2021.02.12
賃貸管理

原状回復の費用負担|オーナー・入居者それぞれの注意点とは

賃貸契約でトラブルが発生しやすいことのひとつは、原状回復による費用負担についてです。オーナー負担と入居者負担のそれぞれのケースを理解しながら、オーナーは入居者との良好な関係を築いていきましょう。
 

賃貸契約のトラブルが後を絶たず

オーナーにとって気掛かりとなるのが、賃貸契約に関するトラブルです。中でも多いのが敷金返還に関するトラブルです。入居者の中には家賃の滞納がない限り、敷金は全額戻ってくると思い込んで、原状回復に対する費用の認識がないケースが見られます。

入居者の責任で発生した原状変化は回復させなければなりません。その際にあらかじめオーナーに預けた敷金は回復費用を差し引いて入居者に返還されますが、双方でしっかりした取り決めがなされていないと、トラブルに発展する場合があるのです。

まずは、原状回復の定義から確認しましょう。

原状回復費用とは

原状回復とは、法律関係が一定の事情によって変化した場合に、もとの状態に戻すことを指します。民法545条1項には「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を現状に復させる義務を負う」とあります。原状回復は当事者が負担すべき義務と規定されているのです。

つまり原状回復の義務は入居者・オーナー双方にあるので、費用もお互いに負担することになります。では、入居者、オーナーそれぞれの負担になるケースを、国土交通省住宅局が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」から見てみます。

経年変化や通常使用による損耗などはオーナーの負担に

建物にとって避けて通れないのが経年による変化や損耗です。住宅はある程度長い年数居住すれば自然と劣化していく部分があります。入居者がごく普通に住んでいても起こりうる変化として、畳の変色、フローリングの色落ち、クロスの変色、テレビ・冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)などがあります。

また、自然劣化ではないものの、やむを得ず起こりうる変化として、家具の設置による床・カーペットのへこみ・設置跡、壁に貼ったポスターや絵画の跡、壁等の画鋲・ピンなどの跡、エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴・跡などがあります。

入居者の故意・過失ではないものは、おおむねオーナーの負担になると考えて良いでしょう。

入居者の負担になるケースとは

逆に入居者の負担になるケースは、故意・過失や通常の使用方法に反することによって生じた損傷などです。

たとえば、入居者の不注意によって生じる損傷として、カーペットに飲み物などをこぼしたことによるシミやカビ、引っ越し作業などで生じたキズ、鍵の紛失または破損による取り替えなどです。

また、入居者の手入れ不足によって生じる損傷としては、冷蔵庫下のサビを放置した場合のサビ跡、日常の手入れを怠ったための台所の油汚れ、結露を放置したことによるシミやカビ、クーラーの水漏れを放置しことによる壁の腐食などです。

さらに、通常の使用に反することによって生じる損傷として、重量物をかけるためにあけた壁などのくぎ穴やかぎ穴、借主が天井などに直接付けた照明器具の跡、落書きなどの故意による毀損、飼育ペットによる柱などのキズや臭いなどです。

オーナー負担と入居者負担、ケースバイケースで把握しておこう

以上がおおまかな費用負担の例ですが、ガイドラインに記載のない事項に関しては、ケースバイケースで把握しておく必要があります。ガイドラインは法律ではないため、すべてのトラブルを明確に解決できるわけではありません。入居の際には契約書に加えて、「原状回復に関する費用負担割合」の取り決めを添付するなど、入居者の同意をきちんと得る必要があります。

オーナーや不動産会社の願いは、入居者に気持ちよく暮らしてもらうことです。トラブルの元となるお金の問題を明確にして、入居者との良好な関係を築いていきましょう。

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