2021.04.20
税金

【2021最新版】不動産収入の確定申告-必要書類や経費計上のやり方を徹底解説

不動産収入の確定申告をはじめて行う場合、戸惑うことも多いでしょう。「不動産収入として計上すべきもの」「経費として計上できるもの」を正確に把握して申告しなければなりません。ここでは、確定申告の流れや必要書類の書き方、経費計上の方法、所得控除の種類など基本的な内容について確認します。

不動産所得とは

はじめに、不動産収入を確定申告するとき、不動産所得について理解する必要があります。不動産所得はどのような範囲の所得を指すのか、確認しておきましょう。

不動産所得の定義

不動産所得とは、「不動産、不動産の上に存する権利、船舶または航空機(以下この項において「不動産等という」。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)」(所得税法第26条1項)をいいます。

この所得の定義を国税庁のホームページでは以下の3つに分類しています。

(1)土地や建物などの不動産の貸付け
自分が所有する賃貸物件から生じる家賃や、自分の土地に建てた看板の使用料、駐車場の使用料などの不動産収入から必要経費を差し引いたものが不動産所得にあたります。

(2)地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
地上権とは、民法第265条に定められた権利で、「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する」と規定されています。借地権の設定の対価として権利金など一時金を受け取ると、そこから必要経費を差し引いたものが不動産所得になります。

(3)船舶や航空機の貸付け
船舶や航空機は厳密には不動産ではありません。しかし、所得税法上では不動産の場合と同様に、船舶や航空機の貸付による所得(収入から必要経費を差し引いたもの)も不動産所得とみなしています。

不動産収入になるもの

不動産収入になるものとして、国税庁ホームページに以下の4点が挙げられています。

(1)家賃
家賃は不動産経営の根幹をなす不動産収入です。家賃には「新規賃料」と「継続賃料」の2つがあります。新規賃料は、新たに賃貸借契約する際の賃料です。継続賃料は、現在の賃貸借契約の更新時に変更するときの賃料をいいます。

(2)名義書換料、承諾料、礼金、更新料、頭金など
借地権契約において借地権を更新、条件変更、増改築、第三者へ売却などをする際に支払う、名義書換料、承諾料、礼金、更新料または頭金など借地人から受け取る一時金も不動産収入になります。敷金や保証金は退去時に返還するものですので収入に含めることはできませんが、礼金は返還の必要がないため収入として計上します。

(3)敷金や保証金など(返還を要しないもの)
敷金や保証金などは本来預り金のため不動産収入にはなりません。ただし、返還を要しないものは、返還を必要としないことが確定した日に、その金額を不動産収入として計上する必要があります。

(4)共益費(電気代、水道代、掃除代など)
共益費の名目で受け取る電気代、水道代、掃除代なども収入になります。管理費との厳密な区別はなく、家賃の一部という考え方もあります。入居者募集広告でも家賃7万円とするよりも、家賃6.5万円+共益費0.5万円とするほうがネット広告の検索でヒットしやすいとうメリットがあります。

【参考】国税庁 – 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

不動産収入の確定申告で計上できる「経費」

不動産事業は所有する物件の部屋数が決まっているため、売上となる家賃収入には限界があります。家賃収入を少しでも多く手元に残すためには、経費にできるものは可能な限り計上することが大事です。以下、計上できる経費をまとめます。

1.税金(租税公課)

税金の中で経費として計上できるのは、固定資産税・都市計画税、事業税、不動産取得税、自動車税、印紙税などです。事業税は、事業で得た所得に課せられる税金です。

なお、所得税と住民税は経費になりません。これら2つの税金は、売り上げを得るために直接要した費用ではなく、業務上の費用でもないためです。

2.保険料

保険料では、火災保険・地震保険などの損害保険料を経費として計上できます。また、営業車がある場合は自動車保険・自賠責保険も経費になります。意外なところでは、事業用のパソコンなど家電製品の延長保証料も経費になるので、計上するようにしましょう。

オーナー自身に掛けた生命保険料は経費にはなりませんが、「生命保険料控除」として所得から控除できます。

3.減価償却費

減価償却費は必要経費のなかでも特殊な経費です。購入した不動産には、それぞれ定められた法定耐用年数があります。たとえば、新築マンションであればほとんどが鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造ですので、法定耐用年数は47年です。減価償却費は不動産の購入価格を47で割った金額を毎年経費として計上します。

わかりやすく新築マンション価格を4,700万円とすると、4700万円÷47年=100万円(定額法で計算)を毎年減価償却費として計上します。ほかの経費のように現金の支出を伴わないため、必要経費として計上された100万円は内部留保として社内に残ります。

4.修繕費

修繕に要した費用は経費になりますが、工事代金が20万円を超えると「資本的支出」になるので注意が必要です。資本的支出になると新たに資産をつくったとみなされ減価償却が必要になります。そうなると支出した期に全額経費計上できなくなるので、修繕費として落としたい場合は、工事代金を20万円以下に抑えるとよいでしょう。

5.管理会社への業務委託料

管理会社に管理を委託している場合は、業務委託料を経費として計上します。業務委託料の相場は家賃の5%が一般的です。

6.司法書士や税理士への報酬

司法書士や税理士への報酬は決まった額はなく、依頼内容や業務の規模などによって大きく異なります。

司法書士

司法書士への報酬については、日本司法書士会連合会が行ったアンケート調査によって、ある程度の目安がわかるので、参考にするとよいでしょう。所有権移転登記(売買1)における地区別の平均報酬額は下表のとおりです。

▽所有権移転登記における司法書士の報酬

出典:日本司法書士会連合会 – 報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)

上表を見ると、司法書士によってかなり報酬に差があることがわかります。意外なのは、東京が所属する関東が高いとは限らないことです。近畿地区がかなり高い水準であるのが目立ちます。自分の地区の司法書士報酬の相場を確認し、依頼した司法書士の報酬が著しく高い場合は、考え直したほうがよいでしょう。

税理士

顧問税理士への報酬は、売り上げや訪問頻度によって大きく異なります。売り上げが多く、訪問頻度が多ければ、それだけ作業量が多くなり、拘束時間も長くなるからです。また、顧問料のほかに、記帳代行や決算申告も依頼すると別途報酬がかかります。

記帳に関してはクラウド会計ソフトが普及したこともあり、自分で行う人も増えています。売り上げ規模が小さく、収支の構成がシンプルであれば税理士に依頼する必要がないかもしれません。

7.ローン返済時の利子

不動産投資ローンの元金は経費になりませんが、利子は経費になるので、確実に計上するようにしましょう。金融機関から送付される返済予定表に元金と利子の内訳が記載されていますので、利子部分の金額を経費として計上します。

不動産所得の計算方法

不動産所得の計算方法については、国税庁ホームページに計算式が掲載されています。

・総収入金額-必要経費=不動産所得の金額

年間の総収入から支払った必要経費を引くだけのシンプルな計算方法です。あとは先に紹介した「不動産収入になるもの」と「計上できる経費」を漏れのないように正しく申告すれば問題ないでしょう。

不動産所得の確定申告の注意点

最後に不動産所得を確定申告する際の注意点を確認しましょう。

確定申告の流れ

国税庁ホームページに掲載の確定申告の流れは以下のとおりです。

(1)確定申告に必要な書類を準備する
給与所得(サラリーマン大家の場合)や公的年金等の源泉徴収票の原本、私的年金等を受けている場合には支払金額などがわかるもの、医療費の領収書等、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書、生命保険料の控除証明書、地震保険料(旧長期損害保険料)の控除証明書、寄附金の受領証など。

(2)申告書を準備する
確定申告書A、確定申告書Bのうち、不動産収入のある人はBを準備します。申告書はインターネットでダウンロードすることができます。

【参考】国税庁 – 確定申告、青色申告決算書、収支内訳書等

(3)付表と計算書等を準備する
申告内容に応じて、付表や計算書を準備します。

(4)申告書を作成する
下記「確定申告書の記入方法」で紹介している手順で申告書を作成します。

(5)提出する書類を確認する
申告する内容により源泉徴収票などを申告書に添付または提示します。

(6)申告書を提出する
原則として2月16日~3月15日(休日の場合は翌日)の期間に提出します。

(7)納税する、または還付を受ける
納税の方法は、振替納税、現金納付、e-Taxで納税から選ぶことができます。還付金がある場合は記入した金融機関に振り込まれます。

【参考】国税庁 – 申告手続の流れ

事業規模で税法上の取扱いが変わる

不動産収入を確定申告するとき、不動産経営の事業規模で税法上の取り扱いが変わります。国税庁ホームページに掲載されている見解によると、建物の貸付については、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱うとしています。

(1)貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
(2)独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。

いわゆる「5棟10室基準」といわれるルールです。ただし、(1)と(2)は合算できるので、貸間、アパートが10室以下でも事業として認められる場合があります。たとえば、アパートを6室と家屋の貸付2棟を経営している場合、1対2の割合からアパートの6室は家屋の貸付3棟に換算できるため、合算すると5棟を経営しているものと認められるのです。

また、駐車場は5件で1室に換算できます。共有名義の場合は10室の貸間、アパートを2人で経営しているケースでは、それぞれが事業規模として認められます。

事業的規模と認められると、以下のようなメリットを受けることができます。

▽不動産所得が事業的規模と認められた場合のメリット
・確定申告の際に、65万円の青色申告特別控除を適用できる。
・青色専従者給与を経費に算入できる。
・事業用資産を取り壊しや除去等をした場合に、損失の全額を経費に算入できる。
・家賃等の回収不能の貸倒損失を、その年分の経費に算入できる。

事業的規模になって青色申告をする場合は、所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

確定申告書の記入方法

確定申告書は、給与所得者と事業所得者では使用する用紙が異なります。個人事業主や副業として不動産収入がある人は「確定申告書B」を使用します。

確定申告書Bには、第一表と第二表があります。第一表は、収入金額や所得金額、所得から差し引かれる金額、税金の計算などを記入します。第二表には、所得の内訳や社会保険などの控除額を記入する欄があります。

確定申告書の記入の手順は以下のとおりです。

(1)収入を記入する
最初に第二表の「所得の内訳」を記入し、それをもとに第一表の収入金額等の欄に記入します。収入金額の「不動産」の欄に不動産収入を記入します。サラリーマン大家の場合は「給与」の欄に給与収入を、年金を受け取っている場合は「公的年金等」の欄に年金収入をそれぞれ記入します。

(2)所得を記入する
第一表の所得金額を記入します。所得金額は、収入金額から必要経費を差し引いて計算します。サラリーマン大家の場合は会社から源泉徴収票が配布されていると思われますので、給与所得は記入しやすいでしょう。

(3)所得控除を記入する
第二表の「所得から差し引かれる金額に関する事項」欄に、該当する所得控除の金額を記入します。そのあと第一表の「所得から差し引かれる金額」欄に転記します。税金を少なくするためには、控除できるものは漏れなく記入する必要があります。法令によって控除できる以下の項目が該当する場合は漏れなく記入するようにしましょう。

▽【所得控除の種類】2020年4月1日現在法令によるもの
下表のような所得控除があります。該当する箇所にチェックを入れて確認しましょう。各控除の詳細は国税庁ホームページ「所得控除のあらまし」に記載されています。

雑損控除 寡婦控除
医療費控除 ひとり親控除
社会保険料控除 勤労学生控除
小規模企業共済等掛金控除 配偶者控除
生命保険料控除 配偶者特別控除
地震保険料控除 扶養控除
寄附金控除 基礎控除
障害者控除

【参考】国税庁 – No.1100 所得控除のあらまし

(4)課税所得金額を記入する
第一表の「課税される所得金額」欄に、所得金額から所得から差し引ける金額を差し引いた課税所得金額を記入します。

(5)所得税を計算する
第一表の「課税される所得金額」に所得税の税率を掛けて税額を計算します。所得税の税率は所得金額によって異なりますので、所得税の速算表を参照すると便利です。

▽所得税の速算表

出典:国税庁 – No.2260 所得税の税率

たとえば「課税される所得金額」が700万円の場合には、税率が23%となり、控除額は63万6000円となります。求める税額は次のようになります。

7,000,000×0.23-636,000=974,000円

(6)税額控除を記入する
第一表の税額控除欄に該当する項目があれば記入します。すでに徴収されている源泉徴収税額があれば記入します。先に計算した所得税額から税額控除と源泉徴収税額を差し引いて、黒字ならその額を納税し、赤字なら申告後に還付されます。

▽【税額控除の種類】2020年4月1日現在法令によるもの
下表のような税額控除があります。該当する箇所にチェックを入れて確認しましょう。各控除の詳細は国税庁ホームページ「税額控除」に記載されています。

配当控除
外国税額控除
政党等寄附金特別控除
認定NPO法人等寄附金特別控除
公益社団法人等寄附金特別控除
(特定増改築等)住宅借入等特別控除
住宅耐震改修特別控除
住宅特定改修特別税額控除
認定住宅新築等特別税額控除
試験研究を行った場合の所得税額の特別控除
高度省エネルギー増進設備等を行った場合の所得税額の特別控除
中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の消費税の特別控除
地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の所得税額の特別控除
地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除
特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除
特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の所得税額の特別控除
認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
所得税額から控除される特別控除の特例

【参考】国税庁 – No.1200 税額控除

確定申告書は国税庁ホームページの「確定申告書作成コーナー」で作成することができます。納税額も自動で計算してくれるので大変便利です。計算違いに不安がある場合は利用するとよいでしょう。

【参考】国税庁 – 確定申告作成コーナー

【コラム】不動産投資において法人化することのメリットは?

不動産投資は、最初は区分所有1戸からのスタートであっても、軌道に乗れば複数物件のオーナーになる場合があります。そのとき、個人経営のまま続けるか法人化するかは迷うところでしょう。もし法人化すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

・税負担を軽減できる
個人の所得税は所得が900万円を超えると33%まで上がります。方や法人税は資本金1億円以下で所得800万円超の場合、23.20%と所得税を下回ります(平成31年4月1日以降に事業を開始した場合)。所得が900万円を超えるようになったら、法人化したほうが節税になると覚えておくとよいでしょう。

・損失の繰り越しや損益通算ができる
法人化すると、損失が発生した場合、最大10年まで繰り越しできるようになります。個人の場合は、不動産所得と譲渡所得を損益通算することはできません。その点法人は、ほかの事業の損失と不動産収入を相殺できるため、節税になります。

・相続税、贈与税を節税できる
将来相続を予定している場合、法人化して相続対象の人を役員にして報酬を支払うことで、生前贈与せずに財産を移転することができます。また、事業を継承する場合も法人が所有する財産は相続の対象にならないため、相続税は課税されません。

・融資を受けやすくなる
法人化すると金融機関から融資を受けやすくなるというメリットがあります。厳密な会計処理が求められていることで、個人よりも信用力が高くなるためです。融資を受けやすくなれば投資できる不動産が増えることから、事業の発展につながります。

もちろん法人化するには法人登記の費用や維持コストがかかるなど、デメリットもあるので、メリットと比較しながら検討することが大事です。

まとめ:はじめての確定申告を事業拡大の第一歩にしよう!

ここまで、不動産収入の確定申告についてみてきました。不動産事業は、製造業のようにヒット商品が出れば売り上げが大幅に伸びるというものではありません。限られたキャパシティのなかでいかに空室を減らして売り上げを上げるかが経営の基本になります。

それだけに、経費にできるものはもれなく計上して、納税額を減らすことが重要です。所得控除や税額控除は多くの種類があるので、知らないものがあるかもしれません。国税庁のホームページなどで確認し、わからないことは不動産会社などの専門家に相談するようにしましょう。

また、「5棟10室基準」を満たす事業的規模に達し、さらに発展が見込めるようであれば、法人化を検討するのもよいでしょう。今回がはじめての不動産収入の確定申告であれば無事申告を終了させ、事業拡大の第一歩にしたいものです。

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