2021.02.10
不動産トピックス

ホームインスペクションの義務化とは?費用や課題なども解説

2018年4月1日に宅建業法が改正されたことで、ホームインスペクションについて、専門家(インスペクター)の紹介や実施の有無に関する報告が義務化されたことをご存知でしょうか。本記事では、ホームインスペクションについての義務化された内容や、詳細についてお伝えしていきます。

 

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ホームインスペクションとは?

ホームインスペクションとは、「建物の基礎や外壁のひび割れ・破損、天井の雨漏りなどを専門家が調査し、その劣化状況を報告すること」です。中古住宅の売買がさかんな欧米では、購入前にホームインスペクションが行われるのは当たり前になっており、ホームインスペクションを実施する専門家をさす「インスペクター」は不動産売買時に必要とされる存在となっています。

ホームインスペクションで具体的に調査すること

ホームインスペクションで調査する内容については、国土交通省が2013年にとりまとめた「既存住宅インスペクション・ガイドライン」をもとに紹介します。

既存住宅インスペクション・ガイドライン内では、「既存住宅現況検査の内容」として以下のように記載があります。

○現況検査の内容
● 現況検査の内容は、売買の対象となる住宅について、基礎、外壁等の住宅の部位
毎に生じているひび割れ、欠損といった劣化事象及び不具合事象(以下「劣化事
象等」という。)の状況を、目視を中心とした非破壊調査により把握し、その調査・
検査結果を依頼主に対し報告することである。
● 現況検査には次の内容を含むことを要しない。
① 劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか否か、欠陥とした場合の要因が
何かといった瑕疵の有無を判定すること
② 耐震性や省エネ性等の住宅にかかる個別の性能項目について当該住宅が保有
する性能の程度を判定すること
③ 現行建築基準関係規定への違反の有無を判定すること
④ 設計図書との照合を行うこと

上記のように、ホームインスペクションにおける現況調査では、基礎や外壁のひび割れ、欠損については主に「目視」で調査を行い、瑕疵の有無や耐震性、省エネなど性能の判定については調査内容に含まれないとされています。

インスペクションの専門家を「インスペクター」と呼ぶ

インスペクションを行う専門家のことは、インスペクターといいます。ただし日本においてはインスぺクターは通称で、現場で調査を行うのは建築士、または2017年2月に制定された「既存住宅状況調査技術者講習登録規定」に基づいた「既存住宅調査技術者」の資格者となっています。

宅建業法の改正により盛り込まれた内容とは

日本では中古住宅よりも新築住宅のほうが比較的人気は高いですが、今後確実に増えていくことが確実だとみられている空き家問題などを背景に、より中古住宅の売買を活発にしていこうという動きがあります。こちらの国土交通省の住宅経済関連データによると、平成5年に4,476千戸だった空き家は、平成25年に8,196千戸に増加していることがわかります。

 
こうした動きの中で、中古住宅の購入を検討する人がその品質や状態に対して感じる負担を解消しようと、2016年に建物状況調査(ホームインスペクション)を盛り込んだ法改正が成立し、2018年4月1日より施行されています。この法改正により宅建業法に以下の3つが盛り込まれることになりました。

・媒介契約において建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の交付
・買主等に対して建物状況調査(インスペクション)の結果の概要等を重要事項として説明
・売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付

 
このことから、売買取引における以下の3つの時点で、建物状況調査(ホームインスペクション)に関する取り組みが義務化されました。

①媒介契約時
②重要事項説明時
③売買契約時

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①媒介契約時
売主または買主は、不動産会社に対して売却や購入の仲介を依頼するのが一般的で、仲介を依頼する時は売主、買主と宅建業者とで媒介契約を締結します。その媒介契約締結時に、宅建業者からホームインスペクションを行う業者の紹介の有無を示し、売主、買主の意向に応じて紹介する必要があります。

②重要事項説明時
不動産の売買においては、売買契約の締結までの間に宅建業者から売主、買主それぞれに対して重要事項説明をしますが、その重要事項説明時にホームインスペクションの結果を買主に対して説明する必要があります。

③売買契約時
売買契約締結時には、建物の現況について売主と買主が相互に確認し、実際に確認したことを記載した書面を作成した上でそれぞれに交付する必要があります。なお、大家さんについては物件の取得時や保有物件の売却時に上記の書面の交付や説明を受けることになります。

ホームインスペクション自体の義務化ではない

前章の宅建業法の改正内容からも分かるように、義務化されたのは斡旋についてやホームインスペクションの結果についての説明のみで、ホームインスペクション自体が義務化されたわけではありません。買主としては安心して中古住宅を購入できるというメリットがありますが、当然ながら実際にホームインスペクションを実施するにはコストがかかります。

今後、ホームインスペクションが広く普及していくためには、ホームインスペクションに対する正しい理解と周知が進むこと、そして、多くの中古住宅でホームインスペクションが実施され、「ホームインスペクションを受けていない中古住宅だと買い手がつきにくい」といった状況が実現される必要があるでしょう。

ホームインスペクションの費用について

ホームインスペクションにかかる費用は明確に決められているわけではありません。床下や屋根裏に進入して調査するかどうかなど、調査内容によっても費用に違いがあります。一般的なインスペクションの相場は4~7万円程度、床下や屋根裏に進入するような調査では10万円以上の費用がかかることもあります。今後、インスペクションの実施がより活発になっていけば、価格競争が起こってより安くなっていく可能性はあると考えられます。

ホームインスペクションの課題

2018年4月に改正された宅建業法で、斡旋や書面の発行が義務化されたインスペクションですが、今後に向けた課題としては以下のようなものがあります。

①売主主導のインスペクションになる可能性がある
②今後普及していくかは不明である

それぞれ詳細を見てみましょう。

①売主主導のインスペクションになる可能性がある
今回の宅建業法の改正では、媒介契約時に不動産会社からインスペクターの斡旋の有無について提示し、意向に応じて斡旋する必要があるとされています。しかし、不動産会社から紹介を受けたインスペクターによるインスペクションが安全とは言い切れません。

たとえば、不動産会社とインスペクターが裏でつながっており、不動産会社や売主に有利な調査報告をするといった可能性があるからです。購入時にホームインスペクションを利用するのであれば、自分で信頼のおけるインスペクターを探すことがおすすめです。

②今後普及していくかは不明である
すでにお伝えしたように、今回の宅建業法の改正ではインスペクション自体が義務化されたわけではありません。不動産会社や売主からすれば手間やコストが増えてしまうというデメリットもあるため、相応のメリットがなければ実施されない可能性は高いでしょう。不動産会社や売主が得られる「相応のメリット」として考えられるのが、「インスペクションをしなければ売りづらくなる」「インスペクションをすることで不動産が高く売れる」といったことです。

この状況が実現するには、中古住宅の売買において広くホームインスペクションが実施される必要があります。卵が先かニワトリが先かといった話でもありますが、ホームインスペクションがどう普及していくかは、時を待たないとわからない状況だといえるでしょう。

◆戸建て投資物件を始める際、また物件を売却する際には、ホームインスペクションを実施することがおすすめです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
戸建て投資の特徴とは?物件の選び方と売却時の注意点まとめ

ホームインスペクションをうまく活用していきましょう

2018年4月に改正、施行された宅建業法の内容のうち、本記事ではインスペクションに関する内容をお伝えしました。インスペクション自体はこれまで存在していたものの、日本においては空き家問題などから、今後中古住宅の流通を促進していく上で買主の不安を取り除くためにも普及していくべき制度といえます。大家さんとしては、物件の取得時にインスペクションを受けることでより安心できますし、売却前にもインスペクションを実施しておくことで、売却後のトラブルを減らす効果が期待できるでしょう。

監修者
小林弘司
不動産コンサルタント/不動産投資アドバイザー
東京生まれ、東京育ち。海外取引メインの商社マン、外資系マーケティング、ライセンス会社などを経て、現在は東京都内にビル、マンション、アパート、コインパーキングなど複数保有する不動産ビジネスのオーナー経営者(創業者)です。ネイティヴによる英語スクールの共同経営者、地元の区の「ビジネス相談員」、企業顧問なども行っています。

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法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント総合研究所 特任研究員。 経済産業大臣登録 中小企業診断士、MBA(経営管理修士)、一級販売士、GCS認定コーチ。 ARC CONSULTING(アーク・コンサルティング) 代表経営コンサルタント。(社)東京都中小企業診断士協会 城東支部所属。 東京商工会議所 企業変革アシストプログラム事業アドバイザー。 東京信用保証協会 経営力強化専門家。 国内最大不動産投資サイト「楽待」認定コラムニスト。
好きなことは、読書、サッカー、愛犬との散歩などです。

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