2021.02.12
賃貸管理

不動産投資に地震保険は必要?補償対象・範囲は要チェック!

不動産投資をする際にぜひ活用したいのが地震保険です。地震による火災や損傷は火災保険では対象外のため、火災保険に加入しているだけでは大きな地震が発生して損害を受けても保険金は下りません。日本は地震大国のため、あらかじめ地震リスクに対して備えておくことが必要です。不動産投資を行っている人は、リスクヘッジの一環としてぜひこの記事を参考にしてください。

【著者】矢口 美加子

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地震保険の特徴・しくみとは

地震保険は一般の火災保険とは違い、地震保険に関する法律に基づき、政府と民間の損害保険会社が共同で運営している保険となります。ここでは、地震保険の特徴やしくみについて詳しく解説します。

民間の保険会社と政府が共同運営している

地震保険の大きな特徴は、民間の保険会社と政府が共同運営していることです。地震の発生頻度や大きさを予測するのは難しく、ひとたび大きな地震が発生すると甚大な被害が発生することから、被災者の生活を安定させるために政府がバックアップしています。

契約手続きや保険金の支払業務は民間の損害保険会社が行いますが、巨額の保険金を支払うことになった場合は、保険会社が負う支払責任の一定額以上を政府が「再保険」という形で引き受けるしくみとなっています。そのため、地震保険は保険会社による保険料や補償内容に違いがありません。あくまでも「地震保険に関する法律」に基づいて運営されるため、保険会社が取り扱う地震保険は各社で同一であるのが特徴です。

火災保険とセットで契約する必要がある

地震保険は火災保険とセットで契約する必要があり、地震保険だけを単独で契約することはできません。一般の火災保険だと、地震などを原因とする火災損害は補償の対象外となりますので、地震などを原因とする火災損害は地震保険によって補償されることになります。地震保険は火災保険だけではカバーできない部分に備える保険といえます。

契約可能な地震保険の金額は、火災保険金額の30~50%の範囲で、建物は最高5,000万円まで、家財は1,000万円までが補償されます。たとえば、4,000万円の住宅であれば、50%の2,000万円までが地震保険で補償される上限額です。

ちなみに、損害保険料率算出機構が発表している「グラフで見る!地震保険統計速報」のデータによると、火災保険に地震保険を付ける割合を示す付帯率は、2011年に発生した東日本大震災を境目に大きく増加し、その後も右肩上がりに増えています。2020年の付帯率は68.3%となっており、実に火災保険加入者の7割近くの人が地震に対する備えを行っていることが分かります。


出典:損害保険料算出機構 – グラフで見る!地震保険統計速報

◆火災保険についてはこちらの記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
大家が入る火災保険|選ぶ時のポイント3つと相場の決まり方

居住用の建物と家財が補償対象

地震保険の補償対象となるのは、居住用の建物と家財です。したがって、店舗や事務所だけに使用されている建物は対象外となります。店舗併用住宅の場合は加入できる場合もありますが、事前に確認が必要です。また、「家」に付随する家具や電気製品などは対象となりますが、自動車や通貨、預貯金証書などは補償の対象外です。

保険金が支払われるのは住居部分の建物のことですので、たとえば建物に特に損害がなく門などにのみ損害があるようなケースでは保険金支払いの対象外となることが一般的です。また、土地は建物のように劣化することがないため、原則支払われません。マンションなどの集合住宅の場合は、入居者が居住している専有部分は支払われますが、廊下やバルコニーなどの共用部分は支払いの対象外となります。

以下のような場合は、地震保険の保険金が支払われる対象にはなりませんので注意が必要です。

1.地震等が発生した日の翌日から10日経過後に生じた損害
2.紛失または盗難によって生じた損害
3.一部損に満たない損害
4.門、塀、垣のみに生じた損害
5.自動車やバイクの損害

不動産投資で地震保険に加入するメリット

不動産投資を行うオーナーが地震保険に加入することのメリットは、以下の3点です。

1.建物の修繕費用として利用できる
2.ローンの返済に充当できる
3.確定申告で経費として計上できる

地震により建物が被害を受けて修復するとなると、多額の費用がかかってしまうこともあり得ます。その場合、地震保険を受け取ることで修繕費用に充てられるのがメリットです。

また、アパートローンを利用して物件を購入した後、地震が原因で建物が使えない状態になるとします。この場合、入居者が退去して家賃収入が入らなくなったとしても、ローンの返済義務がなくなることはありません。このように、家賃収入がしばらく途絶えてしまうリスクに見舞われても、地震保険に加入していればローンの返済へ充てることができます。

確定申告で経費として計上できるのもメリットです。保険料を支払った場合は一定の金額の所得控除を受けられます(地震保険料控除)。年間の支払保険料の合計が5万円以下の場合は支払った金額の全額が、5万円を超える場合は一律5万円が控除されます。

地震保険の保険料の決まり方

地震保険の保険料は、政府の地震調査研究推進本部による「確率論的地震動予測地図」を活用して算定した保険料率をもとに算出されますので、民間の保険会社が算出するわけではありません。建物の所在地や構造級別によって地震保険料が異なり、建物の免震・耐震性能に応じた保険料の割引制度があります。

ここでは、地震保険の保険料の決まり方について、割引制度も合わせながら詳しく解説をします。

建物の構造と所在地で決まる

地震保険の保険料は、建物の構造と所在地(都道府県)で決まります。そのため、どの保険会社で加入しても同じ金額であるのが特徴です。

建物の構造が違うと、地震の揺れや、それに伴う火災による損壊のレベルが異なるため、保険料率に反映されます。建物は「イ構造」と「ロ構造」の2つに区分され、「イ構造」は鉄筋コンクリート造のマンションなど耐火性の高い建築物、「ロ構造」は木造住宅など燃えやすい建築物が該当します。

契約金額が1,000万円あたりの年間保険料を都道府県・構造別にまとめた表は以下の通りです。地震発生リスクは地域により異なり、等地区分の数字が上がるほどリスクは高くなります。

【契約金額1,000万円あたりの年間保険料(1年契約・2021年1月以降始期の契約)】

物件所在地(都道府県) イ構造 ロ構造 等地区分
東京都・神奈川県・千葉県・静岡県 27,500円 42,200円 3等地
埼玉県 20,400円 36,600円 3等地
徳島県・高知県 17,700円 41,800円 3等地
茨城県 17,700円 36,600円 3等地
宮城県・山梨県・愛知県・三重県・大阪府・和歌山県・香川県・愛媛県・大分県・宮崎県・沖縄県 11,800円 21,200円 2等地
福島県 9,700円 19,500円 2等地
北海道・青森県・岩手県・秋田県・山形県・栃木県・群馬県・新潟県・富山県・石川県・福井県・長野県・岐阜県・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県 7,400円 12,300円 1等地

出典:損害保険料率算出機構 – 地震保険基準料率のあらまし(P7)

割引制度について

耐震性能が優れている建物には割引制度が適用されます。割引されるのは、「建築年割引」「免震建築物割引」「耐震等級割引」「耐震診断割引」の4種類です。

それぞれの割引制度についてまとめたのが以下の表です。もっとも割引率の高い割引が1つだけ適用され、割引の重複適用はできません。対象の建築物に該当する場合は、所定の確認資料を提出すると割引を受けることができ、確認書類を提出した日からの保険期間において適用されます。

【地震保険の保険料の割引制度】

割引制度 対象 確認書類
建築年割引
【割引率:10%】
改正建築基準法が施行された1981年6月1日以降に新築された建物 ・建物登記簿
・重要事項説明書など
免震建築物割引
【割引率:50%】
免震建築物と評価された居住用建物および家財 住宅性能評価書など
耐震等級割引
50%【耐震等級3】
30%【耐震等級2】
10%【耐震等級1】
耐震性能が耐震等級1~3に該当する居住用建物および家財 ・住宅性能評価書
・耐震性能評価書など
耐震診断割引
【割引率:10%】
建築基準法に定める現行耐震基準に適合していることが確認された居住用建物および家財 ・耐震基準適合証明書
・住宅耐震改修証明書など

参考:損害保険料率算出機構 – 地震保険基準料率のあらまし(P8~9)

地震保険でどのくらいカバーされる?補償内容とは

地震保険は一般的な火災保険とは違い、実際の損害額すべてを受け取れる保険ではありません。損害の程度によって「全損」「大半損」「小半損」「⼀部損」の4段階の認定が行われ、それぞれ地震保険金額の100%・60%・30%・5%が支払われます。

保険の対象が建物の場合は、建物の主要構造部(軸組・基礎・屋根・外壁等)の損害がどのくらいなのかを確認します。したがって、マンションの場合だと、主要構造部に該当しない部分のみの損害(エレベーターや給排水設備など)は保険金支払いの対象外となります。

損害の程度と支払われる保険金の割合をまとめたのが以下の表です。全損、大半損など、損害の程度により違いがあります。地震保険は、建物や家財の損害の程度によって支払われる保険金の額に違いがあり、全損以外は契約した保険金額を全額受け取ることができません。

家財の対象となるのは、基本的に電化製品・家具・食器など、生活をするのに必要なものです。したがって、システムキッチンやバスタブなど備え付けの住設機器は家財には含まれず、建物の対象となります。

【補償内容の詳細】

損害の程度 支払われる保険金 建物の損害程度 家財の損害程度
全損 地震保険金額の100%(時価額が限度) ・主要構造部(基礎、柱、壁、屋根等)の損害額が建物の時価額の50%以上
・焼失、流失した部分の床面積が延床面積の70%以上
家財の損害額が家財全体の時価額の80%以上
大半損 地震保険金額の60%(時価額の60%が限度) ・主要構造部の損害額が、建物の時価額の40%以上50%未満
・焼失、流失した部分の床面積が延床面積の50%以上70%未満
家財の損害額が家財全体の時価額の60%以上80%未満
小半損 地震保険金額の30%(時価額の30%が限度) ・主要構造部の損害額が、建物の時価額の20%以上40%未満
・焼失、流失した部分の床面積が延床面積の20%以上50%未満
家財の損害額が家財全体の時価額の30%以上60%未満
⼀部損 地震保険金額の5%(時価額の5%が限度) ・主要構造部の損害額が、建物の時価額の3%以上20%未満
・床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水
家財の損害額が家財全体の時価額の10%以上30%未満

参考:損保ジャパン – 地震保険 補償内容

なお、地震等を原因とする地すべりなどの災害によって急迫した危険が生じ、建物全体が居住不能(一時的な場合を除く)となるようなケースだと、全損とみなされます。

不動産投資|地震保険の加入方法と注意点

繰り返しとなりますが、地震保険は単独で加入することができません。必ず火災保険とセットでの契約となり、同じ保険会社で加入することになります。また、最初は火災保険しか契約していないとしても、保険期間の途中から地震保険を付けることは可能です。自身が加入している火災保険が地震保険も取り扱いしているか確認するようにしましょう。

もしも後から加入できない場合は別の保険会社に入り直す必要があり、契約期間は最長で5年間となります。火災保険を5年以下で契約すると地震保険も同じ年数での契約となり、火災保険を5年以上で契約した場合は、地震保険の契約期間が先に終了します。

契約できる保険金額

地震保険の契約において設定できる保険金額には制限があり、主契約である火災保険金額の30%~50%がその範囲です。したがって、最高でも火災保険の50%しか契約することができません。

たとえば、4,000万円の火災保険に加入している場合、地震保険の契約金額は2,000万円が限度となります。契約できる限度額は、建物は5,000万円、家財は1,000万円です。ただし、2世帯以上が居住する共同住宅(アパート・マンション)は、世帯(戸室)数に5,000万円を乗じた額を建物の限度額とすることが可能です。

したがって、賃貸住宅などを一棟まるごと1つの保険金額で契約する場合、限度額は居住世帯を異にする「戸室数×5,000万円」とすることができます。ただし、その際にも火災保険金額の30%~50%の範囲内で金額を設定します。

なお、地震保険に2契約以上加入する場合は、保険金額を合算して限度額を適用することになるため、必ず契約時にほかの地震保険の契約内容を新しい保険会社へ知らせる必要があります。

不動産投資で地震リスクを減らすポイント

自然災害はいつ発生するか予想できません。ひとたび大きな地震が発生したら、所有する不動産に甚大な被害をもたらすことも考えられます。そのため、不動産投資をする場合には、あらかじめ地震によるリスクを減らしておくことが重要なポイントです。

ここでは、地震による被害を減らすための3つの対処法について解説をします。

地盤の強い立地を選ぶ

まず、地盤の強い立地を選ぶことがポイントです。いくら新しくて良い物件でも、土台が弱ければ、大きな地震が発生した場合に建物が倒壊したり傾斜したりするなど大きな損害をもたらす可能性が高いです。先述の通り、地震保険ではすべての被害をカバーすることは難しいので、物件を購入する時点で地震に強い地盤の立地であるかどうかを見極めることが重要です。

巨大地震の到来が予想されている中では、入居者側の地震に対する意識もますます高まっています。そこで、地震に強い立地を調べる方法としておすすめなのが、国土交通省が公開している「ハザードマップ」というサイトです。このサイトでは、購入を検討している投資用物件がある場所が災害に強い立地であるかどうかを簡単に調べることができます。物件の購入の契約をする前に必ず確認しておきましょう。

参考:国土交通省 – ハザードマップ

耐震性の高い物件を選ぶ

新耐震基準を満たす物件に投資するようにし、耐震性の高い物件を選ぶことも重要なポイントです。新耐震基準とは、1981(昭和56)年6月1日以降に適用されている基準のことで、震度6強や7程度の地震でも倒壊しないレベルであるとされています。

特に中古物件の購入を検討する際には、建築された年を確認することが必要です。1981年以降に建築された物件ならば新耐震基準を満たしているからです。耐震性の高い建物は建築コストがかかるため価格は安くありませんが、万が一、大地震が発生しても建物の損傷は比較的軽く済む傾向があり、修繕費用を抑えることができます。そのうえ、地震保険の保険料が割引される点もメリットです。

投資エリアを分散する

最後のポイントは、投資エリアを分散することです。投資をする際には、起こりうるリスクをある程度予測しておく必要があり、そのうえでリスクに対応できる体制を備えることが重要です。

たとえば、ひとつのエリアに集中して投資用マンションを購入して賃貸経営をしている場合、万が一そのエリアに大きな地震が発生したときにはすべての物件が被害を受けてしまいます。エリアを分散していれば、たとえ地震によってひとつの物件の収益性が減ったとしても、他の物件の収益で損害分をカバーすることが可能です。このように、災害リスクを考慮して投資エリアを分散することも有効なリスクヘッジといえます。

不動産投資をするときは地震保険に加入してリスクを減らそう

不動産投資を成功させるには、「損をしない」ということが重要なポイントのひとつです。地震は専門家でも予測することが難しい災害のため、起こりうるリスクとして少しでも損害を軽くできるように対応策を用意しておく必要があります。そのためには、火災保険だけでなく地震保険にも加入しておくことがおすすめです。すべての損害をカバーしてもらえるわけではないですが、地震による被害は火災保険の補償では適用されないことを覚えておく必要があるでしょう。大切な物件のリスクを減らすためにも、地震保険を上手に活用しましょう。

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