賃貸経営を行う際に迷う人が多いのが、物件の管理方法です。不動産会社へ依頼する管理委託には「一般管理」と「サブリース」があり、そのほかにもオーナー自らが管理する「自主管理」もあります。本記事では、これら3つの管理方法について詳しく解説します。
【著者】矢口 美加子
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
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目次
管理委託契約とは、賃貸物件や分譲マンションなどの管理をオーナー自身が行わず、管理会社へ委託する契約のことです。 管理会社に委託することで、オーナーは入居者管理や建物管理といった賃貸経営につきまとう業務を省けるため、手間をかけずに不動産投資を行うことができます。
冒頭で説明したように、管理委託の方法には「一般管理契約」と「サブリース契約」の2種類があり、どちらも入居者募集や契約・更新の手続きなどを代行してくれる点では共通していますが、一般管理契約はオーナーの権限が強いのに対し、サブリース契約はサブリース会社の立場が強くなります。それぞれの管理契約内容について詳しく解説します。
一般管理契約とは、入居者募集や建物清掃などの管理業務を管理会社に委託し、管理費を支払う契約のことです。管理会社は賃料の回収・クレーム対応・設備管理のすべてを代行してくれるため、不動産管理に詳しくないオーナーでも賃貸経営を行うことができます。
一般管理契約はオーナーの権限が強いため、より良い管理を目指したいといった場合には、管理会社を変更することも可能です。家賃設定や入居者の選択もオーナーの意向で決められます。
オーナーは物件所在地の近くにある不動産会社へ委託することが多く、管理費用は月額家賃の5%程度が相場となっています。
一般管理契約のメリットとしては、➀収益性が高いこと、②管理する時間や労力を省けること、③手厚いサポートを受けられること、④入居者を選べることが挙げられます。
一般管理契約の場合、原則としてオーナー自身で賃料を決められるので収益性を高められる上、管理会社に支払う管理費用が納得できない場合は交渉の余地もあります。また、入居者の募集や契約、退去時の原状回復費用の精算など、賃貸経営に必要な管理業務をすべて依頼できるので管理に要する時間や手間がかかりません。
そのほか、管理会社はサポート体制が手厚いため、入居者が入りにくい物件の集客や入居者とのトラブル解決など、オーナー自身では手に負えないような問題にも対応してくれます。
一般管理契約のデメリットとしては、➀管理費用の支払いが発生すること、②空室リスクがあること、③管理会社の選定を間違うと損害を受けること、という3点が考えられます。
管理会社には毎月、不動産管理費を支払う必要があり、仮に毎月の家賃収入が50万円で管理費が5%の場合には約2万5千円の管理委託料が発生します。
また空室リスクもあり、立地の良くない物件の場合はなかなか入居者が決まらず、キャッシュフローが厳しくなる可能性もあります。サブリース契約は空室の有無に関係なく一定の賃料を得られますが、一般管理契約は管理会社が真摯に入居者募集を行っても、すぐに入居者が見つからないこともあります。入居者がいなければ家賃収入は入らないため、サブリースのように安定した収入を得られるとは限りません。
そのほか、質の悪い管理会社を選んでしまうと損害を受ける可能性もあるでしょう。入居者からのクレームに対して適切な対応を行わない、空室があっても熱心に営業活動をしないなど、やるべきことを行わない管理会社の場合は今後の管理契約を見直すことが必要です。
サブリース契約とは、賃貸物件の経営そのものをサブリース会社に任せる管理方法です。オーナーから賃貸物件の全戸をサブリース会社が借り上げ、オーナーとサブリース会社の間で普通賃貸借契約を結びます。転貸(てんたい)といわれる方法であり、いわば「合法的な又貸し」です。
一般管理契約だとオーナーが主体的に経営をしますが、サブリース契約では借主であるサブリース会社の権利が強いのが特徴です。 サブリース契約は、オーナーが貸主、サブリース会社が借主となるため、借地借家法が適用されるからです。 サブリース会社が入居者を募集・審査して建物管理や退去時の精算をし、賃貸経営を行います。
なお、修繕費は貸主であるオーナーの負担となるため、サブリース会社はオーナーに修繕費を請求します。
サブリース契約のメリットは、➀賃貸経営の手間がかからないこと、②空室に関係なく一定の賃料を得られること、③相続税対策に有効なことが挙げられます。
サブリース会社が賃貸経営を行うため、オーナーは管理業務に手間や時間がかかりません。家賃回収や建物清掃、退去時の原状回復工事などの一切の業務をしてくれます。また、空室に関係なく一定額の家賃も得られるため、収入が安定する点もメリットです。一般管理契約の場合は空室が発生すると賃料が入らないため収入が減りますが、サブリース契約は管理会社が建物全体を一括で借り上げるため、空室の有無にかかわらず同じ賃料が入金されます。
そのほか、相続税対策に有効な点もあります。賃貸物件の所有者が亡くなり相続が発生すると、その物件に対して相続税が課税されます。しかし、「第三者に部屋を貸している」という事実があると、資産価値が下がり、賃貸物件の入居率が高いほど相続税額は低くなります。サブリース契約だと「入居率100%」という状態で相続税が計算されるため、相続税を抑えられるのです。
一方、サブリース契約には➀収益性が下がること、②同額の家賃保証がいつまでも続くわけではないこと、③入居者を選べないこと、④オーナー側からサブリース契約の解約が難しいこと、という4点のデメリットもあります。
サブリース契約は一般管理契約と違い、家賃全額がオーナーの収入になるわけではありません。入居者との間にサブリース会社が介入しているため、オーナーの手取りは少なくなります。また注意したいのは、「家賃保証」と謳っていても、永久に同じ金額を得られるわけではない点です。保証家賃の見直しは2年ごとに行われるのが一般的で、大抵の場合は下げられてしまうからです。
サブリース契約だとオーナーが物件の入居者を選べるわけではないため、高齢の入居者が孤独死してしまったり、外国人の入居者がマナーを守らなかったりなど、入居者に関するトラブルが発生する可能性もあります。
そのほか、オーナーからサブリース契約を解約しようとしても簡単ではないという点もあります。なぜなら、先ほど紹介したようにサブリース契約は借地借家法の規制を受けるため、正当な事由が必要になるからです。サブリース契約を結ぶ場合は、契約内容をよく検討してから実行することをおすすめします。
不動産管理会社の業務は、➀入居者募集に関する仲介業務、②賃貸管理業務の2つです。それぞれ詳しく説明します。
入居者募集に関連する主な業務は、➀入居者募集(集客業務)、②内見の案内、③契約締結の3つです。
不動産情報ポータルサイトや自社HPなどに物件広告を掲載して、入居者の募集を行います。広告を見た入居希望者や複数の仲介会社からの問い合わせに対応します。入居希望者が見つかったら現地へ連れていき、内見案内を行い、室内の設備や周辺環境について説明します。入居希望者が物件を気に入ったら、賃貸借契約の締結です。家賃保証会社の審査に通り次第、賃貸借契約書を作成して賃貸借契約を結びます。
契約後に欠かせないのが日常的な賃貸管理業務です。主な賃貸管理業務として、➀契約管理、②入居者対応、③建物管理が含まれます。
契約管理とは契約更新業務のことで、更新の時期が来たことを入居者に通知し、更新契約を結びます。退去する入居者の退去手続きも含まれ、退去時の部屋の状態を確認して原状回復工事を手配します。入居者からのクレーム対応や、契約違反をする入居者に注意するのも大切な仕事です。また、エントランスやゴミ捨て場などといった建物の共用部分を清掃したり、補修する箇所がある場合は業者を手配したりする業務もあります。
賃貸経営は、いかに管理業務をきちんと行うかという点でほぼ決まる面があるため、管理会社の選び方は重要なポイントです。管理会社を選ぶときには、以下4つの点に気をつけると良いでしょう。
・管理手数料
・客付け力
・プラン内容
・担当者の対応
ここでは、それぞれのポイントについて解説します。
1つ目は管理手数料です。すでに紹介した通り、管理手数料の相場は毎月の家賃収入のうち5%程度が一般的であるため、もしもそれ以上の金額を提示された場合、その理由について問い合わせましょう。賃貸管理手数料の金額が想定よりも違うと、オーナーの家賃収入には大きな差が出てくることになるため、管理内容に見合っているかどうかを確認するようにします。
ただし、手数料が安いというだけで選ぶのは問題です。賃貸管理手数料以外の入居更新時の事務手数料・定期清掃・建物巡回・設備点検などといった別途費用が発生する可能性があるため、管理契約を結ぶ前に確認することが大切です。
管理会社の客付け力も重要です。客付け力とは、空室が出て入居者募集を行った際、すぐに入居者を見つけられる営業力のことです。案件数に対して成約率が高い会社ほど客付け力が高いと考えられます。客付け力が高い管理会社に管理を委託すると、空室期間を短く抑えられるので、収益が下がる心配はないといえるでしょう。
「不動産ポータルサイトで多数の広告を出している」「集客力が高い」「実際に管理している物件の入居率が高い」などといった特徴があると客付け力が高い可能性があるため、こういった管理会社を選びましょう。
3つ目は、管理会社の賃貸管理プランの内容です。依頼したい範囲の業務をカバーしている会社なのかどうかを調べます。賃貸管理プランの内容にはさまざまなものがあり、プランごとに内容や金額には違いがあります。対応業務が多いほど利用料は上がるため、自身が必要だと思うプランを選ぶようにしてください。
4つ目は、管理会社や担当者の対応です。物件管理がきちんと行われていないと、入居者の不満が多くなり退去率が上がってしまいます。修繕やクレームが発生したときに迅速かつ適切な対応を行う管理会社に委託しましょう。
不動産会社に管理を委託する以外にも、自主管理という方法を選ぶのも選択肢のひとつです。たとえば所有物件戸数が少ないケース、費用を抑えたいケース、オーナー自身に時間に余裕があるケースなどの場合、自主管理を選ぶのも良いでしょう。
自主管理とは、オーナー業務を全て自分で行う方法で、入居者の募集・家賃回収・物件の修繕や清掃・退去時の精算など、本来ならば管理会社が行う管理業務をオーナー自身が行います。自主管理でオーナーが行う主な業務は、入居者管理業務と建物管理業務の2つに分けられますので、それぞれ詳しく解説します。
入居者管理業務に含まれるものは次の通りです。
オーナーは所有物件に空室が出たら、不動産情報ポータルサイトなどに広告を出して、すぐに次の入居者を募集します。自社で借主を見つけた場合は、内覧対応も必要です。入居希望者の審査が通ったら、貸主・借主で賃貸借契約を締結し、入居後も更新業務を行います。また、設備不良など入居者からクレームを受けた場合は、設備機器を修理するために修理業者を手配します。
入居者が家賃を滞納した場合の回収業務もあります。ただし滞納が長期化すると回収するのが難しい可能性が高いため、あらかじめ家賃保証会社に加入しておく方法もあります。家賃保証会社を利用していれば、電話で連絡をするだけで保証会社が立て替えてくれるため、手間や労力がかかりません。
そのほかにも、入居者が退去する際の退去手続きや、原状回復費用などの精算も、オーナー自身で行う必要があります。
建物管理業務には、以下のものが含まれます。
エントランスや共用廊下、ゴミ捨て場など、共有部分の清掃や点検を定期的に行います。破損した箇所があれば補修も必要です。建物の内外を補修する場合はリフォーム会社を手配します。
入居者が利用するゴミ捨て場を清掃・管理することも必要です。消防法により消防設備を設置することが義務付けられている建物のオーナーは、設置した消防設備を定期的に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告することも必要です。マンションの場合は、1年に1回、総合点検が行われます。
ある程度時間に余裕があって所有物件が少ないオーナーならば、自主管理はおすすめできるといえます。不動産会社に支払う管理費用を省けるため、その分利益を上乗せできます。とはいえ、入居者募集から家賃回収業務までの全てを自分だけでこなすとなると、多少の不安はつきものです。万が一、家賃滞納が発生すれば、回収するのが容易ではないため、手間や労力がかかってしまいます。
そこで利用したいのが、家賃保証サービスです。株式会社Casaの「家主ダイレクト」を一例として紹介すると、家賃保証はもちろん、自主管理で経営を行うオーナーのサポートも行う家賃保証サービスとなっています。たとえば、空室解消のための提案、入居者募集などを無料で行っているため、空室対策に効果的です。
家賃回収は多くのオーナーが心配に感じる部分ですが、家主ダイレクトの場合、家賃はCasaが前月末日にオーナーの口座へ全額入金します。家賃滞納の心配がないため、キャッシュフローが安定するというメリットがあります。管理委託と自主管理で迷うオーナーはぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
不動産会社に管理を委託する場合、一般管理とサブリースがあり、それぞれ内容や収益に違いがあります。管理を不動産会社に委託することで、オーナーの手間や時間がかからなくなるため、物件数が多い場合は効率的に賃貸経営を行えます。物件数がそれほど多くない場合は、自主管理もおすすめです。もしも自主管理に不安がある場合、家賃保証サービスを利用してみることも検討してみてください。
宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を保有。家族が所有する賃貸物件の契約や更新業務を担当。不動産ライターとしてハウスメーカー、不動産会社など上場企業の案件を中心に活動中。