2022.04.08
不動産投資

共同担保とは?共同担保目録の見方・取得方法、抹消について

不動産投資や住宅ローンを利用しようと検討している際などに、共同担保という方法を耳にしたことはありませんか?共同担保を設定することで、融資条件が有利になったり、期待する融資額の融資が受けられたりする可能性があります。本記事では、共同担保の概要、設定するメリット・デメリット、共同担保目録の見方や取得方法、抹消の方法などについて解説しますので、不動産購入資金の借り入れを検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

【監修者】弁護士 森田 雅也
【著者】水沢 ひろみ

 

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共同担保とは

共同担保とは、一言で言えば、「ひとつの債権を保証するために複数の不動産を担保とする仕組み」のことです。そもそも担保制度とは、債務者が債権者から資金の借り入れを行うにあたって、債務者が返済を滞った場合に備えて、連帯保証人(人的担保)を用意したり、債務者の不動産に抵当権(物的担保)を設定するなどして、弁済を確保する仕組みのことをいいます。

ここでいう、「債務者」とはお金を借りている人、すなわち「お金を返済する義務がある人」を意味します。一方、「債権者」とはお金を貸している人、すなわち「お金を返してもらう権利を持っている人」を意味します。

担保とは、借りたお金を返済できなくなった際には売却する等してそこから返済するために、債務者が債権者に差し入れるものです。債権者は、いざという時には担保を売却する等して資金を回収できることを信用して、お金を貸すという判断を下すのです。

不動産の購入資金を借りる際に一般に利用されるのが、不動産に「抵当権」という担保権を設定する方法です。債権者は、貸した資金が返済されない時には抵当権を設定した不動産を競売という方法で処分して、その売却した代金から返済を受ける等して資金を回収することになります。

このように、抵当権を設定した不動産の売却額から優先的に返済を受ける権利を持っている人を「抵当権者」、資金を借りるために自分の不動産に抵当権を設定した人を「抵当権設定者」と呼びます。通常はお金を貸した債権者が抵当権者、お金を借りた債務者が抵当権設定者となります。

担保に入れることになる不動産は、借り入れた金額が返済できない時に売却する等して返済に充てることを前提としているため、借入金の返済のために十分な資産価値が求められます。通常は担保となる不動産の評価額から融資限度額が算定されるのですが、一つの不動産の評価額では借り入れ希望額に満たない場合に、複数の不動産に共同で担保権を設定することができます。このような場合に利用されるのが共同担保という方法です。

◆こちらの記事もぜひあわせてご覧ください。
不動産投資ローンと他ローンの違い!審査難易度や借り換えも

共同担保が利用されるケース

共同担保には、複数の土地や建物を別々に所有しているというケースだけではなく、土地付きの建物を購入する場合に土地と建物に抵当権を設定するというケースも含まれます。土地と建物はそれぞれ別の独立した不動産だからです。

そのうえ、投資用不動産の購入資金を借り入れるにあたり、対象となる不動産を担保にするだけでは必要な融資が得られないという場合に、自宅や既に所有している他の不動産を共同担保とするケースもあります。

また、共同担保とする不動産は、自己所有の物に限られるわけではありません。その不動産の所有者が同意すれば問題ないので、たとえば実家の両親が同意しているのであれば、両親名義の不動産を共同担保として組み入れることも可能です。

他方で、地方銀行や信用金庫など、対応エリアが限定されている金融機関からの借り入れを利用する際には、物件の所在地が対応エリア外の場合には共同担保として設定することができないケースが生じることもあります。

共同担保を設定する理由とメリット

共同担保を設定する債務者側のメリットとしては以下が考えられます。

  • 所有する不動産の評価額が、単独では借入希望額に満たない場合、複数の不動産に共同で担保を設定することで希望額の融資が可能になる
  • 土地上に建物が建っている時には、両方を一括して担保権の対象とした方が評価額が上がるため、希望額の融資が通りやすくなる
  • 共同担保を設定することで信用力が上がり、金利や借入期間などの融資条件が有利になる可能性がある
  •  
    一方、共同担保を設定する債権者側のメリットとしては以下があげられます。

  • 複数の不動産に担保権を設定しておくことで、ひとつの不動産の価格が下落した時にほかの不動産から担保価値の補てんができるなど、リスク分散が可能になる
  • 共同担保を利用すると土地と建物の両方に抵当権を設定することができるので、競売になったときに物件を処分しやすくなる
  • 隣接する私道がある時には、その共有権も共同担保とすることで、土地の担保としての価値が下がるのを防ぐことができる(抵当権が実行された後の新しい所有者が土地を利用する際に、私道の権利も取得できるため)
  •  
    共同担保の目的は、債務が不払いになった際に、債権者は貸し付けた資金の十分な回収ができるよう担保の価値を全体として増やすことにあります。資金の回収リスクが低いと債権者が判断することは、債務者が有利な条件で融資を受けられるということでもあり、債務者が共同担保を利用するメリットはそこにあるといえます。

    共同担保を設定するデメリット、注意点

    共同担保を設定するデメリットとしては以下が考えられます。

  • 借入金を返済するまで、どちらの不動産の処分も困難になる
  •  
    いったん共同担保を設定すると、一部の不動産だけを勝手に担保から外すことはできなくなります。そのため、結果的にある程度の返済が済んだとしても、どちらの不動産の処分も制限されることになります。

    なぜなら、抵当権の設定されている不動産は、売却自体は自由にできますが、抵当権が実行されれば所有権がなくなることから、抵当権付き物件の購入者を見つけるのは困難であるためです。ある程度まで返済が進んだ状態で共同担保から外すことも可能ではありますが、抵当権者の同意が必要なことから、簡単にはいきません。

    共同担保目録とは

    共同担保が設定されている不動産の登記事項証明書を見ると、「共同担保目録」という欄があります。共同担保目録とは、ひとつの債権の弁済を補償するために担保となっている不動産を一覧に表示して、共同担保とされている状況を分かりやすく表示するためのものです。共同担保目録を調べることで、それぞれの不動産が共同担保とされているという関係性が外部の人にも分かるようになっています。

    共同担保目録の概要

    登記の申請をすると、登記官が共同担保目録を作成します。登記事項証明書を申請する際に共同担保目録の記載も希望することで、共同担保に含まれている物件の状況を調べることができます。この共同担保目録は誰でも自由に取得することができます。

    共同担保目録を調べる必要があるのは、共同担保に入っている不動産を売却する時や、債権者が共同担保に入っている不動産を担保に資金を貸し付ける時などが考えられます。共同担保に入っている物件でも、担保価値に余裕があれば重ねて担保権を設定してお金を借りることはできるので、その際にはそれぞれの不動産の担保価値の余裕がどれだけあるかを評価する必要が生じます。

    ひとつの不動産に複数の抵当権を設定した時には、抵当権を設定した順番で優先順位が生じます。抵当権を実行した時には、先に抵当権を設定した債権者から貸付金の回収が可能となります。

    共同担保目録の見方

    共同担保が設定された土地や建物の「登記事項証明書」を申請すると、その一番下の部分に共同担保目録が記載されます。

    登記事項証明書は、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」に分かれています。表題部には、場所や不動産を特定するために必要な情報が記載されています。また、「権利部(甲区)」には所有権に関する事項が、「権利部(乙区)」には抵当権などの所有権以外の権利に関する事項が記載されています。

    共同担保目録はそれらよりも下に記載されます。権利部(乙区)の右端にある「権利者その他の事項」という欄の一番下の部分に、「共同担保」という記載があり、記号と番号が書かれています。共同担保目録という表示の下に同じ記号と番号が書かれており、ここに記載されている土地と建物が共同担保となっていることを示しています。

    真ん中あたりに順位番号という欄があり、数字が記載されていますが、これは抵当権を設定した順番となっており、権利部(乙区)に記載されている順位番号と同一です。抵当権が実行された時には、この番号の順番に従って優先的に弁済を受けることができます。

    共同担保目録を取得する方法

    不動産の取引の際に共同担保目録の取得を希望する場合には、最寄りの法務局に「登記事項証明書」を申請してください。以下に登記事項証明書の申請書と記入例を示します。

    その際に、登記事項証明書の申請書にある「共同担保目録の要否についての欄」(黄色のマーカーの欄)に記載すれば、「共同担保目録」の申請をすることができます。この時、「種類欄の番号」を記載し、共同担保として現に効力を有するもののみか、抹消したものも含むのかを選択します。「種類欄の番号」とは、申請書に記載した土地または建物の欄に付されている番号です。

    なお、共同担保権を設定する登記は、不動産の所在地が管轄する法務局で行う必要がありますが、登記事項証明書の申請・発行は最寄りの法務局の窓口、もしくは郵送やインターネットで申請することができます。郵送やインターネットによる申請の場合、窓口での受け取りと郵送による受け取りを選べます。

    それぞれ手数料や取得にかかる日数などが異なりますので、申請する際には一番便利な方法を選択してください。

    物件売却時は共同担保目録を抹消しよう

    先ほども説明したとおり、担保権がついたままでも物件の売却は可能ですが、担保権がついたままだと物件を購入する人を探すのが困難であり、物件の売却価格も下がってしまいます。そのため、共同担保を設定している物件を売却する際には、共同担保目録を抹消しておく必要があります。

    では、共同担保目録を抹消する方法とはどのようなものでしょうか?以下で説明します。

    抵当権を抹消する方法

    不動産の抵当権を抹消すれば、当該不動産の共同担保目録も抹消されます。抵当権を抹消する方法には、借りていた資金を全額返済して債務を消滅させる方法と、任意売却という方法があります。

    借りていた資金を全額弁済すれば債務は消滅しますので、抵当権の抹消手続きができます。この時、債務が消滅したとしても抵当権の抹消手続きが完了するまでは抵当権の登記は消えませんので、抹消手続きが必要であることに注意してください。

    一方、任意売却とは債権者の同意を得て不動産の売却をする方法です。通常であれば、債務を完済するまでは不動産に設定された抵当権は抹消することはできません。しかし、借り入れた額を支払い続けることが無理であるにもかかわらずそのまま放置すれば、競売という方法で不動産を処分しなくてはならなくなります。

    競売だと、通常の方法で売却するよりも安い価格で手放さなくてはならない可能性が高くなりますので、通常の方法で売却したほうが双方にメリットがある場合もあります。このような場合に、通常の方法で不動産を売却して得た金銭を資金の弁済に充てる代わりに、債権者の了承を得て抵当権を抹消する方法を任意売却といいます。抵当権を抹消するといっても、任意売却を行って完済されずに残った債務までもが当然に免除されるわけではないので、債務者は任意売却後も残債務を支払う必要があります。

    不備のない手続きのためには専門家へ依頼を

    抵当権の抹消手続きは、設定の手続きと同様に、自分でも申請することができます。抵当権を抹消するための登録免許税は不動産1件ごとに1,000円、その他にかかる費用は登記情報を入手するための費用や交通費などです。

    抹消手続きをするためには、その不動産の所在地を管轄する法務局へ書類を提出する必要があり、必要な書類を準備するなど、慣れない手続きに時間を割かれる可能性が高くなります。

    また、オンラインで抵当権を抹消する方法も導入されていますが、必要書類が紙ベースであるため、完全にオンラインでのみ手続きを行うのはまだ無理があるといえます。

    司法書士などの専門家に依頼すると、1万5千円前後の手数料が必要となるものの、時間と手間が不要であること・不備のない手続きができることを考えれば効率的だといえるでしょう。

    ◆不動産売却時の税金については、こちらの記事をご覧ください。
    不動産売却の税金|計算方法や特例などをわかりやすく解説

    借り入れを有利にするために共同担保の利用を検討しよう

    この記事では以下の点を解説してきました。

  • 共同担保とは何か
  • 共同担保を設定するメリットやデメリットとは何か
  • 共同担保目録の見方や取得方法
  • 共同担保目録の抹消の方法
  •  
    共同担保という仕組みについては、あまり聞きなれない人が多いかもしれません。ですが、不動産の購入を検討しているものの、購入予定である不動産の評価額が必要な資金の借入額に対して低い場合などは、共同担保を利用することで選択肢が広がる可能性があります。少しでも有利な条件で不動産の取得が可能となるように、共同担保という方法を検討してみてはいかがでしょうか。

    【監修者】森田 雅也

    東京弁護士会所属。年間3,000件を超える相続・不動産問題を取り扱い多数のトラブル事案を解決。「相続×不動産」という総合的視点で相続、遺言セミナー、執筆活動を行っている。

    経歴
    2003 年 千葉大学法経学部法学科 卒業
    2007 年 上智大学法科大学院 卒業
    2008 年 弁護士登録
    2008 年 中央総合法律事務所 入所
    2010 年 弁護士法人法律事務所オーセンス 入所

    著書
    2012年 自分でできる「家賃滞納」対策(中央経済社)
    2015年 弁護士が教える 相続トラブルが起きない法則 (中央経済社)
    2019年 生前対策まるわかりBOOK(青月社)

     

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