【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 浦田健
賃貸経営はサービス業である。入居者が支払う家賃には、部屋を借りていることへの対価だけではなく、その部屋で快適に生活できる環境すべてが含まれていると考えるべきである。たとえば、物件が駅から遠かったり、建物が古くて狭かったりしても、入居者に喜んでもらえるサービスを提供することは可能だ。その結果、満足度が高まり経営の安定化につながる。
バブル期のように、入居者を短期間で入れ替えていくことで次々と家賃を上昇させていた時代もあった。しかし現在は、貸家が余っている状況だ。これからの時代は、いかに家賃を下げずに長く住み続けていただけるかを考え抜き経営していかなければならない。
そのためには、入居者の満足度を高め続けることが欠かせない。また、部屋だけでなく、エクステリアの環境維持などにも気を遣うことが、内見者の印象を良くし、早期入居にもつながるのである。
古い物件は毎年、住環境が快適になるようなサービスを付加していくといい。たとえば、トイレをウォシュレットに変える、テレビドアフォンをつける、など。また24時間ゴミ出しができるよう、ごみ収集コンテナを設置したり、雨が降っても郵便物がぬれないように防滴タイプの集合ポストに取り替える。 少し値は張るが、宅配ボックスなどを新設するのもよい。
このように、入居者の生活利便性を常に向上させていけば、家賃交渉などもしやすい状況をつくることができる。
築年数が経っていても、清掃が行き届いている物件と、そうでない物件とでは清潔感がまったく違うし、内見者の印象も違う。ゴミ収集日、強風があった翌日などは、念入りな掃除を心がけたい。とくに夏場は周辺に雑草が生えて見た目が良くない。そこで6月頃と8月頃に2回ほど除草剤をまくようにするといい。年2回だけの散布で十分除草することができる。
オートロック、防犯カメラ、センサーサイト、サムターン回し防止キャップ、ディンプルシリンダー交換など、常に防犯性を向上させるような設備を追加していくことで、入居者に安全な生活を提供することができる。
このように、常に物件を進化させていくことは、安定入居、収益性向上のためには絶対に欠かせない。ただし、設備追加には費用がかかるため、費用対効果を考慮したうえで導入することだ。もちろん資金がなければ導入はできないが、そんなときはリースを利用するといい。いまは、設備だけでなく、リフォームなどにもリースが利用できるようになってきた。
高額な設備投資費用は固定資産になってしまうことがあるが、リースならすべてその年の必要経費になる。リース期間は最長7年くらいだから、7年ごとに最新の設備を導入できるというメリットもある。リース会社によっていろいろなメニューがあるので、一度問い合わせてみるといいだろう。
入居者が決まるためには、まずお客様があなたの物件に興味を持ち、実際に内見してもらわなければならない。この内見者の数と成約率には大きな相関関係があり、新築で約30%、中古で約20%が目安となる。つまり、新築なら3.3人に1人が成約し、中古なら5人に1人が成約に至るということである。したがって、確率論からいうと、仮に中古物件で内見者が2人しかいないからといって、すぐに家賃を下げるというのは早計なのだ。そもそも内見者の数が少ないのだから、内見者の数を増やすための戦略を考えなければならないのである。
しかし、限られた内見者の成約率を上げることができれば、かなり募集活動はラクになる。
そこで、内見者の成約率をあと10%アップするための工夫について解説していこう。
エントランスは建物の「顔」である。エランス周辺にゴミが散乱していたり、集合ポストからチラシが溢れていたりすればイメージは途端に悪くなる。定期清掃を行なっていても、必ずしも行き届いているとは限らない。
入居募集中はできれば毎日、エントランスや共用部分の点検を行ない清潔さを保つようにしたい。
ずっと空室になっている部屋の空気は、長時間締め切っているため悪くなる。できれば毎日、空気の入れ替えをするのがベストだが、せめて内見者が増える週末になる前には空気を入れ替えるようにする。それも難しければ、洗面室の換気扇を回しっぱなしにするといい。この場合は部屋の吸気口は「開」にしておく。こうしなければ、換気扇が回っていても空気が循環しないからである。もちろん電気代はかかるが、微々たるものだ。また、夏場は配水管の封水切れの異臭を防ぐために、週に1度はキッチンやトイレ、洗面所の水を流すようにする。排水溝にラップをする方法も有効である。
もし可能なら、内見者が到着する前に部屋の空気を入れ替え、必要に応じてエアコンなどをつけ快適な状態でお迎えができれば完璧である。
トイレや玄関に「ハウスクリーニング済み」の表示をしておこう。たいていはクリーニング業者が行なってくれるが、ない場合は自作して表示しておく。こうするだけで清潔感を効果的にPRできる。
内見者はこれからお客様になるかもしれない大事な見込客である。そんな大事な人をお迎えするのだから、スリッパは必ず用意しておく。とくに冬場は床がかなり冷たくなるのでスリッパなしでは耐えられないこともある。また、スリッパ立ては必ず用意しておくことだ。これがあれば散乱することがないので、次の内見者の印象も良くなる。
案内を担当する不動産業者の営業マンは、案内する部屋について十分説明できる情報を持っていることは少ない。自社の管理物件ならまだしも、そうでないなら数百、数千もある空室の詳細情報など覚えられるはずがないのである。しかし、内見者にしてみれば、案内してくれる担当者はなんでも知っていると思っているから、内見者の質問には答えられるようにしておかなければ、せっかくの見込客を逃しかねない。
そこで、物件についてアピールしたい点、よく聞かれる質問について、あらかじめPOPを作成して部屋の要所に貼っておくようにする。こうすれば、内見者が知りたいこと、物件のPRポイントなどを確実に伝えることができるようになる。
ウェルカムバスケットとして、お客様が入居したその日に必要になるものをバスケットに入れて部屋に備え付けておく。たとえば、歯磨きセット、石鹸、シャンプー・リンス、ブラシ、タオル、ティッシュ、洗剤、入浴剤などをプレゼントする。これはホテルにあるアメニティグッズを参考にしたものだが、これを備えておけば内見者のPRにもつながる。100円ショップにいけば、すべてそろえても千円もかからないので、低コストで高いRP効果が期待できるサービスである。
内見者が持っている家具や家電が部屋のどの位置に納まるのかどうか、家に帰ってからでも確認してもらえるように、大きな間取図と巻尺とペンを用意しておくといい。
POPは部屋のなかを説明するのに最適だが、わずかな情報しか伝えることができない。そこで、詳細な説明が必要な給湯器や浴室乾燥機の使い方、インターネットの接続方法、周辺環境の説明、入居ルールなどについては、「入居のしおり」としてまとめた小冊子を常備しておく。こうした心配りを内見者にPRすることで他の物件との差別化につなげていくのである。
内見時の最後の手段として、オーナーから直接メッージを伝えるのも有効だ。手紙は営業マンから手渡してもらってもいいし、確実に読んでもらうために部屋に伝えたいことをPOP風にして貼り付けておくのもいいだろう。たとえば、3月末までにご入居の方にはなにかをプレゼントしたり、入居条件などの相談に応じるのでぜひ入居検討してほしい旨をはっきり伝えるのもいいだろう。
このようにオーナーからの手紙によって親しみやすさを伝えることも成約率アップには大変効果的なのだ。
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<著者プロフィール>
浦田健
明治大学商学部卒。「一生、大家さん応援団長」を誓う不動産コンサルティングの第一人者。オールアバウト「アパート・マンション経営」公式ガイド。不動産コンサルティング会社のほか、不動産管理会社、不動産投資会社を経営。自らもアパートの掃除を行なう大家さんのひとり。2008年12月に「大家検定」を監修・認定する一般財団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)を設立、代表理事に就任。
主な著書に『「金持ち大家さん」になる アパート・マンション経営塾』(日本実業出版社)、『もうアパート投資はするな! 利回り20%をたたき出す戸建賃貸運用法』(ダイヤモンド社)、『あなたのアパート・マンションを即満室にする方法』(フォレスト出版)など多数。
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