2021.06.21
空室対策

空室対策に有効な「ペット可リフォーム」。向いている物件の見極め方と注意点

空室対策として「ペット可リフォームもありかもしれない」と前々から考えているオーナーもいらっしゃるでしょう。ここでは「ペット可」に向いている物件の見極め方や、ペット可リフォームを選択するときの注意点を解説します。

狙い目!ペット可物件は全体の1割程度しかない

まずは、直近のペット市場の規模を確認したいと思います。データを見ながら「ペット可リフォーム」の空室対策への可能性を検討していきましょう。

一般社団法人ペットフード協会によると、日本国内の犬猫の飼育頭数は1,855万頭です(平成30年度)。これは同じ平成30年度の子供の数(15歳未満人口)の1,553万人よりも300万も多い数です(総務省調べ)。つまり現代の日本は、子どもよりもペットのマーケットの方がはるかに大きいのです。

もう1つ着目したいのは、子どもの数は年々減り続けているのに対し、犬猫の飼育数は安定していることです。種類別にみると犬はやや減少傾向にありますが、猫は横ばいから微増傾向となっています。

以上の内容から、賃貸住宅をペット可にすることは安定経営にプラスになると考えられます。しかもペットの飼育者がこれだけいるにも関わらず、賃貸物件に占めるペット可物件の割合は10~15%程度しかないといわれます。つまり、需要は大きいのに供給が追いついていない状況です。

リフォームなしで「ペット可」と打ち出すのは避けたい

ここまでの内容で、ペット可物件の潜在ニーズについてはご理解いただけると思います。だからといって、所有物件をリフォームなしのそのままの状態で「ペット可」と打ち出すのは避けたいところです。

例えば、猫向けの物件であれば、室内にキャットウォークやキャットドアなどがなければ、猫にストレスが溜まってしまい、異常行動をとったり頻繁に鳴くようになったりするなどのリスクが高まります。そうなれば、飼い主や隣人・階下住人などの入居者満足度が下がって退去が相次ぎかねません。こういった損失が発生しないよう、ペット可物件にするときは適切なリフォームを施すべきなのです。以下がペットリフォームの一例です。

▽ペットリフォームで検討したい項目
・ペット用クロスや腰壁 ・ペット用ドア ・キャットウォーク ・ドッグラン ・足を洗える屋外水栓 ・消臭機 ・ステンレス製網戸など

ペット可向きの物件か否かの判断も欠かせない

加えて、所有物件が「ペット可物件に本当に向いているか」の見極めも大切です。この部分を見誤ると、リフォーム予算がムダになりかねません。

ペット可リフォームに向いているのは、「差別化ポイントがつくれない物件」です。立地・住宅設備・築年数などで入居者に魅力的な差別化を打ち出せずに、長期空室になっている物件はペット可リフォームが有効と考えられます。

逆にいうと、差別化ポイントがあるのに長期空室が発生している物件は、ペット可リフォームを検討する前にPRを強化するのが優先です。一例としては、「賃貸物件の検索サイトに物件情報を掲載する」「客付け会社へのインセンティブ(広告料AD)を増やす」「入居者募集中の立て看板を目立つものにする」などです。

ペットを飼っている人と飼っていない人が共存する場合は要注意

ペット可リフォームを実行するにあたって大切なポイントは「ペットを飼っている人の目線になること」です。ペット可物件にするといっても「犬猫どちらの飼育者をメインに考えるのか(あるいは両方なのか)」「ペット飼っている人と飼っていない人の両方を対象にするのか」でリフォーム方法や配慮が変わってきます。

とくに、ペットを飼っている人と飼っていない人の両方を対象にする場合は、慎重なプランニングが必要です。ペット可リフォーム後に新規入居者が決まっても、既存の入居者がペット可変更を不快に感じて退去してしまえば元も子もありません。一例では、エントランスにペットの洗い場を設ける、共有スペースで匂い対策をする、こまめな清掃をするなどの配慮が必要です。

ペット可リフォームをする前のチェックポイント

ここでは、空室対策に有効なペット可リフォームについて解説してきました。「ペットが飼える集合住宅があまりない」という潜在需要があるため、ペット可リフォームが空室対策に有効なのは間違いありません。

ただ実行するにあたっては、通常のリフォームと同様、安易に考えるべきではないでしょう。少なくとも次のチェックポイントは確認したいところです。

・周辺エリアにペット可物件はどれくらいあるのか
・(あるとしたら)入居状況はどうか
・(通常の物件と比べて)どれくらい家賃を上乗せできているか

いうまでもなく、周辺にペット可物件が多すぎる、あるいは、入居状況が悪い場合は再検討すべきです。また、家賃があまり上げられないと予測される場合も再検討が無難です。

判断が難しいのは、周辺にペット可物件がほとんどないケースです。「競合物件がないので大きなチャンス」とも考えられますし、「ペット可物件のニーズがあまりない」(例えば、地方の小都市など)とも考えられます。管理会社や客付け会社の意見を聞きながら、慎重に判断するべきでしょう。

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