物件を探しているときにしばしば目にするのが、「未公開物件」という表示です。未公開というと何やら特別感がありますが、どういう物件が該当するのでしょうか。この記事では未公開物件に焦点を当て、未公開物件の定義や探し方、メリット、注意点などを詳しく解説します。
【著者】矢口 美加子
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未公開物件は実際に存在します。未公開物件とは、レインズ(※詳しくは後述します)や不動産情報ポータルサイトなどで一般公開されていない物件のことです。売主から売却を依頼された不動産会社だけが物件情報を保有しています。では、未公開物件について深く理解するために、媒介契約の種類や、レインズへの登録義務の内容を見ていきましょう。
不動産の売却を正式に不動産会社へ依頼する場合は、不動産会社と「媒介契約」を締結するのが一般的です。媒介契約には3つの種類があります。
【媒介契約の種類】
媒介契約の種類 | 特徴 | 契約の有効期限 |
---|---|---|
専属専任媒介契約 | ・不動産会社1社だけに仲介を依頼することができる ・不動産会社が見つけた買主のみと契約することができる |
最大3カ月 |
専任媒介契約 | ・不動産会社1社だけに仲介を依頼することができる ・不動産会社が見つけた買主に限らず、自分で買主を見つけた場合の契約も認められている |
最大3カ月 |
一般媒介契約 | ・複数の不動産会社に仲介を依頼することができる ・不動産会社が見つけた買主に限らず、自分で買主を見つけた場合の契約も認められている |
有効期限はない |
この表のとおり、もっとも自由度が高いのは一般媒介契約となり、複数の不動産会社に仲介を依頼できるうえ、自分で買主を見つけることもできます。しかし、専任媒介や専属専任媒介とは違い、物件によってはそれほど契約成立に向けて力を入れてくれない場合があります。
専任媒介契約は、自分で見つけた買主と契約することができますが、仲介を依頼できる不動産会社は1社のみとなります。そのため、基本的には媒介契約を結んだ不動産会社の力量次第といえます。
専属専任媒介契約は、自分で買主を見つけることはできず、仲介を依頼した1社の不動産会社が見つけた買主のみとの契約となりもっとも制限があるものの、不動産会社にとっては確実に利益を得やすいことから、熱心に買主を探してくれる可能性が高くなります。
媒介契約の3種類について理解できたところで、今度はレインズに関して見ていきましょう。宅地建物取引業法では、媒介契約成立から5日または7日以内に、不動産会社は物件情報をレインズへ登録することが義務付けられています。
レインズとは、国土交通大臣の指定を受けた「指定流通機構」が運営しているデータベースです。全国の不動産業者が加入し、ネットワークで結ばれているシステムで、一般の人はアクセスすることができません。前章で3つの媒介契約について説明しましたが、媒介契約の種類によりレインズへの登録義務についてのルールは異なります。
【レインズへの登録義務】
媒介契約の種類 | レインズへの登録義務 |
---|---|
専属専任媒介契約 | 媒介契約成立から5日以内 |
専任媒介契約 | 媒介契約成立から7日以内 |
一般媒介契約 | 登録義務はない |
「未公開物件」が存在する理由としては、大きく以下の3パターンのうちどれかに該当します。
専属専任媒介契約は媒介契約成立から5日、専任媒介契約は7日以内に物件情報を登録する義務がありますが、不動産会社がレインズへ登録する前の段階(専属専任は4日目まで、専任は6日目まで)は、不動産情報ポータルサイトを利用する一般消費者にとっては「未公開物件」ということになります。
また、パターン2で紹介したように、1つの物件の売主への売却と買主による購入を、1社の不動産会社が独占して仲介することを「囲い込み」といいます。
囲い込みによって両手仲介(1つの物件を売主、買主のどちらにも仲介すること)に持ち込みたい不動産会社は、たとえレインズに物件情報を登録したとしても、買主側の仲介会社から問い合わせを受けた場合に物件の紹介をしなくなります。たとえば「その物件は現在契約の段階に進んでいます」などと事実ではないことを告げ、紹介を断ります。これが囲い込みで、たとえレインズへの公開はされているとしても、未公開の場合と同じ状態が起こることになります。
おもに一般媒介で発生するケースですが、「売却することをオープンにしたくない」など、売主側の都合で公開していない物件も未公開になることがあります。専属専任・専任媒介はレインズへの登録義務がありますが、一般媒介には登録義務がありません。そのため、売主が売却情報を公開したくない場合は、一般媒介を締結することになります。そうすることで他の不動産会社に情報がもれることはなくなりますので、一般消費者の目に触れることもありません。また、売主から依頼を受けた仲介業者の意向で「A社には情報を伝えるが、A社以外には公開しない」ということもあります。
物件情報を未公開にするのには、それなりの理由があります。ここでは、不動産会社側、売主側それぞれの理由について解説をしていきます。
不動産会社が物件を未公開にするおもな理由として、以下が考えられます。
売り主から媒介契約を受けたときに、立地や建物の状況が良いといった人気が出そうな物件は自社で買主を見つけやすいため、未公開にすることがあります。理由は、売主からもらえる手数料にプラスして、買主からも手数料を受け取ることができるからです。これを「両手仲介」といい、「囲い込み」にして物件情報を独占する状態に持っていき、売主と買主の双方から手数料をもらうことをさします。
すぐに売却が決まりそうな価格で媒介契約を締結した場合も同様です。市場価格よりお手頃である場合は、お得感を優先する買主が購入するなど、すぐに契約が成立する可能性があるために未公開にしていることが考えられます。また、自社の顧客が提示している条件にたまたま合っている物件の場合も、紹介すれば購入してもらえる可能性が高いことから、未公開にしているケースがあります。
なお、重要なポイントですが、「未公開物件」にするかどうかは本来、売主が決めることであり、不動産会社が決めることではありません。「未公開物件」は一般媒介契約でなければできないことであり、専任媒介契約の場合はレインズへの登録義務(一般公開する義務)があります。一般媒介契約ならば、さきほど説明したとおり売主が「売却情報をオープンにしたくない」というケースであっても特に問題ありません。しかし、仲介業者が自社の利益を上げるため勝手に「未公開」にしてしまうケースは、売主の売却機会の損失につながるため問題があると考えられるでしょう。
一方、売主が物件を未公開にするおもな理由としては、以下が考えられます。
不動産を売却する主な理由のひとつに、まとまった資金をつくることが挙げられます。そのため、近所の人や知人に「経済的に困っているのではないか?」などと詮索されたくないというのは、売主が未公開にしたい理由として考えられます。
その他にも、よくある理由としては、プライバシーを重視する売主が、自分が所有する不動産の価値を不特定多数の人に知られたくないというケースです。また、分譲マンションなどだと、同じ物件が売却にかけられていた場合に値下げ合戦になりかねないため、あえて未公開にしているということもあります。
売主の中には、買い替えを検討しているけれどもまだ引っ越し先が決まっていない、という場合があります。こういうケースは、内覧者がたくさん来ても対応しきれず、対応するのが大変であるため、1社だけの不動産会社に依頼して未公開で進めてもらうことになります。もしも買主がなかなか見つからないとなったら、後日公開する方法がとられます。
未公開物件のメリットは、価格が安いなど「お得な物件」である可能性が高いことです。不動産ポータルサイトなどでは、広告に載せるだけでも料金が発生することがあります。そのため、広く公開しなくても買主が見つかりやすい物件は、不動産会社が未公開にしていることがよくあります。
また、人気エリアなど立地が良い可能性があるのもメリットのひとつです。立地の良いエリアにある人気物件で、なかなか市場に出回らない「掘り出し物の物件」である可能性があります。
そのうえ、ライバルが少なく最初に申し込めるという点もメリットです。未公開物件は不動産情報ポータルサイトなどで公開されていないため、一般消費者にはわかりません。そのため、立地や間取りなどの条件が良い物件をいち早く契約できるのもメリットのひとつと考えられます。
未公開物件のメリットについて知ると、ではどうやったら見つけられるのか、と気になる人もいるのではないでしょうか。なぜならば、未公開物件は不動産情報ポータルサイトなどのインターネットや不動産会社の広告チラシなどでは一般公開されていないからです。
探し方としては、以下4つの方法があげられます。
1.複数の不動産会社で探す
2.地元の不動産会社に相談する
3.営業担当者からの紹介
4.不動産会社のホームページで探す
それぞれの方法を説明していきます。
未公開物件はインターネット上で公開されていないため、直接、不動産会社の店舗に行ったり、電話やメールで問い合わせたりして情報を収集します。なるべく複数の不動産会社に当たったほうが、信頼できる営業担当者を見つけやすいといえます。
地元の不動産会社に相談するのもおすすめです。大手の不動産会社より取り扱う件数は少ないですが、地域密着型なので地元の不動産について詳しい情報を把握しています。老舗の不動産会社の場合、地元の地主と代々取引をしている会社も多いので、インターネットには出ていない「掘り出し物」の物件を紹介してもらえる可能性もあります。融通がききやすいので、価格や条件面で交渉しやすいのもメリットです。
信頼できる営業担当者がいる場合、よい未公開物件がないかを定期的に連絡をするようにしましょう。そのためには、日頃から信頼関係を構築しておくのが大切です。特に、事前に自分が希望する物件のエリア・広さ・予算などを詳しく伝えておくようにします。こうしておくことで、条件に合う物件が出てきたときに優先的に紹介してもらえる可能性が高くなります。
不動産会社のホームページで探すのも良い方法です。ポータルサイトだと広告費が発生するため掲載していないものの、自社のホームページ上では掲載しているということがあるからです(自社ページ上ならば広告費がかからないため)。もちろん、すべての不動産会社のホームページを調べることはできませんから、希望するエリアにある数社に絞って探してみましょう。会員登録ができる場合は登録をしておくと、希望条件に合った不動産の情報が送られてくることがあります。
未公開物件には注意すべき点もあります。ここでは、考えられる3点について説明します。
未公開物件は価格情報などが公開されていないため、市場価格との比較が容易ではありません。相場より価格が割高なこともあり得ます。したがって、紹介された未公開物件の価格が適正であるかどうかを確かめることが必要となります。国土交通省が運営している「不動産情報ライブラリ」では、実際に取引された不動産価格をインターネットで簡単に調べることができます。不動産の種類をエリアごとに検索できるので、市場価格を把握するのにおすすめです。
▶国土交通省 – 不動産情報ライブラリはこちら
不動産を購入する際、多くの人が避けたいと感じる物件として「事故物件」が挙げられるでしょう。事故物件の内容によっては「告知事項あり」として扱われますが、敬遠されることが多いため未公開物件にされる場合もあります。一般的に公開されるケースでは、宅地建物取引業者が重要事項説明の際に告知事項について説明することが義務付けられているため、買主が納得したうえで購入することになります。 しかし、中にはきちんと告知をしない悪徳業者もいるため、自分で調べてみることをおすすめします。事故物件を調べるサイトなどで確認してみるのもよいでしょう。
ただ「未公開」というだけで、そこに希少性はない可能性もあります。「未公開」と謳っていると掘り出し物の物件のようなイメージがありますが、実はそうとは限りません。単純にその時点で未公開物件だったケースもあるからです。不動産会社が特別な物件として売り出すために、あえて「未公開」としているだけの場合があるため、物件の内容についてきちんとチェックしてみることをおすすめします。
未公開物件は思わぬ掘り出し物が見つかることもありますが、注意したい点もいくつかあります。基本的には不動産会社でないと知り得ない情報であるため、日ごろから信頼できる営業担当者を見つけておくことをおすすめします。紹介してもらった物件は自身でも内容をよく調べて確認するようにしましょう。
宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を保有。家族が所有する賃貸物件の契約や更新業務を担当。不動産ライターとしてハウスメーカー、不動産会社など上場企業の案件を中心に活動中。