づくりを心がけたいものです。
そこで大きなポイントとなるのが、入居者からの人気が高い設備の充実です。多くの人は不動産ポータルサイトで物件を探しはじめます。その際、家賃や間取り、駅からの距離はもちろんのこと、設備でも検索条件を設定する傾向があります。ニーズに合った設備があると、それだけ入居希望者の目に触れる機会も増えることでしょう。
この記事では、全国賃貸新聞社が発表した、「人気設備」「必須設備」の2018~2020年のランキングを基に、単身者向け物件とファミリー向け物件で、それぞれで人気となっている設備をご紹介します。
1.最新版!入居者に人気の賃貸設備ランキング【単身者向け】を3年分比較
はじめに、単身者向けの人気設備をみてみましょう
▽単身者向け物件の人気設備ランキング 過去3年の推移
2018年 |
2019年 |
2020年 |
1位 |
インターネット無料 |
1位 |
インターネット無料 |
1位 |
インターネット無料 |
2位 |
宅配ボックス |
2位 |
エントランスのオートロック |
2位 |
エントランスのオートロック |
3位 |
エントランスのオートロック |
3位 |
宅配ボックス |
3位 |
宅配ボックス |
4位 |
備え付け家具・家電 |
4位 |
浴室換気乾燥機 |
4位 |
浴室換気乾燥機 |
5位 |
浴室換気乾燥機 |
5位 |
ホームセキュリティ |
5位 |
ホームセキュリティ |
6位 |
ホームセキュリティ |
6位 |
独立洗面化粧台 |
6位 |
独立洗面化粧台 |
7位 |
独立洗面化粧台 |
7位 |
24時間利用可能ゴミ置き場 |
7位 |
24時間利用可能ゴミ置き場 |
8位 |
防犯カメラ |
8位 |
ウォークインクローゼット |
8位 |
システムキッチン |
9位 |
ウォークインクローゼット |
8位 |
ガレージ |
9位 |
テレビモニター付きインターホン |
10位 |
システムキッチン |
10位 |
追い炊き機能 |
10位 |
エレベータ |
※全国賃貸住宅新聞調べ(以下同)
1-1.単身者向け物件の5大人気設備を解説
単身者向けの設備のなかで、不動の1位は「インターネット無料」です。いまやインターネット抜きの生活は考えられなくなりました。仕事でパソコンを使うにしても、生活でスマホを使うにしてもインターネット無料が単身者にとって最も魅力なのは時代の流れといえるでしょう。
2位「エントランスのオートロック」と5位「ホームセキュリティ」は単身者にとってリスク管理の面で必要な設備といえます。3位「宅配ボックス」も留守の多い単身者にすればあったほうが便利で、ここ数年人気が高まっている設備です。4位「浴室換気乾燥機」は自分で洗濯する女性には欲しい設備ではないでしょうか。浴室で洗濯物を乾燥させることで、外に干す必要がないため、一人暮らしの女性には防犯対策にもなります。
1-2.単身者向ランキングからわかる需要とは?
単身者の生活スタイルに見られる特徴を考えてみると、以下のようになります。
・家に誰もいない時間が長い
・比較的若い人が多い
・女性の一人暮らしなどセキュリティを意識する必要がある
以上の単身者の特性を考えると、単身者向け物件に求められるのは、「自分がいなくても家のことを心配しなくてよい物件」ということになります。それに女性の一人暮らしにも配慮した「安心して住める物件」です。ランキングにあるセキュリティや利便性に関連した設備を備えた物件の需要は今後も増えそうです。
2.最新版!入居者に人気の賃貸設備ランキング【ファミリー向け】を3年分比較
続いて、ファミリー向けの人気設備ランキングをみてみましょう。
▽ファミリー向け物件の人気設備ランキング 過去3年の推移
2018年 |
2019年 |
2020年 |
1位 |
インターネット無料 |
1位 |
インターネット無料 |
1位 |
インターネット無料 |
2位 |
追い炊き機能 |
2位 |
追い炊き機能 |
2位 |
宅配ボックス |
3位 |
エントランスのオートロック |
3位 |
エントランスのオートロック |
3位 |
エントランスのオートロック |
4位 |
宅配ボックス |
4位 |
ホームセキュリティ |
4位 |
追い炊き機能 |
5位 |
システムキッチン |
5位 |
システムキッチン |
5位 |
システムキッチン |
6位 |
ホームセキュリティ |
6位 |
宅配ボックス |
6位 |
ホームセキュリティ |
7位 |
ガレージ |
7位 |
浴室換気乾燥機 |
7位 |
浴室換気乾燥機 |
8位 |
ウォークインクローゼット |
8位 |
24時間利用可能ゴミ置き場 |
8位 |
防犯カメラ |
9位 |
浴室換気乾燥機 |
9位 |
ガレージ |
9位 |
ウォークインクローゼット |
10位 |
太陽光パネル(入居者個別売電) |
10位 |
ウォークインクローゼット |
10位 |
24時間利用可能ゴミ置き場 |
2-1.ファミリー向け物件の5大人気設備を解説
ファミリー向けでも「インターネット無料」がやはりトップにランクされています。テレワーク勤務の家族がいればインターネット無料は最も望む設備になるでしょう。また、家族が多ければその分通販の注文数も増えますので、2位の「宅配ボックス」も人気が上昇しています。
ファミリー向けならではの設備としては、「追い炊き機能」「システムキッチン」が4、5位にランクインしています。追い炊きは繁忙期の冬場には欠かせない、物件の魅力を高める機能です。システムキッチンは限られたスペースを有効に使えることで、主婦には欲しい設備の1つでしょう。3位のオートロックをはじめ、セキュリティに関連する設備も要望が多くなっています。
2-2.ファミリー向ランキングからわかる需要とは?
ファミリー向け物件に住む人たちの生活スタイルを考察してみましょう。
・家族が多いので家事負担が大きい
・女性や子供がいるので安全への関心が高い
・食事や入浴などを家ですることが多い
単身者にとっての自宅とは「寝るところ」というニュアンスが強い一方で、ファミリー層の人たちにとっての自宅は「住むところ」です。このことからも、家事を効率化することや安全を確保することへのニーズが高いことがうかがえます。この傾向は、人気設備にも如実に表れています。
ファミリー向けの需要を取り込むべく、最近の新築マンションではインターネット無料の設備を導入する物件が増えているといわれます。入居者としても、3,000円程度の家賃の差なら通信費が無料のほうがよいと考える人が多いようです。ただし、あまりに利用者が多いと通信速度が遅くなるというトラブルがあることに注意が必要です。
宅配ボックスは、新型コロナウイルスの影響もあり、対面で受け取りたくないという家庭の需要を取り込めそうです。また、今まで圏外だった「防犯カメラ」が8位に浮上したように、ファミリー向けでもセキュリティのしっかりした物件を求める傾向は強くなっています。
3. 最新版!賃貸必須設備ランキング【単身者向け】を3年分比較
次に、賃貸経営に必須の設備ランキングから人気の傾向をみてみます。「人気の設備」と「必須設備」はどのような違いがあるのでしょうか。わかりやすくいうと、人気の設備とは、「こんな設備があったらいいな」という、物件にプラスアルファをもたらしてくれるような設備です。対して必須設備は「この設備がなければその物件を選ばない」という、導入していないとマイナスになるような設備のことをいいます。
まずは単身者向けの必須設備ランキングです。
▽単身者向け物件における必須設備のランキング推移
設備の種類 |
2018 |
2019 |
2020 |
室内洗濯機置き場 |
1位 |
1位 |
1位 |
TVモニター付きインターホン |
2位 |
2位 |
2位 |
インターネット無料 |
5位 |
5位 |
3位 |
独立洗面化粧台 |
3位 |
3位 |
4位 |
洗浄機能付き便座 |
4位 |
4位 |
5位 |
3-1.単身者向け物件の5大必須設備を解説
単身者向けの必須設備は、ここ3年間の比較では品目はまったく同じです。「室内洗濯機置き場」「TVモニター付きインターホン」「インターネット無料」「独立洗面化粧台」「洗浄機能付き便座」で、多少順位の変動はあるものの、単身者が求める設備の傾向は変わっていません。
「室内洗濯機置き場」は洗面・脱衣所にあるのが基本です。設置設備がない場合はベランダや廊下に置かねばならず、冬場は洗濯しづらくなります。必須設備1位というのはうなずける結果といえるでしょう。
3-2.単身者向ランキングからわかる需要とは?
若い世代の単身者は、おしゃれや衛生面に気を遣うので、「独立洗面化粧台」「洗浄機能付き便座」があれば物件に対する魅力は大幅に増すでしょう。とくに女性社会人や女子学生にとって、独立した洗面化粧台がないと朝などかなり不便に感じるかもしれません。
また、通販を利用する機会が多いご時世でもあり、単身世帯の人にとっては、「TVモニター付きインターホン」で宅急便業者であることを確認できるのは安心感があるでしょう。導入すれば若い女性の需要を取り込めそうです。
4. 最新版!賃貸必須設備ランキング【ファミリー向け】を3年分比較
続いて、ファミリー向けの必須設備ランキングを、過去3年で比較してみましょう。こちらも上位の設備に順位の変動はありません。あらためて確認していきましょう。
▽ファミリー向け物件における必須設備のランキング推移
設備の種類 |
2018 |
2019 |
2020 |
室内洗濯機置き場 |
1位 |
1位 |
1位 |
独立洗面化粧台 |
2位 |
2位 |
2位 |
追い炊き機能 |
3位 |
3位 |
3位 |
TVモニター付きインターホン |
4位 |
4位 |
4位 |
洗浄機能付き便座 |
5位 |
5位 |
5位 |
4-1.ファミリー向け物件の5大必須設備を解説
単身者向けと比べると、「インターネット無料」の代わりに「追い炊き機能」が入っただけで、同じような傾向がうかがえます。単身世帯と違い、ファミリー世帯では入浴する時間にタイムラグがあるため、追い炊き機能が必須になるという事情があります。
4-2.ファミリー向ランキングからわかる需要とは?
ランキングをみればわかるように、3年間必須設備の品目も順位もまったく変わっていません。流行に左右されないのはオーナーにとってはありがたいことでしょう。ファミリー向け物件の需要を取り込むには、この5つの設備で欠けているものがあれば、リフォームしてでも導入する必要があります。
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5.空室改善や対策のために設備を強化する3つのポイント
ここまで、人気設備と必須設備について、単身者向け、ファミリー向けの設備ランキングを確認してきました。まとめると、空室対策のために設備を強化するには、以下の3つのポイントがあります。
5-1.女性に優しい設備も集客力に大きく貢献する
セキュリティや家事負担を軽減してくれる設備は、女性から多く寄せられる要望です。つまり、女性に優しい設備を充実させることで、普遍的な集客力につながります。
セキュリティ面で女性が求める設備としては、「ホームセキュリティ」「TVモニター付きインターホン」「防犯カメラ」「オートロック」などがあります。単身の女性であればセキュリティが強化されている物件は安心感につながり、入居を決める大きな選択肢になるでしょう。
主婦の場合は家事負担を軽減してくれる設備の有無が選択肢になる可能性があります。「システムキッチン」「追い炊き機能」「24時間利用可能ゴミ置き場」「浴室換気乾燥機」などがあれば物件の魅力が増すのではないでしょうか。また、働く女性にとっては、「独立洗面化粧台」は必須の設備といえます。
いずれも女性の生活スタイルに配慮した設備ですが、さまざまな調査で人気ランキングの上位に入る常連です。これらの設備が女性のニーズを捉えているものであることは明らかなので、物件の集客力アップに直結する設備だといえます。
5-2.インターネット無料(Wi-Fi設置等)は今後も必須
Wi-Fi設置等によるインターネット無料化は時代の要請ともいえます。株式会社MM総研の調査によると、2019年3月末時点の全戸一括型マンションISP(インターネット接続業者)全体の加入件数(提供戸数)は、272万9,000戸となっています。新築物件だけでなく既築物件への導入も進んでおり、前年比で21.0%増と大幅な伸びを示しています。
MM総研では、今後マンションの新規着工件数が減る可能性があることから、新築物件向けインターネットの導入は減少するものの、既築物件への導入は増加すると見込んでいます。インターネット無料は人気設備ランキングで単身者・ファミリー向けともに毎年トップにランクされており、既築物件のオーナーにとっては、未導入なら検討する余地があるでしょう。
5-3.自粛の影響=家にいる時間の増加も考慮する
2020年に感染が拡大した新型コロナウイルスは、賃貸住宅のニーズにも大きな影響を与えています。家にいる時間の増加を考慮する必要が出てきたからです。仕事のテレワーク化でインターネットの環境整備が以前にも増して重要になりました。同時に、家族揃って食事をする機会が多くなるので、システムキッチンなど家事をしやすい環境も必要になります。
ほかにも、外出自粛の影響で買い物に行く機会が減れば、その分通販の需要が増すため、宅配ボックスを要望する人が増えています。また、コロナ不況で犯罪が増えることを考えれば、セキュリティの強化は賃貸住宅でも必須の条件になるでしょう。
コロナ禍の賃貸住宅経営には、これら社会の変化を考慮した設備の導入が今後も必要になります。
まとめ 単身・ファミリーのニーズを捉え、空室対策に活かそう
ここまで、2020年最新版のランキングから、入居者に人気の設備をみてきました。賃貸住宅の人気設備ランキングは年々順位の変動があるものの、おおむね似通っています。そこには現代の生活スタイルに合った設備を求めているという入居者のニーズがあり、それが大きく変わることはないからです。つまり、こうした設備に対する投資は決して無駄にならないということです。
入居者が求める設備を導入し、魅力ある物件にすることは賃貸オーナーにとっての「企業努力」です。特に繁忙期は多くの入居希望者が物件探しをするため、設備を導入するチャンスでもあります。ランキングにある人気設備を備えた物件づくりで満室経営を目指しましょう。
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