2021.08.11
税金

【連載#1】経費は売上げに貢献するものだけ使う/戦略的経費の使い方

【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介

不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。

著者 渡邊 浩滋

経費は売上げに貢献するものだけに使う

経費を使うことによる節税は、「割引」だと考えられます。つまり、税率分を割り引いた価格で物を購入できたり、サービスの提供を受けられたりするということです。

たとえば、自分の税率が30%の場合、10万円のパソコンを経費で購入すると3万円税金が安くなるので、トータルで見ると7万円で購入できたと考えられます。

しかし、割引になるからといって、その経費が本当に価値のあるものでなければ意味はありません。「10万円するパソコンが7万円で購入できる。これはお買い得といえるのか?」という視点で判断するべきなのです。お買い得かどうかを判断するには、割引率(自分の税率)を知らないといけません。自分の割引率(税率)が15%なのか、30%なのかによって判断が変わると思います。

本当に必要な経費を見極める冷静な視点を持つことが大切です。

必要ないものを、節税(割引)と称してお金を使ってしまうと、どんどんお金がなくなります。どうせお金を使うのであれば、将来にわたって収入(売上)に貢献するようなものに投資した方がよいと思います。

たとえば、

  • 外壁の塗り替えなどの修繕費
  • 防犯カメラや宅配ボックスの設置
  • 共用部分の清掃費など

これらは、物件の価値を高めるものになるため、積極的に支出すべきものになります。

逆に、

  • 接待交際費
  • セミナー代

交際費と称した、ただの飲み会や、自己満足だけで行動が伴わないセミナー代は、無駄な経費になりかねません。

戦略的な経費の使い方

誤解がないように補足しますと、「経費を使うな」と言っているわけではありません。

経費を使うなら、「どのくらい節税になるのか」、その効果を把握した上で、戦略的に使うことが重要です。わかりづらいと思いますので、具体例で考えてみましょう。

【問題】
課税所得金額(所得控除後の所得で税率をかける前の所得)が1000万円ある方がいます。経費を1年で300万円使う(1)と、1年あたり100万円を3年間使う(2)では、どちらが税金上有利になるでしょうか?

支出する金額の合計は300万円で同じです。1年間で支出するのと、3年に分けて支出するのと、支出するタイミングが違うだけです。正解を見てみましょう。1年目~3年目にかかる所得税・住民税を出し、3年間の合計を比較しています。

3年間のトータルですと、(1)の合計が730万円、(2)の合計が708万円となります。(2)の方が3年間トータルで22万円税金が安くなるのです。

支出金額が一緒でも税金が異なる

支出した金額が同じなのに、なぜ税金が違うのでしょうか? これは所得税が超過累進税率といって、5%~45%の間で段階的に税率が適用されるからです。

図を見ていただけるとわかりやすいと思います。900万円を超える所得には33%の税率、695万円を超えて900万円以下については23%の税率が適用されます。

▽図 どうして「100万年☓3」のほうがトクなのだろうか

つまり、(1)の1000万円の所得か ら300万円の経費を計上するということは、1000万円から900万円までの100万円分の所得については33%の税率分が控除され、900万円から700万円までの200万円分の所得については23%の税率分が控除されることになります。

(2)の100万円の経費計上を3 年間した場合は、1000万円から 900万円までの100万円分の所得に係る33%の税率分控除されるのが3年間できることになるので、節税効果が高くなるのです。

経費は高い税率から控除する

つまり、経費は高い税率から控除した方が、効果が高いのです。

これをわかっていないと、一生懸命高い経費をかけて税金を減らそうと思っても、結果的に低い税率分を削っている(節税効果が低い)ことがよく起こります。

所得税のような超過累進税率の場合には、経費を分散させ、高い税率を削る方が、税金的にはトクになるのです。これを「経費の分散化」と私は言っています。

ただし、1年に多額の経費をかけることが悪いということではありません。

その年の税金が減ることになるため、 資金繰りの面では、その方がよいということもあります。

そこは経営判断になります。ただ何も考えずに経費を計上するのは経営判断ではありません。

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<著者プロフィール>
渡邊 浩滋(わたなべ・こうじ)
税理士、司法書士、宅地建物取引士。税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所代表。1978年、東京都江戸川区生まれ。明治大学法学部卒業。税理士試験合格後、実家の大家業を引き継ぎ、空室対策や経営改善に取り組む。大家兼業税理士として悩める大家さんのよき相談役となるべく、不動産・相続税務専門の税理士法人に勤務。退職後、2011年12月、同事務所設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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