2020.11.14
賃貸経営

賃借人が申請できる住居確保給付金。その審査内容はどんなもの?

(写真=beeboys/stock.adobe.com)
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コロナ禍でセーフティネットの1つだった住居確保給付金の適用が拡大されました。新型コロナウイルス感染症の影響で仕事や収入を失った人も申請ができるようになったのです。この住居確保給付金は、賃借人の申請が通れば、家賃相当額が直接、賃貸オーナーへ振り込まれる制度です。この住居確保給付金について、その仕組み、申請の方法、審査内容について、解説します。

住居確保給付金とその仕組みは

賃貸物件にお住まいで、新型コロナウイルス感染症の影響による休業等に伴う収入の減少により、家賃の支払いが難しくなっている場合があります。これに対し家賃相当額を支給する制度が「住居確保給付金」です。

この制度の元となる法律は、生活保護に至る手前、あるいは生活保護を脱却する段階での自立を支援するために2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」です。住居確保給付金はそれに基づく制度の1つとして位置付けられています。

住宅確保給付金は、経済的な理由などから家賃を滞納してしまい住宅を失ってしまった、あるいは家賃の支払いが困難になってしまった場合に家賃に相当する金額を支給し、生活への復帰支援を目的とする制度です

具体的な支給額は、居住地の市区町村や世帯人数によって異なります。また支給上限額と実際の家賃額の比較では、その低い方が上限額となります。例えば支給上限額が52,000円で実際の家賃額が6万円の場合は、住居確保給付金の支給額は5万2000円です。

この給付金の支給期間は、原則として3か月の間と定められています。ただし、3か月後も厳しい経済条件が続くと予想されるなど特別な事情のある場合には、3か月ごと2回まで延長可能ですので、最長9か月間まで支援期間が延びる可能性があります。

この給付金の申請窓口はお住まいの自治体の自立相談支援機関です。最寄りの申請窓口の場所は、厚生労働省の特設ホームページや各自治体のホームページから検索できます。

【参考】厚生労働省 住居確保給付金 申請・相談窓口>

住居確保給付金を申請できる人の条件は


この給付金を受けるためには、以下の4つの条件すべてに当てはまることが必要です。

(1)離職・廃業から2年以内または休業などにより、自らの意志や都合によらず就労機会が減少していること


2年以内に離職廃業していれば、現在お仕事をしている方も対象となります。また保育園の休園などにより、子どもの面倒を見るなどのやむを得ない事情で休業されている方も対象になります。

(2)世帯全員の収入の合計額が、住居のある自治体の収入基準額以下であること


収入基準額は基準額と家賃額(上限あり)の合計額です。

収入基準額=基準額+家賃額(上限あり)

基準額は、市町村民税の均等割が非課税となる収入を月額に換算した金額です。また家賃額については実際に居住中の住まいの家賃額です(上限設定あり)。

収入基準額は、例えば東京都特別区にお住まいの3人世帯であれば、社会保険料などが控除される前の総支給額で月額241,800円となり、収入がこの額より少なければ要件が満たされます。

なお、持続化給付金や特定定額給付金など新型コロナウイルス感染症に関する給付金や融資を受けている場合、その分については収入に含まれません。

(3)世帯全員の預貯金の合計額がお住まいの自治体で定める額以下であること


預貯金の合計額が基準額の6倍の額か100万円の少ない方の金額以下であることが条件です。

(4)誠実かつ熱心に求職活動を行うこと

住居確保給付金の支給期間中は求職活動を行い、求職活動の状況を自立相談支援機関へ報告する必要があります。従来は申請時にハローワークへの求職申込などが必要でしたが、2020年4月30日から当面の間ハローワークへの求職申込は不要となっています。

住居確保給付金の支給期間中における求職活動の状況は、月に一度、書面等で自立相談支援機関へ報告することが求められます。

住居確保給付金の申請と支給の方法

 
引用:厚生労働省 住居確保給付金 手続きの流れ

この図のように、住居確保給付金の支給は原則として自治体から賃貸物件のオーナーや家賃債務保証会社などに、1か月ごとに直接支払う方法(代理納付)がとられます。賃借人が申請する必要があること、そして、支払いは、賃借人にではなく、賃貸オーナー側になることが、大きなポイントです。

支給までの流れとしては、まずは賃借人が生活困窮者自立相談支援機関へ相談、申請します。この生活困窮者自立相談支援機関とは、自治体または自治体が委託する社会福祉法人やNPO法人です。

賃借人から申請を受けて、生活困窮者自立相談支援機関は、申請書を自治体へ送付し、審査を受けます。自治体からの審査により支給の決定がなされたら、決定通知書が郵送され、生活困窮者自立相談支援機関から、賃借人へと渡されます。受給資格なしと判断された場合は不支給決定通知書が送付されます。決定通知書の送付後、支給決定額が賃貸オーナーまたは管理会社など、家賃の支払先へ振り込まれます。

申請時の必要書類とその後の審査

必要書類は、申請書のほか多数の書類が必要です。全部で5種類とされています。

(1)本人確認書類
(2)休業や廃業などを証明する書類
(3)世代全員の収入を確認するための書類
(4)世帯全員の資産を確認するための書類
(5)賃貸借契約書

上記5種類の書類については、関連する複数の書類を求められる場合があり、一部には後述するような賃貸オーナーが準備をする書類もあります。なかなか揃えにくく、書類の不備のため、申請・審査が進まないケースも多いです。

また、住居確保給付金の審査にかかる期間は、書類の受付から2週間~1ヵ月かかるとされており、自治体によって異なるようです。申請について電話にて確認がなされる場合もありますので、詳細は各自治体に確認しましょう。

賃貸オーナーが準備する書類と賃貸契約書の確認事項

この住居確保給付金を申請する場合、賃貸借契約書に関連し「住宅に関する状況通知書」の提出が必要です。この「入居住宅に関する状況通知書」の1ページ目は不動産媒介業者等記載ページとなっていて、物件オーナーや管理会社、不動産会社が記入する必要があります。振込先の口座番号なども記載する必要がありますので、確認しましょう。

オーナー側からすると、書類作成に手間がかかりますが、空室リスクを避けるためにも手間を惜しまず、書類作成に協力することをお勧めします。

そして、住まいに関する資料として必要な賃貸借契約書の写しですが、この賃貸借契約書に賃貸借期限が記載されていて、その期限が過ぎている場合もあります。しかし、現在問題なく居住されている場合は、期限の定めのない普通賃貸借契約として取り扱われます。その場合、更新通知書の提出は特に必要ありません。

ただし賃貸借契約書に定期借家契約であることが明記されている場合で、すでに契約期間が超過している場合は、有効な契約書とは認められませんので注意が必要です。

住居確保給付金制度への知識により、空室リスクを抑えたい

今回のコロナ禍で、住宅に困っている方々が続出しているようです。オーナー側もこの住居確保給付金の制度と申請の流れをおさえておくことで、賃借人からの相談の際に適切な提案もでき、空室リスクを回避できるケースも出てくるでしょう。申請書類の作成はやや煩雑ですが、積極的に協力し、家賃収入の確保に努めたいところです。
 

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