リフォームを検討する際に一番気になるのは、「品質を落とさずに、できるだけ費用を安くする方法はないか?」ということではないでしょうか?本記事では、リフォームの費用が安くなる可能性がある「分離発注」という方法について、メリットやデメリット、注意点などを分かりやすく解説します。ぜひこの記事を参考に、自分にとって最適なリフォーム法を見つけて、後悔しないリフォームを実現してみてください。
【著者】水沢 ひろみ
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目次
リフォームの分離発注とは、リフォームの依頼主がリフォーム会社や工務店などの施工会社を通さずに、リフォームを行う箇所ごとに別業者へ依頼することを指します。
一方、リフォームを行う際に、施工会社へリフォームに関わる工事一式を任せることを一括発注と呼びます。この場合には、施工会社がそれぞれ専門の工事業者に発注するなどして、全体の工事の工程について責任をもって管理することになります。
リフォームを行う場合、一つの業種による工事だけで完結するケースは少なく、いくつかの業種が関わることで完成するのが一般的です。たとえばキッチンのリフォームを例に取ると、以下の工程が必要になります。
お風呂のリフォームだと、以下の工程が最低限必要となります。
ですから、キッチン・お風呂・トイレなど、1カ所のリフォームを行うにあたっても、解体業者、大工、電気工事会社、配管工事会社、左官職人、クロス職人、設備会社など多数の業種が関わることになります。
一括発注だと、これらの業者に対して施工会社が発注を行うことになるので、間に入る業者の数だけリフォーム費用は高くなります。それに対し、分離発注では依頼主が直接、各専門業者へ依頼するため、中間のマージンが生じないことが大きな違いとなります。
リフォームを分離発注するメリットは、何よりも費用が抑えられるという点にあります。
一括発注では、リフォームの依頼主は施工会社と専門業者へ手数料を二重に支払うイメージとなりますが、先ほど説明したように分離発注だと一括発注の際に発生する中間マージンが発生しなくなります。そのため、そのぶんだけ安くリフォームを依頼することが可能になります。
また、分離発注するとなったら専門業者ごとに見積書を依頼することになるため、たとえばリフォームの箇所ごとに金額の明細を把握し、依頼主がそれぞれで最安値の業者を探して依頼することも可能です。各専門業者には得意分野があるため、特定の分野の工事費用は割安で行えるけれどもそれ以外は割高になる、というケースがあるからです。
とりまとめから発注まで上手に行うことによって、結果として2~4割ほどのコストダウンを実現できる可能性もあります。ただし、分離発注には良い面があるばかりではありませんので、安易な考えで飛びつくのは考えものです。その点について次章で詳しく説明していきます。
費用が安くなるという大きなメリットのある分離発注ですが、一方で、建築の知識が無い一般人には難易度が高いという意見は多く存在します。
まず、分離発注するとなると、リフォームの依頼主が工事の現場監督になり、業者間の調整をする必要があります。そのため、どの業種が先でどの業種が後なのかという工事の工程の順番をある程度理解しなくてはなりません。
先ほど紹介した一括発注だと、リフォーム業者が工事をまとめ、業者間の調整・連携を行ってくれますので、こういう心配は要りません。分離発注を選択する場合、そういう役割を担う人がいなくなり、自分が責任をもって行うことになる、というのを覚えておく必要があります。
そのうえ、業者間の調整がうまくいかないと工事が長引く可能性があります。賃貸オーナーの場合には、そのぶん入居者獲得の機会が減ってしまうことになりますので、分離発注によってリフォーム費用が節約できたとしても、トータルでの利益がかえって減ってしまう可能性もあり得ます。
また、複数の業者が関わるリフォームでは、トラブルが生じる可能性もあります。たとえば、A→B→Cという順番で工事が行われるケースを考えてみましょう。
【ケース2】
C業者の工事まで完了した後にA業者の不備が見つかり、A業者だけでなくB業者、C業者の工事のやり直しが必要になった
これらは、リフォーム工事の現場でしばしば起こり得るトラブルです。C業者のミスが原因であればトラブルに関わる費用はC業者が負担するのが当然と考えられますが、ケースによっては費用の負担を巡って揉める可能性、解決に時間がかかる可能性もあります。
一方、施工会社に一括発注する場合、こういったトラブルは施工会社の責任の下で解決すべき問題となります。リフォームを多く手掛ける施工会社はこういったトラブルの処理も慣れていることがあるので、迅速に対応してくれることも期待できます。
さらに、多くの業者が出入りしてリフォームを行う中では、たとえば室内に傷が付いていたことが分かった場合に、どの業者が傷をつけたのかという特定は自己責任で行わなくてはなりません。判別が難しいため、責任の追及ができない可能性もあります。
一括発注は分離発注に比べて割高なケースが多いですが、このような業者間の調整やトラブルが生じた際の処理など、「リフォームに関する知識や経験が必要な役割」を担ってくれているという面を考慮する必要があります。建築工事に関する知識や経験があり、手配に慣れているという人でなければ分離発注は難易度が高い、と言われるのはこういった理由があるからなのです。
分離発注以外のリフォーム発注方式として、これまで内容を説明してきた一括発注という方式以外にも、「施主支給」という方式もあります。本章では改めて分離発注と一括発注の違う点、そして分離発注と施主支給の違う点について、メリット・デメリットという点から見ていきます。
一括発注については前章までの内容で説明してきましたが、ここで改めておさらいしていきましょう。一括発注とは、リフォーム会社や工務店などの施工会社にリフォームに関わる工事を一任し、施工会社が各専門業者に工事の手配を行う方式をいいます。分離発注とは異なり、施工会社が専門業者間の調整や工期の管理を行うので、施主は施工会社に任せるだけでリフォームを完了させることができます。
一括発注のメリットには以下の内容が挙げられます。
一方、一括発注のデメリットには以下が考えられます。
一括発注のメリット・デメリットを考えると、建築に関する知識のない人にとっては、施工会社に全てを任せられる一括発注はおすすめです。一方で、建築に関する知識や経験があり、工事の手配などに慣れているというケースであれば、分離発注を選択してリフォーム費用を安くすることも選択肢として検討してみてもよいかもしれません。
続いて「施主支給」について説明します。施主支給とは、職人や大工などの業者に施工を依頼するけれども、使用する材料の入手は施主が行うという方法です。
施主支給のメリットは以下2点です。
一方、デメリットとして考えられるのは次の3点です。
コスト削減にこだわるあまりにすべての材料を施主支給にしようとすると、負担が大きいうえに完成まで時間がかかってしまうなど、デメリットのほうが大きくなりかねません。施主支給を検討するならば、特にこだわりたい場所や、コスト削減効果の大きな場所に限って利用してみるなどを検討することをおすすめします。
一括発注と分離発注について詳しく説明してきましたが、結局のところどちらを選択すべきなのでしょうか?
キッチン・お風呂・トイレなどといった特定の場所のリフォーム、クロスの張り替え、畳からフローリングへの張り替えなど、明らかに業種が分かるリフォームであれば専門的な知識がなくても分離発注できる可能性はあるといえます。
しかし、「古くなった部屋全体をリフォームしたい」「家全体をバリアフリーにリフォームしたい」などというように、リフォーム範囲が広い場合や、業種が分からないなど全体像が不明な場合は、最初からリフォーム会社に依頼したほうがリスクも労力も少ないでしょう。特にリフォーム初心者の場合は、必要な情報を得るためのコストを考えるとあまりおすすめできません。
また、分離発注を選択するにしても一括発注を選択するにしても、相見積もりをとって比較検討し、適正価格をみることが大切です。両者の差があまりに大きいのであれば分離発注を検討するメリットがあるかもしれませんが、差がそれほどないのであれば、手間を考慮して一括発注のほうが良いケースもあると考えられます。
品質を落とさずにリフォーム費用をできるだけ安くする方法のひとつとして、分離発注という方法に焦点をあてて解説しました。分離発注することでリフォーム費用を抑えられる可能性があるものの、そのためには多くの手間とリスクが生じること、「一括発注では工事の全過程を調整・管理するためのコストがかかっている」と考えると必ずしも高額であるとは限らないことを理解できたのではないでしょうか。
「どういう範囲でリフォームを検討しているのか」「(ご自身が)工事に対する知識はあるのか」といったことをよく考え、慎重に分離発注を選択するか否かの判断をすることをおすすめします。また、分離発注の仕組みや部分ごとの価格を知ることは、一括発注する際に適正価格を推測するための目安にもなるでしょう。
ぜひ本記事を参考にして、最適なリフォームを実現してみてください。
かつて銀行や不動産会社に勤務し、資産運用に携わった経験を活かし、現在は主に金融や不動産関連の記事を執筆中。宅地建物取引主任、証券外務員一種、生命保険募集人、変額保険販売資格など保険関係の資格や、日商簿記1級など、多数の資格を保有し、専門的知識に基づいた記事の執筆とアドバイスを行う。