2021.02.10
不動産トピックス

レオパレス21問題 壁が薄い?費用2重取り?大家から不満の声

マンションの賃貸経営をしている、または今後賃貸経営を考えていらっしゃる方なら、一度は耳にしたことがある「レオパレス21」。
入居募集のCMなども多く流れているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
認知度が高いということは、利用者も多いということ。
逆に、利用者数が多い分、問題になっているケースも多いようです。

「レオパレス21(以下、レオパレス)」は、“ふたつの顔”を持つ総合不動産会社です。

1.入居者から見て、賃貸マンション・アパートを管理・運営する賃貸事業者

2.大家・オーナーから見て、(主に、単身者向け)賃貸マンション・アパートの建築を請負、その完成物件を大家・オーナーから(一括して)借り上げる事業者

レオパレス21の歴史は古く、創業は1970年代です。
「賃貸」のアパート・マンションに主軸を置いた不動産会社のなかでは老舗といえるでしょう。

レオパレスの評判

・壁が薄い? ~入居者にとってのレオパレス~

レオパレスの物件は本当に壁が薄いのか?
インターネットで検索すると、続々とこの話題がヒットします。
これが事実ならば、入居者はとても安心して暮らしていけたものではありませんよね。
不特定多数の人が住む「集合住宅」だからこそ、遮音性は個人のプライバシーや生活スタイルを守ることに直結します。

しかし、この問題については冷静に考えてみる必要があります。
まず、レオパレスの創業は1970年代。
約50年間に渡る事業のなかで手掛けた(賃貸)管理戸数は、いまや全国に600,000戸近くも存在します。
単一ブランドの単身者用マンション・アパートとしては、日本でもトップクラスの規模を誇ります。

これだけ戸数が多いと、「不満の声」も比例して多くなるのは、ある種当然ともいえるのではないでしょうか。
そして、その不満の声が契約の大半を占めるのであれば、レオパレスの賃貸事業の存続が危ぶまれるはずです。
しかし、ここ10年のレオパレスの賃貸事業の「売上推移」をみると、実際はほぼ右肩上がりで推移しています。2009年3月期には3,345(億円)→2018年3月期には5,308(億円)となっています。(※2018/3決算概要より)

また住まいの満足度を示すひとつの指標ともいえる「入居率」の推移にも留意する必要があります。
2015年3月期~2018年3月期の4年分を加重平均すると88.41%。
こちらも高い入居率を誇っています。(※計算式 → 入居率=契約済戸数÷管理戸数)

さらに、もうひとつの大切な要素、「入居者の属性」について、個人・法人・学生の3つのセグメントにわけて見てみましょう。
すると個人・学生についてはここ10年間の契約率がほぼ横ばいであるのに対して、法人の契約件数は右肩上がりで増えています。(※法人契約件数:2010年3月期は約150,000戸→2018年3月期は約300,000戸)

さきほどに述べたように、レオパレスの日本全国の賃貸物件数は全国で約600,000戸。
つまりその半分が法人契約ということです。
これは、法人が従業員の「社宅等」として一括して借り上げていることが推察され、非常に重要なポイントです。
なぜなら、もし壁が薄く騒音トラブルが酷ければ、企業側はレオパレスとの契約を即刻打ち切るはずだからです。

では「壁が薄い」「騒音がひどい」と指摘される問題の本質はどこにあるのでしょうか?

・壁が薄い? 問題の背景 ~賃貸と分譲の違い~

そもそも壁が薄い・騒音問題が生じやすい原因は、レオパレスかどうかではなく、「賃貸用」なのか、それとも「分譲用」なのか、にあると考えられます。
両者には大きな違いがあるので、騒音問題はレオパレスという単一ブランドだけに限られた問題ではありません。
賃貸マンション・アパートと分譲マンション、「建設された目的」を考えると、両者の違いは以下のとおり非常に明確です。

賃貸マンション・アパート
・丸々一棟の建物を、基本的には単一のオーナーや不動産会社が所有・管理
・平均5年以内の比較的短期の居住目的で作られた、学生や単身者向けの住まい
・利便性を重視しており、ライフスタイルの変化に対応できるよう、設備やデザインは汎用性・交換性に優れたものが優先されがち

分譲マンション
・各部屋により、所有者やオーナーが異なる
・長期に渡って居住することを前提として建設されている
・設備や仕様が充実しており、住み心地としては賃貸マンションより優れている

上記のなかでも、まずは「所有者」に注目してみましょう。
賃貸マンション・アパートは建物一棟、すべての部屋が単一のオーナーの所有物であるのが主であるのに対し、分譲マンションは各部屋によってオーナー(=区分所有者)が異なります。
だからこそ、分譲マンションは区分所有者全員で必ず「管理組合」が結成され、「管理規約」やゴミ出しのルールも厳格になります。
賃貸(専用)マンション・アパートにくらべると、居住者全員にルールを守ることが意識づけられるため、必然的に騒音問題が起きづらい環境にあるのです。

また、設備・仕様の面でも分譲と賃貸とでは大きな差があります。
たとえば、床のフローリングひとつとっても遮音材を貼った「遮音フローリング」を使うことで、騒音を低減することができます。

壁問題の対処方法は?

築10年超の築古マンションでは、LL45というフローリングが多く使われてきました。
近年の分譲物件では、もっとも遮音性の高いLL40の遮音フローリングが当たり前です。
最近は分譲だけではなく、レオパレスのような賃貸専用の物件にも使われてきています。
そのため、遮音性を気にするのであれば、オーナーになる際にフローリングの素材を確認することをおすすめします。

レオパレスのような大手不動産会社であっても、中小のディベロッパーであっても、大切なのはやはり物件そのもの。
居住者にとってもオーナーにとっても、素材や性能をひとつひとつ確認することで、不安を払拭し、遮音性の高いお部屋選びができるはずです。

レオパレスオーナーにとっての問題点

次に、オーナーから見たレオパレスについて考えていきましょう。
冒頭でも触れたように、レオパレスはオーナーからの請負で賃貸用マンション・アパートを建築し、その完成物件を長期間(おおむね30年間)に渡り一括して借り上げ、これが代表的なスキームとなります。
一括借り上げのオーナーにとっては、入居者の有無にかかわらず一定の家賃収入が得られるので長期間に渡り、安定した経営ができるという「安心感」があります。

しかし、そのようなメリットだけではありません。
なかには訴訟にまで発展しているケースもあります。
レオパレスを巡るオーナー側からの訴訟などの動きは全国で複数起きていますが、今回は下記の事案に絞り込んで紹介いたします。

レオパレス21の家主らで結成する「LPオーナー会」の会員約60人が、入居者向けサービス『レオネット』の保守料金の返還を求める動きがある。

『レオネット』は、インターネット回線を通じて入居者に有料放送のテレビ番組や映画、オンラインゲームの配信等を提供。
入居者が『レオネット』を通じて消費した金額の一部がレオパレスの収益になるという。
2010年ごろからオーナーにもこの保守料金を負担させるようになった。金額は1室あたり1500円。ただ、オーナーに収益は一切入らないという。

入居者からも使用料を徴収しているため、料金を2重取りしていることや、保守料の必然性がないことを理由に、これまで支払った金額の返還を求めている。
また保守メンテナンスのサービスを受けた覚えがなく、契約不履行にもあたるというのが原告側であるオーナーの主張だ。
(※全国賃貸住宅新聞より引用)

上記の問題の根幹にあるのはオーナーとレオパレスとの間の「長期間の一括借上げ保証」という長期の信頼関係に基づいた契約の存在です。
オーナーは長期間の家賃保証や物件の管理をまるごとレオパレスに委託していますので、レオパレスに対して心理的に弱い立場になってしまいます。
これはレオパレスに限ったことではなく「長期間の一括借り上げ保証」をおこなうすべての事業者に当てはまることでもあります。

まとめ

こうしてみると「長期間の一括借り上げ保証」がすべて悪いようにも見えます。
また、壁の問題や、費用の二重取り問題などの声もあるようです。
しかしこれらは、どの業者とお付き合いしても考えられる問題です。
前述したように、レオパレスは老舗の大手不動産会社であり、長期間に渡り多数の物件を手掛けているだけに、それに比例して、不満や訴訟も抱えているのです。

逆に言えば、オーナー・入居者からの声を参考にして、ノウハウを蓄積しているのかもしれません。競争の激しい不動産業界において、長年経営を維持している実績があるのも確かな事実なのです。

最終的に問われるのは、オーナー・入居者の見識であり判断・交渉力です。
それを培うためには日々の勉強・情報収集が最大の自己防衛に繋がるのではないでしょうか。

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