2021.02.12
賃貸経営

【川村龍平×宮地正剛】これからの賃貸経営はどう変わるのか? | “自主管理”がアフターコロナのキーワード

コロナショックは、不動産オーナーにも大きな影響を与えています。新しい生活様式が求められるなか、不動産投資、そして賃貸経営にも新たなスタイルが求められているといえます。不動産オーナー向けにさまざまサービスを展開する株式会社Casaの宮地社長が、不動産コンサルタントにして、自ら100戸以上の賃貸物件を経営し、純資産10億円のカリスマオーナー川村龍平氏に話を聞きました。不動産オーナーを取り巻く環境はどうなっていくのか、これからどうやって生き残っていくのか。そして賃貸経営の現場から見えてくる新たな不動産投資、賃貸経営のスタイルを語り合います。

新しい生活様式のなか不動産オーナーはどう変わっていくべきか

新型コロナウイルス感染症の影響がさまざまな業界に及び、「ニューノーマル」の時代に急ぎ対応するべきという論が各方面で飛び交っています。もともと、政府は働き方改革を推進するなど、少子高齢化を前提とする新しい働き方の絵を描こうとしていたという背景があります。不動産にかかわるビジネスも、ここにきて大きく変化が求められています。不動産を経営するオーナー業の魅力を改めて認識しておきたいところです。

「不動産オーナーは経営者である」と説くのが川村龍平氏です。メガバンクの債券トレーダーから転身、不動産経営者として純資産10億円を実現。この6月には書籍『不動産経営 誰も教えてくれないお金の残し方』を上梓され、不動産コンサルタントとしても活躍されています。不動産経営にはさまざまなスタイルがありますが、「仕事」としてとらえると、賃貸経営はやりがいのある一生の仕事になる、と川村氏は話します。

ここでは、川村龍平氏と、家賃保証サービス「家主ダイレクト」を中心に賃貸オーナーの支援事業を展開する株式会社Casaの宮地正剛社長による対談の様子をお伝えします。

キャッシュフロー分析、税制や法律などの知識から、エアコンなどの設備管理、壁紙の張り替えまで、さまざまな能力を高めて自主管理を実践することで、不動産経営がより確実に自らの資産を増やすという議論は、すでに不動産経営を手掛けている人にも、これから始めようとしている人にとっても、非常に興味深い内容になっています。

賃貸経営は自主管理こそが面白い

宮地:いま話題のテレビドラマ『半沢直樹』を見ていると、曲がったところが嫌いな川村さんと重なります。本日は、そんな視点から不動産経営への考え方をお聞きします。

川村:私はすでに、20年以上にわたってアパート、マンションなどの賃貸経営を行っています。もともと銀行におり、支店で融資を担当していました。30歳くらいになると年収が1,000万円くらいになるため、職場に不動産購入の勧誘電話がかかってくるようになります。最初は断っていたのですが、最後は根負けする形で初めてワンルームマンションを購入しました。

実は、その当時、確定申告をするまで不動産投資の醍醐味を理解していませんでした。それは、減価償却費などによる節税効果です。というのも、日本のサラリーマンに共通することですが、源泉徴収という制度があるために、税金に対する感覚が鈍かったからです。

それからは、不動産オーナーとして、所有する物件の収益力を上げる一方で、物件管理の効率化を図りました。また、節税手法など知識面も強化するなど努力を続けました。いわゆるキャッシュフロー経営に目覚めたのがこの時だったと感じます。

宮地:投資をして、どれだけ手元にお金を残せるかを考えるという意味で、コストに気を配り、不動産オーナーを事業として考えるということですね。エリートトレーダーであった川村さんは、なぜ不動産経営に注力するようになったのですか。

川村:経営者として自分で判断し、自分で実行できるというオーナーとしての面白さを知ったからです。蛍光灯をLED化して節電することにはじまり、IHヒーターの取り付け、鍵交換も慣れれば自分でできます。こうした小さなアイデアの積み重ねが維持管理費を抑えることにつながります。

もちろん電気工事など資格が必要なものは外部の事業者に依頼します。私は、税理士、弁護士、ルームクリーニング事業者、リフォーム事業者、大工さんなど、信頼できる事業者の方と連携し、自分のグループをつくることを勧めています。このように、自分で判断して、責任を取ることで、稼げることに面白さを感じたのです。

しかし、実際問題として、多くの不動産オーナーは管理会社に運営を任せ、5%前後の手数料を払っています。このほか、管理費、修繕積立金を支払い、税金を払ったあとで、1年経ってみると「あれ、あまりお金が残らない」と首をかしげているのです。管理会社に任せるのではなく、自主管理こそが賃貸経営の面白さといえます。

オーナーが経営者としての能力を高めれば、不動産事業で社会貢献もできる

宮地:不動産オーナーとしては、管理会社に任せると、なにかと心強い面はあるかと思います。しかし、それでは賃貸経営の面白さも、そして収益も難しい部分がある、ということでしょうか。

川村:賃貸経営を、管理会社に丸投げしたのでは、経営者としての能力が高まりません。それこそなにからなにまでやってもらえれば、安心といえば安心ですが、万が一、管理会社の助けがなくなれば何もできなくなります。

そして、不動産経営者は、入居者と対峙し自分の経営能力を磨くことで社会貢献できます。きちんと管理していれば、生活保護世帯や外国人など、通常の賃貸契約に苦労するような人にも問題なく住まいを提供できます。物件の収益性を自分で把握できればなにも問題はないのです。

人口減少の止まらない日本において、年金の仕組みからいえば、今後はもっと多くの外国人に日本に住んでもらい、税金を支払ってもらわなければ年金制度は維持できないでしょう。その意味で、不動産事業の経営者つまり大家さんは、今後の日本の社会制度の鍵になるわけです。

宮地:なるほど、自分でキャッシュフローや管理業務の内容が把握できれば、たしかに家賃も自分で決められ、より入居しやすい物件を用意することが可能ですね。
しかし、一般的に不動産オーナーが自主管理を実践する場合、いろいろ勉強する必要がありそうです。たとえば税金の知識とか、修繕のノウハウはどのように身につけるのですか?

川村:私の場合は独学でした。インターネットや書籍を通じて身につけまして、いまではおそらく多くの税理士よりも詳しい知識を持っています。税の知識に加え、自主管理にすることによるコスト面のメリットを考慮すると、収益が得られる不動産物件の大まかな目安が見えてきます。

不動産の収益に関して、表面利回りにはさまざまな留意点があります。それを勘案した上で、フルローンだとしても、自主管理であれば表面利回り10%で利益を残せます。12%あれば十分である一方、8%だと難しいでしょう。

宮地:不動産には売買手数料、固定資産税、譲渡税などいろいろな支出がありますね。

川村:はい。そのため不動産投資では、出口戦略を立てろという意見が多くでてきます。しかし、私は出口戦略という言葉は好きではありません。2、3年で売ってしまったのではたいして儲からず、手数料ばかり払うことになるからです。10年、15年と所有し、経営を自らすることで、億単位の収入が得られるようになります。

不動産は、価値がゼロになる可能性が低いという意味で、株や債券ほどリスクは高くありません。家賃によるインカムゲインと土地の値上がりなどによるキャピタルゲインの両方の側面がありますが、特にインカムゲインとして、確実に家賃を受け取れるようにすれば、安定的な運用手法になるのです。

自主管理の難しさ、不動産オーナーがぶつかる壁とは

宮地:確かに、管理会社に委託している不動産オーナーの方より、川村さんのように自主管理をされている方のほうが、利益をしっかり出されている印象があります。一方で、自主管理のオーナーさんは、全体でいえばそれほど多くないように感じますが、やはり、自主管理には難しい部分がたくさんあるのではないでしょうか?

川村:一般に自主管理の不動産オーナーが増えにくいことには理由があります。一つは、不動産取引の仕組みや書類、税や法令関連が複雑でわかりにくいことです。そこで、管理会社に任せた方が安心となり、そのうち管理会社なしの状態など考えられなくなってしまうのです。

これらは自分でしっかり知識を身につける必要がありますね。関連する書籍もたくさんありますし、セミナーなんかに出席してみるのもよいかもしれません。

また、賃貸用の新築住宅を建てる場合などに、銀行、建築事業者、管理会社が組んで、管理会社契約付売買を実施することもよくあります。こうなると最初から管理会社ありきの不動産投資となってしまいます。

これは、投資する前に、しっかりキャッシュフロー分析をし、せめて目先の数年間でも実質利回りを確認すべきだと思います。新築の物件なら初期の10年までは、修繕などのトラブルもほとんど発生しないので本当は自主管理をしやすいはずなんですけどね。

また、電気、ガス、水道などに関して入居者とのトラブルを恐れるという面もあります。しかし、これについては、自らメンテナンス事業者との関係を築いておいて、何かが起きた際に依頼すれば済むことです。実際、管理会社も同じことをしているだけで、自分の手で修繕しているわけではありません。

ただ、最も難しく重要なのが、家賃滞納リスクへの対応でしょう。家賃収益は要ですからどうしても管理会社に任せたくなる要因となっています。

しかし、これについては、Casaさんが提供する家主ダイレクトのような家賃保証サービスをつければいいんです。私は全室につけることをセミナーの来場者に勧めています。

宮地:なるほど。やはり、自主管理もいろいろ課題があり、ノウハウも必要なんですね。そして先日、川村さんが上梓された「不動産経営 誰も教えてくれないお金の残し方」に、自主管理のノウハウが結構書かれていますよね。発売2ヵ月で増刷にもなったとか。

川村:はい、この20年間ずっと研究してきた自主管理にまつわる内容をぎゅっと詰め込んでみました。他のセミナーでもなかなか聞けない本音とノウハウばかり書いていますので、ぜひ読んでみてください。管理会社に任せっきりの不動産オーナーさんには、ぜったい役に立つ内容だと思います。

コロナが変えた不動産経営の環境

宮地:新型コロナウイルス感染症の影響は避けられないテーマとなってきます。アフターコロナを見据えたとき、不動産経営はどのように変わるでしょうか?

川村:新型コロナウイルス感染症の影響を一番受けるのは、ホテルや民泊、商業系の物件でしょう。住居系への影響は大きくありません。よくテレワークの影響で地方の物件への需要シフトが始まるといった話も出ていますが私は限定的だと考えます。テレワーク体制になっても、やはり出社する必要はありますから。

そして、最近の日銀によるコロナ対策のさらなる金融緩和については、かなり危険視しています。この10年で国債の外国人による購入率は20%近くまで上昇しています。20%を超えると危険水域だと見ています。いままでは国内の企業や個人が国債を購入していた。いわば国民が国の予算を支えていたのです。だから超低金利は続けられた。これが外国人の購入率が高まると、一気に不安定化する可能性があるのです。

10年スパンで見ると金利上昇は避けられないと見ています。これは、ローンの金利上昇を意味します。いまフルローンで不動産投資をしようとする人は気をつけたほうがいいです。

宮地:さすが、元債権トレーダーですね。債権と金利についてはいまでもチェックされているのですね。

川村:はい(笑)。冗談ではなく、金利については不動産経営の大きなポイントとなるのでいつも気にしています。

この金利上昇に加え、今後は人口減少、所得減で賃貸収入が圧迫され、そして相続税増による新築供給の加速という要因が加わってきます。これは、都市部はもちろん、従来は競争があまりなかった地方にも波及します。住宅の需給バランスが崩れ、むしろ需要はますます東京に集中するとみています。地方の不動産は相当吟味しないといけません。限られた家賃需要を争奪することになるでしょう。

時代の変化とともに増える家賃保証サービスの需要

宮地:今年は民法改正の影響も出てきています。
以前は、連帯保証人が賃貸借契約から生じる一切の債務について連帯保証するという内容でした。連帯保証人に保証債務額の定めはなく、際限なく保証しなければならず、連帯保証人への負担が大きすぎるとの意見も強まっていました。

今回の民法改正で、連帯保証人が保証する債務の限度額(根保証契約における極度額)の定めがなければ、連帯保証の契約自体が無効になります。そのため、不動産オーナーのリスクが増えることも考えられます。
最近は、家賃保証サービスを利用し、リスクを低減しようとする不動産オーナーが増え始めています。

川村:たしかに、民法改正により保証会社のサービスを契約する必要性は高まってきました。私は自分のセミナーでもこのあたりを必ず伝えています。そこでCasaの家賃保証サービスが登場するのです。

加えて、コロナ後を見通した時、(複雑かつ異常なビジネスモデルで被害が拡大したとされる)かぼちゃの馬車事件が起きたことなどもありますが、銀行の融資が抑制されています。そのため、これから2年はお金を貯める時と考えます。金融機関も収益を上げなくてはなりませんので、必ず融資に前向きになる時期がくるでしょう。その時のために準備するべきです。

新しい働き方が求められる時代。投資家ではなく“不動産経営者”が増える

宮地:ここまで川村さんのお話を聞いている中で、不動産オーナーは、自分の資産を自分で運用するという事業主マインドが成功の鍵になることが見えてきました。

川村:はい。不動産経営は、事業主マインドで真剣な気持ちで取り組めば、普通の会社員では難しいほどの大きなリターンを着実に得られる魅力的な仕事です。

不動産経営の鍵は、何よりも家賃収入を確実に得るということに尽きます。その意味で、民法改正というきっかけもありますが、収益を安定させるために家賃保証会社は必須だと思っています。

今後募集する際には、借り手にどんなに高年収な保証人がいたとしても、保証会社を利用するべきです。それによって資金管理がシンプルになり、自主管理の業務負担やコストがかなりまかなえてしまいます。

その上で、利回り、経費などを控除した税引き後利益を考えるためのプランをつくるべきです。私の顧客向けコンサルテーションでも、このキャッシュフローシミュレーションのやり方について、詳細を提示しています。

宮地:やはり自分で運営するためには、コストと収益は将来にわたって把握しておく必要がありますね。いわば事業計画を立て、「自分で経営判断をする」ということですね。

不動産ビジネスはDXにより、オーナー、入居者ともに、その価値を大きくできる時代に

宮地:今日のお話を総括すると、アフターコロナの状況を踏まえたとき、不動産オーナーは、経営意識を持つことで、より収益をあげられるのみならず社会貢献も可能になる。やりがいがあり、ずっと続けられる仕事になると。そのためにも自分で出来ることは自分で行い、将来のキャッシュフローを分析し、実務についても学ぶべきということですね。

川村:そうですね。ただし何よりも重要なのは、不動産オーナーは「いい人」である必要があるということだと思っています。人情が大事だということです。賃貸経営はやっぱり人と人との繋がりが大事なんです。入居者とも、地域の修繕にかかわる業者さんとも、もちろん管理会社とも、みんなが繋がってこの業界は成り立っています。その中心にいるのが不動産オーナーです。だから、不動産オーナーは「いい人」でないと続かないと思います。

なんだか、平成から令和となって、世の中がますますギスギスしてるように感じます。その意味で、不動産オーナー、いわゆる大家さんのコミュニティなどは大事になってくるかもしれません。
宮地社長は、今後のアフターコロナの時代に、どんな不動産の世界が広がっていくと思いますか?

宮地:不動産業界は、デジタルシフトをより進めていくことで時間、コストを抑えることができ、ITにより大家さんや入居者のコミュニケーションをもっと厚くすることができると考えています。
最近は、内覧案内もスマートキーでセルフ内覧で対応しているところもあります。顧客とのコミュニケーションもむしろデジタルを使ったほうが素早く、そして詳しくできる一面もあります。

また、不動産業界は未だ紙とFAXが中心で、接客も対面が主流です。事務オペレーションも人件費の塊という状況です。今後はDXにより不動産ビジネスに変革を起こし、大家さんの収益性や入居者満足の向上に向け、「顧客ファースト」の精神で業界の変革に貢献していきたいと思います。

川村さん、本日は不動産経営の魅力がよくわかりました。ありがとうございました。


株式会社Casa社長 宮地 正剛(みやじ せいごう)
全国27万人以上の家主が利用している家賃保証サービスを展開する株式会社Casa代表取締役社長。入居者に対しても住生活に有益な優待サービスの提供や生活が困窮した入居者にはフードバンクと共同で食料支援を実施。また、家賃保証業界の健全な発展を目的に社団法人賃貸保証機構を設立し代表理事を務める。


東京築古組 代表理事 川村 龍平(かわむら りょうへい)
メガバンクにて債券トレーダーとして機関投資家向けビジネスに従事したのち、2005年11月より専業大家となる。現在ビル3棟、アパート4棟、ワンルーム3戸を個人保有し経営中。不動産オーナーの賃貸経営の要は実質利回りによる着実なキャッシュフロー経営と説き、セミナーを精力的に開催。2020年6月『不動産経営 誰も教えてくれないお金の残し方』(幻冬舎)を上梓

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