2021.06.21
空室対策

「ルームシェア可」で費用をかけずに空室対策。オーナーが気をつけるべきリスク

空室対策のなかでも「ルームシェア可」の選択は、設備投資やリフォームのコストがかからないのが利点です。一方で「ルームシェア可」を採用したときには、いくつかのリスクを伴います。ここでは「ルームシェア可」のメリットとリスクを整理します。リスク対策をしながらこのスキームを実行する方法を考えていきましょう。

ルームシェアとシェアハウスとの違いは

お部屋探しの「CHINTAI」の定義を参考にすると、ルームシェアとシェアハウスには以下のような違いがあります。

・ルームシェア
1つの物件を分け合って同居するスタイルです。具体例としては、カップルでの同棲や兄弟での共同生活などです。賃貸借契約の方法は、代表者と賃貸借契約を結ぶ「代表者契約」(他のメンバーは記名や基本情報の提供など)とメンバー全員と契約を結ぶ「連名契約」があります。

・シェアハウス
1つの物件内でお互いが独立して生活するスタイル。個々のプライベート空間があるのが基本です。ただし、キッチン、ダイニング、バスルーム、トイレなどは共同利用するケースが多いです。

そのほか、ルームシェアとシェアハウスの違いとしては、ルームシェアが仲間で協力しながら暮らすのに対し、シェアハウスでは管理人が共同スペースの清掃チェックや困りごとの相談対応などメンバーのサポートをすることも多いです。

本稿でテーマにしているのは上記のうち「ルームシェア」の方です。

「ルームシェア可」にしたときの経営メリット

賃貸オーナーが「ルームシェア可」を選択したときの経営メリットは次の3つが挙げられます。

「ルームシェア可」のメリット1:費用をかけずに空室対策ができる

そのままの状態では競争力のない物件でも(例:築古物件、最寄り駅から遠い、利回りの関係で家賃が安くできないなど) 「ルームシェア可」にすることで入居者が決まりやすくなります。

「ルームシェア可」のメリット2:入居者の費用負担を軽減できる

とくにルームシェアに向いているのは、1LDK(カップルや家族など)以上・2DK(友人同士など)以上の賃貸物件です。こういったタイプの物件はワンルームよりも広いぶん家賃も高いですが、複数で住むことで入居者の費用負担を軽減できます。

「ルームシェア可」のメリット3:ターゲットの幅を広げられる

「ルームシェア可」にすることで、ターゲットの幅を広げられるメリットもあります。例えば、「ルームシェアなし」で考えた場合、築古の2DKであれば年配のご夫婦などがターゲットになるでしょう。「ルームシェア可」にすることで、年配のご夫婦などに加えて若い世代の1人暮らし同士などにもターゲットを広げられます。

「ルームシェア可」にしたときの経営リスク

一方、「ルームシェア可」の選択は次の3つの経営リスクを伴います。それぞれの対策も交えて解説します。

「ルームシェア可」のリスク1:騒音リスクがある

一人暮らしに比べて、共同生活のほうが「騒音リスクは高い」と考えるのが一般的です。とくに若い世代のカップルや友達同士のルームシェアは、夜中まで賑やかな声が響き渡るというケースもあるでしょう。隣室や階下などからクレームが発生し、最悪、退去するリスクもあります。

対策としては、クレームが発生したときに管理会社に丁寧な対応するようお願いするしかありません。根本的な対策では、防音リフォームをする手もあります。具体的には、壁の内部に吸音材や遮音シート組み込んだり、防音効果のある床材を採用したりといった方法があります。

「ルームシェア可」のリスク2: 家賃滞納リスクがある

カップルや友人でルームシェアをする場合、「複数で住んでいるから家賃が払える」というのが前提なケースが多いです。そのため、共同生活をしているメンバーが急に退去したことで家賃滞納に発展することも考えられます。

これについては、メンバー1人1人が賃貸借契約の責任を負う「連名契約」を選択するのが有効です。その上で連帯保証人をとっておくことで、それぞれのメンバーと保証人が賃貸借契約全体に責任を負う拘束力が生まれます。

「ルームシェア可」のリスク3:又貸しリスクがある

ルームシェア可物件で「代表者契約」の場合、代表者が退去したらメンバーがそのまま住み続けたくても賃貸借契約は終了になります。また「連名契約」の場合、メンバーのいずれかが退去したら再度、賃貸借契約を結ぶのが基本です。しかし、代表者やメンバーの退去後、別の新規メンバーが加わって又貸し状態になると、トラブルに発展するリスクもあります。

対策としては、賃貸借契約を結ぶときに又貸しは契約違反であることをきちんと説明した上で、さらにこれに違反したときには違約金を支払う条項をつくるなどが有効です。

定期借家契約でリスクを軽減するのも一案

ここでは「ルームシェア可」を選択したときの、オーナーの経営メリットとリスクをご紹介してきました。上記のようなリスクがあるため、慎重なオーナーだと「トラブルが怖くて踏み切れない」となりやすいでしょう。

そういった場合は、賃貸借契約を「定期借家契約」にすることでリスクヘッジする方法もあります。これは通常の賃貸借契約のような「借主が有利な契約更新がない」契約です。契約終了時点でトラブルが発生している場合、オーナーが明渡しを求めれば強制力があります。なお、借主と貸主が合意すればその都度、再契約もできます。

長期空室が発生しているときは、あらゆる手段を講じていかなければなりません。その1つの選択肢が「ルームシェア可」です。実際に採用する場合は、ここでご紹介したリスク対策とセットでご検討ください。

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