2020.5.22
賃貸管理

賃貸借契約書に記載されている「善管注意義務」とは何か

(画像=fizkes/Shutterstock.com)
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賃貸経営で入居者と最もトラブルになりやすいのは、原状回復の負担割合でしょう。そこでチェックしておきたいのが、入居者が守るべき「善管注意義務」の規定です。原状回復義務との関係は、どのようになっているのでしょうか。

目次
賃貸経営のトラブルで多い原状回復の負担割合
善管注意義務とは何か
善管注意義務違反と敷金の関係
大家がチェックすべきこと

賃貸経営のトラブルで多い原状回復の負担割合

賃貸経営において大家が避けたいのは、入居者とのトラブルです。中でも退去時の原状回復費用をどちらが負担するかは、最もトラブルになりやすいポイントと言っていいでしょう。

原状回復費用は、賃貸借契約が終了するときに、部屋を元の状態に戻すための費用です。以前は曖昧な面がありましたが、1998年に国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発表し、貸主と借主の負担割合が明確になりました。

貸主が修繕費用を負担するのは、壁にポスターなどを貼ったためにできた画びょうの穴や、経年劣化によって発生した壁のクロスの変色など、普通に住んでいれば当然発生する損耗のみです。

一方で借主が負担するのは、以下で説明する「善管注意義務」を守らずに、部屋に損傷を与えてしまった場合の修繕費用です。

善管注意義務とは何か

賃貸借契約書には、借主の義務として「賃料を支払う義務」「使用上のルールを守る義務」「修繕にかかる費用を負担する義務」が書かれているのが一般的です。修繕にかかる費用を借主が負担する根拠になるのが、善管注意義務です。

善管注意義務とは、「善良なる管理者の注意義務」の略で、民法第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)に規定されています。条文では、「債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない」として、入居者には借りた部屋を退居するまで、注意を払って使用することを義務付けています。

善管注意義務違反と敷金の関係

善管注意義務の規定は、敷金にも大きく関係します。敷金は家賃滞納がない限り、退去後に速やかに返金されるべきものです。しかし、借主が善管注意義務を守らず、部屋の一部を損傷させた場合は、預かっている敷金から修繕費用を差し引くことができます。借主が負担を拒否した場合でも、民法第400条の法的根拠をもって対応できるのです。

善管注意義務違反に相当するのは、以下のようなケースです。

・壁に釘やネジを使って使用した際に、下地部分が損傷するほどのダメージを与えた。
・風呂場、台所などの清掃を怠ったため、水回りにカビや汚れが発生した。
・床に飲み物をこぼしたり、雨の吹込みを放置したりしたことで、床や窓枠が腐食した。
・喫煙によるヤニなどが原因で壁のクロスが変色した。
・落書きなど故意に毀損した箇所がある。


退居時にチェックして、以上のような損傷部分を発見した場合は、敷金から修繕費用の実費を差し引いたのち、借主に銀行振込などの方法で返金します。

大家がチェックすべきこと

大家は、どのような点をチェックすればいいのでしょうか。まず、入居者が決まったら、入居前に不動産会社の担当者と一緒に部屋をチェックします。入居前に損傷箇所がないことを一緒に確認することで、トラブルがあった際に不動産会社に証明してもらうことができます。
チェックリストを作成しておくことで退去時はよりスムーズになります。

また、善管注意義務違反になりそうな箇所をチェックして、写真を撮っておくと、入居前と退去時の状態の違いを明確に示すことができます。不動産会社にトラブルの仲裁をしてもらう場合も、相手に納得してもらう材料になります。敷金の返還額にかかわることだけに、大家としてきちんとチェックをすることが、自分を助けることになります。

賃貸借契約は、入居から退去までのすべてを含めて成立しています。入居者に気持ち良く住んでもらうだけでなく、退去時もトラブルなくスムーズに送り出せるように心がけたいものです。
 

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