2021.12.16
賃貸管理

賃貸借契約の電子契約は今後どうなる?早めに確認しておこう

これまでの不動産取引では書面の交付が必要でしたが、2021年5月にデジタル改革関連法が成立したことで、今後は賃貸借契約によるペーパーレス化の動きが加速する見込みです。書類契約から電子契約へと変わっていくなか、本記事では、オーナーが知っておくべき書類契約と電子契約の違い、電子契約のメリット・デメリットを説明します。

 

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電子契約とは?

電子契約とは、パソコンやモバイル端末を利用して、電子データを用いて取り交わす契約のことです。従来の紙の契約書では印鑑を使っていたところを、電子契約では電子署名を用いることになり、そこにタイムスタンプ(改ざんを防止する技術)を施したうえで企業が保有するサーバーなどに保管します。

テレワーク環境導入の加速化にはじまり、電子署名などの技術的な進歩がみられたこと、電子契約に関する法的整備が整ったことで電子契約を導入しやすい環境になったこともあり、不動産業界のみならず、電子契約に切り替える業界や企業が増えてきています。

賃貸借契約|書面契約と電子契約の違い

書面契約から電子契約になると、賃貸借契約において具体的に変わる点として以下3点が考えられます。

違う点➀:署名方法

書面契約の形式は紙面ですから、法的効力は署名と押印になります。一方、電子契約の形式はPDFや電子データとなるため、電子署名が法的効力となります。また、紙面の契約は改ざん防止として割印・契印を行いますが、電子署名にはタイムスタンプという改ざん防止技術が使用されます。2001年に施行された電子署名法により、電子署名は書面契約の署名・押印と同様の効力が生じるようになっています。

違う点②:契約確認方法

書面契約では、契約内容の確認をしてもらう場合、契約書類の原本を郵送したり持参したりするなど、直接書類のやり取りが発生します。したがって、郵送にかかる時間や、持参の際の契約日の調整などが必要となります。一方、電子契約は電子データでのやり取りであるため、インターネット環境さえ整っていれば契約締結までのスピードはかなり短縮できる可能性があります。なお、従来の書面契約では日付記入によって契約日時の証明を行いますが、電子契約ではタイムスタンプが存在証明となります。

違う点③:保管方法

書面契約は、ファイリングしてキャビネットや倉庫などに保管することが一般的です。契約数が多くなれば、それ相応の物理的なスペースを確保しておく必要があります。一方、電子契約は電子データをサーバーなどに保管するので、物理的なスペースを確保する必要がありません。

賃貸借契約を電子契約で行うメリット

前章で説明した書面契約と電子契約の違いをふまえ、まずは賃貸借契約を電子契約で行うメリットを見ていきましょう。

業務効率化

大きなメリットのひとつは、業務効率化につながることです。一般的に、書面で賃貸借契約を締結する場合、オーナー・入居者・仲介会社・管理会社などの間で賃貸借契約書等の郵送、または持参によるやり取りが発生します。

たとえば、仲介会社が賃貸借契約書を作成するとします。そうすると、まずはオーナーへ署名・押印を求めるため郵送します。続いて、オーナーから仲介会社へ郵送し、入居者から署名・押印をもらいます。その後、オーナーへ郵送して戻します。このやり方だと、仲介会社とオーナー、仲介会社と入居者の相互に郵送時間を要すため、契約締結までに数週間かかることも考えられます。入居日までに時間がない場合などは、書類が到着するまでのスピードも非常に大切といえるでしょう。

一方、電子契約は郵送や持参の時間を気にする必要がないため、迅速かつ効率的に賃貸借契約の締結を行うことができます。賃貸借契約書等のデータをクラウドにアップロードし、それをオーナー・入居者・連帯保証人がアクセスして電子署名を行うという流れになるため、書面契約のような書類のやり取りが発生しません。

コスト削減

ひとつ上でも見たように、書面契約だと郵送コストをはじめ、印刷コスト、作業コスト、書類の保管のためのコストなどが発生します。そのうえ、賃貸借契約書は契約文書(印紙税の課税対象)にあたり、印紙税のコストもかかります。電子契約の場合は書類のやり取りが発生しないため、これらのコストが発生しないばかりか、電子文書は契約文書にあたらないため課税されることもありません。

コンプライアンス向上

電子契約にすることは、コンプライアンス向上という面でもメリットがあります。書類の場合、自然災害などの理由から契約書の破損が生じ、復元が困難になることがあります。もちろん、きちんと管理をしていても、紙である以上は経年劣化は避けられません。

電子契約は電子データでの保管となるため、電子署名とタイムスタンプによって個々の契約状態を時間別・行程別に把握することが可能です。賃貸借契約の契約漏れ・更新漏れ・解約漏れなどのトラブル防止に役立つため、コンプライアンスの向上を図ることにもつながります。

電子契約は入居者側にもメリットがある

賃貸借契約を電子契約で行うことは、入居者側にとってもメリットがあります。たとえば、契約のためにわざわざ店舗へ行く必要がないこと、書類のひとつひとつに同じ情報(個人情報など)を何度も書かなくてよいこと、手が空いた好きなタイミングで入力できることなどが挙げられます。

賃貸借契約を電子契約で行うデメリット

一方、賃貸借契約を電子契約で行うデメリットとして考えられるのは以下の3点です。

データ破損・情報流出リスク

電子契約はオンライン上での取り交わしになるので、サイバー攻撃によるデータ破損や情報流出のリスクがあります。電子契約のサービスを導入する場合、強固なセキュリティ対策を行っているかどうかはシステムを選択する上で大切な点です。

入居者の電子契約への理解

電子契約は相手(入居者)の同意を得て初めてできるものであり、応じてもらえない場合は契約することができません。高齢者など、パソコン操作の経験がなかったり苦手意識があったりする人だと特に困難であることが考えられ、今後どのようにして対処していくべきなのかは大きな課題といえます。

インターネット環境の整備

電子契約はインターネット環境が必要となるため、通信費やプロバイダ料金などが発生することはもちろんですが、そもそもデバイスさえ持っていない場合はパソコンやタブレット端末などの用意をしてもらう必要もあります。

不動産業界の電子契約の現状と今後について

実は不動産取引においてのデジタル化は以前から進んでおり、2017年10月からは賃貸仲介においての「IT重説(宅地建物取引士がITを使い、非対面で重要事項説明を行うこと)」の運用が開始されています。2021年4月には売買仲介においてのIT重説も運用が開始されています。

不動産取引の電子契約については、冒頭でも説明したとおり、2021年5月12日にデジタル改革関連法(デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案)が成立しました。この中には宅地建物取引業法の改正も含まれています。

不動産業界の完全電子化を時系列でまとめると以下の流れになります。

・2017年10月~:賃貸仲介においてのIT重説の運用が開始
・2021年4月~:売買仲介においてのIT重説の運用が開始
・2021年5月12日:デジタル改革関連法が成立。※宅地建物取引業法の改正を含む
・2022年5月中旬頃:宅地建物取引業法が施行される予定

 
2022年5月中旬頃に宅地建物取引業法が施行されると、不動産業界においては以下2点について大きな変化をもたらすことが考えられています。

これまでは必要だった書面への宅地建物取引士の押印が不要になる
これまで義務付けられていた書面交付をデータで提供できるようになる

これによって不動産取引が大きく変わることが予想され、売買や賃貸仲介で必要となる重要事項説明書、契約締結や契約書交付などをすべてオンライン化することができるようになります。

賃貸借契約の電子契約の流れに取り残されないことが大切

2022年5月からの本格的なデジタル化に向け、オーナーには今から電子契約への理解を深めていくことが求められます。電子署名やタイムスタンプなどについて把握しておくなど、契約の場面でスムーズな対応ができるように心がけていきましょう。ぜひ今回の電子契約をきっかけに、ご自身の賃貸経営を効率化する方法を探してみてはいかがでしょうか。

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