賃貸マンション・アパートの廊下やエントランスなどは共有部分であり、私物放置は規約違反です。中には自室の前の廊下に私物を放置する入居者もいるため、法的な視点を含めてオーナー側がとれる対策を紹介します。
意外と簡単!?
自主管理の「ミソ」を徹底解説
このような方は、ぜひ「自主管理ハンドブック」を無料ダウンロードしてお役立てください。
目次
A:多くの集合住宅では共用部分に私物を置くなど私的に使用することは規約で禁止されています。そのためオーナーの権限で撤去することは可能ですが、それには適切な段階を踏む必要があることと、「撤去」はできても「処分」を行うには、細心の注意が必要です。
アパートやマンションなどの共用部分に置かれている私物として多いのは傘立てや自転車、ベビーカー、植木などです。これらの私物を放置するのは原則としてマンションなどの規約違反になります。共用部分は文字通り住人同士で共用する部分であり、自由に使える専有部分ではないからです。
他の住人は置いていないのに特定の住人だけが共用部分を自室の一部のように使用することは不公平感につながり、入居者間のトラブル要因にもなります。こうした行為は規約違反であるだけでなく、共用部分への私物放置は法律に違反する恐れもあります。関連する法律や条例として、たとえば以下のような規定があります。
こちらの消防法の内容によると、共用部分は避難経路であり、そこに私物を放置することは避難に支障が生じるため、物を置いたりしないよう適切な管理しなければならないとあります。
都道府県の条例にも同様の規定が設けられていることがあります。以下は東京都の火災予防条例からの抜粋です。
ここでも火災時の安全確保の観点から共用部分に物を置くことを禁止していることがわかります。このように共用部分での私物放置は美観やマナーの問題だけでなく、防災の観点からも禁じられています。
\共有部分に置かれた私物の撤去に関しては、こちらの動画で詳しく説明しています/
廊下など賃貸住宅の共用部分に私物が放置されている場合、オーナーがとれる対処法には4つの段階があります。それぞれの段階別に時系列で解説します。
苦情が入ったり、オーナー自身が私物の放置を発見したりした場合は、まず写真を撮影して状況の確認と証拠を残しておきます。その写真がいつのものなのかを確認できるよう、日付の入った新聞と一緒に撮影するなど証拠の能力を高めておくのも有効です。
最初の段階では状況の確認と証拠を確保しただけですので、住人に対する具体的な行動をとることが2段階目です。顔を合わせる機会があるのであれば口頭で、その機会が少ないようであれば書面による注意を行います。
口頭での注意は手軽ですが、「言った・言わない」の水掛け論になる可能性があるので、証拠を残す観点からも口頭で伝えるだけでなく書面でも伝えておくことが望ましいでしょう。
書面には共用部分に私物が置かれていることに対する注意と、それが規約や法令に違反するために今後は置かないようにしてほしい旨の内容を記載します。ここで重要なのは期限の設定で、書面には私物を片付ける期限を定め、その期限を過ぎても置かれている場合はオーナー側が撤去することを伝達します。
書面による注意で私物を住人自身が撤去してくれれば問題は解決ですが、そうならない場合はオーナー側による私物の撤去を行います。ここで撤去した私物は一定期間、オーナー側で保管します。私物の撤去を行った事実を書面によって通知し、一定期間は保管していること、その期間を過ぎたら処分することを伝達します。
放置されていた私物は住人の所有物なので、一方的な撤去は問題があるのではないかと思う人もいるかもしれないですが、撤去した私物を保管しておくのであれば問題はありません。
私物を撤去した際に通知した処分期限を過ぎても住人が私物を取りにこない、何もアクションを起こしてこない場合は、再度処分を示唆する内容を含む通知をします。それでも住人からのアクションがなければ、オーナーの判断で価値が高いと思われるもの以外を処分します。
このとき、撤去したものを保管するならともかく、処分することに躊躇するオーナーさんもおられるでしょう。なぜなら法的にも、いくら禁止されている共用部分に放置されていた私物だからといって、それをオーナーが勝手に処分することは「自力救済禁止の原則」に抵触する恐れがあるからです。
そのため、この原則に照らし、価値の高い物品の処分には慎重を期す必要があります。私物を放置した住人の責任によるトラブルではありますが、民事訴訟に発展してしまう可能性が排除できないからです。私物の処分で揉めるような事態になるのであれば、賃貸契約書の規約違反を根拠に物件からの退去を求めるのもひとつの選択肢です。
共用部分、特に廊下における私物の放置は「家の前だから」「ちょっとした量だから」という人間の心理的な甘さが背景にあります。オーナーが黙認していると常態化し、他の住人も私物を置くようになる可能性があります。1枚の窓が割れたまま放置されていると他の窓も割られてしまうというのは有名な「割れ窓理論」ですが、共用部分における私物の放置も1戸だけの放置を黙認しているとやがてそれが広がってしまい、マナーの低下を招きます。
最初は1人の住人による1個の私物放置でしかなかったものが、やがて建物全体に波及してしまうと、住環境の悪化だけでなく消防法の規定が懸念しているような安全性の低下にもつながります。ひいては賃貸住宅としての集客力の低下や資産価値の低下にもつながるため、平時からしっかりと管理をして私物の放置にはこまめに対応することをおすすめします。
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
こうしたお悩みを抱えている方は、まずは資料ダウンロード(無料)しお役立てください。