2020.11.16
賃貸経営

空室を避けたいオーナーさん必読。賃貸物件の更新料なしは有効か

(写真=patchii/stock.adobe.com)
(写真=patchii/stock.adobe.com)
今回の新型コロナウイルス蔓延により、様々な事象が表面化してきました。いままで当たり前だと思われていたことが、再考される場面が増えてきたように思います。不動産賃貸借契約における、「更新料」もそのひとつに上がるものかもしれません。今回は、賃借人が今回のコロナ禍により何を求めるのかを探りながら、更新料のあり方を見ていきましょう。

コロナ禍における入居者ニーズの変化

コロナ禍による世界経済の停滞は紛れもない事実です。これに伴い、住居にかける費用もより一層抑えたいという心理は当然働くことでしょう。また、今回のコロナ禍で、これまで徐々に生じていていた入居者ニーズの変化が一気に進む気配も出てきています。

ここで、マクロ経済の景気判断要素の1つである、可処分所得の推移を見ていきましょう。可処分所得とは、給与など支給された金額から、税金や社会保険料を差し引いたのちの手残りの金額です。その人が、実際に使えるお金ということになります。

まず、賃貸の中心世代でもある、20歳台の可処分所得の推移を見ていきましょう。
(出典:厚生労働省 所得再分配調査から作成)

厚労省の「所得再分配調査」は3年ごとに発表されますが、2020年はコロナ禍の影響により調査が中止となりました。最新のデータは2017年のものとなります。このデータによると、29歳以下の世代では、可処分所得において、1996年がここ最近の最高値を付けた後、右肩下がりになり、240万円から270万円のあたりを上下しています。

仮に可処分所得が240万円だとすると、毎月20万円が手残りであり、そのうち8万円が家賃に費やされるとすると、居住費は40%と高率となります。この割合のまま、生活を続けるのは厳しいでしょう。

可処分所得の推移は、2017年は若干持ち直したものの、2020年のコロナ禍における経済的苦境から、あらためて減少傾向が予想され、深刻さを増すものと思われます。そのような状況下では、賃借人が固定費である居住費を少しでも抑えようとする傾向が強まるのは、当然考慮すべき点であることは間違いありません。

空室リスクを避ける手段として「更新料無し」は有効か

この現象を物件オーナーから考えてみましょう。デフレからの脱却を掲げた安倍政権が突然の終焉となり、アベノミクスも終わりました。目標としていた継続的な2%の物価上昇を果たすことはできなかったわけですが、今回のコロナ禍により、日本経済のデフレからの脱却はより一層困難になってきました。

人口減少と可処分所得の減少という、ダブルパンチに見舞われ、よほど地の利に恵まれた場所に物件を持つオーナーでないと、不動産経営は難しい時代になってきたことは確かです。

オーナーにとって一番避けるべきことは、空室期間の長期化です。空室期間は、まったく入金がない一方、固定資産税、借入金元本、利子、メンテナンス費などの出費は続きます。

この空室の発生する確率が高いのが、借主が引っ越しを考えるタイミングです。UR都市機構の「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」によれば、引っ越し理由の第三位が「住んでいる家の契約更新が近づいたため」となっています。首都圏に限れば引っ越し理由の1位となっており、その割合は40%を超えた数値となっています。
(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

ここで特筆すべきは、首都圏での引っ越しのタイミングは、更新時期に集中している、ということです。
続いて、引っ越しと更新料の関係について見てみます。
(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

この図から、更新料を当たり前のように取るのは、やはり首都圏が多いことがわかります。

首都圏以外の地域では、更新料を取らない、もしくは取る習慣がない地域も多くあるのです。そして首都圏では、更新料を払うよりも前に引っ越しをする、が8.7%もあることがわかります。

このことから、特に首都圏の物件に関しては、一般的に更新料を取るケースが多いので、他の物件との差別化をはかるために更新料を取らない、という経営方針も空室リスクを避ける手段としては有効であると言えます。

更新料の有り無しでキャッシュフローはどう変わる?

では、更新料を取る場合と取らない場合で、キャッシュフローはどう違ってくるのか、オーナー視点から見ていきましょう。前提条件として、家賃月額10万円の首都圏の物件を想定します。

▽ケース1:更新料は1ヵ月分と設定
  • 更新料が発生するタイミングで借主は引っ越す。
  • 引っ越しのタイミングでルームクリーニングにかけるので、1ヵ月の空室期間が発生する
  • その後新しい入居者が入る
▽ケース2:更新料は取らない
  • 借主の引っ越しが発生せず、入居から4年間48か月の入居となる
▽キャッシュフロー(CF)の違い
 
  4年のトータル収入(CF) 条件
ケース1 24か月×10万+23か月×10万=470万円 クリーニングのため1か月の空室期間あり
ケース2 48か月×10万円=480万円 クリーニング期間なし

この比較表のとおり、ケース1のキャッシュフロー(CF)は、借主が引っ越しをすることにより更新料も取れず、かつ、1か月のクリーニング期間が空室となるので470万円となります。また、クリーニングの費用もかかることになります。

一方のケース2は、更新料を取らないものの、そのまま4年、入居が続きます。そのためトータル480万円がキャッシュフローとなります。

もちろんクリーニング期間を短くすれば、日割家賃でその金額をもっと短縮できますが、築年数が経った物件の場合は、1ヶ月で入居者が決まらず、そのまま空室期間2、3ヶ月と続く恐れも出てきます。

空室のリスクを考える時、更新料の見直しも

このように、更新料を取るということは、オーナーから見ると、更新料を払っても同じ入居者が住み続けてくれる、という希望的観測の元に成り立っています。物件の流動性が高くなることで、不動産仲介業者にとっては有利ですが、デフレも解消せず、家賃をアップさせにくい昨今において、オーナーにはメリットは多くないと見ることもできます。

前述のように、首都圏以外においては、更新料を設定しない物件は珍しくありません。築年数や家賃相場など、物件のとりまく状況によっては、空室リスクをおさえるという観点から、更新料の設定見直しを検討する価値はあるといえるでしょう。
 

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