ひと口に不動産会社といっても「管理会社」と「仲介会社」の2種類があり、違いがよくわからないという人はいるでしょう。入居者募集を例にしても、管理会社と仲介会社の両方が行うことがあり、両者の違いや見分け方を知りたいと思うかもしれません。この記事では管理会社と仲介会社の違いと見分け方、手数料の目安を紹介しますので、大家さんは参考にしてみてください。
【著者】矢口 美加子
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
こうしたお悩みを抱えている方は、まずは資料ダウンロード(無料)しお役立てください。
目次
賃貸物件を取り扱う不動産会社には、管理を主な業務とする「管理会社」、入居者を大家に紹介する「仲介会社」、管理と仲介のどちらも行う「仲介管理会社」の3種類があります。管理会社と仲介会社のそれぞれの主な違いは以下の通りです。
管理会社 | 仲介会社 | |
業務内容 | ・入居者管理(契約事務、家賃回収、クレーム対応など) ・建物の維持管理(清掃、点検) |
・入居者を大家さんに紹介 ・内覧対応 ・重要事項説明 ・新規契約締結 |
宅建免許の要不要 | 不要 | 要 |
宅建士の要不要 | 不要 | 要 |
管理会社は入居者と建物の管理が主な業務で、仲介会社は入居者と大家さんの間を仲介するのが主な業務です。不動産管理には宅建業の免許が不要であるため、宅建士を設置する必要もありません。業務内容の詳細については、次章以降で詳しく解説します。
仲介会社とは、大家さんと入居者の間を仲介する会社のことです。本章では、仲介会社の仕事内容について詳しく解説します。
賃貸の仲介会社とは、大家さんと入居者の間に入って賃貸借契約を成立させる不動産会社を指します。営業するにあたっては宅地建物取引業の免許が必要で、業務に従事する者(事務員も含む)の5人に1人以上は宅建士を設置することも必要です。
仲介会社は賃貸物件の大家さんから入居者募集の依頼を受けた後、物件情報を作成して店頭や自社のホームページに掲載します。加えて、不動産情報ポータルサイトにも物件の広告を掲載して幅広く営業活動を行います。そのほか、仲介会社がレインズなどの情報を元に集客物件を探すのも一般的です。
仲介会社の仕事内容を、大家向けと入居者向けに紹介していきます。
大家さんに対する業務 | 入居者に対する業務 |
・入居者を紹介する ・大家さんに代わって入居者と契約内容や条件について交渉する ・入居者から預かった敷金などの初期費用を支払う |
・希望に合った物件を探す ・内覧対応 ・重要事項説明 ・賃貸借契約の締結 ・鍵の引渡し |
契約の当事者は大家と入居者ですが、契約書は仲介会社が大家に代わって作成します。契約を行う前には、宅建士が入居希望者に重要事項説明を行います。重要事項説明とは入居者が賃貸物件を借りる際に重要な事柄を確認してもらう手続きのことで、具体的には、住宅の所在地・物件の所有者・物件の設備状況・賃料・賃料以外に授受される金額・契約期間などが記載されています。契約した後でトラブルが発生しないように、あらかじめ入居者に詳しく説明します。
契約内容について双方が納得して契約が成立した後は、仲介会社は入居者から初期費用を受け取り、大家に敷金・礼金・前家賃などを支払います。入居者に部屋の鍵を渡せば引渡しの完了です。仲介会社としての仕事は基本的にはここで終了です。
仲介会社は賃貸借契約を成立させると、報酬として仲介手数料を受け取ります。成功報酬のため、成約しなかった場合の手数料はありません。仲介手数料は宅建業法で家賃1カ月分が上限と規定されており、貸主と借主のそれぞれが0.5カ月分ずつ負担するのが基本とされています。
とはいえ、貸主・借主の割合は法律で規定されているわけではないので、貸主の負担はゼロ・借主が1カ月分負担とすることも、貸主が1カ月分負担、借主の負担はゼロとすることも可能です。この場合は多めに負担するほうの承諾が必要です。
傾向として、人気のある物件の場合は借主が多めに仲介手数料を支払うことが多いですが、なかなか入居者が入らない物件は貸主がすべて負担することも少なくありません。仲介手数料は仲介会社にとっては重要な収入源ですので、上限額いっぱいの金額を依頼者に請求するのが一般的です。
管理会社とは、大家さんに代わって賃貸経営に関するさまざまな業務を行なう会社のことです。本章は管理会社について詳しく解説します。
賃貸経営は物件を購入したら終わりではなく、所有物件を運営・維持管理していくことが必要です。入居者が住む部屋で故障などのトラブルが発生した場合はすぐに対応することが欠かせませんが、会社員など他に本業を持っている人はすぐに対応することが難しいのが実情です。
そこで利用されているのが管理会社です。管理会社は、建物から入居者まで賃貸経営の管理をサポートするため、大家さんは手間や時間をかけることなく物件を運用できます。自分で対応する必要がないため、遠方にある物件でも所有して資産運用することが可能です。
不動産管理会社の仕事は、大きく分けると「入居者管理」と「建物管理」の2つです。それぞれの仕事内容は以下をご覧ください。
入居者管理 | 建物管理 |
・空室対策 ・家賃集金の代行 ・滞納家賃の回収 ・入居者からのクレーム対応 ・大家さんへの対応 ・契約更新や解約などの手続き |
・共用部分の清掃 ・植栽の手入れ ・設備の維持管理 ・修繕工事の手配 |
入居者管理の仕事として、退去者が出た場合にすぐに次の入居者を募集することが1つあります。管理会社が広告を出して募集することがあるほか、別の仲介会社にも依頼して幅広く探すケースもあります。家賃集金や滞納家賃の回収も大家さんに代わって行い、入居者からのクレームに対応するのも重要な仕事です。契約更新や解約に関する事務処理も、大家さんの代行として手続きをします。
建物管理の仕事としては、エントランスや共用廊下・階段・ゴミ捨て場などの清掃を行い、入居者が快適に利用できるような環境に整えることが挙げられます。植栽が伸びてきたら剪定作業も欠かせません。加えて、消化器などの消防用具が設置されているか、非常ベルは正常に作動するかなど、消防設備の点検も実施します。そのほか、貸室のガス給湯器といった設備機器の故障・水漏れ・破損などが発生した場合に修繕工事の手配をかけるのも管理会社の仕事です。
管理会社の手数料は家賃収入総額の5%が目安です。仮に家賃収入の合計が月100万円あるときは、1カ月に支払う手数料は5万円です。ただ、管理手数料は仲介手数料のように法律で上限が設けられていないため、大家さんと管理会社が相談して金額が決定されることも多いです。そのため、物件や業務内容の幅によっては7~10%程度になるケースもあります。
近年では管理手数料をゼロとする管理会社も登場していますが、管理会社を選ぶときは金額だけではなく管理の質を重視することが必要です。いくら安くても管理内容が不十分な場合は入居者の満足度が下がる可能性があり、退去につながることもあります。また、基本管理費は無料でもオプション費用として別途請求される場合があり、相場より高くなってしまう可能性もないとはいえません。管理業務の内容と管理手数料が見合っているかを見極めることがポイントです。
所有物件が少ない大家さんの場合は、自分で賃貸管理を行う「自主管理」という方法をとることができます。物件数が多すぎると対応しきれないケースは出てきますが、保有している物件数が少なく、自宅からの距離がそれほど離れていない場合は、大家さん自身で設備の修繕手配をかけたり建物を清掃したりできます。
退去者が出た場合は、不動産会社に仲介を依頼すれば入居者募集から賃貸借契約の手続きなどまで一連の作業をしてくれるので、管理会社に委託していなくても問題ありません。
ただ、すべて自主管理では不安という大家さんの場合は、家賃保証会社を利用するのをおすすめします。賃貸経営で重要な点の1つに「家賃回収」があります。通常、投資用物件を購入する際はアパートローンを借り入れし、家賃収入の一部を返済に充てます。そのため、万が一滞納家賃が発生すると返済が困難になり、キャッシュフローが悪化する可能性があります。
株式会社Casaの「家主ダイレクト」は、自主管理の大家さん向けに提供している家賃保証サービスです。家賃は前月末までに大家さんの口座に自動入金されるので、家賃滞納の心配がありません。また、更新料や原状回復費用も保証しているため、安定した賃貸経営につながることが期待できます。その上、孤独死保険も自動付帯しており、一人暮らしの入居者がいても安心して賃貸経営ができるでしょう。
賃貸経営においては、しばしば入居者と金銭面でトラブルになるケースがありますが、家主ダイレクトに加入することで、事前にあらゆるリスクへの対策につなげることが可能です。家賃保証料は入居者が支払うため、大家さんの負担はゼロなのもポイントです。
不動産会社の中には、管理と仲介を両方行う「仲介管理会社」も存在します。仲介管理会社を利用するメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
・1社で一括対応してもられる ・物件に詳しいので入居希望者への対応がスムーズ ・仲介がメインの場合は管理費を支払わずに済むケースがある |
・他社の仲介を受け付けない場合がある ・管理がメインの場合は別途、管理手数料が発生する |
仲介管理会社は管理と仲介を一括して行うため、大家さんは1社の対応だけで済みます。複数の不動産会社とやり取りする手間が省けるのはメリットの1つです。
また、物件を管理しているため、建物や室内の状況に詳しく、内覧者への対応がスムーズな点もあります。日当たり、住んでいる住民の雰囲気など、管理会社でないと分からない状況も伝えてもらえるため、集客できる見込みが高くなるといえます。その上、仲介業務を主とする会社の場合は、仲介手数料をもらうことから、管理手数料を無料または格安にすることもあります。
反面、デメリットもいくつか考えられます。たとえば、自社でのみ契約を取り付けるために他社からの紹介を受け付けないケースがあります。また、管理業務を主とする会社の場合は、仲介手数料の他に管理手数料が毎月発生します。管理手数料が管理内容に見合った金額であるかを見極めることが必要です。
管理会社と仲介会社では、それぞれ選ぶポイントに違いがあります。管理会社と仲介会社の選び方について解説します。
管理会社を選ぶときにチェックしたいポイントとして、以下があります。
賃貸経営は空室があると家賃収入が入りません。そのため、手がけている管理物件の入居率が高い会社を選ぶようにします。入居率が9割以上ある会社ならば安心して依頼できるといえます。加えて、管理戸数や実績が多いか確認することも大切です。入居率や管理戸数、実績は管理会社のホームページや資料で確認することが可能です。
退去者が出たらすぐに次の入居者を募集するなど、空室対策が万全であることも重要です。早いところは入居者がまだ住んでいるうちから募集をかけるケースもあります。また、入居者の満足度を上げるためには、トラブル処理が早いかどうかも大切です。クレームを受けた時に担当者が適切かつ迅速に対応することも求められます。
賃貸物件の集客を仲介会社に依頼するときは、以下の点を押さえているかどうか判断します。
仲介会社には得意分野があるので、たとえばワンルームマンションを所有している大家ならば、ワンルームの客付けで実績豊富な会社に依頼します。免許の更新回数が多いということは、それだけ営業年数が長いということですから、仲介会社を選ぶときの目安となります。
地域の情報に詳しいことも大きなポイントです。所有物件にマッチする入居希望者を見つけやすいといえ、たとえば大学の周辺に物件がある場合には一人暮らしの部屋を探す学生を紹介してくれる可能性があります。加えて、担当者の対応が良いかどうかも重要で、大家さんが気になる点を遠慮なく聞けるような信頼できる人柄だと理想といえます。
管理会社と仲介会社はそれぞれ役割が違い、管理会社は入居者と建物の管理を行うために大家さんと長い付き合いになるケースが多いですが、仲介会社の場合は契約が成立したら関係はひとまず終わります。
管理会社と仲介会社を選ぶときは、信頼できる不動産会社であるかどうかが共通のポイントです。入居者と直接やり取りするのは担当者なので、顧客満足度を高められる社員がいる不動産会社を選ぶようにしましょう。
宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を保有。家族が所有する賃貸物件の契約や更新業務を担当。不動産ライターとしてハウスメーカー、不動産会社など上場企業の案件を中心に活動中。