サブリースの利用を検討している人の中には、解約方法についても詳しく調べている人もいるでしょう。この記事ではサブリースの解約について焦点を当て、詳しく解説していきます。サブリースの解約に関してよく理解し、不動産投資についての選択の幅を広げ、より適切な判断をしてみてください。
【監修】弁護士 森田 雅也
【著者】水沢 ひろみ
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
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目次
本章では、そもそもサブリースとは何かを簡単におさらいしていきます。サブリースとは、サブリース会社が、賃貸物件のオーナーが所有する部屋を一括して借り上げ、入居希望者に転貸する形態のことです。サブリース会社が一括して借り上げるため、オーナーは空室リスクや家賃滞納リスクを減らせるほか、管理業務の負担を軽減させることもできます。
サブリース契約の仕組み、サブリース契約のメリット・デメリットについて簡単にお伝えします。
冒頭でも紹介したように、サブリース契約はサブリース会社がオーナーの所有する部屋を借り上げ、入居希望者に転貸する仕組みのことで、入居者はサブリース会社と賃貸契約を行うのが特徴です。物件のオーナーに代わりサブリース会社が入居者募集や賃料回収などを行い、空室の期間も一定の家賃をサブリース会社が保証します。
オーナーからみたサブリース契約のメリットは、
という3点が考えられます。
不動産投資を行う際には、金融機関などから融資を受けて賃貸物件を購入するケースが一般的です。その場合、ローンの元本や利息などは部屋が空室の期間も払い続けなくてはなりませんが、サブリース契約を結んでいれば、その間は契約で定められた金額が毎月確実に入金されるため、安定してローンの支払いに充てることができます。
また、入居者募集、家賃の回収、入居者のクレーム対応などといった管理業務はサブリース会社が行うため、オーナーは煩雑な管理業務の負担から解放されるのも大きなメリットです。本業をもちながら副業として賃貸経営を行いたい場合や、賃貸経営を始めたばかりで管理業務に不慣れな場合などは、サブリース契約を利用するメリットは大きいと考えられます。
さらに、サブリースを利用することで相続税が安くなる可能性もあります。通常、相続税の対象となる部屋が賃貸されていると、建物の評価額が低く算定されます。サブリース契約を締結すると部屋が満室と評価されることになり、相続税を抑えられる可能性があります。
一方、サブリース契約にはデメリットもいくつかあり、
などがあげられます。
サブリース契約では、サブリース会社への手数料を考慮しなくてはなりませんので、そのぶん受け取る賃料は安くなります。また、サブリース会社の権利は借主として借地借家法によって保護され(この点については後ほど詳しく述べます)、家賃の増額ができない特約が有効となっているため、家賃の増額をすることは難しくなります。
入居者の選定はサブリース会社が行うため、中には、入居率を上げるために入居者審査を甘くするサブリース会社もあります。それによって収入の安定しない入居者が入居した場合、それによるリスクとして、サブリース契約終了後はオーナーが負うことになる点があります。
さらに、家賃は増額できないという特約が有効であるのに対して、家賃は一定期間減額できないという特約は借主に不利な特約となるため無効とされています。築年数の経過とともに入居率は下がり、賃料も下がっていくのが一般的ですので、それに伴いサブリースによる賃料も見直され減額されるケースが多くなります。
サブリースを解約すると得られるメリットの主なものとして、以下の3点を紹介します。
ただし、以下で説明しますが、サブリース解約時には立退料や違約金などがかかることもありますので、実際にサブリースを解約するか否かは慎重に判断する必要があるでしょう。
サブリース契約による家賃の保証額は、直接契約した場合に比べ、家賃の80~90%程になるのが通常です。サブリース契約を解約すると、サブリース会社に対する保証料が差し引かれないため、家賃がそのまま収益となります。不動産会社に管理を委託したとしても、管理委託手数料は5%前後が相場ですので、サブリース契約時に比べれば利回りは改善することが期待できます。
また、サブリース契約を利用している場合、礼金や更新料などはサブリース会社が受け取ることが一般的ですが、サブリースを解約して直接契約に変更するとオーナーが礼金などを受け取ることが可能になります。そのうえ、サブリースを解約すれば、周辺の家賃相場が上昇した際には自由に家賃を上げることもできます。
このように、サブリースを解約することで、利回りを改善できる可能性があります。
先に説明したように、サブリース契約には、賃料が安く設定される、賃料が減額されていく可能性があるなどのデメリットがあるため、物件の購入希望者からは敬遠されることもあります。サブリースを解約すればこのような弊害がなくなるため、物件を売却しやすくなる可能性があります。
サブリース契約を締結している間は、設備の補修やリフォームなどもサブリース会社の主導で行われます。中には、たとえ割高であってもサブリース会社と関係のある業者が施工するケースもあります。また、入居者の選定では、入居率を上げるために審査を甘くし、収入の不安定な入居者を入居させるケースもあります。
このようにサブリース会社の管理状況に不安があるのであれば、サブリースを解約することで、自らで選んだ管理会社へと変更することが可能です。
不動産の賃貸借契約には、借地借家法という法律が適用されます。この借地借家法の目的は、貸主に対して弱い立場に立つことの多い借主の立場を保護することにあります。サブリース契約においては一般的にサブリース会社が借主の立場に立つため、サブリース会社が借地借家法によって保護されます。
立場の弱い借主が簡単に賃貸借契約を解約されて部屋を追い出されることのないように、貸主側からの賃貸借契約の解約は制限されています。この点は、借地借家法28条で、契約の解約には正当事由が必要とされています。
解約に関する規定が契約書に設けられているケースも中にはありますが、サブリース契約にも借地借家法が適用されるため、解約をするためには正当事由が必要になります。したがって、オーナーからサブリース契約を解約することは簡単ではありません。反対にサブリース会社は借主として保護されるので、一方的に途中解約することも可能とされています。
先ほど説明したように、サブリース会社との契約に借地借家法の規定が適用される場合には、借地借家法28条により解約には正当事由が必要です。では、サブリース解約の正当事由として認められるケースとはどのようなケースなのでしょうか?
一般的に、正当事由の判断は、
などを総合的に考慮してなされます。
具体的には、
などの場合に、立退料などといった金銭的な補償の程度を加味して判断されます。
サブリース解約をめぐり実際に争いが生じた際には、それぞれの個別事情によって総合的に判断されるので、上記の事情があるからといっても必ずしも正当事由があると認められるとは限りませんが、判断の際の参考になる可能性があります。
反対に、
など、オーナー側の一方的な都合による解約の申し出だと、サブリース解約の正当事由としては認められないと考えられます。
前章の正当事由が認められても、6カ月前に通告しなければならないなど、実際の解約までには時間がかかることがあります。
また、サブリース契約の解約条項には違約金が定められることがあります。違約金の額はサブリース会社によって異なりますが、家賃数カ月分などと高額になるのが通常ですので、注意が必要です。その上、サブリース会社側の損失を補填するために、立退料の支払いが必要になるケースもあります。
正当事由として認められないケースにおいて、サブリース会社が解約に応じないのであれば、さらに立退料を上乗して支払うことを条件に契約の解約をしなくてはならないケースもあるでしょう。
ただし、サブリース契約にあたっては、サブリース会社側が重要事項の説明義務を負っています。この説明義務を怠った場合や説明の内容が実際と異なる場合には、「賃貸借に関わるこれまでの経過」として、「サブリース解約の正当事由」のひとつに認められる可能性があります。この場合、その事情が立退料の算定に反映されて、減額される可能性もあります。
ここでは、サブリース契約を解約するまでの3ステップをお伝えします。サブリース契約は解約することが不可能というわけではないものの、解約するためには正当事由が要求されるなど、慎重な対応が求められます。当事者同士の認識の違いからトラブルに発展することのないように、書面やメールでやり取りの履歴を残しておくことをおすすめします。解約に際しては、以下の流れを参考にしてください。
サブリース契約を解約する際には、まず契約書の記載事項を確認することが最初のステップです。サブリース契約書に解約条項が記載されているかどうかを確かめましょう。そして、解約に際しての事前の申し出や、違約金に関わる記載がどうなっているかを理解しておく必要があります。
契約書の記載事項を確認したら、次はサブリース業者に解約通知書を送付して解約の意思を伝えます。この解約通知書の送付は、後日のトラブルを避けるために、内容証明郵便で送付することが望ましいです。
解約通知書には以下の内容を記載します。
決まった書式はありませんが、解約の意思が明確に伝わるように、これらの内容を記載するようにしましょう。
解約通知書を送付した後は、サブリース会社に解約通知書が手元に届いているかを確認した上で、解約について同意が得られるかの回答を貰います。解約の同意が得られるのであれば、そのままサブリース契約の解約手続きに進みます。もしも違約金や立退料を支払う必要があるならば、支払い方法などについて取り決め、支払いを完了します。
サブリース会社からの解約の同意が得られない場合には、解約に向けて交渉を行わなくてはなりません。しかし、すでにお伝えしたように、サブリース契約の解約には正当事由が必要になるなど、法律上の専門的知識が不可欠となります。そのため、弁護士や不動産に関する知識を有する専門家への相談とサポートを依頼することをおすすめします。
サブリース契約の解約後は、今までサブリース会社に一任していた賃貸借契約に関わる管理業務をオーナー自身で行うか、もしくは管理業務を委託する不動産会社を探す必要があります。サブリース解約後にやるべきことを把握しておくも大切です。
サブリース契約を解約した後の管理業務をどのように行うか、オーナー自身で判断する必要があります。オーナー自身が管理業務を引き継ぎ、自主管理(※)を行うのも1つの方法です。この場合には、管理委託のための手数料などはかからないので、賃貸経営による利回りは大幅に改善することになります。
その反面、自主管理は管理にまつわる手間・時間がかかります。そのため、管理業務は管理会社に任せたいと考えるのであれば、管理会社を選定して管理委託契約を結ぶ必要があります。管理委託のための手数料は、管理業務の内容や範囲、管理会社の方針などによっても幅がありますが、家賃収入の5%前後が多いです。ただし、手数料の安さだけではなく、管理会社や担当者の信頼性も加味して委託契約を結ぶことが大切です。
※自主管理を選択するとなると、多くのオーナーが心配するのは家賃滞納リスクです。その場合におすすめなのが家賃保証サービスを利用することです。「家主ダイレクト」は、家賃滞納リスクへの対策に加え、法的手続き費用サポート、入居者募集サポートなどもついており、自主管理オーナーが安心して経営に専念できる仕組みが整っています。ぜひチェックしてみてください。
サブリース契約においては、入居者が契約する相手方はサブリース会社であるため、サブリース契約を解約した後は、オーナーが入居者との間で新たに賃貸借契約を締結することになります。サブリース契約解約後、オーナーが代わって管理を行うのか、または管理会社を変更するのかを判断し、それを入居者に伝えて、新たに賃貸借契約を結び直します。
この際に、入居者の属性や連帯保証人の有無など、入居者についての情報を確認しておくことをおすすめします。管理会社に管理を委託する場合には、入居者との契約手続きは管理会社が代行してくれますが、入居者の選定などについてはオーナーも関与することが望ましいでしょう。
また、空室がある場合には、速やかに入居者の募集もしなくてはなりません。引き渡された物件の状況によっては、補修やリフォームが必要なケースもあります。できる限り早めに空室を埋めて、新しい入居者と賃貸借契約を締結できるように心がけることが大切です。
サブリースは管理の手間がかからず空室リスクの心配もないものの、手取りの家賃はそのぶん低く設定されるので投資利回りは低くなる傾向があります。さらに年数の経過とともに、家賃が減額されていくことが多いので、サブリース契約を解約したいと考えるケースもあるでしょう。
ですが、借地借家法の対象となるサブリース契約では、解約には正当事由が必要とされるなど、オーナー側からの解約は簡単ではありません。とはいえ、サブリース会社と交渉し、場合によっては違約金や立退料を支払うことで解約することは可能です。その際には、違約金や立退料を支払ってでも解約したほうがメリットはあるのか、トータルでの判断が必要になるでしょう。ぜひこの記事を参考にしてサブリースの解約について理解し、不動産投資の収益性向上を目指してみてください。
【監修者】森田 雅也
東京弁護士会所属。年間3,000件を超える相続・不動産問題を取り扱い多数のトラブル事案を解決。「相続×不動産」という総合的視点で相続、遺言セミナー、執筆活動を行っている。
経歴
2003 年 千葉大学法経学部法学科 卒業
2007 年 上智大学法科大学院 卒業
2008 年 弁護士登録
2008 年 中央総合法律事務所 入所
2010 年 弁護士法人法律事務所オーセンス 入所
著書
2012年 自分でできる「家賃滞納」対策(中央経済社)
2015年 弁護士が教える 相続トラブルが起きない法則 (中央経済社)
2019年 生前対策まるわかりBOOK(青月社)
かつて銀行や不動産会社に勤務し、資産運用に携わった経験を活かし、現在は主に金融や不動産関連の記事を執筆中。宅地建物取引主任、証券外務員一種、生命保険募集人、変額保険販売資格など保険関係の資格や、日商簿記1級など、多数の資格を保有し、専門的知識に基づいた記事の執筆とアドバイスを行う。