賃貸オーナーにとって、所有物件の物理的な不具合もリスク要因となります。それは自然災害が原因であっても例外ではなく、近年では台風や豪雨被害が多発していることでリスクを感じている賃貸オーナーも多いのではないでしょうか。
そこで今回は所有物件で雨漏りが発生した時の適切な初動対応や、そもそも雨漏りを防ぐための対策について解説します。雨漏りへの対策は万が一の事態への備えになるだけでなく、平時からしっかりと対策を講じていることがオーナー自身の安心感につながり、さらには賃貸住宅の集客力向上にもつながります。
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A:雨漏りが発生した場合、その原因によって責任の所在が決まります。それは法律にも規定されているもので、賃貸オーナーの責任による雨漏りの場合、問題を放置すると損害賠償を請求される恐れもあるため、適切な初動対応や、そもそも雨漏りをさせないためのメンテナンスが重要です。
万が一、所有物件で雨漏りが発生した場合、その責任の所在は誰にあるのでしょうか。その答えは、賃貸オーナーです。なぜなら、賃貸オーナーには「賃貸物の修繕等」を必要に応じて行う管理義務があるからです。この根拠は、民法第601条と第606条に求めることができます。
民法601条では、賃貸借について規定されています。賃貸オーナーが自己の所有する物件を賃料と引き換えに貸し、入居者は契約終了までそれを利用することができるという趣旨です。そして民法606条では「賃貸人による修繕等」が規定されており、入居者の故意や過失による場合を除いて賃貸オーナーが必要な修繕をする義務があると記されています。
雨漏りもそのうちのひとつとして、入居者に原因や責任がない場合は原則として賃貸オーナーがその管理義務を負うと解釈されています。
これはつまり、室内にある入居者の生活や財産に損害が及ぶ可能性があるため、雨漏りを放置していると入居者から損害賠償を求められる恐れもあるということです。
もし雨漏りが発生したという連絡が入ったら、賃貸オーナーはまず、以下のような初動対応を取りましょう。
まず確認するべきは、雨漏りの原因です。自然の雨なのか、上階の住人が水をこぼしたりしたことが原因なのか、これによって責任の所在が変わるため最初に現場を確認して原因を究明しましょう。
管理会社に管理業務を委託している場合は、現場へ確認に向かうのと同時に管理会社にも連絡を入れます。
管理会社を利用しておらず自主管理をしている場合は、早急に修繕の手配をします。雨漏りは放置していても勝手に直ることはありませんし、放置していると建物の他の部分にも悪影響を及ぼすため、可能な限り早く修繕に来てもらう手配をするのがポイントです。
入居者に対しては、いつ修繕が来るのかを伝えます。すぐに確定できない場合は、いつまでに確定できるかを伝えます。大切なのは問題の解決に向けて賃貸オーナーが迅速に動く姿勢を持ち、それを入居者にも伝えることです。
火災や自然災害に備えて、多くの賃貸オーナーは火災保険に加入していることと思います。ご存じの方も多いと思いますが、火災保険は名称にある火災だけでなく、さまざまな建物へのリスクを補償しています。それならば雨漏りの修繕費用も補償されるのではないかと期待する方もおられることでしょう。
結論としては、台風やそれによる大雨など自然災害が原因の雨漏りであれば補償されますが、それ以外の場合は補償の対象とはなりません。例えばメンテナンスの不備などによって建物が老朽化し、それが原因で雨漏りが発生した場合は補償の対象外です。
自然災害以外の原因では、保険に加入していても補償されない以上、賃貸オーナーにとっては雨漏りしてしまった時の対応だけでなく、そもそも雨漏りが発生しないように定期的に適切なメンテナンスをしておくことが重要になります。
定期的な点検と必要に応じたメンテナンスをしておくことは、大切な所有物件の資産価値向上にもつながるため、売却時の価格をより有利なものにします。その逆に管理が十分でない状態を放置すると雨漏りが発生した時に損害賠償を請求されるリスクだけでなく、それを理由とした家賃の減額圧力にもつながってしまいます。
雨漏りによる浸水で建物がダメージを受けてしまうと資産価値の低下、さらには耐用年数を短くしてしまう恐れもあります。平時から物件の状態には注意をし、メンテナンスを怠らないようにしましょう。
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