2022.03.07
不動産投資

瑕疵物件とは|賃貸オーナーとしての対策と告知義務について

すでに不動産オーナーの人も、これから不動産オーナーを目指す人も、瑕疵物件とは何か理解することで、賃貸オーナーとして注意すべきポイントが分かるようになります。今回は瑕疵物件の種類について、その中でも特に判断が難しい心理的瑕疵について焦点をあて、所有物件が瑕疵物件になった際の告知義務や対応策なども踏まえ説明します。ぜひ賃貸経営に活かしてみてください。

【著者】水沢 ひろみ

 

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瑕疵物件とは?

不動産取引では、時折「瑕疵(かし)物件」という言葉を目にすることがあります。一般の人々にとってはあまり聞きなれない言葉ですが、「瑕疵」とはキズや欠点を意味し、法律上の効果に何らかの問題がある際に使われる言葉です。

不動産取引における瑕疵物件とは、対象となる不動産が本来備えていると想定される品質、性能、状態が欠けていることにより、取引の相手方が期待したとおりの効果を満足に受けられない状態の物件を指します。

瑕疵物件は外見上、何ら問題がないように見えることもあるため、気が付かないで契約してしまう可能性がありますが、後から思わぬトラブルに発展してしまうこともあるので注意する必要があります。また、通常の相場よりかなり安い価格で取引されることが多く、一見すると魅力的に映ることもありますが、物件の瑕疵の内容を把握して契約することを心がけてください。

瑕疵物件の売主や貸主になる際には、後日のトラブルを避けるために、瑕疵の存在を相手方に告知する必要があります。これを怠ると損害賠償や契約の解除の対象になる可能性がありますので、誠実な対応が求められます。また、瑕疵物件によるトラブルやダメージを避けるために、このように物件の状況や契約内容に応じた慎重な対応を行ったとしても、自分の所有する物件で自殺や孤独死が生じるなど、事後的に瑕疵物件になり損害を被る可能性は残ります。

そこで、次章からは瑕疵物件とは具体的にどのような物件を指すのかについて解説した後に、どのような点に気を付けるべきなのかを説明していきます。

瑕疵物件は3種類に分けられる

「瑕疵物件」は、瑕疵の内容によって「心理的瑕疵」「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」の3種類に分けられます。この3種類に「環境的瑕疵」を加えて4種類に分類する考え方もありますが、「環境的瑕疵」は「心理的瑕疵」との区別があいまいなケースも多いため、ここでは「環境的瑕疵」は「心理的瑕疵」に含まれるものとして解説します。

心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、対象となる建物内や近隣で、自殺や殺人、事故死などがあった場合のように、そこに住むことに対して心理的な抵抗を感じる可能性がある状態を指します。また、騒音や悪臭、震動などの原因となる施設や、暴力団などの反社会的勢力の事務所や墓地など、一般的に敬遠される施設が周辺にある場合も心理的瑕疵に含まれると考えられます。

通常、瑕疵物件の取引にあたっては、売主や貸主は契約の相手方に対して瑕疵の存在を告知する義務があります。しかし、人によって感じ方の違いが大きいことから、何が心理的瑕疵にあたるかの判断や線引きは難しく、トラブルに発展するリスクが大きいことには注意が必要です。

日常生活を送るうえで、これらの心理的瑕疵のある物件で毎日を過ごすことは人によっては大きなストレスとなるため、「知っていれば契約しなかった」というケースも多いでしょう。契約の際には、前もってきちんと告知することで契約後のトラブルを回避することが望ましいといえます。

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、土地や建物を利用するうえで物理的に重大な影響がある欠陥を指します。

建物の物理的瑕疵の例としては、

  • 建物にシロアリの被害がある
  • 雨漏りや水漏れが生じている
  • 建物に何らかの構造上の欠陥がある
  • 建物が傾いている

などのケースが考えられます。

天井裏など、普段見ることがない箇所が雨漏りしている場合には契約時点では気が付かないこともありますし、シロアリについても被害が大きくなるまで気が付かないことが多いのが実状です。構造上の欠陥も素人が表面上確認しただけでは発見することは難しく、建物の傾きも、よほど大きく傾いているのでなければ気が付くのは困難なケースも少なくありません。

土地の物理的瑕疵の例としては、

  • 土壌汚染
  • 産業廃棄物などが地下に埋まっている
  • 地盤沈下
  • 土地の境界線が曖昧

などのケースが考えられます。

土壌汚染や産業廃棄物などが地下に埋まっているなどの土地の状態は、極端な悪臭がするなどの弊害がないかぎり気付くことは困難です。しかし、知らずに生活することで健康被害が生じるケースもあります。地盤沈下の発生やその可能性が疑われるケース、土地の境界線が曖昧であることを知らずに契約してしまうケースも、契約後、土地の有効な利用が妨げられる可能性が大きくなります。

これら物理的瑕疵に該当するケースは、一見した限りでは気が付かない欠陥であっても、不動産を用法通りに利用するうえでは大きな障害となるものです。瑕疵の存在を知っていれば契約していないか、契約するとしても割り引いた価格で契約するのが通常でしょう。契約の相手方が後から知り、損害賠償や契約の解除を求められる可能性もありますので、これらの瑕疵の存在を知っている場合には相手方へ明示して契約することが必要です。

法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、建築基準法・消防法・都市計画法などの法律の規定に反している・制限を受けているため、建て替えや増築が自由にできないなど、法律的に欠陥を有する状態を指します。

具体的なケースとしては、

  • 接道義務を満たしていない
  • 容積率・建蔽率などに違反している
  • マンションなどで防火扉や避難ハシゴなどの防災設備を設置していない
  • 建物の建築が認められていない市街化調整区域に建物が建っている
  • 都市計画道路の予定地にあたる

などがあげられます。

建築基準法43条によると、原則として建築物の敷地は建築基準法上の道路に2メートル以上接していることが必要とされています。ところが、建築基準法が施行される以前に建てられた建物の中には、「再建築不可物件」と呼ばれる、この接道義務を満たしていない建物があります。再建築不可物件は、文字通り再建築が認められないので、現在の建物を取り壊して新たな建物を建てることができません。

また、容積率・建蔽率などに違反している建物の場合には、立て替えた際に現在の建物と同じ規模の建物を建てることができません。

このように利用法が制限されることから売買も難しくなるため、法律的に瑕疵があることを知らずに購入してしまうことは大きなリスクを抱えることになります。購入の際にはこれらの瑕疵がないかを確認する、自分が売主となる際には相手方に正確な情報を告知することでトラブルを避ける必要があります。

明確な基準がなく最も難しいのは「心理的瑕疵」

前章の1番目に紹介した心理的瑕疵は、何をもって瑕疵とするのかの明確な基準があいまいで、借主が瑕疵と感じれば瑕疵に該当すると考えられています。そこで、もっとも判断が難しい心理的瑕疵について本章では特に詳しく説明していきます。

心理的瑕疵と判断されるケースと具体的な内容

先ほども説明したとおり、心理的瑕疵とはそこで生活するにあたって心理的な嫌悪や抵抗を感じるような状態のことを指します。

具体的には、

  • 物件やその周辺で自殺や殺人、事故死などがあった
  • 近隣にカルト教団などの施設がある
  • 墓地、火葬場、葬儀場が近くにある
  • 鉄道や幹線道路が近く、騒音や振動が気になる
  • ごみ焼却炉、下水処理場、原子力発電所が近い
  • 化学薬品工場や養豚場、養鶏場などの悪臭のする施設がある
  • 反社会的勢力の事務所が近くにある
  • 眺望が遮られていて見通しが極端に悪い
  • 物件の日当たりが極端に悪い
  • 物件や周辺で過去に浸水被害があった

など、さまざまなケースが考えられます。

自殺・殺人・事故死は心理的瑕疵に該当しますが、自然死の場合には告知は必要ないとされるのが一般的です。ただし、遺体が発見されるまでに長期間経過しており腐乱が進んでいたようなケースでは、告知が必要になることもあります。

物件自体ではなく物件の近隣に嫌悪施設があることにより心理的瑕疵となるケースでは、単に心理的に嫌悪感を抱くというだけではなく、悪臭や振動などによって現実的な生活に影響があるケースも含まれます。

心理的瑕疵は「借主の感情」が大きい

心理的瑕疵になる基準は、部屋の借主・買主が「それを知っていたら契約していませんでした」となるかどうかが重要なポイントです。

また、人はいつか死ぬことが自然の摂理であって、時の経過や地域性によっても死への評価は変わってきます。「死」に対する認識は人により異なり、契約するか否かの判断にどの程度影響するかは借主・買主の感情に関わるため、個人差による部分が大きいでしょう。

心理的瑕疵にあたるかの判断の難しさはここにあるのです。そのため、契約に関わる宅地建物取引業者、売主や貸主によって告知すべきと考える基準に開きが生じやすく、特にトラブルに発展しやすいことを認識する必要があります。

心理的瑕疵物件にある「告知義務」とは

宅地建物取引業法に明確な基準は示されていないため、これまで告知義務については不動産会社の判断によるところが大きく、ケースバイケースで対応がとられていました。心理的瑕疵の告知義務については判断が難しいことから、トラブルが発生しやすかった実状があります。そこで、居住物件を対象として、令和3年度に国土交通省によってガイドラインが策定されました。

国土交通省 – 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

賃貸契約、売買契約の告知期間

ガイドラインでは、宅地建物取引業者や売主・貸主は、取引の相手方である買主や借主に対して、取引の判断に重要な影響を及ばす事実について把握している時には、その事実を告知する必要があることを示しています。そして、特に「取引の対象となる不動産において生じた人の死」に関する事案についての指針を示しています。

具体的には、過去に殺人事件や自殺、事故死、その他原因不明の死亡が発生しているケースにおいて、売買取引では経過年数に関わらず買主に対する告知が必要とされています。一方、賃貸契約の場合には3年ほどの期間が経過すれば原則としては告知の必要はないと考えられています。これは、売買取引は賃貸借契約に比べて取引額が大きいことから、買主に与える影響が大きくなると考えられるためです。

この際に、後日のトラブルを防止するため、告知の方法は書面等によることが望ましいということも示しています。ただし、ここでは裁判例等も踏まえた一般的な基準を示しています。実際の取引にあたっては、取引の目的や発生した事案の内容、発生からの経過時間、近隣による周知の度合いなどから、信義則に基づいて告知義務を判断すべきことを忘れないでください。

自然死などは告知義務なし

先述した国土交通省のガイドラインによれば、通常の自然死などは原則として告知義務はないとされています。

しかし、自然死であっても、発見が遅れたことにより長期間放置された場合などは、臭気や害虫、大量のシミなどが生じ、部屋に特殊清掃が必要となるケースもあります。このような事態を知っていれば借主や買主が契約締結を躊躇する可能性があると考えられ、こういったケースでは告知は必要と判断されます。

一方で、たとえ事故死であっても自宅で階段から転落したり、入浴中に転倒したり、食事中の誤嚥など、日常生活の中で起こりうる不慮の事故によって死亡した場合については告知の必要はないとされています。

ただし、これらはあくまでもガイドラインであって、これらの基準に従えば必ず責任を負わなくても済むとは限らないことには注意が必要です。現実的には具体的なケースごとに慎重な判断が要求されるといえます。

オーナーは孤独死への対策が重要

かつてない高齢化が進んでいる現状では、入居者の高齢化による孤独死への対策は不可欠となっています。自然死については原則として告知義務はありませんが、発見が遅れて腐乱が進み、特殊清掃が入ると、3年間の告知義務が発生します。そこで必要になってくるのが、定期的に入居者の安否を確認するなどの孤独死への対策です。

具体的な安否確認の方法としては、できる限りコミュニケーションをとることを心がけるほか、いざという時の緊急連絡先を確認しておき、家族とも連絡を取り合っておくことなどが考えられます。また、最近は自治体のサービスを利用する方法や、高齢者向けの見守りサービスを利用する方法などもあります。

スマートフォンを利用したり、家電や見守りカメラを利用したりする方法のほか、見守りサービスを提供しているセキュリティー会社もありますので、これらのサービスの利用について入居者の家族などと相談してみることも有効でしょう。

また、さらなる対策としては孤独死保険への加入も挙げられます。ただし賃貸経営にはさまざまな経費がかかりますので、孤独死への対策が必要とはいえ、孤独死保険の保険料の負担はできれば軽くしたいと感じるかもしれません。このようなときに便利なのが、孤独死保険が付帯されている家賃保証サービスを利用することです。

家賃保証とは、毎月の賃料を入居者の口座から引き落とし、オーナーの口座へ振り込むシステムをさします。仮に残高不足で引き落としができなくてもオーナーの口座には振り込みが行われるので、家賃滞納のリスクを減らせるのがサービスを利用する大きなメリットです。


数ある家賃保証サービスの中でも、孤独死保険付帯のサービスとしておすすめなのは、「家主ダイレクト」です。家主ダイレクトのサービス利用料は入居者負担となるため、オーナー側の費用負担はありません。孤独死保険が無料で付帯しているため、オーナーは費用を負担することなく孤独死で生じる原状回復費用や事故対応費用などの補償を受けることができます。

家主ダイレクトは、「家賃保証」「集金代行」「孤独死保険」がワンパッケージになっているため、自主管理を目指すオーナーにとっておすすめの保証サービスです。

今後ますます進むと考えられる高齢化の時代には、このような孤独死保険への対策は高齢の方の入居を安心して受け入れるためには重要なことだといえるでしょう。

所有物件が瑕疵物件になったときの対策

法律的瑕疵については物件を取得する際に慎重に契約内容を確認すること、物理的瑕疵については所有物件のメンテナンスに気を配ることで、ある程度のリスクは下げられる可能性があります。

しかし、心理的瑕疵についてはオーナーが気を付けていたとしても防ぐことは難しい場合があります。万が一、所有する賃貸物件が事故物件になってしまった場合、客付けの対策はどのようにしたらよいのでしょうか?そこで、ここでは所有物件が瑕疵物件になったときの対策について解説します。

家賃を下げる

所有物件が意図せず瑕疵物件になってしまった際の対応として一般的に考えられるのは、家賃を下げて入居者の募集を行うことです。心理的瑕疵に該当するような事故があった物件でも、上述したように心理的な嫌悪感の程度は人によってレベルが異なります。

過去に何らかの事件があった部屋でも、現在の状況に影響がないのであれば、そういった点は気にせず少しでも家賃が安いほうに入居したいという人もいるでしょう。

どの程度下げるかは、瑕疵の原因となった出来事や入居者の感じ方によって異なるので一概にはいえませんが、家賃は一度下げてしまうとその入居者が退去するまでは上げることが難しいため、慎重に考えて決める必要があります。

リフォームを行う

瑕疵物件になってしまい、入居者がなかなか決まらないのであれば、リフォームを行って部屋のイメージを一新するのもひとつの方法です。床や壁紙が張り替えてあるのであれば気にならない、という人も中にはいるからです。リフォームの費用がかかるというデメリットはありますが、家賃を下げるという手段に比べて費用の支出が一時期で済むこと、リフォームによって部屋がより魅力的になることはメリットです。

なお、心理的な瑕疵の程度が著しい場合だと、リフォームと家賃の値下げの両方が必要なケースもあります。

敷金・礼金をゼロにする

敷金・礼金をゼロにするなど、初期費用を安くするという方法もあります。入居者にとっては、初期費用が安く済むことで入居しやすくなるのは大きなメリットでしょう。一方、オーナーにとっても、家賃の値下げに比べれば一定額の負担で済むことから、長期的には家賃を下げるよりもメリットがある場合が多いといえます。

瑕疵物件と告知義務について理解して適切な対策をとろう

賃貸オーナーとして、知らずに瑕疵物件を取得するのは避ける必要があること、すでに所有している物件が瑕疵物件になった場合の注意点・対策を知っておくことは重要です。瑕疵物件であることに気が付かないで契約してしまい、トラブルへと発展するケースがあるのはもちろん、反対に瑕疵を告知せずに取引の相手方と契約し、後から損害賠償や契約の解除が必要になることもあります。

瑕疵物件の種類を知り、取引の際に物件の状況や契約内容を慎重に確認するとともに、告知が必要な瑕疵はきちんと告知することが求められます。特にトラブルになりやすい心理的瑕疵については、賃貸オーナーとしてできることがあれば事前に対策を講じておき、リスクを下げて賃貸経営を行うようにしてみてください。

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