2020.4.2
民法改正

2020年4月施行の民法改正が不動産賃貸業に与える影響について Part4~賃貸人と賃借人の情報提供義務について~

(画像=Freedom Life/Shutterstock.com)
(画像=Freedom Life/Shutterstock.com)
<目次>
  1. はじめに
  2. 賃貸人の情報提供義務
  3. 賃借人の情報提供義務(改正民法第465条の10)
  4. よくある質問事項

1.はじめに

2020年4月1日から施行される改正民法が不動産賃貸業に及ぼす影響について、前回は、賃貸借における連帯保証人契約の変更点の概要を解説いたしました。
本稿では、賃貸人と賃借人の情報提供義務の変更点を解説いたします。

なお、本稿では、前回同様、現行民法を「旧民法」、2020年4月1日に施行される改正後の民法を「改正民法」と記載しています。

2.賃貸人の情報提供義務

⑴ 主債務の履行状況に関する情報提供義務(改正民法第458条の2)
主債務の履行状況に関する情報は、保証人にとって、保証債務の内容に関わる重要な情報です。
もっとも、旧民法においては、保証人に対し、主債務の残額がいくらであるのか、主債務の履行が滞って遅延損害金が発生しているのかなどの主債務の履行状況に関する情報を提供しなければならないという規定がありませんでした。

そこで、改正民法においては、主債務者の委託を受けて保証をした保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主債務の元本債務及び従たる債務(利息、違約金及び損害賠償等)の不履行の有無に加え、未払いの各債務残額や、そのうち弁済期が到来している金額に関する情報を提供しなければならないという規定が新設されました。

この規定は、個人保証人のみでなく、法人が保証人である場合にも適用されます。この規定が新設されたことにより、保証人から賃借人の賃料滞納状況等に関する問い合わせを受けた場合には、賃貸人は、遅滞なく、未払賃料等の金額や、遅延損害金の金額等に関する情報を提供しなければなりません。

また、賃貸人がこの義務を怠って保証人が損害を受けた場合には、賃貸人は、保証人に対し、損害賠償義務を負い、保証契約の解除までなされるおそれもありますので、注意が必要です。

具体的な情報提供の期限に関する規定は設けられていないものの、保証人に対して遅滞なく情報提供を行うためには、あらかじめ情報提供書のような書式を作成し、情報提供依頼があった際に、スムーズな対応ができるよう準備をしておくことをお勧めします。

また、管理業務を管理会社等に対して委託して賃貸経営を行っている場合には、管理会社が情報提供を行えるように、賃貸借契約書等に定めておく方法が便宜です。

⑵ 主債務者の期限の利益喪失時における情報提供義務(改正民法第458条の3)
主債務者が支払いを遅滞すると遅延損害金が日々発生し、保証人の責任が増大していくこととなります。
特に、主債務者が分割金の支払いを遅滞するなどして期限の利益を喪失した場合には、遅延損害金が想定以上に多額となり、保証人にとって大きな負担となり得ます。

もっとも、旧法においては、保証人に対し、期限の利益が喪失したことを知らせる機会を保障する規定はありませんでした。
そこで、改正民法においては、保証人が個人である場合には、個人保証人を保護するという観点から、主債務者が期限の利益を喪失したとき、債権者は、期限の利益を喪失したことを知った時から2か月以内に、保証人に対し、そのことを通知しなければならないという規定が新設されました。

この規定の新設による賃貸借契約への影響としては、「3 連帯保証契約を巡る民法改正のポイント」でも触れたように、賃借人の負っている既発生の債務について、賃貸人が改めて分割払いを認め(例えば、滞納している賃料等について、改めて分割払いの合意をしたような場合がこれに該当します。)、その分割払いを怠った場合には一括で支払わなければならないといった期限の利益喪失条項が定められている状況において、実際にその分割払いを怠って期限の利益が喪失したときに、賃貸人が保証人に対して情報提供義務を負うケース等が想定されます。

また、この義務を怠った場合、賃貸人は、期限の利益を喪失した時から実際に賃貸人が通知を出すまでの間に生じた遅延損害金を請求することができないことになります。

3.賃借人の情報提供義務(改正民法第465条の10) 

保証人になるに当たっては、保証債務の履行を現実に求められるリスクを検討する上で、主債務者の財産や収支の状況をあらかじめ把握することが重要です。
特に、事業のために負担する債務については、債務が多額になり、保証人の負担が大きくなり得るので、保証人としては、主債務者である事業者の財産や収支の状況等をしっかりと把握した上で、保証人になるか否かを決定する必要があります。

そこで、改正民法においては、保証人が保証契約締結時に主債務者の財産状況を適切に把握できるように、保証契約締結時の主債務者の保証人に対する情報提供義務に関する規定が新設されました。
具体的には、事業のために負担する債務の保証を個人に対して委託する主債務者は、①財産及び収支の状況、②主債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況と、③主債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容の情報を提供しなければならないとの規定が設けられました。

また、この情報提供義務の実効性を確保する観点から、主債務者が情報提供義務を怠ったことにより、保証人が、保証契約締結時における主債務者の財産状況等を誤認し、それによって保証契約を締結した場合において、債権者が情報提供義務違反のあることを知り、又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができると規定されています。

この規定が新設されたことにより、賃借人が法人である場合や、賃貸借契約の目的が事務所や店舗等事業目的である場合の保証契約について、個人が保証人になるときは、賃借人は保証人に対し、例えば、賃借人の所有する財産の状況、借金がある場合にはその金額や返済状況等の情報提供を行う義務を負います。
賃借人が情報提供義務を怠った場合は、賃貸人が、賃借人が情報提供をしなかったことを知っていたか、知らないことに何らかの落ち度があった場合には、保証人が保証契約を取り消すことができることになり、賃貸人に不利益が生じることとなります。

そのため、賃貸人においても、賃借人に対して情報提供を確実に履行させる必要があり、賃貸借契約を締結する際に、情報提供の内容を契約書に明記し、賃借人がこの義務を履行したことを表明し、保証する規定を設けるなど、事前の対策を行う必要があります。

4.よくある質問事項

 賃貸人が保証人に対して賃借人の債務の履行状況に関する情報提供を行う場合、どのような方法で行えばよいのでしょうか。
 改正民法においては、情報提供の方法について明確な定めはありません。もっとも、後に情報提供の有無等に争いが生じた場合に備え、情報を提供したこと及び情報提供の内容が証明できるよう、書面や電子メール等、記録に残る形で行うことが望ましいと言えます。

 賃貸人が保証人に対して賃借人の情報を提供するに当たって、賃借人の了解を得る必要はありますでしょうか。
 保証人から情報提供に関する請求があった場合には、保証人に対して賃借人の支払状況等に関する情報を提供する義務があるので、賃借人の了解を得る必要はありません。もっとも、情報の取扱いに不安がある場合には、賃貸人は、賃貸借契約締結時に、賃借人に対し、保証人に対してどのような情報を提供することになるのかを説明をしておくことが良いでしょう。

家主ダイレクトなら民法改正にも対応
 

【オススメ記事】
2020年4月の民法改正で賃貸借契約はどう変わる?
自主管理するメリットとデメリット!デメリットを回避するサービスとは?
極度額の明記が必須に!民法改正によって連帯保証人はどうなるのか?
民法改正で、オーナー・入居者の修繕義務はどう変わった?
民法改正で「敷金」の扱いはどう変わる?

弁護士 森田 雅也(東京弁護士会 所属)

  • 弁護士 森田 雅也(東京弁護士会 所属)
  • 森田 雅也(東京弁護士会 所属)
    年間3,000件を超える相続・不動産問題を取り扱い多数のトラブル事案を解決。
    「相続×不動産」という総合的視点で相続、遺言セミナー、執筆活動を行っている。

    経歴
    2003 年 千葉大学法経学部法学科 卒業
    2007 年 上智大学法科大学院 卒業
    2008 年 弁護士登録
    2008 年 中央総合法律事務所 入所
    2010 年 弁護士法人法律事務所オーセンス 入所

    著書
    2012年 自分でできる「家賃滞納」対策(中央経済社)
    2015年 弁護士が教える 相続トラブルが起きない法則 (中央経済社)
    2019年 生前対策まるわかりBOOK(青月社)
NEXT 新しい入居者募集の選択肢!入居者直接募集とは?
PREV 2020年4月施行の民法改正が不動産賃貸業に与える影響について Part3~賃貸借における連帯保証人契約の変更点につ...

関連記事