2021.02.10
不動産トピックス

オリンピック後の不動産マーケット展望

「2020年東京オリンピック後に不動産価格が暴落する」という「オリンピック不況」の発生がまことしやかにささやかれていますが、この論理にはいくつかの問題点があります。その内容と市場の読み解き方について述べますのでオリンピック後の不動産マーケットが気になるという人は参考にしてください。

目次:

オリンピックと不動産価格の関連

逆説的ですが「オリンピック不況」のようにオリンピックとその後の不動産市場全体を関連付けて未来予想するのは少し乱暴な意見です。「東京オリンピックが終わる=日本の不動産マーケットが弱まる(強まる)」という図式で考えること自体に無理があると言わざるを得ません。この図式で最も説得力を持つのは、過去の開催国におけるオリンピック前後の不動産価格推移について統計的に処理することです。

しかし4年に一度しか行われないため、分析するには数が少なすぎます。2018年7月にみずほ総合研究所が公表した緊急レポート「不動産市場は転換点にあるのか?」によると2012年ロンドン大会前の6大会における開催後の建設投資は、減少した国と増加した国が半数ずつあるとのことです。またロンドン大会前の4大会において夏季オリンピック開催後に住宅価格が下落したケースはありませんでした。

前述の通り事例の数が少ないので統計的に意味のあるデータとはいえませんが直感的には「オリンピックと不動産市場との関連はあまり強くなさそうだ」といえるのではないでしょうか。

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「オリンピック特需の終了=マーケット縮小」と考えるのは早計

「オリンピック不況説」の根拠が過去の事例に由来していないとすると何に根ざしているのでしょうか。よくいわれているのは以下のような内容です。

・東京オリンピック開催に向けて建設投資が増え、不動産価格も上昇傾向にある
・大会終了後にはこの特需も終わり需給が緩むことによって不動産価格が下がる

たしかに建設投資額は2020年の夏季オリンピック開催地が東京に決定した2013年に上昇に転じています。しかし上昇に寄与しているのは民間の非住宅建設であり民間住宅については横ばいです。少なくとも住宅については、オリンピック特需が供給過多をもたらすと考える根拠は乏しいといえます。


出典:国土交通省「令和元年度建設投資見通し概要」より

非住宅建設を含めた建設投資額の増加自体も建築需要が一巡する約20年間の「クズネッツの波」という景気循環論でも説明できます。そもそも仮に現状がオリンピック景気に湧いているとしたとしても、開催後に土地や住宅などの不動産価格がどう動くかは別の問題であり論理の飛躍と言わざるを得ません。

訴求力を発揮できる地域は有望

2020年の東京オリンピックの経済効果は30兆円前後ともいわれます。これだけの規模ですから不動産価格と関連させたくなるのも無理はありません。実際に少なからず影響があるでしょう。例えば「オリンピックの後に景気が落ち込む」という立場では、さらなる金融緩和が進み市場金利が低下した結果として住宅価格が上昇するシナリオが描けます。なぜなら不動産価格と融資金利には密接な関係があるからです。

景気の落ち込みが深刻な場合、賃金の下落によって需要が落ち込み、それに伴って住宅価格も下がるかもしれません。ただし自己居住用の家と賃貸用住宅は市場が違うので、それぞれに別の動きをする可能性もあります。不動産の価格を構成する要素には融資金利や賃金のほかに人口やビジネス用途の需要、投資家の動向などさまざまなものがあります。

これらの要因にオリンピックの開催が間接的にかかわることはあるかもしれません。地域の不動産マーケットにとって大切なのは、地元の魅力をいかに発信できるかということでしょう。世界中が熱中するオリンピックの舞台でアピールできればインバウンド需要を刺激し外国人観光客を呼び込むことができます。

民泊向けの住宅やホテルや商業施設などがさかんに取引されるようになれば、その地方の不動産マーケットにとってプラスになるはずです。国内での知名度が上がることでも同様の効果が期待できます。オリンピック後の不動産マーケットを展望したい人は、「大会で東京や地方がどう取り上げられるのか」「世界や日本でどう印象を与えるのか」について注目してみるとよいでしょう。

オリンピック終了を悲観的にとらえずチャンスととらえる

オリンピック後の不動産マーケットに対する悲観的な見方がありますが、根拠のしっかりしたものかどうか疑ってみる必要があります。そもそも不動産の価格形成にはさまざまな要因がからんでおり一概に予想することはできません。経過を見守り地域の将来を個別に考えることが必要です。魅力を国内外にアピールできればチャンスとなるでしょう。

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