2021.02.10
不動産投資

【思わぬ落とし穴も…】大家さんの物件購入とその後の注意点

まとまった資金を得た、相続を受けたなどの際に選ばれる「不動産を購入して賃貸に出して利益を得る」いわゆる「大家さん」という家業。大家さんになる理由は人それぞれですが、この数年で大家さん家業=不動産投資の実態に、ずいぶんと変化が見られるようになりました。
一口に『不動産投資』といっても、新築、中古、一棟建、戸建てなどどんな物件を手に入れるのかによって、その方法は変わります。また、まとまった資金がなくてもREIT(Real Estate Investment Trust)ならば小額投資から始めることができます。
ここではREITなど債権による不動産投資ではなく、オーナーとして自ら物件を購入して「大家さん」になる方に向けた、物件購入とその後の注意点をまとめます。

投資物件購入前の注意点

投資目的として不動産購入を推奨するサイトが多数ある今日この頃、「不動産購入、そして賃貸に出すという行為」が魅力的に感じる場面に多々、遭遇します。

興味を示して問い合わせを行うと、その際登録したメールアドレスに、不動産会社から不動産投資のみならず、さまざまな購入に関する情報が寄せられるようになり、そのメールの数に驚く方も多いようです。

例えば「弊社仲介による物件購入後、仲介手数料を正規でお支払いくださったお客様の場合に限り、借りていた方が突然退去してしまったとしても、家賃分(管理費・共益費含む)の80%までの金額を、空室になってしまって家賃が入ってこない期間、最長で3か月まで保証します」といった宣伝内容は、これから賃貸オーナーを始めようとする方にはかなり魅力的です。

すでに「毎月決められた家賃が規則正しく振り込まれてくるのが当たり前」という前提で投資をし、思いがけない時期に退去に見舞われるなどの経験をした方などにも有効のようです。賃貸の場合、賃借人の予想外の退去により、その家賃収入がストップしてしまう可能性があるというところまで気が回らずに、「投資」の方に目が行き過ぎて物件を購入してしまう方が多いことが、国民生活センターに寄せられる不動産投資に関する相談件数の内容、その数の多さからも伺い知れます。

前賃借人が退去し、次の入居者が決まり、再度反復継続して順調に家賃収入を得るまでのブランクがどの程度のものか? という認識がなければ、空室期間に対する不安を払拭できる上記の誘い水は、かなり有効です。

しかし、先のメールを読み進めると保証期間は購入後だけで、「当社規定に沿った理由での賃借人退去の際の保証です」と、メールから誘導されるにページに書いてあるので注意が必要です。
初めから空室期間についての認識やその対処法、そのブランク中のリスクについての予備知識があれば、資金計画を誤ることなくオーナーとして生計が成り立ちます。

まとまったお金が舞い込み、設定された期間内に大きなお買い物をすることが節税につながる、といった時間に限りのある購入の場合には、いっそう注意が必要です。大きなお金は、あわてず落ち着いて動かすのが1番です。

利回りとキャッシュフロー

▼利回りとは?
不動産購入の際に目にする「利回り」。国債、株式投資、不動産投資では必ずチェックされるもので、儲けの目安ですから、ほかの物件と比較するのにも必要な数字です。

一般的な利回りとは、投資した金額に対して得られる年間利益をパーセンテージで示すものです。例えば、100万円を投資して年間30万円の利益が生じたのであれば、その利回りは30%となります。
投資額を1年間の利益額で割ったものを示すのが利回りで、「投資先Xに1000万投入し利益額が60万「であるのと、「投資先Yに5000万投資して200万円の利益」を得た場合で考えて見ましょう。

Xで得た利益は60万で、Yの得た利益は200万円。Yの200万円の方が高額ですが、利回り計算ではXは6%でYは4%ですから、利回りは投資した金額が少ないXの方が良い、と考えます。

不動産購入で考える利回りは、表面利回りと言われており、その計算の基本は「年間の家賃収入合計額を投資した不動産の購入額で割ったもの」なので、投資金額2000万円で購入した不動産の家賃収入が月額10万円で年合計が120万円であれば、利回り6%と表記されます。ゆえに、不動産のサイトやチラシに表示されている利回りとは、単純に家賃×12で売買代金を割った数字となります。

不動産投資の場合、株や債権と異なり「実質利回り」を意識する必要があります。
実質利回りとは、管理費や修繕積立金、固定資産税、そして修繕にかかる費用を考慮した利回りです。実質利回りを把握するためには、購入物件のスペック(備品のレベル、質、年数、機能性、耐久性)を把握し、プロに算出を依頼する必要があります。
賃貸業を始めると、大家さんとしてメンテナンス負担を強いられることになり、改修費は必要経費として控除の対象になる部分ではありますが、突然強いられると寝耳に水な出費で驚かざるを得ませんから、事前に知っておくよう心がけましょう。

例えば、10万の家賃、2000万の購入費用で利回り6%を見込んで物件において、追い焚き式給湯器が壊れ、商品代30万以上の給湯器の交換が必要になった場合、利回りはどうなるでしょうか。

物件購入の際、あるいは賃借人が居住開始する前にチェックした際は、問題のなかった追い焚き式の給湯器。しかし、「賃貸借契約後半年でお湯が出なくなった」と管理会社を経由して連絡をもらうとします。部品交換で何とかならないかガス会社に調査してもらうも、すでに部品の保管期限も過ぎており、商品交換が必要になってしまいます。
給湯器などは商品が発売完了から7、8年程度で部品の保管義務がなくなりますから、給湯器やエアコン、食器洗い乾燥機などは動いていても型番をチェックし、面倒でも部品の供給年数をメーカーに確認した上で物件の購入をするのが賢明です。
しかし、それらを失念し、突然故障の連絡を受け、さらに部品がないとなると、給湯器自体を交換せざるをえないので、商品代・工事費を含めて40万近い出費が発生することになります。
「おおむね3年以内の反復継続する修繕や20万未満の場合、修繕費か資本的支出かの判断が不明確で60万未満の場合、またはその資産の前年末の取得価格のおおむね10%相当以下である場合」は修繕費として確定申告時に経費として認められますが、個人の懐事情や申告の仕方で異なります。(出典:https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5402.htm)

購入時に6%の利回りを期待したはずが、給湯器ひとつで6%は見込めなくなることもある、という現実を知っておくべきです。

また、同じく修繕関係で、分譲マンションを投資物件として選択した場合に生じるリスクのひとつが、修繕積立金です。
購入物件が大規模改修を行うにあたり、これまで積み立てられた修繕積立金のプール額ではカバーしきれないので、管理組合で一時資金を借り入れることが決定すると、臨時修繕積立金が施行され、“購入時よりも修繕積立金の費用負担が増す“ケースがあります。

修繕積立金が上がったからといって家賃を突然上げるわけにもいきませんから、こちらも購入時に重要事項説明で修繕積立金の総額を知ることになりますが、それが長期修繕計画で必要とされる金額と対比してどうなのかまで把握できるとよいでしょう。

物件選びに大切なこととは?

物件の価値については、最寄り駅からの所要時間、向き、日照、総戸数、賃貸比率、管理会社、管理費、修繕積立金の総額などで判断するのが一般的ですが、一歩踏み込んで、付帯設備の耐久年数の予測、その設備機器が製造停止になってからの年数などを知るのが賢明です。
自分が住む時とは異なり投資となるとチェックが疎かになりがちですが、大家さん家業は立派なビジネスです。自宅購入以上にチェックすることをおすすめします。

投資の目的物件が中古住宅で、前住者が住み切った古いままの状態(専門用語で「現況有姿」と言います)での売買であれば、借りる人が住める状態になるまでのリフォームや商売として成り立つまでの修繕が必須です。

劣化が目立っても賃料を下げれば賃借人はつくかもしれませんが、ライフラインの部分を標準的な現行レベルに仕上げることは必要です。
購入物件後、リフォーム業者と打ち合わせるのは結構な手間がかかります。労力も時間も必要で、たとえそれが好きなことでも、自身のための決めごとと、投資目的の大家さんのプロとしての決定事項は別物です。

そのため、最近ではリフォーム完成後の物件も人気で、不動産業者が入手した物件をあらかじめリフォームした上で中古市場に再販したものを購入する投資家が増えています。

リフォーム済み物件は打ち合わせが省略できて手軽ですが、そんな施工をされた物件をうっかり購入したら、忘れた頃に責任を取ることになるかもしれません。また、予想外の手直しを強いられること必須です。

中古マンションを購入する場合は、施工中の画像や仕様書などが確認できて、さらに保証期間も長く設定された物件を手に入れるのがよいでしょう。2018年春からは不動産売却時に建物のインスペクション制度が導入されます。
http://www.mlit.go.jp/common/001001034.pdf
上記URLは国土交通省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」です。

株や債権と違い、一筋縄でいかないのが大家さん家業。しかし、メンテナンスが少なく、長期居住を見込める優良物件を手に入れることができれば、安定収入となるでしょう。

しかしながら、首都圏ではこの5年ほどで新築物件も数多く完成し、都心の中古マンション市場にも変化が見られます。2000年前後から2017年までの事例と事情が異なる場合も多いので、このような成功事例も、いつのものなのか、この先の未来に同様のケースがありうるのか? をよく見極める必要があります。

まとめ

今後人口減少の一途をたどる日本において、投資の見極めを誤ると、思わぬ落とし穴に遭遇する場合もないとはいえません。仮想通貨の登場も含め、各自が慎重に、かつ大胆に、自身に適した投資を行う時代の始まり、といえるでしょう。

物件が安く購入できることは大変良いことですが、購入前に備品のメンテナンスにかかる費用の資産や、建物自体に瑕疵がないかを把握することが大切です。また、その建物を長期的に所有するのか短期で売却するのかによって課税措置も変わってきます。税制面のコストも税理士に相談するなどして把握した上で、自身の資産内容に見合った運用が必要です。定期的なメンテナンスなどを非課税となりうる範囲内でしっかり対応するなど、賃料が下がりにくい工夫も必要です。

家賃については、社会全体の物価の影響を受けやすいものであることを把握し、あまり突飛な価格設定をせず、目先の利益よりも資産として長期的な利回りに目を向けると良いでしょう。ローンを組んで購入する場合はなるべく早めの完済を心がけ、所有物件として自身の資産となる日が前倒しになるよう工夫するのが良いでしょう。

執筆者
早乙女 明子(建築プロデューサー)
株式会社ガウディ 代表取締役
■保有資格
宅地建物取引士、二級建築士、施工管理士、ハウスインスペクター

オールアバウト・インテリアガイド
LIFULL HOME’S PRESS 記者
日本不動産ジャーナリスト会議 所属

完成した空間に自分を合わせるのではなく、『自分に合わせた空間をしっかりと作りたい』という方のために、
レジデンスやサロンなどの空間と、真摯に向き合っている。

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