不動産投資は家賃収入により収益を上げるビジネスですので、始めるにはマンションなどの賃貸物件を所有する必要があります。賃貸物件の購入には多額の資金を要するため、不動産投資ローンを利用するのが一般的です。
しかし、不動産投資ローンは住宅ローンとは異なるタイプの融資であり、金利相場などといった詳しい情報はあまり知られていないのが現状です。そこで、本記事では不動産投資ローンの金利相場や、具体的な計算シミュレーションなどを紹介します。
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目次
不動産投資ローンとは、不動産投資という事業に対してのローンを指します。同じく不動産購入時に利用できるローンとして「住宅ローン」がありますが、こちらは居住用の物件が対象となるため、投資目的の不動産は原則として対象外です。
また、不動産投資ローンは「アパートローン」と「プロパーローン」の2種類に分かれます。
アパートローンはアパート・マンションローンとも呼ばれており、個人で不動産投資を行う人向けの融資商品で、投資用不動産の購入や建築時に利用することができます。金利はやや高めに設定されており、審査では本人の属性評価や資産状況のほか、事業計画、物件の収益性などが重視される傾向にあります。金融機関側はお金を貸すリスクを減らす必要があるため、保証会社を介して契約するのが一般的です。
一方、プロパーローンは事業者向けの融資全般で利用でき、不動産に限定したものではありませんが、主に不動産投資で活用されることが多い傾向にあります。こちらは金融機関が自ら調達した資金を貸し出すうえ、アパートローンとは違ってプロパーローンは保証会社を介さないため、金融機関にとってリスクの高いローンとなります。ただし、そのぶん自由度の高いオーダーメイド型のローンを組むことができます。金利相場がなく、案件によって金利が大きく変動するという特徴もあります。
一般的に、不動産投資ローンの金利は住宅ローンなどと比較して高めに設定される傾向があります。では、具体的にどの程度の金利相場なのか、金融機関の種別ごとに見ていきましょう。
メガバンク(都市銀行)とは、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行です。この3行に、りそな銀行を加えるケースもあります。
メガバンクの現在の金利相場は、一般的には1%前後とされており、メガバンク以外の銀行と比較すると低い水準となっています。さらに、融資エリアは全国が対象であり、20年以上の長期借入れも可能であるのが特徴です。
ただし、融資審査は非常に厳しく、個人の属性が高いことに加え、「築浅」「好立地」などといった条件の良い物件でなければ融資は受けることは困難であるといえます。
地方銀行とは、各都道府県に本店を置き、各地方を中心に営業を展開している普通銀行のことです。地方銀行の金利相場は1.5%~4.5%と銀行によってバラつきがあり、融資に積極的な銀行かどうかを見極める必要もあります。
メガバンクより金利が高めである一方で、審査は柔軟な傾向があります。そのため、メガバンクでは融資が難しいものの、高利回りを期待できる物件を購入するといった際におすすめです。
信用金庫とは、信用金庫法に基づく協同組織の金融機関であり、会員の出資によって運営する非営利機関です。地域の住人が会員となり、お互いに地域の繁栄を図るための相互扶助を目的とした組織のため、融資エリアはその地域に限定され、資金はその地域の発展に生かされます。
また、信用組合も組合員の出資によって運営する非営利機関ですが、信用金庫よりさらに地域性が強く、小規模な企業を対象としています。
信用金庫、信用組合の金利相場は約2%半ばです。融資エリアが限定される一方、審査は柔軟であり金利もさほど高くないため、住んでいる地域や購入する物件の地域が融資対象エリアに該当する際は、活用を検討しても良いでしょう。
日本政策金融公庫とは、財務省所轄の金融機関です。基本的に国民生活の向上を目的とした金融機関であるため、不動産投資を目的とする場合は融資を受けることができませんが、「不動産賃貸業」として新たな事業を始めることを目的とするならば融資の対象となります。
金利相場は固定金利で1.2~2%程と比較的低金利であり、女性や高齢者でも活用しやすいメリットがある一方、返済期間が10~15年程度と短いのはデメリットといえます。また、他の金融機関の場合は不動産会社が手続きを代行するケースもありますが、日本政策金融公庫の場合は原則として投資を行う本人が各支店に訪問して手続きや交渉をする必要があります。
ノンバンクとは、預金業務を行わない貸付のみを行う金融機関を指し、クレジットカード会社や消費者金融、信販会社などが該当します。
金利相場は2.9%~4.5%です。金利はほかの金融機関に比べて高めですが、審査基準が柔軟で審査も早く、融資期間が長いという特徴があります。
不動産投資ローンは、変動金利と固定金利のどちらかを選択することができます。それぞれのメリット・デメリットを以下にまとめます。
変動金利は、適用金利が一定期間ごとに変動するタイプのローンです。金利の見直しは半年に1回の頻度で行われ、返済額の変更は5年に1回実施されるのが通例となっています。
変動金利のメリットとして、まずは適用金利が他の金利よりも低いという点があります。金融機関によって差はありますが、近年では変動金利と固定金利の金利差として約0.5~1%程度はあります。
次に、金利が上昇しても5年間は返済額が変更されず、変更される場合でも従前の返済額に対して1.25倍までが上昇幅の上限である点もメリットです。ただし、金融機関によってはこの条件を設けていないケースもあるため、事前確認が必要です。
一方、変動金利のデメリットとして、まずは市場の金利が上昇すると、それに応じて適用金利が上がる点があります。そのため、返済額が想定以上に増加した結果、収支を大きく悪化させる可能性があります。
また、金利が上昇した場合、毎月支払う返済額からは先に利息が引かれ、残った金額から元金が引かれていく点もデメリットです。その結果、元金の返済が遅くなって未払い利息が発生し、最終的な総返済額も増えていくことになります。
固定金利は、適用金利が変わらないタイプのローンです。一定期間のみの金利を固定にする「期間選択型」と、すべての返済期間の金利を固定にする「全期間固定型」があります。期間選択型の固定金利は、3年・5年・10年・10年超などから選択することができます。
市場の金利が変動することで適用金利が上昇して、返済額が増加するリスクを回避できるのは固定金利のメリットのひとつです。また、全期間固定型であれば契約時に総返済額が確定するため、ローン返済による支出額が常に一定になり、収支計画を立てやすいというのもメリットです。期間選択型の場合も、選択した期間中は金利が上昇しないため、変動金利よりは収支計画を立てやすいでしょう。
一方、固定金利は変動金利よりも適用金利が高めに設定される点はデメリットといえます。そのため、市場の金利が長く低金利の状態になると、変動金利を適用した場合よりも総返済額は多くなるリスクがあります。
また、変動金利の場合でも原則として5年間は返済額が上昇しないため、物件を短期間で売却する場合は、固定金利を選択したことによって利息の支払いが多くなってしまう可能性があります。
ここまで金利の解説をしてきましたが、金利の違いによってどれほど返済額に差が出るのかがイメージしにくいかもしれません。そこで、本章では2つの事例を用いて金利シミュレーションをしていきます。
事例➀【金利1.5%のケース】 | |
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ローン元本 | 8,000万円 |
ローン返済期間 | 20年(240回) |
適用金利 | 1.5% |
月々の返済額 | 386,000円 |
総返済金額 | 92,650,026円 |
うち利息金額 | 12,650,026円 |
事例②【金利2.5%のケース】 | |
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ローン元本 | 8,000万円 |
ローン返済期間 | 20年(240回) |
適用金利 | 2.5% |
月々の返済額 | 423,000円 |
総返済金額 | 101,806,669円 |
うち利息金額 | 21,806,669円 |
①と②は適用金利が1%違うだけですが、総返済金額の差を求めると約900万円の違いがあり、金利がたった1%異なるだけでも返済額は大きく変わることがわかります。
また、同じ金利だとしても、ローン金額が大きいほどに利息も高額になります。マンション、アパートの一棟投資などを行う場合、購入金額は1億円を超えるケースがありますので、利息金額も非常に高額になります。したがって、不動産投資ローンでは金利を抑えることがよりいっそう重要になるといえます。
変動金利や期間選択型の固定金利で不動産投資ローンを組む場合、将来金利が上昇するリスクを抱えることになります。そのため、金利の決まり方や、金利条件を左右する要素を把握して、対策を立てておくことが重要です。
不動産投資ローンの金利が決まる要素として第一にあげられるのが、市場の動向です。
日本は長年にわたり日銀による低金利政策が続いているので、現在の金利の水準は全体的に非常に低いのが特徴です。しかし、もちろん市場の動向だけで金利条件が決まるわけではなく、それに加えて「借主の属性」「物件の資産価値」「借入れ先の金融機関」という3点によっても変動します。
それぞれの特徴を以下にまとめますので、しっかりと把握しておきましょう。
属性とは、年収や勤務先、勤続年数、年齢、健康状態など、その人の経済的・社会的背景を指します。お金を貸し出す金融機関は、貸し倒れリスクを極力減らしたいと考えていますので、属性が高い人であればリスクは少ないと判断して金利を優遇することもあります。
なお、不動産投資ローンでは融資の限度額はおおよそ年収の7~10倍程度とされるのが一般的です。金融機関や物件によって条件は異なりますが、ひとつの目安として知っておくと良いでしょう。
金融機関は、ローンを適用する投資対象となる物件の収益力と担保評価を重要視します。物件の収益力とは、主に家賃収入を指しており、安定して高い家賃収入が得られそうな物件だと金利が優遇される傾向にあります。
物件の収益力を判断する際にチェックされるのは、物件の立地や周辺環境、築年数、外観、設備などです。特に重要視されるのは立地であり、人気エリア、駅近などの好条件であれば、築年数や外観などが多少劣る建物でも入居者が集まる可能性が高いため、収益力のある物件と判断されやすいといえます。
また、担保評価とは不動産の物的担保としての評価です。すなわち、借主がローンを返済できなくなった場合に、その物件を売却することで債務を回収できるかを判断する際の評価です。
担保評価では、立地条件や築年数のほか、物件の耐用年数も影響します。したがって、耐用年数が長いマンションのほうが、アパートよりも高い評価になります。
金利は市場の動向の影響を受けるものの、具体的な数値は各金融機関によって個別に決められます。前述した通り、メガバンクや地方銀行などによって金利水準には違いがあり、全体的にメガバンクのほうが低金利になる傾向があります。
金利を低く抑えたい場合は、物件を購入する不動産会社から提携している金融機関を紹介してもらうのもおすすめです。多数の提携先がある不動産会社に相談すれば、自分の希望条件に近い金融機関を見つけられる可能性が高いです。提携先のローンは金利が低く、手続きが簡略化される傾向があるため、事務手続きを早めに済ませられるのもメリットです。
すでに述べた通り、不動産投資ローンの審査では、借主の属性と物件の収益性が重視されます。物件の収益性が高いと金融機関側が判断すれば、低金利で融資を受けられる可能性が高いです。
収益性を示すうえで大切な提出書類が「事業計画書」です。事業計画書とは、これから開始する事業の内容の詳細をまとめた書類です。不動産投資では「不動産賃貸事業でどのくらいの収益をあげられるか」「どのように収益をあげるのか」といった戦略を示す必要があります。詳細な事業計画書を作成すれば、金融機関からの信用を得られるだけでなく、将来的に自分で事業計画を検証する際にも役立ちます。
また、複数の金融機関に相談して、金利条件や借入れ可能額の比較をすることも大切です。その場合は、すでに付き合いのある金融機関、不動産会社から紹介された金融機関などから相談してみると良いでしょう。ただし、金利や借入れ可能額のみで決めるのではなく、事務手数料、保証料のほか、金融機関の社会的信頼性なども踏まえ、総合的に判断することが大切です。
不動産投資ローンは、物件を購入して賃貸経営を始めるためのローンです。住宅ローンや車のローンなどと違って一般的な認知度は低いため、自分なりに情報収集したうえで正確に計算してシミュレーションをすることが大切です。また、ローン返済は物件の家賃収入を見込んでシミュレーションをするのが基本になるため、安定した収入が得られるよう、物件選びと空室対策が重要な要素となります。