所有物件の入居者を募集する際、ホームステージング(演出)を施すことで競合物件に差をつけることができます。このホームステージングは欧米では一般的ですが、日本ではまだあまり知られていません。今回は、ホームステージングの活用方法について解説します。
ホームステージングとは、募集物件の室内に、家具や電化製品、小物や観葉植物などを配置して部屋の魅力を引き立てることです。文字通り「家をステージのように演出する」もので、1970年代にアメリカで生まれた手法といわれています。
日本ホームステージング協会が実施した調査では、ホームステージングを施していないマンションが売却までに平均88日かかっているのに対し、ホームステージングを施したマンションは平均42日と40日以上も早く買い手が見つかることがわかりました。これは売却物件の例ですが、ホームステージングによるイメージアップ効果が大きいことは明白といえるでしょう。賃貸住宅の入居者募集でも同様の効果が期待できると考えられます。
賃貸経営にホームステージングを活用すると、入居者募集で主に以下のような効果が見込めます。
ホームステージングの最大の効果は、「内覧者が実際の生活を具体的にイメージできる」ことです。
部屋を借りたことがある人ならわかると思いますが、一般的に入居者を募集している部屋には家具や小物など実際の生活を想起させるものは一切ありません。内覧者は部屋を採寸してテーブルや家電製品を置いた状態をイメージしますが、実際に入居して家具を置いてみるまでは、どのようになるかははっきりわかりません。
一方、ホームステージングを施した部屋にはテーブルや電化製品、小物など生活で使うものがすでに設置されているので、内覧者は入居後の生活や手持ち家具の置き方などをはっきりと、具体的にイメージすることができます。
上記の「具体性」に加えてセンスの良いインテリアコーディネートがなされていることで、成約への効果が上がることが期待できます。
「内覧する物件の部屋に家具や家電が設置されている」と聞いて思い浮かぶのは、モデルルームでしょう。一般的にモデルルームは、住宅展示場にある一戸建てや新築マンションの売り出し時に設置されますが、中古物件であってもホームステージングを利用すればモデルルームと同じような「ライブ感」を演出できます。
入居時の生活をイメージしやすくなるだけでなく、家具のグレードや配置によっては、部屋をより魅力的に見せることができます。例えば、センスのよい小物や家具、観葉植物を配置することで高級感のあるインテリアコーディネートを施し、モデルルームのような魅力的な空間を作り出すことができるのです。
家賃は入居者が物件の価値に対して支払うものです。ホームステージングで物件の価値を実感してもらえれば、相応の家賃を受け入れてくれる可能性も高まります。
ホームステージングが役立つのは、内覧時だけではありません。ポータルサイトへのステージングした室内写真を掲載することで、問い合わせの増加が期待できるようになります。
部屋を探す人は、SUUMO(スーモ)やLIFULL HOME’S(ライフルホームズ)のようなポータルサイトで物件を探すことが多いですが、物件選定の決め手の一つに室内写真があります。写真の有無だけでも問い合わせ件数は変わりますが、何も設置されていない部屋の写真よりも、家具や小物がステージングされている部屋の写真のほうが反響は高くなる傾向があります。
ここではホームステージングを施す際の実際の方法や、物件の価値を上げるための工夫について具体的に見てみましょう。
業者に依頼するメリットは、プロが施すことでホームステージングの効果を最大限に発揮できることです。
不動産会社は販売のプロであり、総合的な不動産に関する相談をするにはには最適です。ただしホームステージングに関しては、「管理運営を総合的にコンサルティングする」管理会社のほうが、その物件に合ったホームステージングを施す能力に長けていることがあります。
ホームステージングの料金は、期間や部屋数などによって変わるので、業者に相談して最適なプランを提案してもらうといいでしょう。ホームステージングサイトの実例を見ると、売り出し価格や家賃を高く設定できるため、早く成約したケースではコストよりも収入のほうが多くなる傾向があるようです。
業者に依頼するデメリットはコストがかかることですが、賃貸において、仮に家賃10万円の物件が3ヵ月空室のままなら逸失利益は30万円になります。ホームステージングにかかる費用はこの空室リスクを避けるための、合理的な必要経費と考えるべきでしょう。
あまり費用をかけたくない場合は、自分で行うことでコストを最小限に抑えられます。
しかし素人によるホームステージングでは、入居者や物件価値の増加はあまり期待できないケースもあるでしょう。例えばファッションの世界では、素人が自分で選んだコーディネートよりも、プロが選んだコーディネートのほうが支持されることがわかっています。
ホームステージングにも、「ホームステージャー」という資格があります。プロには独自のノウハウや経験があるので、内覧を入居に結びつけるという目的を考えれば、信頼できる専門の管理会社に依頼するほうが費用対効果は高くなるでしょう。
どのようなジャンルでも同じですが、写真の撮り方・見せ方によって商品の売れ行きは格段に変わります。
不動産も、掲載される写真を工夫することで反響が変わります。
部屋を紹介する写真には玄関や部屋の内部、ベランダなどがありますが、広角レンズで部屋全体が写っている写真がおすすめです。これは、普通のアングルの写真だけでは部屋の各部分の位置関係が分かりにくく、全体像をイメージしにくいからです。広角レンズで撮った写真は、玄関やキッチン、バス・トイレ、ベランダなどの位置関係がわかりやすく、部屋全体をイメージしやすくなります。
これまでのような、原状回復後の何もない部屋の写真で入居者募集するより、ホームステージングを施された部屋の写真のほうが閲覧者の目を引くことは間違いないといえます。さらに競合物件との差別化を図るためにも、ホームステージングの写真撮影には力を入れるべきでしょう。センスの良い写真をポータルサイトに掲載することで内覧希望者からの問い合わせ増加が期待できます。
入居者の属性を考えることも大切です。企業のイメージキャラクターに若手俳優を起用している企業もあれば、ベテラン俳優を起用している企業もあるのは、ターゲットとするユーザーの属性が異なるからです。
不動産でも、ワンルーム物件で若年層を呼び込みたいのか、ファミリータイプの物件でファミリーに訴求したいのかによって、ホームステージングの仕方は変わってきます。
入居者の属性に合わせてホームステージングを施した物件で、短期間で入居者が決まった例は、専門サイトで多数紹介されています。自分の物件にどういう入居者を呼び込みたいのか、そのターゲット設定から始めてみてはいかがでしょうか。
マンションの第一印象がエントランスで決まるように、マンションの部屋においても玄関の印象は非常に重要です。専門情報サイト「Homestaging Tokyo」では「家に入った時の印象は6秒で決まる」と、玄関の重要性を説いています。
ホームステージングでは、最も広いリビングルームが重要だと思われがちですが、近隣の物件がリビングを中心に訴求しているなら、おしゃれで清潔な玄関を演出して第一印象を良くすることも差別化につながるでしょう。玄関に好印象を持ってもらえれば、リビングなどの印象も良くなるため、成約につながりやすくなるでしょう。
ホームステージングのメリットや方法、工夫などを見てきましたが、プロに任せれば最適なプランを提案してくれるので、オーナーが心配することはほとんどありません。ホームステージングの効果は各種データが証明しているので、できるだけ早く空室を埋めたいなら導入する価値はあるでしょう。
・どのくらいの期間契約するか
・どの程度予算をかけるか
・どのような入居者をターゲットにするか
・どのような点で競合物件と差別化するか
などのポイントを決めて戦略を立てれば、コストパフォーマンスの良い結果が期待できます。今後日本でも普及するであろうホームステージングは、競合物件に差をつけるための有効な方法といえるでしょう。
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