収入源の一つとして近年注目が集まっている「不動産投資」。
毎月定期的な収入が得られることから魅力的に映るかもしれません。
しかし、先日世間をにぎわせたサブリース契約問題のように、大きなトラブルも起こっています。
不動産投資の成功のカギを握るのは、しっかりと経営のシナリオを描けるかどうかです。
サブリース契約のトラブルが急増した原因を見極め、注意点をきちんと理解しておきしましょう。
平成30年3月27付(同年10月26日更新)で、国土交通省がホームページ上に公表した文書、「アパートなどのサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!」の記述は、サブリース契約のトラブルを抱えていない人でも不安を感じるような内容が含まれています。
契約そのものの金額が大きくなりやすい不動産の購入は、いくら万全を期しても、心配や不安が尽きないほど複雑で難解なものです。
また、国の関係省庁が合同で文書を公表するほど、サブリーストラブルの事態は深刻であるといえるでしょう。
サブリース契約に対する注意喚起の文頭には、「相手方から(取引の内容)説明を受けること」「契約内容、賃料減額などのリスクに対する十分な理解を得ること」が明記されています。
この注意喚起が公表されるまでに、消費者トラブルに関する相談窓口には、多くの問い合わせや相談が寄せられていました。
そこで注意喚起の中には、これらの賃貸住宅に関するトラブルについて相談ができる、公益社団法人各協会への連絡先や、全国の各国土交通省窓口(賃貸住宅管理業者に関するもの)が記されています。
また、消費者トラブルに関する相談窓口、融資に関する金融サービス利用者相談室、法的トラブルに対する相談を受け付ける法テラスサポートダイヤルも併記されています。
さらにトラブルの原因となりそうなポイントとその解説、また投資用不動産向けの融資を受ける際の注意点、そして実際に寄せられた相談の事例も紹介しています。
また、平成30年11月30日には「アパートなどのサブリース契約でとくに覚えておきたいポイント集」も公開しており、サブリース契約のトラブルを回避するためのヒントを提供しています。
複数人で一物件を借りるシェアハウスは、単独で支払うべき家賃を他の入居者と分担できるというところにメリットを感じた若者を中心に注目を浴びました。とくに都心部では、不動産投資家にとって、狭い部屋でも高い家賃が見込める可能性があるため、シェアハウス需要が高まっています。
このシェアハウスを事業として取り入れたのが、スマートデイズという企業です。「単身女性が安心して住まえるシェアハウス」を売りにして、不動産投資家だけでなく、一般のサラリーマンに向けて、シェアハウス物件の購入を推し進めました。
スマートデイズが行っていたのは、物件所有者(買主)から建物を借受けて、シェアハウス入居者に部屋を貸す「転貸」。
この転貸(又貸し)を繰り返し、約束の借り上げ家賃を貸主に支払うことができなくなってしまった……。
これが、不動産業界で広く知られる、シェアハウス「かぼちゃの馬車」問題です。結局、スマートデイズは後に経営破たんしました。
賃貸用不動産の購入者は、その多くがスルガ銀行から融資を受けていましたが、通帳残高改ざんや、長期経営計画の未確認など、スルガ銀行が組織ぐるみで不適切な融資を繰り返してきた実態も明かされました。
これによりスルガ銀行も業務停止命令を受けることになったのです。
平成19年に国交省が作成した「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」は、投資用物件の買主(物件所有者)と売主、借受業者など複雑に関係する当事者間の紛争を未然に防ぐことを目的に作成されたものです。
転貸(又貸し)をする賃貸管理事業者と物件の所有者の間には、不動産を売る・買う、また、借りる・貸すという二者間の取引とは違った権利関係が発生します。
契約書の中に、物件の詳細や契約の内容を細かく記し、契約時以降も誤解が生じないための策として、省庁がひな形を作った、というわけです。
平成30年3月に、住宅原賃貸借標準契約書の改訂版が、同じく国交省ホームページで公開されました。従前の契約書に「賃料の改定時期」と「サブリース業者が解約をすることができない期間」をそれぞれ明示するための記入欄が付け加えられています。
一括借受をする借主のサブリース業者が、貸主(物件所有者)に対して、家賃減額や中途解約されるリスクを軽減するためです。
健全なサブリース契約の「見える化」につながり、想定できないトラブルを回避すべく、不明点もあらかじめ明記欄されることで、貸主に対する注意促進にもつながります。
サブリース契約とは、物件管理業者が所有者から住宅を一括して借り上げた後に転貸し、所有者(貸主)に家賃保証をする仕組みのこと。
すでに土地を所有している人や、親族の土地で相続問題が後々起こりそうな人にとって、「賃貸事業には土地を活用しながら節税ができるメリットがある」とイメージを抱く人も多いでしょう。
実際に、賃貸事業を始めて利益を得ている人もいますが、すべての人がプラスの利益を出せるわけではありません。
むしろ、近年は賃貸用物件着工数の急増や空き家など、物件過多が社会問題になっています。
その中で空き部屋を出さずにしっかりと家賃収入を得ることができれば……という単純な皮算用に連想されるのが、サブリース契約なのです。
不動産投資を、借金(負債:マイナススタート)により始める場合は、借入を数十年にわたって返済することを考えると、「もし返済ができなくなったらどうしよう」と不安になります。
「収入が途絶えるリスクはありません・安心して運用しましょう!」という言葉こそ、実は疑ってかかるべき、サブリース契約の「甘い罠」と言ってもよいでしょう。
前述したスマートデイズは、家賃収入の見通しに不安を抱かせないように、「家賃30年保証・一括借り上げ」という条件を提示して物件購入者を集めましたが、実際はその条件どおりに家賃収入が支払われず、返済が滞るというトラブルの相談が急増しました。
注意しなければいけないのは、サブリース事業者が「借主」であるという点です。
家賃収入を数十年間にわたり保証するといっても、事業者は不動産所有者から物件を一括で借りている立場です。
賃貸借には借地借家法が適用されますが、この法律は立場の弱い借主を、貸主から保護する目的があります。
そのため、たとえサブリース事業者から勧められて不動産を購入したとしても、借主であるサブリース事業者から「家賃を減額してください」と言われて貸主がダメと断るのが、非常に難しいところが問題なのです。
サブリース住宅原賃貸借標準契約書の改訂が行われ、ひな形に家賃保証期間を記す欄が追加されていますが、これらの契約内容は、書面に押印する前に(難しそうな書面ですが)きちんと内容を理解しておくことが大切です。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズは経営破たんしてしまいましたが、長期間の家賃一括借受を約束していた当初から、自転車操業のような状態だったのでしょう。
これは、スルガ銀行に難しい融資審査を通過させ、物件数を増やして収益を底上げさせたことから推測できます。
投資物件の借受から半年ほどで家賃減額、そして支払いストップ……と、こんな短期間で資金繰りが立ち行かなくなってしまうとは、よほど見通しが甘かったと言わざるを得ません。
こうした状況から、購入者に対して、不安を感じさせないように「シェアハウス利用者紹介」や「物件のあっせん紹介」などで別に手当やリベートを提供するという話をちらつかせていたという話もあります。
こうしたうまい話やここだけの話は信用してはいけません。
契約書に明記されて初めて効力を発するものです。
疑問に思ったことや、分からないことはその都度確認をして、不安要素を取り除くようにしましょう。
こうしたトラブルから身を守れるのは、自分だけです。
時代の流れの中で、ひとときの注目を浴びる事業やアイデアは、次々出て来ます。
しかし、その時代にもてはやされたことが、この先何十年もの間、ずっと続くという保証はありません。
サブリースは、借主と貸主、お互いの条件や事情によっては円滑にトラブルなく活用できる契約です。
契約を交わす当事者が契約の内容を理解し合って、長く良好な関係を続けていけるように努めれば、トラブルは起こりにくくなるはずです。
リスク管理や長期の経営見通し、将来の費用や納税の負担額などを明確にして、自分事として責任を持つ意識が必要なのでしょう。
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