新型コロナウイルスの感染拡大とその長期化は、賃貸経営にも影響を与えています。特徴的なのは、テレワークの普及で職住一体の勤務体型が求められるようになり、住み替え需要が発生したことです。入居者は転居先にどのようなことを求めているのでしょうか。また、コロナ不況により入居者からの家賃減免要請や滞納に苦慮するケースも出ています。コロナが賃貸経営に与えた影響と、オーナーがとるべき対応について考えます。
はじめにコロナが賃貸市況に与えた影響について確認します。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が発表した「日管協短観」(2020年4月~9月)を見ると、コロナは賃貸市況に少なからず影響を与えています。
2019年下期と2020年上期を比較すると、賃貸市況に影響を与える「反響数」「来客数」「成約件数」「成約賃料」の数値がいずれも悪化しています。外出自粛要請の影響で不動産会社への来客数が減ったのが響いたものと思われます。とくにコロナの影響を受けやすい、外国人(-24.4)、学生(-20.6)、法人(-17.6)の来客数悪化が目立ちます。
▽2020年4月-9月期における賃貸市場の景況感「反響元」「反響数」「来客数」「成約件数」
ただし、入居率はあまり影響を受けていません。同じ調査による全国の入居率は2019年下期の95.4%から2020年上期は95.7%と若干上昇しています。一方で、家賃の滞納率は5.0%から5.2%へ若干悪化しました。コロナは確かに賃貸市況に影響を与えていますが、悪化の大きい業界に比べればその影響は比較的少ないと考えてよいでしょう。
▽2020年4月~9月期における入居率の推移
▽2020年4月~9月期における滞納率の推移
入居者がテレワークを目的として転居先を探すとき、どのようなポイントを重視するのでしょうか。
リクルート住まいカンパニーが2020年6月に行った「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」によると、「コロナ拡大による住宅に求める条件の変化」という項目で以下のような理由が上位を占めています。
・仕事専用スペースがほしくなった:25%
・宅配ボックス・置配ボックスを設置したくなった:24%
・通風に優れた住宅に住みたくなった:23%
・遮音性に優れた住宅に住みたくなった:22%
・収納量を増やしたくなった:22%
・広いリビングがほしくなった:22%
・部屋数がほしくなった:22%
これまでの住まい探しに求められた、「日当たりのよい住宅がほしくなった」「庭がほしくなった」などの理由よりも、テレワークを意識した理由が上回っているのが見てとれます。
コロナ禍で意外な結果になっているのが、中古マンションの価格や賃料が上昇していることです。前出した株式会社ワンノブアカインドが運営する「マンションレビュー」のデータによると、2020年3月に比べ同年9月の中古マンションの坪単価は全国平均で1.15%のプラスになっています。コロナ不況によるテナントの撤退でオフィス空室率が悪化の一途を辿ったのとは対照的な結果です。
また、分譲マンションの賃料も好調です。東京カンテイ調べによる2021年1月の首都圏分譲マンション賃料は3,198円/㎡で、コロナ禍前の2020年1月の2,874円/㎡を大きく上回っています。これらのデータで見る限り、賃貸住宅経営そのものは依然として安全性が高いと判断できます。
それでも、大家さんにとって不安材料はあります。コロナ不況による減収や失業で家賃が払えなくなる入居者が増えていることです。株式会社オーナーズ・スタイルの調査によると、入居者やテナントから家賃の滞納、交渉・相談、退去通告を受けた大家さんは全体の30.3%に上っています。
▽コロナの影響で入居者やテナントから、家賃の滞納や、交渉・相談、もしくは退去の通告などが発生した割合
これに対し、「減免や遅延の要請を受諾」した大家さんが47.1%もおり、良心的な対応を行っていることがうかがえます。一方で、「受諾せずに助成金申請等を勧める」現実的な対応を行った大家さんも11.6%います。いずれにしてもコロナに何の責任もない大家さんが影響を受けるのは悲しいことです。
しかし、家賃滞納の事態に備える方法がないわけではありません。家賃保証会社を利用する方法がその1つです。万一家賃の滞納があっても、家賃保証サービスを利用すれば、入居者に代わって家賃保証会社から大家さんに家賃が振り込まれます。
滞納した家賃に関しては、アンケートにあった「助成金申請等を勧める」という対策でいえば、家賃保証会社が入居者に受給が可能な各種助成金申請をサポートし家賃を回収していきます。入居者も公的助成によって家賃が支払えるので三方一両得という結果になります。プロが仲介することによって、事態に解決の道が開かれるのが家賃保証会社を利用するメリットなのです。
新型コロナウイルスの感染が本格的に収束するにはまだかなりの期間を要するでしょう。家賃保証会社を利用して安心を担保するのも、これからの賃貸経営には必要な対策といえそうです。