2021.08.18
税金

【連載#4】新規の不動産購入はデッドクロス対策にならない

【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介

不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。

著者 渡邊 浩滋

新規の不動産購入はデッドクロス対策にならない

減価償却も、実は税金の繰延べでしかありません。よく、「新規物件購入はデッドクロス対策になる」と言われることがあります。

デッドクロスは、1年間あたりの減価償却費の金額よりも、元本の返済金額の方が多くなる時点です。減価償却費が少なくなることで発生するため、「減価償却費を増やせば、デッドクロスを回避できるのではないか」と考えるのです。

「節税のために、減価償却が多く取れる築古の木造アパートを購入する」

これが本当にデッドクロス対策になるのでしょうか? 具体例で考えてみましょう。

《前提条件》
給与収入800万円 購入金額1億円(建物5000万、土地5000万円)、木造築25年
借入金1億円(金利3.5%、返済期間20年、元利均等返済)
年間家賃収入800万円

ポイントは、法定耐用年数を超えている木造という点です。住宅用の木造アパートの法定耐用年数は22年です。築年のため、法定耐用年数を超えています。

中古物件の場合、次のような簡便法により算定した年数を耐用年数とすることができます。

中古物件の耐用年数=法定耐用年数―(経過年数×0.8)

※経過年数が法定耐用年数を超えている場合は、次の算式

法定耐用年数×0.2=中古物件の耐用年数(1年未満切捨て)

簡便法によると耐用年数は4年になります。つまり、5000万円を4年で減価償却できるため、年間1250万円の経費を 年間計上できるのです。

【不動産購入前】

デッドクロスの状態(経過年数21年目)

手残りが大きくマイナスになっています。

【不動産購入後】

新規物件の収入が年間800万円増えますが、減価償却が年間1250万円増えるため、税金が抑えられることから、物件購入後4年間はキャッシュフローがプラスになっています。(物件購入時点は、諸費用が多くかかることから、キャッシュフローはマイナスになっています)

安易なデッドクロス対策はドツボにはまる

しかし、減価償却が終わる 年目以降は一気に税金が増加しています。結局は減価償却によってデッドクロスを先送りにしているだけのことです。

しかも、5年目以降はキャッシュフローのマイナスが、購入前と比べて大きくマイナスになっています。

これは、新規物件の収入が増えて、減価償却である経費がなくなったため、所得が大幅に増え、より大きな税金が課税されることになるからです。

経過年数30年目の手残り累計を比較すると、物件購入前は、マイナス2412万円に対し、 物件購入後は、マイナス3338万円。物件購入した方がより、キャッシュフローは悪化することになります。

つまり、このようなデッドクロス対策は、単なる延命措置でしかならず、根本的な解決にはならないということです。デッドクロス対策に節税は有効ですが、間違った節税をすると大変なことになります。

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<著者プロフィール>
渡邊 浩滋
税理士、司法書士、宅地建物取引士。税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所代表。1978年、東京都江戸川区生まれ。明治大学法学部卒業。税理士試験合格後、実家の大家業を引き継ぎ、空室対策や経営改善に取り組む。大家兼業税理士として悩める大家さんのよき相談役となるべく、不動産・相続税務専門の税理士法人に勤務。退職後、2011年12月、同事務所設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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