人口減少が加速する日本においては、高齢者を入居者として検討する必要性が高まっています。しかし、高齢者に入居いただくとき、気になるのが孤独死リスクです。本記事では、はじめに高齢者マーケットの可能性を再確認し、その上で、孤独死リスクを軽減するための「高齢者見守りサービス」と「孤独死保険」について解説していきます。これらのサービスを利用することで、孤独死リスクを回避しつつ安定経営ができることをご理解いただけるはずです。
目次
これから先、本格化する人口減少社会は、賃貸住宅の経営に逆風です。しかし、単身高齢者マーケットに着目すれば、状況は一変します。今後、単身の高齢者世帯が確実に増えていくため、高齢者向けの賃貸住宅には追い風です。
実際に、65歳以上の単身世帯(高齢者の単身世帯)がこれから先、どれくらいのペースで増えていくか推計をチェックしてみましょう。下記のように2020年と2040年を比べると、65歳以上の単身世帯は193万世帯も増加していきます。
▽日本の65歳以上の単身世帯数の予測
年 | 世帯数 |
2015年 | 625万世帯 |
2020年 | 703万世帯 |
2025年 | 751万世帯 |
2030年 | 796万世帯 |
2035年 | 842万世帯 |
2040年 | 896万世帯 |
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」(2018年全国推計)※万以下は四捨五入
ただ現実的には、「高齢者向けの賃貸住宅が有利!」と頭でわかっていても、この市場に参入すべきか迷うオーナーも多いでしょう。障壁になるのは孤独死リスクです。もし、孤独死が発生すれば、家賃の減額や空室リスクは避けられません。
逆にいうと、孤独死リスクさえ解消できれば、「高齢者向けの賃貸物件に参入しやすくなる」といえます。そこで取り上げたいのが、孤独死防止対策として注目されている「高齢者見守りサービス」です。
高齢者見守りサービスは、「安否確認型」と「IoT(モノのインターネット)型」に大別されます。
安否確認型の高齢者見守りサービスは、決まった曜日や時間帯に安否確認を行うものです。安否確認に出られなかった場合、指定されたメールアドレス(ご家族やオーナーなど)に連絡がいく仕組みです。
具体的なサービスの一例としては、株式会社あんしんサポートの「あんしん見守りサービス」があります。このサービスでは基本的な安否確認に加えて、看護師やヘルパー資格を持つ専門家の365日24時間サポートも行っています。
同様の安否確認型の高齢者見守りサービスとしては、ホームネットの「見まもっTEL」もあります。これは見守りサービスにプラスして、孤独死が発生したときの原状回復費用や事故対応費用などを提供するものです。
IoT型の高齢者見守りサービスは、生活動線にセンサーを配置したり、見守り用のカメラを室内に配置したりして高齢者の生活をサポートします。機器の進化と Wi-Fi無料の賃貸物件が増えている環境などを背景に今後、発展していくと予測されます。
サービスの一例では、セコムが提供する「親の見守りプラン」では、室内のセンサー設置と高齢者の胸元ペンダントの2つの方法で高齢者をサポートします。胸元ペンダントは、体の異変を感じたときにそれを握ると、セコムに緊急信号が送れる仕組みです。
このような見守りサービスで孤独死リスクは軽減できますが、あわせて孤独死保険を活用するとさらなるリスクヘッジになります。孤独死保険とは、所有している賃貸住宅で入居者の孤独死が発生したとき、原状回復費や空室期間の家賃保証(または値下げしたぶんの家賃保証)などをカバーしてくれるサービスです。
孤独死保険の一例としては、 住友生命グループのアイアルが提供する「無縁社会のお守り」があります。原状回復費用として100万円まで、空室期間などをカバーする家賃保証保険金として200万円までが支払われます(いずれも1事故あたり)。
自主管理をしているオーナー向けの「Casaの家主ダイレクト」にも孤独死保険が自動付帯されています。家主ダイレクトは、滞納があっても家賃を24ヶ月100%保証するサービスで、20万人以上のオーナーに利用されています。この家主ダイレクトに加入すると、孤独死保険が自動的に付き次の4つのリスクをカバーできます。
これから先、高齢者向け賃貸住宅のニーズは確実に高まってきます。これを見込んで、数多くのオーナーがこの市場に参入してくることが予想されます。そのため、ここでご紹介した高齢者見守りサービスや孤独死保険を活用して競争が激化する前に参入し、先行者利益を得ることが大切になってくると考えられます。
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