2021.08.16
税金

【連載#3】正しい繰延べの方法

【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介

不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。

著者 渡邊 浩滋

正しい繰延べの方法

しかし、繰延べが意味がないかというと、そうではありません。使い方によっては、有効なケースがあります。たとえば、毎年900万円所得がある人が、5年後に返戻率100%の500万円の保険(全額経費になるものと仮定)に入った場合を考えてみましょう。

▽意味のない繰延べ例(単位:万円)

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
調整前所得 900 900 900 900 900 900
繰延調整 -500 500
課税所得 400 900 900 900 900 1400
税金 79 237 237 237 237 455 1482

保険に入った年は、所得が低くなるため税金が安くなりますが、5年後の解約時には所得が500万円増額されます。所得税は先にもご説明したように、所得が高くなるほど税率が上がるため(超過累進税率)、保険を解約した年には、所得が高くなることから税率も高くなり、高額な税金を支払うこととなります。

6年間のトータルでは高い税金になってしまい、これでは保険に入る意味がありません。

税金の繰延べを、「所得をコントロールができるもの」と捉えると、節税が可能になります。 所得は毎年一定額とは限らないため、所得が多い年に保険に加入し、所得が少ない年に解約して保険を受け取ることができれば、税率を均すことができるのです。それが節税につながります。

▽意味のある繰延べ例(単位:万円)

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
調整前所得 1400 900 900 900 900 400
繰延調整 -500 500
課税所得 900 900 900 900 900 900
税金 237 237 237 237 237 237 1422

つまり、解約すると収入になるため、その収入になるタイミングを、所得が低くなる時点(たとえば、大規模修繕の時期など)にもってくれば、税率を上がらなくすることが可能になります。課税の繰延べは、節税する時点(入口)よりも、収入になる時点(出口)を見極めることが大事なのです。

もう一つ、税金の繰延べで見落としがちなのは、資金が必要だということです。500万円の保険料が支出として一旦出ていくことになります。返ってくるのが5年後なので、500万円の資金が5年間寝てしまうことになります。

さて、500万円使って、いくら節税になったのか。

▽もし繰延べを使わなかったら?(単位:万円)

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
調整前所得 1400 900 900 900 900 400
繰延調整
課税所得 1400 900 900 900 900 400
税金 455 237 237 237 237 79 1482

税金の繰延べ(保険)を使った場合と使わなかった場合とでは、5年間で60万円の節税にしかなりません。果たしてこれは、本当に意味のある節税なのでしょうか?保険料の500万円は、保険に加入している期間、全く使うことができません。

5年もの期間500万円を寝かせておくよりも、もっと有効な活用法があったのではないか。 節税という言葉に惑わされず、税金の繰延べをして、得なのかどうなのかを冷静に判断しなければなりません。

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<著者プロフィール>
渡邊 浩滋(わたなべ・こうじ)
税理士、司法書士、宅地建物取引士。税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所代表。1978年、東京都江戸川区生まれ。明治大学法学部卒業。税理士試験合格後、実家の大家業を引き継ぎ、空室対策や経営改善に取り組む。大家兼業税理士として悩める大家さんのよき相談役となるべく、不動産・相続税務専門の税理士法人に勤務。退職後、2011年12月、同事務所設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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