2020.7.20
賃貸管理

【結局どっちなの?】大家さんの自主管理と管理委託のメリットとデメリット

(写真=123rf)
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賃貸経営を始めるにあたり、自主管理と管理委託どちらを選ぶか、結局どちらがいいのか悩んでいる大家さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

賃貸経営で成功するための重要な基本ポイントは、入居者が生活しやすい立地と入居者に好まれる建物や部屋を所有することです。また、賃貸経営は30年以上の年月をかけて継続して行うことが大半であるため、「どのように物件を管理していくのか」が賃貸経営を継続するために最も大切なことです。ここでは質の高い物件管理のために自主管理と管理委託どちらを選ぶか、考え方のポイントをお伝えします。
<目次>
1. 「自主管理」と「管理委託」の違い
1-1. 自主管理とは?
1-2. 管理委託とは?

2 .自主管理は難しい?管理業務の5つの内容
2-1.入居者募集、契約業務
2-2.家賃の入金管理
2-3.入居者への対応(家賃の督促、クレーム対応)
2-4.退去時の立会いと敷金精算
2-5.建物の保全

3. 自主管理VS管理委託、それぞれのメリットとデメリット
3-1.自主管理のメリット
3-2.自主管理のデメリット
3-3.管理委託のメリット
3-4.管理委託のデメリット

4. 目的は「管理方法の選択」ではなく「管理の質を保つこと」

5. 物件の適切な管理運営のために大家さんが考えるべきこと
5-1.自主管理の経験を積んで管理業務を勉強する
5-2.全部委託または一部委託に移行するタイミングを考える
5-3. 信頼のおける管理委託のパートナーを選ぶ

まとめ

1.「自主管理」と「管理委託」の違い

一般的な管理の形態として、「自主管理」と「管理委託」の2つに分類されます。自主管理と管理委託のどちらを選ぶのかは大家さんが判断するべきことです。そのため、まずは自主管理と管理委託はどういったものなのか、どう違うのか理解しておきましょう。

1-1. 自主管理とは?

一般的な賃貸物件をお持ちの大家さんが行う「自主管理」とは、物件の管理を業者に委託せず、大家さん自身が管理者として管理全般の作業を行うことを言います。所有物件数が多い、あるいは遠方の物件を所有している大家さんの場合は、すべての管理作業を自分で行うことは難しいため、自主管理をすることが厳しくなる場合があります。そのため、自主管理を選ぶのは、管理する部屋数が少ない場合が一般的です。

1-2. 管理委託とは?

「管理委託」とは、物件の管理を大家さんが業者に委託して、管理全般の作業を行ってもらうことを言います。

管理委託は2種類に分類されます。1つめのケースは、掃除・修繕・定期メンテナンスなど物件に関わることから、家賃の回収・入居者からのクレーム対応など借主に関わることまで、すべての作業を含めて委託する「全部管理委託」です。このケースでは、大抵は不動産業者が物件の全部の管理を行います。

2つめのケースは、大家さんが作業内容を選択して、一部の作業を外部に委託する「一部管理委託」です。一部管理委託では、清掃作業の一部を清掃業者に委託するケースや、家賃の回収作業と入居者クレームを不動産業者に委託するケースが主に挙げられます。

2. 自主管理は難しい?管理業務の5つの内容

大家さんが物件を自主管理する場合、管理委託会社が行うほとんどを大家さん自身が行う必要があります。物件の管理作業には、「入居者募集、契約業務」「家賃の集金など入金管理」「入居者への対応(クレーム対応など)」「退去時の立会いと敷金精算」そして「建物の保全」などがあります。

2-1. 入居者募集、契約業務

入居募集、契約締結と更新作業を行います。管理会社を使えば空室情報を掲載サイトに出してもらうことが簡単にできますが、個人では難しくなるでしょう。募集がうまくいかないと空室リスクが高くなります。
現在は大家さんが直接利用できるポータルサイトも増えてきています。
>「新しい入居者募集の選択肢!入居者直接募集とは?」

また賃貸契約書のひな型は国土交通省のサイトに用意されています(2020年施行の改正民法対応)が、連帯保証人の極度額設定など民法改正による変更点もあり、まったく何も知らない大家さんが準備するのはかなりレベルの高い作業といえます。家賃保証会社などのノウハウを借りたほうが無難といえるかもしれません。

<参考>国土交通省
『賃貸住宅標準契約書』について
賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版・連帯保証人型」(pdf)

2-2. 家賃の入金管理

家賃の入金管理は確定申告に関わってきます。収益物件1棟では事業的規模とみなされませんが、将来的に事業拡大を見越しているならば簿記などの知識も必要になります。

2-3. 入居者への対応(家賃の督促、クレーム対応)

家賃滞納の督促や、入居者からのクレーム対応などは時間や手間がかかるだけでなく、精神的にも負担が大きくなります。修繕に関することは業者を手配しますが、騒音など入居者同士のトラブルでは大家さんが自ら出て仲裁する必要が出てきます。家賃の滞納がある場合は直接入居者と連絡を取り、滞納が続く場合は法的措置をとらなければならない場合もあります。

特に家賃の滞納は、物件をアパートローンなどで購入して家賃収入で返済している場合、返済計画にも関わってきます。家賃保証会社と契約していれば、家賃保証が受けられます。

2-4. 退去時の立会いと敷金精算

入居者が退去する際は立ち合いを行い、室内の状況を確認し、修繕が必要な場合は入居者責任なのか経年劣化など貸主側で修繕するのかを判断します。これらも改正民法により規定が変わりました。退去が終わったら室内クリーニングやリフォームを行うために業者の手配を行う必要もあります。

2-5. 建物の保全

建物の清掃、定期メンテナンス、消防点検や修繕対応、業者への連絡等を含む業務です。建物は経年劣化していきますので、自主管理の場合は大家さんが日ごろから建物全体の劣化状況を確認する必要があります。とはいえ、実際の建物の状況がどうなっているのか、修繕はいつ行うかの判断は建築や管理の専門家でなければ難しい面があります。状況を見誤ると物件の資産価値が下がるおそれもあります。

3. 自主管理VS管理委託、それぞれのメリットとデメリット


自主管理と管理委託、それぞれにどのようなメリットとデメリットがあるのか見ていきましょう。
 
  自主管理 管理委託
メリット 入居者と直接コミュニケーションがとれるのでニーズがわかり、大家さんの努力に比例して収益などに大きな成果が出せる 大家さんの作業の負担や、精神的な負担が減らせる
様々な費用が抑えられる 管理業務のプロなので、業務上のミスや不手際の心配は少なく安心感がある(ただし管理会社や担当者の質による)
大家さんの管理能力が向上する 業者間ネットワークがあり、コストパフォーマンスの良い業者の提案ができる
デメリット 大家さんの管理に要する時間と労力が大きくなる。また自分一人で対応する精神的負担も大きい 管理内容やレベルが管理会社ごとに異なるため、質の悪い管理会社を選ぶと物件管理に支障をきたす
物件管理の勉強を怠るとトラブルを起こす可能性があり、結果的に収益減少や物件の評価低下につながるおそれがある 費用がかかる
修繕などに関わる業者を自分で探さなければならない 大家さんの管理能力が成長しない

3-1. 自主管理のメリット

自主管理のメリットの1つめは、大家さんの努力次第で大きな成果が出ることです。この場合の努力とは、大家さんが入居者と触れ合う機会を増やし、入居者へのサービスを充実させることが挙げられます。

こまめに清掃を行う大家さんの場合は大家さんが現地にいることが多く、入居者に接する機会が増えます。大家さんが入居者の反応を直接見ることができるため、管理のサービスがより良く向上していく傾向があります。

例えば物件のエントランスや外構に花を植えて手入れを欠かさず、とてもきれいで清潔感のある外観や環境を維持している大家さんもいます。また、クリスマスやお正月には入居者が喜ぶようなイベントや飾りつけをしてくれる大家さんもいます。このように、管理に手がかけられている建物はよりきれいになり、入居者が快適に住むことができるため、入居者の退去率が減り、結果的に賃貸経営の収益性が上がります。

2つめは、費用がかからないことです。管理委託は当然、契約に費用がかかります。また管理会社から紹介される業者などは手数料が上乗せされていたりします。自主管理すればそれらはかかりません。

3つめは、大家さんの管理能力が向上することです。自分で管理作業を行うことで、どの作業にどの程度の時間と労力、コスト、人員が必要なのか、つかめるようになります。この経験は後々、事業規模を拡大し全部管理委託に移行する際にも役立ちます。

3-2. 自主管理のデメリット

自主管理のデメリットの1つめは、大家さんが管理の負担をすべて負うため、管理に要する時間と労力が大きくなることです。物理的な面での負担はもちろん、入居者へのクレーム対応など精神的な負担もかかります。

デメリットの2つめは、大家さんは物件管理の専門家ではないため、勉強をする必要があることです。管理について勉強を怠ったまま不適切な業務を行った場合には、物件や入居者に対して大きなトラブルを起こすことにつながります。

例えば、自主管理の場合は物件の清掃をするのは基本的に大家さんしかいません。清掃作業を怠ると、建物のエントランスやゴミ置き場などにチラシやゴミが散乱してしまう場合もあります。これにより入居者が不快に感じた結果、空室が増えてしまい、賃貸経営の収益性が悪くなる可能性もあるのです。

物件管理についての勉強は難しいことではありません。知識はもちろん必要ですが、何よりも「人が生活をする上で当たり前のことを、入居者のために、継続して行う」ことが有効です。

自主管理では難しい、建物修繕や定期建物メンテナンスの作業は、業者に依頼することで対処できます。無理をせず、「できないことは委託する」方法が有効です。

ただし、デメリットの3つめになりますが、自主管理では修繕や点検に関わる業者を自分で探してこなければなりません。ネットワークがないため時間や手間がかかり、質の良い業者を選べない可能性や、費用が割高な業者を選んでしまう不安もあります。

3-3. 管理委託のメリット

管理委託の1つめのメリットは、大家さんの作業の負担が少ないことです。かけなければならない手間や時間の負担が少ないことは大きなメリットといえるでしょう。特に、副業として賃貸経営をしているサラリーマンや他の事業をしている事業主、そして多くの部屋を所有している大家さんがこちらを選択するケースが多々あります。

2つめのメリットは、管理会社は物件管理のプロであることから、トラブルなどが起きたときの対処を任せられること、事務的な作業のミスや法律に差し障るような不手際は起こる可能性は低いことが挙げられます。また入居者からのクレーム対応など、精神的に負担のかかることも専門家ならではのノウハウをもっており、適切に対処してくれるでしょう。ただし、これは管理会社の実績や体制、契約するサービス内容にもよるので、管理委託なら絶対に安心ということではありません。

3つめのメリットは、業者間ネットワークを持っていることです。これにより、管理を委託する大家さんが望む価格や質の修繕業者などを選んで提案してもらえます。

3-4. 管理委託のデメリット

管理委託のデメリットの1つ目は、管理の内容と作業レベルについて、委託する会社や担当者ごとに差異があることです。委託する価格の大小だけでは作業品質を見極めることは難しいでしょう。管理契約内容の契約解除条項の締め付けがきつくないことを契約前に確認しておき、もし委託した業者が良い仕事をしてくれない場合は、別の業者を探すことも有効です。

2つめは、自主管理よりも管理コストがかかることです。毎月の家賃の数%が管理委託料として徴収されます。委託業者の作業品質と価格のバランスを見ることで、納得感が得やすいでしょう。

3つめは、大家さんの物件管理能力が成長しないことです。管理委託を選択しても、管理の状況を継続的に大家さん自身が確認し、時々は物件清掃などの管理作業に参加することが大切です。

4. 目的は「管理方法の選択」ではなく「管理の質を保つこと」


自主管理と管理委託、実際どちらが有効なのでしょうか?

この質問への単純な正解はありません。その理由は、優良な自主管理は一般の管理委託よりも優れているからであり、また、優良な管理委託は一般の自主管理よりも優れているからです。

つまり、自主管理と管理委託、大家さんがどちらを選んだとしても、その選択の中で収益物件の維持や入居者への適切なサービス提供のため、管理の質をベストな状態に保つことが何よりも重要です。

ただし、管理委託をするとしても、大家さんが物件管理とは何かを理解している必要があります。物件管理の内容を理解できていれば、大家さんが対応できない一部の管理を選択し管理会社へ委託する、一部管理委託も十分に有効といえるでしょう。また、管理会社のサービスの質を判断でき、管理会社を適切に選択できるようになるでしょう。

5. 物件の適切な管理運営のために大家さんが考えるべきこと

自主管理と管理委託の選択とともに、大家さんが物件や入居者のためにできること、考えるべきことを説明します。

5-1. 自主管理の経験を積んで管理業務を勉強する

初めて収益物件を取得して数年間は、まだ管理する部屋数が多くはないため、物件メンテナンスや入居者との物件に関するトラブルも少なく済む傾向が高いといえます。この間に自主管理を経験することをお勧めします。

初期の段階は自主管理を行い、物件の管理作業を経験するとよいでしょう。これにより、管理作業にはどのような項目があり、またどれほどの労力が必要かを知ることができます。

管理業務を経験したことがない人が安易に全部の管理委託を選択することは、必ずしも良いこととはいえません。まず一度は物件管理作業を、大家さん自身が経験することが有効です。もし忙しい本業があるなど管理作業を自分自身で行うことが難しい場合も、入居者へのサービス水準を維持して所有物件の価値を維持し続けるためには、物件管理について勉強をするべきです。

5-2. 全部委託または一部委託に移行するタイミングを考える

大家さんの経験値や所有物件数に応じて「一部管理委託にするか、全部管理委託にするか」を選択することで、安定した賃貸経営を継続することができるようになります。

大家さんになってからおおむね3年ほど経てば、管理業務のどの作業項目を委託するべきかを判断できるようになるでしょう。

さらに所有物件が多くなったときは、管理業務をすべて委託する必要が出てくるかもしれません。その場合も、過去に管理作業を自分で行っていた大家さんは管理作業とは何かを把握できているため、管理業者と対等に交渉ができるようになります。また、管理業者の良し悪しも見抜くことができるでしょう。

5-3. 信頼のおける管理委託のパートナーを選ぶ

自主管理と管理委託、どちらが正解かではなく、物件をよりよく管理するためにどの方法がベストかを選ぶことが大切と説明しました。

自主管理では自分で物件管理を勉強し、入居者の対応をしながら、修繕業者などとのつながりを作っていく必要があります。やりがいはありますが、時間と手間がかかり、努力も必要です。物件数が増えてからでは負担が大きく増えます。各物件に手が回らなくなっては本末転倒です。そのため、初期の頃に経験しておいたほうが無難です。

管理委託の場合は、信頼のおける質の高い管理会社を選ぶことでこの目的の多くはかなえられるといえるでしょう。大家さんの立場に立ったサービスを提供できる管理会社を選んでください。質の高い管理会社は大家さんの心強いアドバイザーになってくれます。

まとめ

物件管理の選択肢として、自主管理と管理委託、どちらを選ぶかについて説明しました。どちらが正しいかではなく、大切な収益物件をよりよく維持管理するために最適な方法を選んでください。

とはいえ、自主管理にはかなりハードルの高い業務も含まれます。まずは、管理物件が少ないうちに、自主管理の経験を積むことから始めましょう。大家さんが管理業務を理解することで、管理会社を適切に頼ることができるようになるでしょう。管理委託を選ぶ際は、一部管理委託と全部管理委託の方法があります。まずは信頼のおける管理会社を選び、適切に委託をするためにも、小規模物件で自主管理をしてみることをお勧めします。


【執筆者】大長 伸吉
不動産投資アドバイザー。ランガルハウス株式会社代表、年金大家の会主宰
保有資格:宅地建物取引士、AFP、貸金業務取扱主任者

世田谷区・目黒区を中心に東京の土地購入から銀行融資、設計施工、満室管理、税務相続まで個別に寄り添っている。自身も4棟23室の物件を満室運営中。10年間で3,000回以上の個別相談と250回を超えるセミナーを開催。

>>家賃収入を上げる自主管理とは


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