2019.2.28
新しい投資の形

賃貸借契約の連帯保証人制度はこう変わる

(写真=123rf)
(写真=123rf)
2018年、120年ぶりになる民法大改正法案が衆参両院を通過・成立し、6月2日に公布されました。
施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内と政令で定められていて、現段階では2020年4月1日から施行されることになっています。

今回の改正により、賃貸借契約における連帯保証人制度の内容が変わると言われています。

1.民法改正で変わる点

まずは、民法が改正されたら賃貸借契約が、どう変わるかを見ていきましょう。

①賃借人の原状回復義務の明確化

今回の民法改正では、借主による原状回復の責任範囲が詳しく定められています。

新法(621条)では、「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常使用及び通常損耗並びに経年劣化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときはその損傷を現状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。」と定められます。

「通常使用及び通常損耗並びに経年劣化を除く」という箇所が以前とは異なります。
「通常」の使い方をすれば仮に損傷が生じた場合でも、借主が元に戻す費用を負担しなくてもよいということを意味するのです。
これは敷金の返還金額にも影響を及ぼします。

②賃借人に請求できない修繕・できる修繕

新法では、借主に請求できる修繕とできない修繕が具体的に定められています。
例えば、エアコンのクリーニング、日焼けして黄ばんだ壁クロス、家具の設置による床のへこみ、ハウスクリーニング、冷蔵庫壁面の黒ずみ、画鋲の穴などは借主に請求できない修繕項目になっています。

しかし特約を付けておくことで借主に支払ってもらうことができます。
つまり借主の同意が得られれば、借主に費用を請求することができます。

一方、タバコ等のヤニによるクロス汚れ、ペットによる床の傷や臭い、清掃を怠ったためで付いた風呂の水垢やカビなどは、特約に記載しなくても借主に請求することが可能です。

③賃借物の一部滅失による賃料の減額

新法の611条では「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をする事ができなくなった部分の割合に応じて減額される」とされています。
この法律は大家さんのリスクが増える可能性があります。

なお、日管協は、「リスク・マネジメントマニュアル」で賃料減額と免責日数の目安を定めています。

たとえば、トイレが使えない場合、減額割合は30%、免責は1日。
風呂が使えない場合、減額割合は10%で免責は1日です。

そのほか、「ガスが使えない」「水が出ない」「エアコンが作動しない」「電気が使えない」「テレビなどの通信施設が使えない」「雨漏りによる利用制限」などにも減額割合と免責期間が設けられています。

たとえば、家賃10万円の賃貸物件でトイレが壊れてしまい、3日間使えなかった場合の家賃減額金額は、家賃10万円 ×減額割合 30% ×日割り3日/30日-免責日数1日=2,000円となります。

今後、大家さんは、家賃の減額リスクが発生するため設備の維持管理に一層注意を払わなくてはなりません。

2.連帯保証人の債務極度額が変わる

(写真=123rf)

今回の民法で一番大きく変わる点の一つが「連帯保証人の債務極度額の明記」です。
極度額とは、元本、利息、損害賠償等、保証債務に関する全てを含んだ最大限、保証人が負う可能性のある限度額のことです。

①連帯保証人の責任範囲が設定される

これまでの不動産賃貸借契約では、保証する最大限の額(極度額)の定めがなく、連帯保証をしているケースがほとんどでした。
契約書には「連帯保証人は、賃貸人に対し、賃借人と連帯して、本契約から生じる一切の債務を負担する。本契約が更新された場合も同様とする」などと記載されています。

この場合、連帯保証人は、法律上債務者、つまり借主に「家賃を払って」と催告する権限がなく、主債務者に代わって家賃を支払う義務が生じますので、場合によっては、連帯保証人の収入に見合わない、多額のが請求がされる可能性があります。

なぜなら、賃貸借契約から生じる損害賠償は、賃料の不払いだけではなく、借主が故意または過失で物を壊してしまった場合の修繕費、賃借人が物件内で死亡した場合の原状回復費用や損害賠償義務の負担などまでに及ぶからです。

これでは、連帯保証人は予想だにしない多額の請求がなされて、返済能力を遥かに超えた負担を負うことにもなりかねません。
そのため、改正民法では、連帯保証人が負うべき最大限度額を定め、なおかつ書面等で契約しなければ保証は無効となるというルールを設けました。

改正民法では
・極度額(連帯保証人が負う最大負担額)を明記する必要がある
・極度額の定めがなければ保証は無効である

ことがポイントとなります。
以上の理由で今後は連帯保証人が取りづらくなり、極度額を超える損害はそのままリスクに直結するため、積極的に保証会社を利用することが、もっとも有力な対処法となります。
なお、極度額の設定は、対象は個人保証に限られ、保証会社による保証は極度額を定める必要はありません。

②賃貸借契約書の修正が必須

民法改正後は、契約書のフォーマットを修正する必要があります。
万が一修正を怠ると

・契約書の連帯保証に関する契約条項が無効になる
・代金未払いの場面で連帯保証人への請求ができず、債権回収が困難となる
そのため、大家さんに多大な損害が生じます。

すでに国土交通省は改正民法に準拠された賃貸借契約書のフォーマットを公表しています。

「(連帯保証人) 第 17 条 連帯保証人は、借主と連帯して、本契約から生じる借主の債務を負担するものとする。本契約が更新された場合においても、同様とする。
2.前項の連帯保証人の負担は、頭書及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。
3.連帯保証人が負担する債務の元本は、借主又は連帯保証人が死亡したときに、確定するものとする。
4.連帯保証人の請求があったときは、貸主は、連帯保証人に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払状況や滞 納金の額、損害賠償の額等、借主の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。」

極度額が示されると、これまでは比較的安易に連帯保証人になってくれていた親戚や知人が、連帯保証人になるのを敬遠することが考えられます。
理由としては、今までは連帯保証人が自分自身の保証がすべき金額が可視化されていなかったため、なんとなく連帯保証人なっていたケースが見受けられていました。
しかし、今後は極度額の明示によって保証額が可視化されます。
結果、連帯保証をするリスクが健在化し、連帯保証を拒否する流れになる可能性があります。
今後は、連帯保証人を見つけることが難しくなる可能性があるので、家賃保証会社を上手に併用することをおすすめします。

先ほどの17条の条文は、主債務者から連帯保証人への情報提供を義務づける内容も盛り込まれています。
もし、借主が情報提供義務を怠って、連帯保証人に情報提供をしないことに過失があると、後日、連帯保証契約を取り消すことができるとされています。

連帯保証契約が取り消されることは、大家さんにとっては大変不利です。
そのために、契約書の内容は、今まで以上に重要になってきますので、一読しておくことをおすすめします。

3.まとめ

(写真=123rf)
 

民法の改正によって、連帯保証人に対して、極度額を記載しなかった場合は、連帯保証契約が無効となり、またその結果、賃料未払いや借主による物件の毀損、借主の死亡時の賃料債務や原状回復費用、損害賠償を連帯保証人に対して請求できなくなります。

契約書への記載方法が重要になってきますので、今まで以上に慎重に契約書に目を通すようにしましょう。
慣れないうちは、自分でチェックシートを作って、契約書に各項目が正しく記載されているかを確認するのもよいでしょう。

大家さんも意識改革をすることが大切になってきます。

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