サブリースとは、オーナーにとっての賃貸経営リスクである”空室リスク”を回避する手段の一つです。しかし、中には「サブリースにはメリットがない」「サブリースは損をする」といった声も聞かれます。そこで、賃貸物件を所有するオーナーがサブリース契約を行う際の参考になるよう、本記事ではサブリースの仕組みについて詳しく解説します。
【著者】水沢 ひろみ
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
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目次
サブリースとは、サブリースを行う会社がオーナーの所有している物件を一括して借り上げて、入居希望者に転貸する仕組みをさします。「又貸し(またがし)」「転貸し(てんがし)」とも言われます。オーナーに代わりサブリース会社が賃貸物件の入居者募集を行ったり、入居者からの賃料回収などを行ったりすることが特徴です。
サブリースの形態を利用することで、物件の所有者であるオーナーは物件が空室になるリスク、入居者が家賃滞納するリスクを避けられるうえ、管理業務の負担軽減などを図ることもできるようになります。
サブリース以外にも、オーナーが選択することのできる賃貸管理方法は存在します。どの方法にするのかによって発生する手数料やオーナー側の負担、受けるメリットは異なります。
サブリース | 管理委託 | 自主管理 | 家賃保証会社 | |
---|---|---|---|---|
費用・手数料 | 家賃の約10~20% | 家賃の約5% | なし | 入居者負担 |
契約期間 | 2年~。中には10年や30年というケースもある | 2年 | 2年※一般的な不動産契約に合わせることが多い | 一般的には入居者が退去するまで |
入居者との契約 | サブリース会社 | オーナー | オーナー | オーナー |
賃貸管理 | サブリース会社 | 管理会社 | オーナー | オーナー |
敷金・礼金 | サブリース会社 | オーナー | オーナー | オーナー |
家賃滞納リスク | サブリース会社 | オーナー | オーナー | 家賃保証会社 |
この表のとおり、サブリースを選択する場合は、仮に満室になったとしてもサブリース料が引かれるために賃料収入が減ることになります。ただし入居率に関わらず一定の賃料を受け取ることができるため、空室リスクなどをなくすことが可能です。注意点として、あまりにも空室が増加するとサブリース会社が賃下げを要求してくることがあります。「サブリース契約をしていれば将来的にも賃料が保証される」というわけではありません。
管理委託とは、賃貸経営における管理業務を不動産管理会社へ委託する方法です。入居者の募集・審査事務、物件の清掃、家賃の回収・滞納の対応などを委託できます。手数料の相場は5%前後ですが、不動産管理会社によっては手数料とは別にシステム料金や更新手数料などが発生する場合もあります。
自主管理とは、オーナー自らが物件の管理を行う方法です。入居者のトラブルへの対処から物件の清掃までオーナー自身ですべての管理業務を行います。仮に家賃滞納が起こった場合、督促なども行う必要があるためオーナーの負担は大きくなりますが、自主管理ならば手数料は一切発生しません。つまり、空室にさえならなければ賃貸収入は最も大きくなる可能性が高いといえます。なお、家賃滞納は連帯保証人を立ててもらったり、家賃保証会社(後述)を利用したりすることでリスクを軽減することが可能です。
家賃保証会社とは、入居者による家賃滞納が発生した際に、入居者に代わって家賃の支払いを行う会社をさします。保証料は入居者が負担するため、オーナー側には費用負担が発生しません。従来は賃貸経営において連帯保証人を立ててもらうことが一般的でしたが、連帯保証人に代わるサービスとして、または連帯保証人と併用して利用されるサービスとして広く普及しています。
サブリースには、賃料固定型(家賃保証型)と実績賃料連動型(パススルー型)の2つの種類があります。
賃料固定型(家賃保証型)とは、サブリース会社が入居状況に関係なく一定の賃料を支払ってくれるタイプです。オーナーは家賃滞納の心配や空室対策の必要がなくなり、収入が安定しやすいことが特徴です。一般的なサブリースの話題においてはこの賃料固定型をさしていることが多いです。
実績賃料連動型(パススルー型)とは、入居者が支払う家賃がそのままオーナーの収入となるタイプです。サブリース=家賃保証というイメージがありますが、このタイプはサブリース会社による家賃保証はありません。空室リスクはオーナー負担となりオーナー自身で空室対策を行う必要がありますが、入居率が高まれば家賃収入は増加することが特徴です。
サブリースは、サブリース会社と入居希望者との間で賃貸契約を結ぶため、オーナーが入居者との契約に介入しなくてよいのは大きなメリットです。そのほかにもいくつかメリットがあるため、代表的な3つを紹介します。
賃貸経営を行うオーナーにとって一番心配な問題は、空室リスクと家賃滞納リスクでしょう。その点、サブリース契約は入居者がいるかどうかに関わらず、サブリース契約に定められている一定の収入(保証賃料)を得ることができます。物件や契約内容にもよりますが、一般的には満室時の賃料の80%~90%が保証されるケースが多くみられます。
仮にサブリースを利用しなければ満額の賃料は得られますが、入居者が決まらない場合や入居者が家賃を滞納する場合のリスクはオーナーがすべて持つことになります。
物件の築年数が経つほどに入居率は下がっていく傾向があるため、一定の費用がかかっても安定して賃料収入が保証されるのはサブリースの大きなメリットです。
上でも説明しましたが、賃貸経営を自主管理で行う場合は、入居者の募集、賃貸契約の締結、家賃の回収、入居者への対応などといった管理業務はすべてオーナーが行わなくてはなりません。その点、サブリースを利用するとオーナーは入居者と直接やりとりする必要がなくなり、手間のかかる管理業務はプロに一括して任せることができるので、オーナーは管理業務から解放されます。
賃貸管理についての専門的な知識がないオーナーでもサブリースを利用することで賃貸経営を始めることが可能になるため、中には本業をもつ人が副業としてアパート・マンション経営を行っているケースもあります。
サブリースによって相続税が安くなる可能性がある点もメリットです。
借家権(借主がその建物を借りる権利)をもつ建物を相続する場合、本来の建物評価額に対して借家権割合を30%適用する(=本来の建物評価額から30%を減額する)と決められています。これは、人に部屋を貸すことは建物の資産価値を下げると考えられているためです。
ただし借家権付の建物と認定されるためには実際に部屋を貸している必要があり、相続税対策効果を最大限に引き出すには、相続発生時に部屋を満室にしなければなりません。その点、サブリース契約を締結することにより「満室である」とされるうえ、建物評価額が低く算定されることから、相続税を抑えることが可能になります。
空室リスクや家賃滞納リスクに対する効果が期待できるサブリース契約ですが、以下のようなデメリットもあります。
入居者が支払う賃料のうちおよそ10~20%は手数料となるため、サブリースによる賃料は本来の賃料よりも低くなります。それにくわえ、サブリースを利用する場合には、本来オーナーが受け取るはずの礼金はサブリース会社の収入になります。
また、周辺の家賃相場から判断した結果、賃料上昇が見込める場合であっても、サブリース契約では家賃を増額することができません。これは借地借家法によって借主であるサブリース会社の権利が保護されているため、家賃は増額できないという「不増特約」が有効であるからです。
賃料固定型(家賃保証型)のサブリース契約では、このように入居状況が良好でもオーナーの収入に反映されることはありません。実績賃料連動型(パススルー型)は入居状況が良好であればオーナーの収入に反映されますが、空室率が高ければ安定した収入に繋がらないのはデメリットといえます。
入居者の募集や入退去の手続きなどはサブリース会社が行うことになるため、オーナー自ら入居者を選ぶことはできません。サブリース会社はたとえ空室でもオーナーに賃料を支払う必要があるため、中には入居者の審査を多少甘くしても入居率を上げようとするケースがあるでしょう。
しかし、サブリース会社によって決められた契約期間が終わると、オーナーはサブリース期間中に契約した入居者と付き合い続けることになります。たとえ収入の安定しない入居者がいるとしても、オーナーには入居に対する選択権はありません。
サブリース契約では、数年ごとにサブリース賃料の見直しが行われることが一般的です。借地借家法では、「家賃の増減額請求権は契約更新の時期に関わらずいつでも双方から行使することが可能」と決められています。
ただし、賃借人保護の立場から、家賃は増額できないという「不増特約」が有効となっており、逆に家賃を一定期間減額できないものとする「不減特約」については賃借人保護の観点から無効とされています。そのため、サブリース契約の締結時に、たとえ「家賃は減額できない」という特約を設けても、この特約は無効になってしまうのです。
築年数が経過すれば入居率は下がり、賃料も下がっていきます。そうなると、サブリースによる賃料も見直しが行われ、減額されていく可能性は高いといえます。
サブリース契約には家賃収入を得られない免責期間があります。免責期間には「新築時の免責期間」「入居者が退去した後の免責期間(再免責期間)」の2つがあります。
新築時に家賃を免責する期間が設けられるのは、入居者の募集を行ったとしても入居者がすぐに決まるとは限らないといった理由があるからです。また、再免責期間が設けられている理由は、ハウスクリーニングなどのメンテナンスを行う期間が必要であること、再び入居者が決まるまでに時間を要することなどがあります。
免責期間は会社により異なりますが、1カ月~半年程度の間で設定されていることが一般的であるため、資金計画を立てる際には考慮する必要があります。
サブリース会社が倒産するリスクがあることもデメリットのひとつです。この場合、サブリース会社が入居者と締結した賃貸契約はオーナーが引き継ぐことになりますが、中には契約内容の引き継ぎがスムーズにいかないなどのトラブルが生じることもあります。
引き継ぎが正しく行われないことによって、入居者は引き続きサブリース会社へ賃料を振り込み続けてしまう、空室リスクを負担することになるためオーナーは当初予定した資金計画が狂ってしまうといった可能性があります。
これまで紹介したように、サブリース契約にはメリット・デメリットがありますが、もうひとつ注意すべき重要なポイントがあります。それは、サブリース契約を結ぶ前にキャッシュフローを確認することです。
キャッシュフローとは「お金の流れ」のことです。賃貸経営においてキャッシュフローは非常に重要であり、物件を購入するにしろ自分の土地に物件を建てるにしろ、オーナーの多くは金融機関からの借り入れを利用しているのが一般的です。ローンの支払いを滞らせないためには、常に手元に一定額以上のキャッシュが残っている必要があります。
たとえ資金が潤沢にあり自己資金のみで賃貸経営を行っているとしても、次の建て替えやリフォームに向けて資金を蓄えておくことは大切です。そのためにも、やはりキャッシュはできるだけ多く残しておくことが望ましいでしょう。
繰り返しとなりますが、サブリースの利用には賃料の10%~20%となるサブリース契約費用がかかるうえ、一定期間で保証賃料の見直しが入るために契約当初の賃料がその後も保証されるわけではありません。
新築時や入居者が退去した後の免責期間の家賃は保証されないこともすでに上で述べたとおりです。さらに、サブリース会社によっては、広告費や原状回復費用などもオーナー側が支払わなくてはならない場合があります。
これらの点を踏まえると、入居者の募集や管理、家賃の回収などをサブリース会社にすべて任せられるのは便利ではあるものの、トータルで考えた際にキャッシュフローが赤字にならないかをオーナーは確認する必要があります。
築年数が経過することで物件は老朽化していきますから、入居率の低下や家賃の低下は避けられません。サブリース会社は、その条件の下で物件が空室しているときの賃料も保証しながら事業を継続していかなくてはなりません。
一般的に、物件が空室となる状態が長く続けば賃貸経営は赤字になるので、オーナーは何とか対策を考える必要があります。しかし、サブリース会社を利用することで全体としてのキャッシュフローが悪化するのであれば、ほかの選択肢を検討するべきでしょう。
ここでは、サブリース契約によるキャッシュフローの計算をシミュレーションしてみましょう。5,000万円の物件を35年ローンで購入し、満室時の想定家賃収入は年間500万円、表面利回り10%と想定します。
【ケース1】
ケース1では金利を2%と仮定します。毎月の家賃収入は41.6万円、返済額は16.5万円、サブリース料は8.3万円とすると、1カ月に残るキャッシュは約16.8万円となります。
【ケース2】
ケース2では金利を4.5%と仮定します。毎月の家賃収入は41.6万円、返済額は23.6万円、サブリース料は8.3万円とすると、1カ月に残るキャッシュは約9.6万円となります。
【ケース3】
ケース3も、ケース2と同じく金利を4.5%と仮定します。家賃収入は築年数の経過とともに下落していきますので、ここでは当初から25%下落したケースで計算します。毎月の家賃収入は31.2万円、返済額は23.6万円、サブリース料は6.2万円とすると、1カ月に残るキャッシュは約1.3万円となります。
なお、注意したいのが、ここにはリフォーム費用や入退去時の空室期間などは加味していないことです。ケース3の場合、リフォーム費用などの必要経費を引くとマイナスになってしまう可能性があります。また、いずれも表面利回りを10%と高めに仮定していますが、現実的な利回りはもう少し低いことがほとんどでしょう。
ローンの金利についても、現在は低金利ですから低く抑えられているとしても、将来的な金利上昇は予測できないリスク要因です。それにくわえ、物件を中古で購入している場合、35年のローンが組めたとしても実際に物件の耐用年数が35年あるとは限りません。
賃貸経営は長期に及ぶ影響を考慮して投資判断をすることが必要ですが、数十年先のさまざまな条件の変化を予測することは現実には不可能であるといえます。そういった意味でもできるだけ多くのキャッシュを手元に残すことが重要だといえるのです。
上記の例で、サブリースを利用した場合の利回りを計算してみましょう。不動産においての利回りの考え方には、「表面利回り」と「実質利回り」の2つが存在します。
表面利回りは、不動産価格に対する年間の家賃収入の割合を示したもので、必要経費などが加味されていません。それに対し、実質利回りは、年間の家賃収入から諸経費などを引いた実際の利益と不動産価格との割合です。
つまり、表面利回り10%の物件であっても、サブリース利用後の実質利回りはケース1では4%、ケース2では2.3%、ケース3では0.3%となります。先ほども説明しましたが、表面利回りにはリフォームなどのメンテナンス費用は含まれていないため、表面利回り10%と言うのはかなり高めの想定となります。実質利回りが1%を切るようであれば、他の投資法を検討したほうがよいかもしれません。
キャッシュフローの計算をした結果、サブリースを利用しても手元にキャッシュが十分残ると判断される場合であっても、必ずしもサブリースが必要であるとは限りません。たとえば、立地の良い新築物件、人気のあるエリアの駅近物件、空室リスクの低い物件などの場合、サブリースを利用するメリットは少ないでしょう。
サブリース契約ではなく自主管理という形をとる場合、空室になった場合の対策を考えることも大切だといえますが、「そもそも空室にならないためにはどうすべきか」を考えることも大事です。そのためには物件の状況を客観的に分析することが必要になり、サブリース会社に支払う手数料の分をリフォーム費用に充てたり、場合によっては値引きをしたりする方法も選択肢のひとつです。
また、入居者へのサービスの質を高めて退去せずに住み続けてもらうこと、退去者が出た時にはすぐに入居者が決まるような仕組みを整えることなども重要になってきます。
ひとくちに「サブリース会社」といっても、契約内容は会社によってさまざまです。では、サブリース会社を選ぶ時にはどのような点に注意して選べば良いのでしょうか?
サブリースの会社を選ぶ際には、サブリース契約後に入ってくる賃料の目安がわかる「保証賃料」を確認しましょう。一般的なサブリース契約では、家賃収入に対して約80~90%の家賃保証率が設定されています。
ただし、この家賃保証率はサブリース会社や物件の条件によって異なることがあるため、単に保証率の高さだけではなく保証率の設定が適正かどうかで判断することが重要です。また、サブリースを利用するメリットは長期における賃貸経営の安定にありますが、高い家賃保証率を掲げる会社であっても計画に甘さがあり、会社の経営自体が行き詰まっては意味がありません。
家賃保証率の算定は、物件周辺の賃料相場や入居率、物件の築年数、サブリース会社の方針などを基に行われます。それにくわえ、賃料見直しによって将来的な家賃保証額は変化しますので、家賃保証額の下落も考慮に入れて判断する必要があります。
なお、上でも説明しましたが、人気のエリアにある場合など、物件の条件によってはそもそもサブリース契約が必要なのかといった判断も必要となります。
サブリース会社を選ぶポイントの2つ目は、広告費や原状回復費などの負担についてです。
入居者の募集には広告費が発生するうえ、入居者が退去した際には原状回復費がかかります。物件が古くなれば、それらにくわえてリフォーム費用も発生してきます。広告費・原状回復費はサブリース会社とオーナーのどちらがもつのか、あるいは費用によって負担者は変わるのか、サブリース契約を結ぶ際に確認しておく必要があるでしょう。
特に、原状回復費用は高額になることがあります。保証賃料だけではなくこれらの費用も含めて、サブリースを利用しても賃貸借経営が成り立つのかを慎重に判断することが求められるでしょう。
サブリース会社を選ぶ際には、家賃保証率の見直しの期間にも注意しましょう。家賃保証率は更新時に見直しが行われることが一般的です。家賃保証率の見直しは何年ごと行われるのか、固定期間はいつまでなのか、家賃保証率に下限は設けられているのか、過去の家賃保証率の見直しにおける実績はどうかについて具体的に確認しておくことが必要です。
繰り返しますが、物件の築年数が経過すると、入居率や賃料は下落していくことが一般的です。そういった場合の家賃保証率の下落についても事前に考慮したうえでサブリース契約を検討しましょう。
サブリースのデメリットの箇所でもお伝えしましたが、免責期間にも気を付けるようにしましょう。免責期間はサブリース会社が入居者を探したり、部屋を入居できる状態にしたりするために必要な期間であるため、この間の賃料は保証されません。入退去が頻繁に発生すれば、この間の費用負担もオーナーには深刻な問題となるでしょう。免責期間の長さが適切かどうかもサブリース契約の際には確認しておくことをおすすめします。
サブリース契約には借地借家法という法律が適用されます。賃貸借契約では通常の契約に比べ借主の立場が弱くなることを考慮して、借地借家法では借主の立場を保護しています。
そのため、契約期間満了後に借主が引き続き契約更新を希望する場合、同条件で契約が更新されることを原則とすることから、貸主であるオーナーは安易に借主の更新を拒絶することはできません。更新を拒絶する正当な理由が必要とされます。
特段の事由がなくても契約期間の途中で借主から解約を行うことはできますが、オーナーに正当な事由や立ち退き料などの支払いがなければ、貸主であるオーナー側からの中途解約は原則としてできません。そのため、サブリース契約においてオーナーから契約期間の途中での解約を申し出る場合、違約金が発生する可能性があります。
また、物件を手放すことになった場合やサブリース契約を不要と判断した場合でも、簡単に解約できるとは限らない点にも注意が必要です。解約できない期間の長さを確認しておくことや、何カ月前に解約告知を行わなくてはならないか、契約を解除できる条件はなにかといったことを事前に確認しておくのも大切です。
サブリース会社との契約は、オーナーが賃貸経営を行う長期間にわたって続くことが通常です。将来的に契約関係を維持していくためにはサブリース会社の信頼性も重要なポイントです。
・サブリース会社の経営が安定しており、倒産の心配はないか
・サブリース会社のリサーチ力、分析力、集客力は十分か
・利用者からの評判は良好か
・サブリース会社から提案される資金計画は実現可能で、賃貸経営の収益性も問題ないか
・将来にわたっての内容に関する相談にも真摯に対応してくれるか
など、サブリース会社の信頼性についてのチェックは、何より大切であると言えるでしょう。
トータルでのキャッシュフローを考慮した場合に手元にキャッシュが残らないのでは、サブリース契約による賃貸経営は成功であるとはいえないでしょう。そこで、賃貸経営のキャッシュを少しでも残しながら、家賃滞納リスクにも備える方法として、「家賃保証サービス」を利用する方法があります。
家賃保証サービスが提供するサービスや利用料は保証会社によってさまざまですので、ここでは「家主ダイレクト」を例に説明します。
家主ダイレクトは、オーナー自身で賃貸管理ができるようにサポートし、安定した家賃収入を確保できるように設計されたサービスです。
家主ダイレクトを利用すると、入居中の賃料などが100%保証され、家賃滞納リスクがなくなります。入居者の口座から家賃を引き落とし、仮に残高不足などで引き落としができなくても毎月月末に必ずオーナーに入金される仕組みであるため、オーナーはキャッシュフロー安定させることができます。
家主ダイレクトの利用料を支払うのは入居者であるため、入居時に家賃の半額となる保証費用と、その後は毎年1万円の支払いが発生しますが、オーナー側には費用負担は発生しません。
家賃保証サービスは、一般的には入居者が保証料を負担することから、入居者の負担が増えるのではと考えられがちです。しかし、家主ダイレクトでは未払いの退去時精算費用が保証されたり、敷金を減額できる可能性もあったりするため、入居者にとってもメリットのあるシステムになっています。
家賃滞納の際のリスクは家賃保証会社が負担することになるため、入居者の入居にあたっては、精度の高い審査を実施しています。そのため、オーナーにとって好ましくない入居者が入居するリスクを避けられる点も特徴です。
空室が発生した際には、独自の仲介会社ネットワークによって入居者を紹介してもらえるサービスを備えていますので、オーナーは空室リスクにも対応可能です。
サブリースを利用することで、空室リスクや家賃滞納リスクを回避できる可能性はあります。しかし、家賃に占めるサブリース利用料の負担を考えると、トータルでのキャッシュがマイナスになるケースが少なくありません。賃貸経営において、少しでも多くのキャッシュを手元に残すためには、家賃保証サービスの利用を検討してみることもひとつの手段といえるでしょう。
かつて銀行や不動産会社に勤務し、資産運用に携わった経験を活かし、現在は主に金融や不動産関連の記事を執筆中。宅地建物取引主任、証券外務員一種、生命保険募集人、変額保険販売資格など保険関係の資格や、日商簿記1級など、多数の資格を保有し、専門的知識に基づいた記事の執筆とアドバイスを行う。