マンション経営には一定の初期費用や維持費用が必要であると考えられるものの、具体的にどのような費用がどの程度必要なのでしょうか?そのために用意しておくべき自己資金の額はどのくらいなのか、自己資金がなければマンション経営は始められないのか、初期費用を抑える方法はあるのかといった疑問について詳しく解説しますので、マンション経営に興味を持っている人はぜひ参考にしてみてください。
【著者】水沢 ひろみ
オーナーのための家賃保証
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目次
マンション経営には、建物の購入代金以外にもさまざまな初期費用がかかります。マンション経営に必要な初期費用にはどのようなものがあるのか、以下8つに分けて解説していきます。
マンション経営を行うための費用の中で一番大きな割合を占めるのが、マンションの取得費用もしくは建築費用となります。
マンション建築用の土地を持っている場合には、その土地の立地や広さに応じてどのような賃貸需要が想起されるかを詳細に分析し、自己資金の額や期待収益率などを加味して建築するマンションのコンセプトを決めていきます。
逆にマンション建築用の土地を持っていない場合には、土地の購入からはじめるか、既に建築済みのマンションを購入することになります。この場合には、自己資金の額や期待収益率などからどのような投資スタイルを取るのかコンセプトを考え、それにマッチする物件を探すことが必要となります。
マンション経営にはさまざまなスタイルがあります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、自分の投資スタイルに見合った物件を取得することが、マンション経営成功のカギとなります。
なお、マンションを取得・建築する際に気を付けて欲しいのは、建物の取得・建築にかかる費用には消費税がかかることです。建物は使用することで消費されますが、土地は使用によって価値が消費されることはありませんので、消費税がかかるのは建物のみです。
一方で、居住用のマンションの賃料は非課税となり、マンションを貸し出した際に消費税を回収することはできないので、建物取得にかかる消費税は原則としてオーナーが負担することになります。不動産価格は高額となりますから、それにかかる消費税の額も無視できない金額です。マンション購入を検討する際には、価格の中に消費税が含まれているかチェックすることを忘れないでください。
もっとも、マンション取得費用の全額をキャッシュで一括購入することは稀かもしれません。多くは自己資金の中から頭金を入れ、残りをローンで返済していくというパターンになるでしょう。その際には、以下のように不動産投資ローンの諸費用が発生します。
マンションを建築するにしても購入するにしても、そのための費用は大変高額となりますから、自己資金のみで取得する人はかなり少ないと考えられます。多くの場合では不動産投資ローンなどの借り入れを利用するのが一般的といえるでしょう。
不動産投資ローンを利用する際には、借入額のおよそ1%~3%ほどの事務手数料や保証料などがかかります。これらの額は、利用する金融機関や対象となる不動産の資産価値、不動産投資ローンを利用する本人の信用力などによって差があります。
不動産投資ローンを利用することで、自己資金がある場合でもより多くの手元資金を残せるというメリットがあります。ただし、借り入れが多くなれば、それに伴う諸費用も増えることに注意してください。
不動産取得税とは、土地や建物などの不動産を取得した時に都道府県によって課税される地方税のことで、有償か無償か・登記されているか否かを問わず納税が必要となります。一方、相続による場合には課税の対象外となります。
不動産取得税の算定方法は、
となり、令和6年3月31日までに取得した土地の課税標準額については、1/2となる特例措置が設けられています。また、令和6年3月31日までは土地と居住用の家屋の税率についても3%に軽減されます。
不動産取得税の計算のもととなる課税標準は、原則として固定資産税評価額となりますが、新築・増築のケースでは若干異なる取り扱いがなされます。さらに、賃貸用の新築マンションを購入、または新築する場合に、床面積が40平米以上240平米以下という要件を満たしていれば、課税標準額から1,200万円の控除を受けることができます。
この時、長期優良建住宅に該当すれば、令和4年3月31日までは控除の額が1,300万円に増額される特例措置がこれまで設けられていましたが、令和4年度税制改正の大綱により令和6年3月31日まで延長されることが決定しています。
これらの特例措置の詳しい内容については、国土交通省の「令和4年度 国土交通省税制改正概要(11ページ)」をご確認ください。
金銭の授受が生じる契約書を作成する際には、課税文書として、契約書に収入印紙を貼付することで一定の金額を納付しなくてはならないケースがあります。不動産売買契約書や金銭消費貸借契約書はこの課税文書に該当します。
契約書に記載された金額によって貼付する収入印紙の額は異なりますが、令和4年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書の場合には税率が軽減され、以下のようになっています。
記載された契約金額 | 税額 |
---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5千円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
また、不動産投資ローンなどを利用する際には「金銭消費貸借契約書」が交わされますが、この書類に貼付される収入印紙の額はこちらです。
記載された契約金額 | 税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
参考:国税庁 – No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
収入印紙は貼付後に消印をしなくてはなりません。もし消印がない場合には貼付した収入印紙と同額の過怠金、収入印紙の貼付がなければ3倍の過怠金が課されますので注意してください。
不動産を取得した場合には、登記費用がかかります。登記費用とは、具体的には登記を依頼する司法書士への報酬と登録免許税の2つをさします。司法書士への報酬の額は司法書士によって異なりますが、10万円前後を見積もっておけばいいでしょう。
登録免許税とは不動産の登記に必要な税金のことで、登記のケースによっていくつかの種類があり、それぞれ税率が異なります。まず、新たに建物を建てた時に必要になるのが、「表示の登記」と「所有権保存登記」です。
「表示の登記」とは不動産登記の表題部になされる登記で、表示の登記を行うことによってはじめて対象不動産が登記簿上存在することになります。つまり、現実には存在している不動産であっても、表示の登記がなされなければ対外的には存在していることを主張できません。表示の登記には登記義務があるため登録免許税は必要ありませんが、建物完成後1カ月以内に登記することが求められており、これに反すると10万円以下の過料が科せられます。
「所有権保存登記」とは、建物を新築したり新築の建物を購入したりした際など、まだ所有権の登記がされていない段階で初めてなされる権利関係についての登記のことをさします。所有権保存登記を行うことで、対外的にも自分が所有者であることを主張できることになります。
これに対して、既に所有権保存登記をされている物件を取得した場合には「所有権移転登記」が必要です。所有権移転登記をすることで、物件の所有権が前所有者から新たな所有者に移ったことが対外的にも主張できます。不動産の所有権が現実的に誰にあるのかは、現場を見ただけでは分かりません。そこで、不動産取引を行う人が安心して取引を行うことができるように、登記を信頼して取引をした者は保護(※)されることになっています。
※ここでいう「保護」とは、(仮に不動産の本当の所有者ではないとしても)登記上の所有者となっている人を信じてその人から不動産を譲り受けた場合には、譲り受けた人が所有者になることができるという意味です。つまり「登記を信頼して取引をした者が所有権を手に入れることができる」ということです。
不動産の所有権は売買契約を結んだ時点で買主に移るので、買主は登記しなくても売主に対しては自分のものだと主張することができます。しかし、仮に売主が悪質で、複数の人に対して同じ不動産を売却する契約を持ち掛けているとします。この場合、買主となる人の優先順位は売買契約の順番で決まるのではなく、あくまで先に登記した人に所有権が認められることになります。
たとえば、最初に売買契約を結んだ買主をAさん、売却契約を持ち掛けられた人をBさんとして説明します。Bさんがこの不動産を購入して登記も移転してしまった場合、Aさんは先に不動産の所有権を手に入れていたにもかかわらず、AさんはBさんに「私が本当の所有者です」と主張できなくなります。ですから、多少の費用や手続きの煩雑さがあったとしても、不動産を取得した場合にはできるだけ速やかに登記手続きを完了することは非常に重要なことなのです。
このように所有権の保存登記や移転登記は自分の所有権を守るために必要となるものですが、どちらも登記の義務はありません。ただし、抵当権を設定する際には必要です。もしも不動産投資ローンを利用する場合には、さらに「抵当権設定の登記」を行うことが必要ですので、忘れないようにしてください。
これらの「所有権保存登記」「所有権移転登記」「抵当権設定登記」には、それぞれ以下の登録免許税がかかります。
登記の種類 | 登録免許税の税率 |
---|---|
土地の所有権移転登記 | 2.0%※令和5年3月31日までに登記すれば1.5% |
新築建物の所有権保存登記 | 0.4% |
建物の所有権移転登記 | 2.0% |
抵当権設定登記 | 0.4% |
相続による所有権移転登記 | 0.4% |
「表示の登記」を除いた登記については強制ではありませんが、不動産の登記は自分以外の第三者に対して所有権を主張するために必要となるものですので、不動産を取得した際には必ず登記することをおすすめします。
なお、登記手続きは必ずしも司法書士へ依頼しなければならないわけではありません。そのため、自分で手続きをしたとしても問題ありませんが、その代わりに必要書類を入手する手間や、煩雑な手続きが必要となります。時間に余裕があり手続きが苦にならない人以外は、専門家へ依頼したほうがスムーズでおすすめです。
マンションを購入すると、火災保険や地震保険などの保険料の支払いも必要になります。火災保険は火災が発生した場合だけではなく、落雷や台風といった風水害などの自然災害による損害も補償してくれます。
耐火建築物や防災設備などの広がりにより、日本における火災の発生件数は減少していますが、それに代わって異常気象の影響による自然災害が増加傾向にあります。また、通常の保険に加えて特約を付けることで、事故による建物の破損などが補償されるプランもあります。賃貸経営におけるさまざまなリスクを想定して、必要な保証に対する保険への加入は不可欠と考えられます。
火災保険料の支払いには、毎年保険料を支払うプランがあるほか、5年一括、10年一括といった、ある程度長期の支払いを一度に支払うことができるプランもあります。一括で支払うケースの場合、初期費用の負担は重くなるものの、一括払いする期間が長くなるほどトータルでの割引率が大きくなるので大変お得です。なお、火災保険の支払額は年末に経費として計上できますが、一括払いした保険料はその年に対応する金額を毎年計上することになります。
火災保険への加入は原則任意ですが、ローンを組んでマンションを購入した場合には保険への加入は強制となります。
また、地震により火災が発生した場合だと、火災保険の適用外となることには注意が必要です。地震による損害を補償するには地震保険への加入となります。地震保険は火災保険に付帯しているので、火災保険とともに加入することになるのが一般的です。地震保険により火山の噴火や津波による被害なども補償されます。
保険料の額は建物の構造や規模、保証の範囲などによって大きく異なりますが、一括払いするケースでは数十万円以上の負担は見積もっておくことが必要です。
不動産会社などの仲介業者を介して不動産を取得した際には、仲介手数料の支払いが発生します。この仲介手数料の額は、宅地建物取引業法により以下のように上限が定められています。
物件の価格 | 仲介手数料の額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 物件価格の5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 物件価格の4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 物件価格の3%+消費税 |
この仲介手数料を算定する計算式は少々煩雑なので、一般的には以下の計算式を用いて計算します。
これにより計算される額はあくまでも上限となり、具体的な金額は契約により決められます。
マンション取得のためのローンを組んだ時から、ローンの支払いは始まることになります。そのため、賃貸用マンションを取得した際には、できるだけ早く入居者を募集して賃料収入が入るように手配することが必要です。
不動産会社などの賃貸仲介会社によって入居者の紹介を受けた際には、仲介手数料が発生します。この仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で「1カ月分の家賃+消費税」と定められていますが、この他に入居者募集費用として家賃の1~3カ月分ほどを負担するケースもあります。
また、中古で物件を取得した場合には、物件の魅力を高めるためにリフォームが必要となるケースがあります。マンション経営を成功させるためには、所有物件の入居率を高めることが重要なポイントです。マンション経営において入居者募集は大事なステップですので、そのための費用の確保も必要と心得ておくとよいでしょう。
マンション経営には上記のようにさまざまな費用がかかりますので、物件価格以外にもある程度の初期費用を用意しておく必要があります。具体的にどの程度の初期費用がかかるのか、例をあげてシミュレーションしてみましょう。
仮に3,000万円のマンションを購入して区分所有するケースを考えてみます。
※計算の簡便化のために土地と建物を区分せず、3,000万円は建物のみと仮定して計算します。
不動産売買契約書の印紙税:1万円
金銭消費貸借契約書の印紙税:2万円
所有権移転登記:3,000万円×0.7×2%=42万円
抵当権設定登記:3,000万円×0.7×0.4%=8.4万円
司法書士報酬:約10万円
不動産仲介手数料:3,000万円×3%+6万円+9.6万円=105.6万円
入居者仲介手数料:約10万円
以上合計:596万円
※不動産取得税や登記費用は固定資産税評価額に換算するため、物件価格の7割で計算しています。
このケースでは、3,000万円の不動産を取得するために、物件価格以外に最低でも約596万円がかかる計算となります。できれば初期費用分は自己資金で用意できることが望ましいでしょう。今回のケースの場合、用意すべき自己資金の目安は約2割だと分かります。
これらの結果から、マンション経営を考える際には、少なくとも物件価格の1割~2割は用意しておくことが望ましいといえるでしょう。
マンション経営においては、「家賃収入が期待できない」「家賃滞納が発生した」など、手持ち資金が急に必要になる可能性は頭に入れておきたいものです。そこで、初期費用とは別に考えておきたい資金として、できれば「半年分程度のローン返済額」と「マンション経営の維持費用」の2つの資金は想定しておくことをおすすめします。
マンションの購入契約をした時からローンの返済が始まりますが、ローンの返済原資となる家賃収入が入るのは入居者が入居してからになります。入居者の募集を始めても実際に入居者が決まり入居するまでにはタイムラグが生じますし、一旦入居者が入居した後も、家賃の滞納などのトラブルが発生するリスクがあります。こういったリスクにも対応できるように、半年分程度のローン返済額を手元に用意しておくと安心です。
マンション経営で忘れてはならないのが、マンション経営の維持費用です。マンション経営をスムーズに継続していくためには、以下で紹介する5つの費用を用意する必要があります。
マンションを取得するために不動産投資ローンを利用する場合、マンション経営の維持費用の中で大きな割合を占めるのは、毎月のローンの返済額です。予期せぬトラブルが生じた際にも支払いが滞らないようにするためには、できるだけ返済期間を長くすることで毎月の支払額を少なくすると安全です。
しかし、借入期間が長くなればそれだけ負担する金利は高くなり、トータルでの返済総額は多くなることも覚えておく必要があります。マンション経営の維持費用を考える際にはこれらを勘案して、月々のローンの最適な返済額を判断してください。
入居者の募集や入退去の契約、賃料の回収業務、入居者からのクレーム対応、修繕業務、共用部分の清掃など、マンション経営にはさまざまな管理業務が発生します。これらの業務は管理会社などに委託するケースもあれば、自力で行う自主管理を選択するケースもあります。
管理会社に委託するにしても、どこの会社へ委託するか、どこまでの業務を委託するかにより管理費として支払う金額は異なりますが、賃料の5%ほどを目安に見積もっておくとよいでしょう。
建物の破損や設備の故障などが生じた際には、随時、修繕費がかかります。そのうえ、入居者が退去し新たな入居者を募集するための原状回復費用の中には、賃貸オーナーが負担しなければならない費用もあります。また、十数年単位で行う大規模修繕のための費用も用意しておかなくてはなりません。
マンションを区分所有する場合には、大規模修繕のための費用は修繕積立金としてそれぞれの所有者が拠出した金額を積み立てますが、一棟所有の場合にはオーナーが一定額を積み立てておき修繕に備える必要があります。
建物は、日常的にマメに補修をするなど維持管理をしっかり行うことで、耐用年数や見た目などが大きく変わります。マンションの資産価値を守り、入居率を維持するためには一定の修繕費が必要といえます。
マンションの維持管理のための費用として、固定資産税や都市計画税、所得税など、各種の税金もかかります。
まず、1月1日現在においての不動産の所有者に対しては、固定資産税が課税されます。固定資産税は以下の計算式で計算します。
市街化区域内にある建物には、都市計画税も課税されます。
この際、住宅用の土地には特例措置が設けられており、小規模住宅用地に該当すると固定資産税の課税標準は6分の1に、都市計画税は3分の1に軽減されます。小規模住宅用地以外の一般住宅用地では、固定資産税は3分の1、都市計画税は3分の2になります。
また、令和4年3月31日までに新たに建てられた住宅が一定の要件を満たす場合には、固定資産税の額は3年もしくは5年間は半額になります。さらに、認定長期優良住宅に該当すれば、この期間は5年もしくは7年に延長されます(詳細は東京都主税局のページをご覧ください)。
固定資産税や都市計画税などは、動産を所有するだけで負担することになる税金ですが、マンション経営によって発生した収入がある時には、この収入に対しても税金が発生します。
まず、家賃収入から必要経費を差し引いた額に対して、所得税や住民税が課税されます。このとき所得がマイナスで、所得税の課税対象となる所得が他にある時には、損益通算してその他の所得から赤字分を控除することができます。
また、マンション経営の規模が大きくなると、不動産貸付業として事業税が課税される対象になってくることにも注意が必要です。5棟以上のマンションを所有するか10戸以上の部屋を区分所有している、または年間の事業所得が290万円を超える場合には、事業税として5%の税金がかかります。
マンション一棟を所有する場合には、共有部分の光熱費などの負担も発生します。エントランスや階段部分、管理人室などといった共有部分の光熱費や水道代、またこれらの清掃や維持管理には費用がかかります。
これらの費用を共益費や管理費として家賃とは別に入居者負担とすることも可能ですが、入居者は共益費なども込みの値段で家賃を判断します。そのため、共益費込みの家賃が周辺の相場と比べて高くなれば、当然入居者は見つかりづらくなります。これらを考慮して、共有部分の光熱費なども必要経費としてあらかじめ予算を組んでおくとよいでしょう。
以上のように、マンション経営を始めるにはある程度の自己資金を用意することが望ましいと考えられますが、自己資金がなければマンション経営は始められないものなのでしょうか?
結論をいえば「可能」であるといえます。頭金なしでも物件の資産価値が高く評価され、ローン契約者の信用力が高ければ、フルローン、もしくはオーバーローンが使える可能性はあるからです。
フルローンとは、頭金なしで物件購入費用の全額を借り入れることです。それに対してオーバーローンとは、物件購入費用に加えて、初期費用といったマンション購入に必要な費用すべてを借り入れることです。フルローンには諸費用は含まれないので、完全に初期費用なしとするならばオーバーローンを利用することになります。
これらのフルローンやオーバーローンにはメリットもあればデメリットもあります。自己資金がない場合でもマンション経営により収益を上げることができるというメリットはありますが、毎月の返済額が大きくなるため、資金計画を立てておかないとキャッシュフローの流れが滞る恐れがあります。さらに、マンション経営には空室リスクや家賃滞納リスクなどのさまざまなリスクがありますが、自己資金がなければこれらのリスクが現実的になった際にローンの支払いが困難になってしまいます。
かなりの確率で高収益が見込まれる物件があった場合、中にはオーバーローンを組んででもマンション経営をはじめたいと考える人はいるかもしれませんが、その際にはこれらのリスクについて慎重に考えたうえで判断することをおすすめします。
マンション経営には必要経費や税金などがかかること、長期にわたる投資としてのリスクもあることから、できれば初期費用を抑えたいと考えるのは自然なことであり、必要な視点でもあるでしょう。しかし、マンション経営の初期費用をむやみに削るのは要注意です。たとえば以下のようなことがあります。
マンション経営をはじめるのであれば、第二章「マンション経営で用意しておきたい初期費用の目安」でも紹介したとおり、できれば最低限(少なくとも物件価格の1割~2割)の初期費用は用意しておくべきといえます。
それでは、マンション経営の初期費用を正しく抑える方法はあるのでしょうか?本章では4つのポイントに分けて説明していきます。
上でも説明したとおり、宅建業者が販売の代理や仲介を行うと仲介手数料が発生します。そのため、この仲介手数料を発生させずに契約できる方法として、売主と直接取引をするというやり方があります。ただし注意点として、直接取引をするためには原則として売主が宅建免許を保持していることが必要になります。
つまり、宅建免許のある不動産会社から直接取引で購入することは問題ありませんが、宅建免許のない所有者との直接取引は宅建業法違反になる可能性があります。なお、例外的に、自宅を売却する場合などといった1回限りの取引を、事業とみなされない態様で行うことであれば可能です。
仲介手数料の額は宅地建物取引業法により、以下の計算式で上限が定められていることはすでに説明しました。
ここで定められている額はあくまでも上限ですので、仲介業者との交渉で手数料の額を値下げしてもらうことは問題ありません。
初期費用をできるかぎり低く抑えるためには、月々のローンの支払い額を少なくしたり、火災保険などの保険料を一括ではなく年払いにしたりするなど、支払いを先延ばしにできるものは先延ばしにするという方法もあります。ただし、この場合は初期費用が抑えられる代わりにトータルでの支払額は多くなるので注意が必要です。
自治体によっては、アパートやマンションなどの賃貸住宅の建設に対して補助金を交付しているところがあります。その場合、施工業者や建物の構造などに制限が設けられていることがありますので、制度の利用を検討する際には自治体のホームページなどで確認してみるとよいでしょう。
マンション経営に必要な初期費用はもちろん、維持費用などについて解説しました。マンション経営は、自己資金がなくてもローンの審査に通れば不動産経営をはじめることは可能です。ただし、マンション経営は長期に及ぶ投資であり、不確実な要素も多いことを考えると、将来生じる可能性のあるリスクに備えて、ある程度の自己資金を用意してから始められると安心です。
削れる初期費用はできるだけ削ってリスクは減らしたいと考えるかもしれませんが、必要な費用まで削ってしまうことは、却ってリスクを高めるという結果につながりかねません。これらのことを総合的に勘案して、最適な投資判断をすることをおすすめします。
かつて銀行や不動産会社に勤務し、資産運用に携わった経験を活かし、現在は主に金融や不動産関連の記事を執筆中。宅地建物取引主任、証券外務員一種、生命保険募集人、変額保険販売資格など保険関係の資格や、日商簿記1級など、多数の資格を保有し、専門的知識に基づいた記事の執筆とアドバイスを行う。