賃貸経営をしているオーナーにとって、よくあるトラブルへの対処法と解決に必要な法律知識は欠かせないことです。この記事では、オーナーがスムーズな賃貸経営を行うための参考として、トラブル事例と法律面から考える対処法について解説します。
【著者】水沢 ひろみ
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
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目次
賃貸経営でよくあるトラブルと対処法について知っておくと、実際にトラブルが発生した際、できるだけすみやかに解決へ動くことができます。また、予測できるトラブルに対しては、事前の対策を講じることで最小限に抑えられる可能性もあります。
ここでは、トラブルを➀物件・設備、②入居者、③迷惑行為、④賃貸退去時、⑤自然災害、⑥そのほかに分け、それぞれで考えられるトラブルと対処法をQ&A形式で説明していきます。
まずは物件・設備に関するトラブルを紹介します。
Q:所有する物件で雨漏りが発生した場合、責任はオーナーと入居者のどちらにありますか?また、どのような対処が必要ですか?
A:所有する物件で発生した雨漏りは、原則的にはオーナーに修繕の責任があります。しかし、雨漏りが発生した原因によっては責任の所在が変わるケースもありますので、原因の究明が必要です。雨漏りの被害はできるだけ早めに対処しないと被害が拡大する恐れがあるため、迅速に問題解決をすることが求められます。
Q:入居者から、設備故障についての連絡がありました。修理や費用負担の責任は、オーナーと入居者のどちらにありますか?
A:入居者の使用法に問題があるなどして生じた故障以外の場合、設備故障の修繕の責任はオーナーにあります。さらに、設備故障などが原因となり、入居者が賃貸物件で生活することに支障が生じる場合には、支障の程度に応じて賃料が減額されるという民法の規定もあります。設備故障の連絡があった場合には、故障の原因を調べるとともに、オーナー側には速やかな修繕の手配をすることが求められます。
Q:所有する物件の入居率を上げるために大幅なリフォーム工事を行いましたが、高額なリフォーム費用がかかった割に満足な仕上がりではありませんでした。費用を抑えて効果的なリフォームを行うには、どういった点に注意すればよいのでしょうか?
A:適切な業者を選ぶこと、自分の希望を伝えてお互いに内容の誤解がないか確認すること、見積もり内容をチェックすること、現場に足を運んで工事の様子を確認することなどが必要です。
Q: DIY型賃貸借契約を結ぶ際に、オーナーとして注意すべきポイントはありますか?
A:広く入居者を募集するために入居者のさまざまなニーズに対応することは有効で、賃貸物件でDIYをして自分好みの部屋で暮らしたい、というニーズの高まりに答えることも賃貸経営のひとつの形です。しかし、DIYは入居者の判断で物件に造作を加えることになるため、賃貸契約を結ぶ際に原状回復の範囲について明確に定めておく必要があります。
Q:工事中に業者が破産してしまいました。どうすればいいでしょうか?
A:裁判所に選任された破産管財人が、工事の継続か契約解除かを判断します。契約が解除された場合は損害賠償請求を行うこととなり、オーナーは破産債権者となります。大規模修繕を行う際には、事前に業者の信頼性や、仮に破産となったら保険関係などはどのようになっているか、慎重に調べておくことが大切です。
続いて、入居者に関わるトラブルを紹介します。
Q:高齢者からの入居申し込みにあたって、孤独死や認知症などのリスクが心配です。入居申し込みを受けるべきか、どのように判断したらよいでしょうか?
A:高齢化が進んでいること、また、人口減少による賃貸物件の空室の増加が予想されることなどを考えると、高齢者の入居を一切受け入れないことは現実的ではないといえます。警備会社や自治体などが提供している見守りサービスを利用する、保証人などの身内の人と常に連絡が取れるような体制を整えておくなど、高齢者の入居にも対応できるような工夫が必要になるでしょう。
また、入居時の審査を慎重にしたり、孤独死保険が付帯された家賃保証会社を利用したりすることも対策として考えられます。
Q:入居者からの度重なる家賃滞納に困っています。有効な対処法はありますか?
A:賃貸経営では、入居者による家賃滞納は重要な問題です。まずは口頭や電話で催促、次に書面で催促を行います。それでも支払われないようならば内容証明郵便で督促し、最終的には契約解除手続きへと進むことになります。特に初めて行う場合、弁護士などの専門家へ相談することも大切です。
Q:入居者の入居後に虚偽申告が発覚しました。賃貸借契約の解除は可能でしょうか?
A:家賃滞納やほかの入居者とのトラブルなど、何らかの別の問題が発生しない限り、入居者の虚偽申告だけを理由に賃貸借契約を解除することは難しいといえます。とはいえ、入居者が虚偽の申告を行う背景には、家賃滞納の可能性があるなど、オーナーにとって何らかの不利益が考えられる事情を隠しているかもしれません。こういったリスクのある入居者は、入居前の審査を慎重に行うなどの対応で防ぐことが大切です。
Q:賃貸契約の更新時に、入居者から家賃の値下げ交渉を受けました。値下げを受け入れるべきでしょうか?
A:入居者からの値下げ交渉を受け入れるべきか否かは悩むところでしょう。賃貸経営の収益性維持のためには、安易な値下げ交渉を受け入れるべきではありませんが、退去されることで生じる空室リスクもできれば避けたいところです。対処としては、所有物件の現状を客観的に把握して家賃との釣り合いを考えること、そのうえで新たに入居者が見つかるかどうかの可能性を総合的に判断することが必要だといえます。
Q:外国人からの入居希望にどう対応すべきか迷っています。空室リスクを考えると入居を許可したいのですが、入居後にトラブルが発生しないか心配です。
A:言葉や文化の違い、保証人がいないなど、外国人の受け入れにはリスクが伴う面があるのは確かだといえます。一方で、外国からの労働者が増えている現在、外国人を受け入れないと判断することは空室リスクを上げることにつながるかもしれません。外国人を受け入れるメリット・デメリットを理解したうえで判断しましょう。
賃貸経営を行うオーナーとして、入居者による迷惑行為に遭遇する可能性は少なくありません。どういったケースがあるのか、具体的なトラブル例を見ていきましょう。
Q:ベランダで喫煙している入居者に対する苦情が寄せられています。どのように対応すべきでしょうか?
A:ベランダ喫煙で迷惑している人がいることを知らせる張り紙を掲示板などに貼り、ベランダでの喫煙が禁止されていることをその喫煙している入居者に間接的に伝えることから始めます。改まらないようならば個人を特定して注意します。それでも改善が見込まれなければ、法的手段に出ることを伝える必要があります。
Q:入居者の騒音がうるさいという苦情が寄せられています。オーナーとしてどのように対処すれば解決できますか?
A:騒音問題は賃貸経営では頻繁に発生します。自分が出している音には気づきにくいだけでなく、騒音問題は人によって感じ方に大きな差があること、関係が悪くなると些細な音でさえ気になりだしてしまうことなどから、大きなトラブルにつながりやすいため、オーナーとして慎重な対応が必要です。まずは事実関係を正確に把握することから始めましょう。
Q:ごみ出しのルールに違反している入居者がいて困っています。どのように対処すべきでしょうか?
A:ごみ出しのルールは自治体によって異なることもあり、ごみ出しを巡るトラブルは頻繁に起こります。ごみ出しのルールに反する入居者がいる場合、張り紙でごみの出し方について周知を行い、最初は違反者を特定しない形で伝えるようにします。それでも改善しない場合には違反しているごみを特定して注意を促し、最終的には個人を特定して注意することが必要になります。
Q:隣人から嫌がらせ行為を受けていて困っていると入居者から苦情が入り、対応の仕方に悩んでいます。
A:嫌がらせ行為が事実であれば、放置することで入居者が退出してしまう恐れがありますし、オーナーの対応によってはオーナーが損害賠償請求を受けるケースもあります。まずは被害を受けている入居者の言い分を聞き、正確な事実関係を把握する必要があります。
嫌がらせ行為が確認できた場合には、写真に撮る、録音するなど、できるだけ客観的な証拠を残してもらうようにします。オーナーはそれをもとに、嫌がらせ行為をする入居者に対して口頭や書面による注意を行いましょう。改善されないようならば、場合によっては弁護士への相談が必要になる可能性もあります。
Q:ペットの飼育は禁止にしているにもかかわらず、ペットを飼育している入居者がいるようです。どのように解決すればいいでしょうか?
A:ペットを飼育している可能性がある入居者に対しては、ほかの入居者から苦情が出ているといった旨を説明したうえで、室内を点検させてもらうよう話を進めます。入居者の対応によっては、契約違反を理由に退去してもらう可能性もあり得ます。その際は、ペットによる部屋の汚損や悪臭などの原状回復費用を請求することが可能です。
入居者が部屋を退去する場合に発生しがちなのは、原状回復の範囲や費用負担についてのトラブルです。
Q:入居者の退去にあたり、年月の経過によって壁紙が黄ばんでいるのですが、壁紙の張り替え費用は原状回復費用として請求できますか?
A:入居者退去時にオーナーが負担すべき原状回復費用の範囲を判断する基準は、「入居者が正しく使用していても生じる経年劣化や通常損耗」であるかどうかです。これに該当する場合は原則、オーナーの負担であると考えられます。仮にこの原則とは異なる特約を設ける場合には、賃貸契約書に明記する、入居者がその点を理解できるまで説明し同意を得るなど、トラブルにつながらないような対策が必要です。
Q:賃貸契約終了による退去立ち会いの際は、どのようなことに注意すればよいでしょうか?
A:可能な限りオーナーと入居者の双方が立ち会うようにし、後日問題となりうる事項については必ず書面を残すこと、必ず家財道具が無い状態で行い、室外の状況も確認しておくことが必要です。場合によっては、専門家に同席を依頼するなどの対応も有効です。
自然災害による予期せぬトラブルを想定しておくことも賃貸経営においては重要です。自然災害に対しては保険に加入するといった事前の備えが大切です。
Q:地震により火災が発生した場合は、火災保険で補償されますか?
A:火災の原因が地震による場合、火災保険では補償されません。地震による火災を補償するには地震保険に加入する必要があります。ただし、地震保険は単独で加入することはできず、火災保険契約に付帯して申し込むことになります。
Q:台風などで建物が壊れたら、オーナーは入居者に対してどの程度までの責任を負えばいいのでしょうか?
A:台風などの自然災害は不可抗力で発生するとはいえ、オーナーは入居者に対して部屋を修繕して使用できる状態にする義務があります。ただし、あまりにも物件の毀損が激しく、修繕が不可能と判断される場合には、賃貸借契約は終了となる可能性が高くなります。
そのほか、賃貸経営において発生するトラブルをいくつか紹介します。
Q:空室リスクや家賃滞納リスクを考え、サブリース会社の利用を検討しています。ただ、サブリース会社を利用すると赤字になるという話を聞き、迷っています。サブリース会社を利用した場合のメリットはあるのでしょうか?
A:サブリース会社の利用は、手数料を支払えば一定の家賃が保証されるので、空室や家賃滞納を心配する必要はなくなります。しかし、手数料を引いた後の利回りがマイナスになるケース、一定期間ごとに保証賃料の見直しがされ賃料が下がるケースがあります。サブリース会社との契約解除が制限されるなど注意すべき点もあるため、メリット・デメリットをふまえ慎重に検討する必要があるでしょう。
以上で紹介してきた数々のトラブルは、時間が経てば経つほどに事態は悪化するケースがほとんどです。そのため、トラブルの迅速な解決のためには初動が重要だといえます。
たとえば、家賃滞納のケースでは、家賃の滞納が生じたらできるだけ早めに把握し、入居者への連絡を行う必要があります。なぜならば、オーナーが放置すればするほど入居者は家賃の支払いを後回しにしたり、滞納が常態化したりする可能性があるからです。万が一、家賃を滞納したまま退去するといった悪質な入居者だった場合には、家賃の回収が難しくなってしまう可能性もあります。
また、度重なる連絡でも家賃の滞納が解消されない場合は裁判での解決が必要になりますが、その際に「オーナー側は必要な催促を適時に行っていた」という事実は欠かせません。裁判になった場合のことを考えても、放置せず早い段階から対策を講じておくことは大切なポイントだといえるでしょう。
しかし、これまで述べてきたように賃貸経営によるトラブルは多岐にわたり、すべての発生をオーナーが回避することは至難の業です。そのため、トラブルが起こった時の初動が大切なのはもちろん、日ごろからオーナーには法律における正しい知識をつけておくこと、それをふまえて適切に行動することが求められるといえます。
2020年4月に民法が改正され、賃貸借契約に関する重要な変更がありました。
今回の改正では主に以下の点について定められました。
トラブルを未然に防ぐために、オーナーは契約を結ぶ時点で契約書類の内容を十分に確認しておき、少しでも不明な点は解消しておくということも大切なポイントです。
特に確認すべきものとして、具体的には以下の書類が挙げられます。
賃貸トラブルを避けるためにオーナーができる対策として、具体的に挙げられる点を紹介します。
入居希望者が入居した後は、たとえ細かな契約違反があったとしても、簡単に契約を解除することはできなくなります。賃貸トラブルをできるだけ避けるためには、上述した契約書類の入念な確認を含め、入居時に入居者の審査を慎重に行うことが求められるでしょう。
入居者が退去する際、オーナーと入居者は原状回復の範囲において揉めることがあるため、オーナーは物件を貸し出す前に物件の状態をあらかじめ記録しておきましょう。具体的には、物件の状態を入居者と共に確認して物件状況確認書を作成しておく、後日認識の食い違いによるトラブルが生じる恐れのある個所は写真を撮っておくなどが挙げられます。
賃貸物件のオーナーがトラブルを避けるためには、家賃保証会社を利用することも有効です。家賃保証を提供する会社はいくつかありますが、会社よっては入居者へのフォローアップ支援を行うところがあり、たとえば入居者が入居後に家賃の支払いが難しくなった場合に、生活を立て直すための相談ができる窓口を用意していることがあります。
また、家賃保証会社は入居者に代わり家賃を保証してくれるため、サービスを利用することで家賃滞納などのトラブルを回避することができます。入居者が連帯保証人を用意できないとしても安心して部屋を貸すことができるなど、賃貸オーナーにとって家賃保証会社を利用することにはさまざまなメリットが考えられます。
賃貸トラブルを避けるための方法として家賃保証会社の利用を紹介しましたが、数多く存在するサービスの中でもおすすめなのは「家主ダイレクト」です。
家主ダイレクトは入居者の賃料をすべて保証する家賃保証サービスで、たとえ入居者の口座が残高不足だとしても、必ずオーナーの口座に入金される点が大きな特徴です。
そのほか、早期解約違約金保証、更新料保証など、賃貸オーナーがトラブルになりがちなお金に関する部分を手厚く保証しています。サービスの利用料は入居者側が負担するため、オーナー側の負担は発生しません。
トラブル回避のためには入居者の審査が重要であることは本記事で述べてきたとおりですが、家主ダイレクトを利用していれば入居者の入居時の審査をプロの目で行ってもらえるため、オーナーはトラブル発生のリスクを抑えられる可能性が高くなります。
賃貸経営においてオーナーが抱える可能性のあるトラブルは、所有している物件自体から発生するものに限らず、自然災害などといった予測不可能なものから入居者同士の人間関係に関わるものまで幅広く存在します。ぜひ本記事を参考にオーナーは起こりうるトラブルを事前に想定し、場合によっては家賃保証会社の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
オーナーのための家賃保証
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かつて銀行や不動産会社に勤務し、資産運用に携わった経験を活かし、現在は主に金融や不動産関連の記事を執筆中。宅地建物取引主任、証券外務員一種、生命保険募集人、変額保険販売資格など保険関係の資格や、日商簿記1級など、多数の資格を保有し、専門的知識に基づいた記事の執筆とアドバイスを行う。