2022.11.17
賃貸管理

アパート共用部の清掃は大家?業者?メリットデメリット比較

共用部分の清掃がきちんとされているアパート・マンションは、入居者が快適に住めるだけでなく、内見後の成約率もアップするなど賃貸経営においてプラスになる要素が多いです。この記事では、アパート共用部分の清掃についての基本的な解説にくわえ、オーナーと業者のそれぞれが共用部分の清掃を行った場合のメリット・デメリットも解説します。賃貸物件のオーナーはぜひ参考にしてみてください。

【著者】矢口 美加子

 

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アパート・マンション共用部の清掃とは?

アパート・マンションには、入居者が清掃する専有部分と、建物の持ち主であるオーナーに管理義務がある共用部分があります。共用部分の清掃は、箇所と頻度に応じて日常清掃・定期清掃・特別清掃にさらに分かれます。ここでは、共用部分と専有部分の違い、日常清掃と定期清掃の内容などについて解説をします。
 

「共用部分」と「専有部分」がある

共用部分と専有部分のそれぞれの特徴は以下をご覧ください。

  範囲 具体的な場所
共用部分 入居者全員が共同で利用する場所(専有部分以外) ・エントランス
・共用廊下
・階段
・エレベーター
・給排水等の配管
・配線設備
・駐車場や駐輪場
専有部分 入居者個人のプライベートな居住空間 ・キッチン
・リビング
・トイレ
・バスルーム

 
このように、共用部分とは、専有部分以外の「入居者全員が共同で利用する場所」をさします。

ただし、専有部分に隣接しているバルコニーや玄関扉は共用部分ですので注意が必要です。とはいえ、バルコニーや玄関扉はただの共用部分ではなく、専用使用権のついた共用部分ですから、基本的に入居者のみが日常的に使用することができます。なお、玄関扉は外側が共用部分、内側が専有部分として取り扱われます。

「日常清掃」と「定期清掃」に分かれる

アパートやマンションといった賃貸住宅の共用部分の清掃管理は、主に日常清掃と定期清掃の2種類に分かれます。共用部分の清掃管理業務の内容や頻度については以下をご覧ください。

  内容 頻度
日常清掃 ・床や階段の掃き(拭き)掃除
・ゴミ拾い
・ゴミ捨て場の清掃
・植栽の水やり
・落ち葉の掃き掃除
通常は週1回、少なくても月1回
定期清掃 ・高圧洗浄機による床・壁の洗浄
・ワックスがけ
・植栽の剪定や草取り
・電球交換
月1回、もしくは4~5カ月に1回

 
アパート・マンションの共用部分は多くの人が利用するため、計画的に清掃を進めていくことが必要です。共用部分が汚れていると入居者の住み心地が悪くなってしまうため、特にエントランスや階段などの清掃は、最低でも月に一度は行うようにします。

また、夏場のゴミ捨て場も注意したいポイントです。中にはゴミ捨てのマナーをしっかりと守らない入居者もいますので、きちんと清掃して清潔な状態をキープするようにします。

アパート・マンション共用部を清掃するメリット

共用部分を清掃するメリットには以下の4点が挙げられます。

1.入居者の満足度が高まり退去率が下がる可能性
2.内見後の成約率が上がる可能性
3.建物内の秩序を保つことができる
4.建物の老朽化を防ぐことができる

それぞれ解説をしていきます。

1.入居者の満足度が高まり退去率が下がる可能性

共用部分が常にきれいな状態であると、住んでいる人が気持ちよく建物を利用できるため、物件への満足度が高まる可能性が高いです。反対に、掃除をあまり行わずあちこちが汚れている物件では衛生上良くないため、入居者の満足度低下につながり、場合によっては退去につながることも考えられます。

日頃から共用部分を清潔な環境にしておき、入居者が気持ちよく生活を送れるような建物の状態にしておくことが大切なポイントです。

2.内見後の成約率が上がる可能性

アパート・マンションの契約前は内見をするのが一般的です。実際に物件の様子を見て入居するかどうかの判断をしますので、建物の共用部分がきちんと清掃されていてきれいな状態が保たれていると、内見者が良い印象を受ける確率が高まり、成約率向上につながる可能性が期待できます。

どんなに立地条件が良く内装がきれいでも、共用部分が汚れている物件は「きちんと管理されていない物件ではないだろうか」という疑念につながり、成約を逃してしまうかもしれません。特に、家賃のほかに管理費もプラスされる契約内容の場合だと、きちんと管理されていないのに管理費をとるのはどうなのか、と思われてしまう可能性もあり、一気に信用度が下がるので十分気をつけましょう。

◆こちらの記事では、成約率向上が期待できるアイデアをまとめて紹介しています。あわせてご覧ください。
賃貸経営の空室対策アイデア22選!空室の原因8つも検証

3.建物内の秩序を保つことができる

常にきれいな状態で管理されている物件だと、多くの入居者が建物内を清潔に保たなければならないという意識を持ちやすくなり、日頃から汚さないよう注意するようになっていくことが期待できます。入居者のモラル向上から、建物内の秩序が良い水準で保持されるようになるのもメリットのひとつです。

そのうえ、植栽がきれいに刈り込まれ、エントランスの床や入口が磨かれた物件は見通しがよく明るい雰囲気のため、防犯性が高くなる傾向があるのもメリットです。

反対に、共用部分が汚れていたり散らかったりしている建物は、住民全体の意識が低くなりやすいので注意が必要です。いわゆる「割れ窓理論」をさし、「1枚の割られた窓ガラスを放置していると、割られる窓ガラスが増え、いずれ街全体が荒廃する」という考え方です。1994年以降、犯罪が多発していたニューヨーク市で、当時のジュリアーニ市長が街の外観を美しくする活動を続けたところ、犯罪が少なくなるという結果が出ました。

このように、共用部分の清掃を行いきれいな状態にしていると、入居者の意識も高い状態で維持できることにつながるので、居住環境が整えられた物件として稼働できます。

4.建物の老朽化を防ぐことができる

建物を頻繁に清掃していると汚れが付着しにくくなるため、性能の良い状態で建物を保存することができます。建物の老朽化を防ぐことによって、資産価値が低下しにくくなるのもメリットです。清掃しながら隅々まで建物を見ていれば、建物の傷んでいる箇所も発見しやすくなりますので、劣化が進む前に修繕などの処置もできるようになります。

もしも清掃をあまりせずに老朽化が進んでしまうと、空室率が増え、その結果として家賃収入が目減りしてしまうかもしれません。傷んでいる部分をそのまま放置しておくと、さらに劣化が進み、資産価値が下がるだけでなく修繕費も高くなってしまうので注意しましょう。

日常の清掃だけではすべての老朽化を抑えることは難しいため、定期的に点検や特別清掃(排水管の洗浄や高所清掃など)を実施するのをおすすめします。

アパート・マンション共用部の清掃を行う方法

共用部分の清掃は、オーナー自らが行う自主清掃か、もしくは業者へ依頼する委託清掃のいずれかを選択します。ここでは、それぞれの場合のメリット・デメリットについて解説をします。
 

オーナーが清掃するメリット・デメリット

オーナー自らが清掃する場合のメリット・デメリットを紹介します。

【オーナーが清掃するメリット・デメリット】

メリット デメリット
・費用がかからない
・入居者とコミュニケーションがとれる
・建物の状況を自分自身の目で確認できる
・時間や労力がかかる、疲れる
・忙しい人の場合は清掃作業が負担になる
・プロのように完全に仕上げることは難しい

 
一番のメリットは費用がかからない点です。清掃は日常的に実施するものですから、年間となればまとまったコストが発生します。そして、清掃中に入居者と出くわす機会が増えるため、自然とコミュニケーションがとれるのも良い点です。ちょっとした挨拶や会話から、入居者の姿や生活状況などを確認できるので、孤独死などを未然に防ぐことも期待できるでしょう。また、清掃しながら建物の状況を細かく確認できるため、雨漏りや外壁のひび割れなど、物件の変化にも敏感になれる点もメリットです。

デメリットは、清掃する時間や労力がかかるため、身体的な負担が考えられることです。本職を別に持っている人の場合は、清掃作業の時間を確保することが難しい場合があります。さらに、専門業者のように専門の薬剤や機械を使用するわけではないので、完璧な仕上がりにするのは難しく、あくまでも家庭で清掃を行うのと同程度の仕上がりとなります。

なお、入居者数が多い大規模な物件では、そもそも自主清掃を選択したくても難しい場合もあります。オーナーにどれだけ時間的な余裕があるのか、自主清掃を選択できる程度の物件規模なのかによって判断するようにしてください。
 

清掃業者へ委託するメリット・デメリット

続いて、清掃業者に委託する場合のメリット・デメリットをまとめます。

【清掃業者へ委託するメリット・デメリット】

メリット デメリット
・清掃にかかる時間や労力の負担がない
・清掃のプロが行うので完璧な仕上がりを期待できる
・プロならではの視点で建物についての意見を聞ける
・費用がかかる
・任せきりの場合、建物の状態を正確に把握できない

 
清掃業者に委託する場合の最大のメリットは、清掃にかかる時間や労力の負担がない点です。アパートやマンションは一般的な住宅よりも建物の規模が大きいため、清掃するスペースがたくさんあります。そのため、清掃するには時間がかかり、暑い夏や寒い冬の時期には身体的にも厳しい場合があります。

また、清掃業者によるプロの仕上がりを期待できる点、清掃中に気づいたこと(破損している箇所があるなど)を清掃業者が教えてくれることがある点もメリットです。

デメリットは、当然ですが費用がかかる点です。毎月、あるいは毎回コストが発生するため、定期的な支出が発生します。また、業者へ清掃管理を任せきりにしてオーナー自身が物件をまったく見ていない場合、建物の状況を正確に把握できない可能性があります。どの業者も細かい部分まで報告してくれるわけではないため、定期的に自分の目で確認しておくことも大切です。

清掃業者へ委託する場合の費用相場

清掃費用は業者により細かな違いがあるものの、費用相場はおおむね近いです。ここでは清掃業者へ委託する場合の費用相場について紹介します。

清掃業者に委託する場合は、下記の内容を「月1回」や「月4回(週1)」などと、頻度や戸数に応じて料金を設定します。業者によって清掃内容や時間、料金が異なるため、含まれている内容や清掃時間などを確認したうえで依頼することが必要です。

【アパート巡回清掃の主な内容】

・エントランスや共用廊下などの掃き(拭き)掃除
・駐車場、駐輪場の清掃
・蜘蛛の巣の除去
・ゴミ置き場の清掃
・落ち葉の除去、草むしり、除草剤散布
・チラシの回収
・自動ドア、掲示板などの拭き上げ

 

【アパート巡回清掃の費用相場】

戸数 月1回(円) 月2回(円) 月4回(円)
1~6 5,000~9,000 9,000~14,000 14,000~18,000
6~10 6,000~12,000 12,000~18,000 18,000~24,000
10~16 7,000~15,000 13,000~22,000 22,000~30,000
16~20 8,000~18,000 14,000~27,000 28,000~36,000

 
このように戸数によって料金体系が分かれることが多いので、依頼したい清掃内容と物件の戸数、予算などを総合的に判断し、業者を選択するようにしてみてください。

清掃業者の中には、オーナーが立ち会わなくても、清掃後に写真付きのレポートを送付してくれる業者もあります。とはいえ、建物の状態を知っておくためにも、定期的に実際の作業の様子を確認することをおすすめします。

アパート共用部の清掃は物件の規模や状況による

アパート・マンション共用部の清掃は、比較的規模が小さめだったり、オーナーに時間的な余裕があったりするなどの場合には、オーナー自身が清掃管理することは十分可能です。しかし、物件の規模が大きい(数棟あるケースも含む)、自身が高齢でほかに清掃できる人がいない、物件が遠方にあるなど、物件の規模や所在地、オーナーの状況などを総合的に考えると、信頼できる業者に清掃を委託したほうが良い場合もあります。

また、オーナー自らが清掃管理する場合でも、時折プロの業者を入れるのもおすすめです。自主清掃と委託清掃をうまく組み合わせることも、建物の品質を守るためのコツといえます。

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